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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第3章 三校合同AV祭
66/73

たとえあなたが神の使いでも(尻)

「里緒」と「こいつ」と「俺」の三角形。

£――――


 奇跡が起こってしまった・・・。

 信じられないことに、私の目の前には、再び”ラミア様”が姿を御見せになられたのだ。


 純真無垢の白の翼、そして、物理的な生命を司る純白のスカウター”ラミア様”。


 夢なんかじゃない・・・

 間違いでもない・・・


 あの時の艶やかな純白に輝く翼は、確かにこの目に焼き付いている。

 それに、工口君を異世界からスカウトされたのだって、紛れもない事実。


 確かにこのお方はラミア様なんだ。


 疑いようもない。


 疑いようもない事実。


 でも、でも・・・こんなこと思っちゃいけなのだけれど、ちょっと想像と違うかなっ?て思っちゃう。


 ううん、御姿とかお言葉ではないの、そんなことじゃないの。


 いや、ちょっとだけ・・・本音はそうだけど。

 でも、それは、私が勝手に描いていただけだから。


 だから、今も崇拝しているし、尊敬だってしている。

 だから、そんなことは問題じゃないの。


 そんなことじゃなくて・・・、私が意外だったのは、


 ・・・・・・


 理由も無く一方的にそんなことを言うなんて信じられない。正直、驚いてしまった。

 私には全く理解が出来ないし、納得することなんて出来やしない。


 そんなことまでも、私はラミア様に従わなければいけないのだろうか?

 それを従う理由って何なのだろうか?


 私にはきっと、一生分らないことだと思う。


 だから、譲らない。譲りたくない。

 それだけは幾ら、崇拝するラミア様でも譲れない。


 例え、自然神様からの罰が与えられ私がどうなったとしても、


 絶対に、絶対に、それだけは譲れない・・・。


――――£


★☆ 第20話 ★☆

☆★ たとえ ♂ ☆★

★☆ ♀あなたが ★☆

☆★神の使いでも☆★


 リビング中央のテーブルを囲んで座っているのは、俺、千乃工口を含めて3人。いや、2人と1柱と言うべきだろうか。


 リビングの奥、寝室側で丸いピンクのクッションに座るのは、へっぽこスカウターのラミア様ことミラミ、または、こいつ。1柱。

 その1柱は、食べ掛けの”カップラーメンスペシャルとんこつ味”を大事そうに両手で包み込んで何やら思考中。


 その真向かいでは、徳の高いであろうラミア様を前に気後れした女の子が、石膏の様に硬くなっている。


 彼女の名は千逗里緒せんずりお。俺と同じ名門”併性へノ路学園高等学校”通称”へ校”に通う、柔軟体操部のホープであり校内順位第1位の”部長ちゃん”である。ついでに、前回のAV大会では俺の相方を務め高い評価を得ており、ただ今。”キス”と言う技で、特許申請中。


 その里緒は、俺が進めたソファーに腰を掛けることを拒み、更に敢えて今座っていうる場所にあったクッションを自ら横にずらし、直にフローリングに正座状態である。


 そして、崇高な1柱に徳の欠片も感じない俺は、二人の間でソファーに一人ゆったりと座ると言った、鈍角二等辺三角形を形成中である。


 さて、この先どんな展開になるのだろうと、俺はハラハラドキドキ状態だったのだが、今のところ幸いにも”まさかの俺の心配”は起りそうにもない。

 正直なところ、心の何処かでは人生初のそのハラハラドキドキ的修羅場の主役を味わってみたい気持ちも有ったり無かったりでもあった。だから、不心得にも何だかちょっと寂しい気もしている。が、表情には封印している。


 一方、里緒とミラミことこいつも、今の所、積極的にわだかまりを見せてはいない。かと言って、和やかな雰囲気でも無い。

 単に喋る言葉が見つからないと言う状態なのだろう。

  

 12畳程の間取りに3人も居るにも関わらず静寂なリビング。大型モニタの横にある置き時計の秒針が刻む音だけが耳に響いてくる。


 俺を含む2人と1柱の間には、沈黙の苦痛が暫し続いている。その気まずさは、俺の家とは思えない程に居心地か悪い・・・。


 まあ、冷静に考えると修羅場を迎えるよりはよっぽどマシなのかもしれないが、この状態もイタダケない。どう転んでもここは俺が中心であるのだから、何か気の利いた話題の一つでも振って、円やかな談義に持ち込みたいところではある・・・。


 等々と、先程から思ってはいるが、こんな時に笑いを取る技量も無ければ、無難な言葉のストックも俺には無い。全くの甲斐性の欠片もない俺だ。


 さて、どうするか。


 いや、どうもならない。


 etc・・・.


 

 などと考えている矢先、情けない俺の右方向から左方向に向けて、


 「苦しゅう~、ないぞよ」

 

 と、意味の分らない甲斐性が音速に乗って目の前を横って行った。間違いない。俺は確かに観測してしまった。


 それは当然、里緒に対して所要を感じた徳の高いであろうラミア様のお言葉に他ならない。胸を存分に張ったラミア御大は、当然の如く下々の我々に甲斐性をお見せになられたのだ。

 

 俺としてみれば、「お前は殿様か」と突っ込みたいところではある。いやいや、そんなつまらん突っ込みよりもむしろ、そんな言い回しがAV世界にあることが驚きだ。

 一体里緒は、この言葉にどんな反応なんだろう?と関心を持ってしまう。視線は、即座に里緒の反応へと向かう。すると、


「く、くるしゅう・・・ない?」


 その言葉は”へ校”で秀才で通っている里緒でも意味不明な言葉であったようだ。首を傾げている。やはり、そんな言い回しは無いのだろう。

 大方、俺の世界で時代劇でも見たことを、こいつは思い出したのだろうと予測される。


 だいたい、AV界が幾ら俺の元の世界に酷似しているとは言っても、AV界で古代扱いされている95年以上前の歴史に江戸幕府的な将軍が君臨するには、今のAV界で如何なる革命や改革があったとしても、まず時間軸を繋げることは不可能に近い。少なくても俺の想像力ではそうだ。


 著名なフィクション作家であれば、実に面白い話しにはなりそうだが、それでも、その設定を作り上げた自分に眩暈がすることだろう・・・。

 

 さて、それは置いといて、間違った言葉を使ってしまったこいつが、どう応えるかが見もの。俺はモニタを通してドラマを見る気分でこいつを眺めていると、苦しゅうようだ。


「うん~と、それは、それはれすね~、苦しゅくし無いのれす」

 

 顔が赤い。


「えっ? くるしゅくしないんれす?」


 里緒は、こいつの言葉を理解出来ないことに本気で悩んでいる。そして、それには言葉を発した当の本人も、明らかに説明が出来なくて苦しゅくなっている。今まで、偉そうに張っていた胸が心なしか弛んできている。


「楽にしていいんじゃ・・・」


 ついうっかり口を挿んだ俺の言葉に


「う~っほほん」


 こいつは、俺の声を消さんばかりの妙な咳払いを一つ。


「そうれす!楽にして良いと言ってるのれすよ。足が痛くなるから、そこのクッションに座るといいのれす」


 そう言うと、本来曲げにくい逆方向側に背を反らせ、再び無駄に綺麗な弧を描き出した。

 

 何だ?一体、何を無理をしてるんだ?

 思いやりの趣旨であるならば、最初からそう話す選択肢はこいつには無かったのだろうか?

 と思う、こいつへの俺の心中の突っ込みは里緒には欠片も無かった様で、

  

「は、はい。有難うございます」


 カチカチの緊張状態のまま、ラミア様ことこいつの一般人以下の言葉遣いに、顔を真っ赤にして嬉しそうに礼を言っている。


 しかし、一体こいつは何を持ってそんな昔の言葉を言い出したのだろう?


 確かに今の状況が物語っている様に、クッションを進めたと言う行為は、この間のG3食堂での事に対して、もうわだかまりは無いと言うアピールにもみえる。

 しかい、こいつは勝ち誇った様に異様な胸の張り方もしている・・・。


 まさか、未だ根に持っていて仕返しを考えていることはあるまい。とは思いたいが・・・。

 

 全く、こいつの心は読み易い様で読み難い。次の行動に注目するしかないだろう・・・。そう思っていると、


「なんじの名前は、え~と、確か里緒だったれすよね・・・ぞよ」


 おいおい、次は”ぞよ”か?

 その”ぞよ”の意図は何なんだ?


 再びの無理のあるお言葉。当然里緒は再び首を傾げている。

 ”ぞよ”の説明は難しいだろう。そう思っていると、


何時ナンジの名前・・・?

 あの~私、いつも同じ名前ですが・・・」


 そうであった。里緒には”ぞよ”よりも、そちらの言葉の方が問題であったのか・・・。


「オホン、”なんじ”とは、あなたの名前じゃ」


 声は偉そうだが、少し気まずそうに眉間に皺を集めている。

 敢えて無理をした言葉を選んでいるとしか思えない・・・。


 んっ?!


 と言う事はもしかすると、こいつはこいつなりに、敢えてラミアさまとしての威厳を見せる芝居をしていたと言うことなのだろうか?


 いや、そうだろう。こいつはこいつなりに健気な努力をしていたのかもしれない。

 こいつなりに、ラミア様として無理をしているのだ。


 ちょっと抱きしめたい気持ちにもなるるが、だったとしても、付け焼刃な言葉遣いは無理があるだろう。返って、威厳も何もなくなって、ただのヘンなヤツに・・・あ、あ、あれ?


「はい、里緒です。里緒と申します」


 俺の思いとは裏腹に、それでも里緒は何も不審に思っていないらしい。想像以上に里緒は天然が入っている。

 里緒は、完全にこいつを素直に信じきっている。

 いや、本物なのだから信じても良いのだが・・・。


 天然の里緒は何の疑いも持たずに、こいつをラミア様として崇拝し切っている。

 であれば、威厳のある言葉には何の意味もない。こいつの無駄な努力だ。それに、クマさんのパジャマ姿でそんな言葉を使っても何の有難味も無いだろう。


 そこで、俺が「無理するな大丈夫だ」と言う目付きでこいつを見ると、こいつもホッとした顔で反らせていた胸を撫で下ろすし、息をハアハアさせている。

 相当、しんどかったのろう・・・。


 さて、次はどんな言葉遣いにするのだろうと注目すると、


「苗字は何と言いますのれすのか?」


 舌っ足らずのこいつには、程よい言い回し。


 よし、その程度で充分だ・・・。


「はい、千逗せんず、千逗里緒と申します」

 

 自然な会話が成立する。

 いい調子だ・・・。


「ふ~ん」


「・・・」


 と思ったら、それで、もう沈黙なのか?


 いきなりの沈黙に突っ込みを入れたいところだが、こいつはこいつで精一杯ラミア様を演じ、いや、頑張っていたのでだろう。さすれば、何も頑張っていない俺にとやかく言う権利はない。俺が引き継ぐのが本筋だ。


 それに、俺に取ってもこいつとの同居を正当化させるには、こいつの努力を生かすことが都合が良い。嘘でも俺はこいつを崇めればいい。いや、元々本物だから、それが正当なのだ。

 折角のこいつの努力だ。ここは、この世界のしきたりに従い一芝居を打つとしよう。


「な、ミラ」

 出で、なかった、

「ラミア様、里緒も足を崩しても宜しいでしょうか」


 一瞬、普段と違う口調に、こいつはポカンと口を開けて俺に視線だけを向けたが、意外と勘が良いらしい。直ぐに表情がラミア様に戻る。


「いいのれすよ。さっき、苦しゅうないって言ったれすのに」


 そう言えばそうであった。俺も緊張しているのかもしれない。


「折角ラミア様もそう言ってるのだから、クッションに座って、脚を崩すといいよ」

 

 すると、里緒はウルウルと花満開に感激を表情に表し、恐る恐るクッショに正座する。

 それを見て自分の役目を全うして安堵したのか、こいつはいきなり矛先を食欲へと向け始めた。と思ったら、行動が早い。


「ズズズズル・・・。ズッズズズ・・・」


 カップラーメンを勢いよく啜る。静寂な室内に、麺類を啜る音は異様に響く。


 ちょっと、下品ではないだろうか?ラミア様・・・。

 食し慣れているせいか、こいつの吸引力は掃除機並ときているのだ。


 となると、否応なく俺と里緒の視線が、こいつに向かうのは自然の流れ。

 冷め掛けたインスタント食品も食べなれているのか、やたらと美味しそう喉へ流し込む。それが何とも幸せそうで・・・。


 里緒の尊いものを見る様な微笑ましい視線に、俺の若干呆れる視線が、鈍角三角形の一点で結ばれる。


 暫し、一点の観察・・・。


 その音に釘づけになる二人の視線に、こいつもようやく気付いたらしい。チラチラとこちらを窺っている。そして、


「う~ん・・・、見られると食べにくれすね」


 と小さく呟くラミア様ことこいつ。そこから、視線を逸らす里緒と俺。

 直ぐに視線を戻すと、何やら思いついたのか、こいつの頭の上に閃きの白熱灯が点灯して見える。と言うのは間違い無く俺の錯覚だ。


「そうれす!みんなで食べれば良いのれすね」


 そう言って、御大自ら立ち上がって、お湯を沸かしにキッチンへと向う。


 そうそう、俺も夕食のカップ焼きそばを食べるところであったのだ。ラップだけを剥がした物がテーブルの上に乗ったっままであった。


 ラミア様自らコンロにやかんを乗せると、我が家のインスタント食品置き場から、”メンマラーメン醤油豚骨味”を一つ持って戻って来た。こいつは、基本、豚骨味が好みである。


「食べるれす」


 ラミア様ことこいつは、恥ずかしそうに里緒とは顏を合わせず、手に持った”メンマラーメン醤油豚骨味”を里緒に差し出した。


「いただいて、いいのですか?」


 一瞬、里緒の大きく開いた瞳がラミア様を見つめる。と言っても。まだままだ神々しいこいつを直視することは出来ないらしい。視線の先は顔では無く、こいつの着ているパジャマのクマさんの目を見つめている。


「もったいないです」


 直ぐに座ったままの状態で、お尻を引下げ頭を下げる。


「いいから、食べるれす」


 少し怒り口調なのは照れ隠しなのだろう。


「あ。ありがとうございます」


 里緒はひれ伏したまま手を伸ばし、それを受け取ると、貴重品でも扱う様に震えた手でラップを丁寧に剥がしだす。


 やはり、単純なこいつには、既にG3食堂でのわだかまりは存在していないのだ。

 簡素な思考なヤツに狭い心は似合わない。もはや、二人の間の積雪は既に0センチメートルと言ったところだろう。俺を含む、鈍角二等辺三角形の角が丸みを帯びていくのを感じる。大げさだろうか?

 いや、きっと俺たちは円を描けるはずだ・・・。


 俺はそんな睦まじい未来を空想しながら、沸騰したやかんを取りに行くと、二つののカップにお湯を注いだりした。何かいい感じ。

 

 里緒は、こいつからの些細な志がそんなに嬉しいのか、手を合わせている。まるで、こいつが生存していなかいに見えてしまう。それを横目で見ているこいつの複雑そうな顔がまた面白過ぎだ。


 ラミア様ことこいつは、俺たちのが出来上がるのを待っていたのか、今だに食べ終えていない。意外と良い奴なのだ。

 三人で啜るカップラーメンと焼きそば。それに途切れ途切れの会話が加わる。ますますいい感じ。


 こいつ、いやラミア様が楽しそうに見えるのは気のせいなのだろうか?

 心なしかお尻が浮き上がって見える。


 やはり、こいつは常に人が恋しいのだ。

 幾ら俺と同居を始めて孤独では無くなったとしても、目の前の人を欲してしまう気持ちからは抜けられないのかもしれない。

 だから、こいつは里緒と友達になりたくてしょうがないいのだと俺は思う。ただ、ラミア様と言う立場が邪魔をしてどう接していいのか分らないのだろう。


 俺にはそんな気がする・・・。


 一方、和んだ雰囲気に里緒も緊張が解れて来たのか。或いは、打ち解けたと実感があるのか、俯いたままの里緒の顔も次第に角度を上向きになって行き、モアイ像の角度で俺の家を見回し始めた。


 何を見てるんだ、里緒?


 俺の部屋に怪しいものは、こいつ意外には何も無い・・・はずだ。と、最後の麺を慌てて口の中に掻き込んで、里緒の視線を追い掛ける。すると。ある一点で追いついてしまった。


 あっ・・・。


 そこにあらせられるのは、エアコンの送風で僅かに揺れる2つのカテゴリーに属するアンダーウエアー。

 それが仲良く左右にダンスする。少し擦れ合うのを見て、俺としたことがちょっと興奮。


 いやいや、待て待て・・・。


 今朝は、確かに俺のおごそかなパンツのみであったのだ。

 いつの間にこいつは・・・と言っても、俺が学校に行っている間に間違いはなく、こいつのパンティーだって洗わない訳にはいかない。むしろ洗って欲しい。柔かな芳しいものであって欲しいとは思う。


 だけど、なぜ、今日・・・。しかも、俺の厳かなパンツと並べて、しかも、意図的とも思える交互干しをしなければならない。

 いや、今更遅い。言っておかなかった俺の不覚だといえ、誰も交互に干す等、想像もしない。


 ところで、里緒の反応は・・・。

 と、恐る恐る里緒の表情を伺うと、


「ラミア様もパンティー穿くのですね」


 そっちれすか・・・良かったれす。とちょっと、こいつ風に脳裏で呟く俺。


「当たり前れす。穿くに決まってるれすよ」


 そうそう、こいつの言う通り。パジャマだって着るんだ。パンティーだって穿くだろう。


「下着は白じゃないんですね」


「パジャマだって白じゃないれす」


 そうだ、確かに今来ているクマさんのパジャマは緑色の生地に、赤い服を着た茶色のクマがクマ牧場状態だ。


「ラミア様、あのリボン柄でレースの付いたの可愛いぃです」


 里緒が、一枚のパンティーを指差す。里緒が天然なのは幸いだ。


「あはっ・・・、そ、そうれすか。あれはミラミの一番のお気に入りなのれすよ」


 とラミア様も嬉しそう。


「そうですよね。すごく可愛いです。

 何方かからの貢ぎ物ですか?」


「んっ・・・?」

「貢物では・・・」


 パンティーを貢がれたと言う言葉に顔を赤らめる、貢がれ慣れていないラミア様。一生懸命に首を振る。


「違いますれすよ。自分れ買うれすよ。”せ”地区の卯ショッピングモールに”ニコニコパンティー堂”と言うお店があるれす、可愛いのが一杯売ってるれすよ」


「ホントれすか。今度行ってみます」

 って、里緒も口調が移ってるぞ。


「凄く沢山種類があって、いつも迷っちゃうんれす」


「へ~・・・」


 なんて、女子二人はパンティー談義で盛り上がり、俺の出番なんぞ全く無くなってしまった。しかし、それは俺としても何よりだ。


「あの、黄色のドッド模様も、そこで買ったのですか」

「そうれすよ」


 平和だ・・・。世界は平和が一番。

 パンティーは平和の象徴と、これから布教しなければ・・・と、使命感に燃える俺。その活動内容が俺の頭を勝手に巡っている。


 平和に酔いしれて暫しの空想の世界に潜り混んでいた俺には、僅かな時間とは言え確かに油断があった。その間に、里緒の表情に霞が掛かっているではないか? 


「何で交互に干してるんですか?もしかして、工口君がラミア様のパンティーを一緒に洗ったとか・・・」


 まてまて、そんな訳ないだろ。交互に干したのも俺の趣味とでも思っているのか?


「工口は自分のしか洗わないれすよ、ミラミのはミラミが洗うに決まってるれす」


 そこで、俺より先に全面否定するこいつの瞬発力はナカナカのものだ。助かる。


「そ、そうですよね・・・。

 でも~、だったら・・・何で交互に干してあるのかしら・・・」


 俺がラミア様ことこいつを見ると、里緒もそれに従い視線を向ける。俺も聞きたいことろではある。こいつにもシャレ心があるのか?

 すると、


「サービスれすよ」


 バカ何を言ってるんだ。他に言いようがあるだろう。言葉を選べ。


「えっ、さーびす?」


 里緒が当然びっくりコイている。


「な、何のサービス何ですか?」


 ほら見ろ、余計な突っ込みが入るじゃないか。


「性的サービスれす」


 バカ、止めろ。

 お前、そんなこと、一度も・・・いや、俺の元の世界でスカウトされたあの時は確かにあったが、それはサービスではなくて、違法スカウト行為だろう。


「えっ!、ラミア様もそんなことされるのですか?」


「下々の者の下の世話とか、するれす・・・」


 なに言ってやがる。あの違法スカウトの時だけだろう。

 それどころか、夜は俺のベッドを占領したまま、近付けもしないじゃないか?


「お、おま(え何を)・・・」

 と言いかけた言葉は音量が小さ過ぎたみただ。萎縮してしまった俺の声は里緒の耳には届かなかったらしい。


「下の世話って、何を・・・ですか?」


「嘘れす、シャレなのれす。ハハハ」


 お前、本当にウケを狙っただけだろうな・・・。


「そ、そうですよね、ハハハ」


 里緒も笑ってはくれたが、一気に不審ムードになったではないか。

 里緒もこいつに慣れて来たせいで、人間を見る目で見だした気がする。ここは、初めの雰囲気を取り戻さなければならない。俺が慌てて話を取り繕えば返って怪しい。


 俺が、こいつの勘を信じ、厳かに話題を変えろと言った目線を送ると、それを正確に理解したのか、こいつは、


「ところで、何か用があったのれはないのれすかな?」


 再び思い出した様に胸を張り、話を変えるこいつ。

 結構わかってるじゃないか・・・。


「そ、それは・・・」


 と思ったら、今度は里緒の様子がおかしい。


 あっ、まさか・・・と、俺は思い出した。


 そう言えば、「エロを教えて欲しい」と言われていたのだった。すっかりドタバタ劇で忘れていた。しかし、それを言うと、こいつは一体どんな立ち位置を取るのだろうか?未だ不明だ。


 こいつの立場から行くと、俺はとにかくAV男優としてこのAV界で上り詰めることだけが目的なのだ。しかし、寂しがり屋のこいつが、俺と里緒が個人的に仲良く、いや、それだけではない。密着エロエロをしても、問題が無いのかどうかは未知である。


 平和だ。世の中平和が一番。

 俺には、もうどこにも修羅場に合ってみたいなどと言う戯れは無い・・・。


「その~・・・ラミア様には・・・、本当のことを・・・」


 里緒は決意した表情を、こいつに向けている。


 なんだ、その本当とは?

 別に嘘でもいいんだ角張ったことは言わなくていい。

 世の中丸いものほど、可愛いことに決まっているのだ。


 とは思いながらも心の何処かでは、ちょっと、いや、かなり期待してしまっている里緒の言葉。

 この流れからいって、俺の頭の中の買い被りは、おごりとは言い切れないだろう。


「何れすか?」


 不思議そうに首を傾げるこいつ。

 初めて、ラミア様ことこいつの顔を里緒の大きな瞳が捉えきった。綺麗な黑い瞳だ。


「私、私、工口君のことが、”す”、いえ、工口君にエロを教わりたいのです」


 んっ?あれ?そっちか?


 しかし、文章的におかしいのは、期待ありと言っても・・・。いやいや、ここは多くを期待するな。十分じゃないか。それだって、俺の心は曖昧なままでも、体はかなり満たされる。


 どうだ?

 ラミア様ことこいつに視線を向けると、顔が見る見る打ちに赤くなっていく。


 や、やばい。これはやはり拙いのか。噴火しそうだ!

 

「らめ~!」


 と、大声で叫ぶこいつ。

 叫んだ後に、口を押さえて瞬きを二回。


駄目らめれす。

 それは、駄目なのれす。

 ん~んんん・・・。工口には役目があるのれす」


 そして、そう小声で言い直した。


「それは、我慢して欲しいれす」


 なんでだ!なんでだ”まほまほ”、プライベートとAV大会は関係ないだろ。とは言ってみたいが、正直なところほぼ予想通りだ。やはり、こいつは一人になるのを恐れているんだ。

 俺と言う人間は、こいつが自らの手で手に入れた、孤独からの解放だったのかもしれない。であれば、感情的にもなるだろう。


 それなのに、それでもラミア様として、こいつは冷静に振舞おうとしているのか・・・。


「それは、それは分ってます。工口君はラミア様がスカウトした選ばれたお方です。その役目があることは私も存じています。その邪魔はしません決して致しません。ただ、ただ、本当に時々教わりたいだけなんです」


 里緒の言葉は凄く嬉しいのだが、何か素直に喜べない、自分らしくない自分が此処に居る・・・。


「ん~、ん~・・・」


「でも、私、工口君にエロを教わりたくて」


 それに、こいつが里緒の顔をまじまじと眺める。どうした?


「あっ?あ~あ、そうら!」


 何を思い出した?


「あなたは、工口の相方れすね。その節は、工口がお世話になって有難うれす。れも、れもれす、プライベートはいけないれすよ・・・」


 今頃か?今まで知らないで接していたのか?


「どうしてれすか」


 すがる様に、ラミア様ことこいつを見る里緒。男冥利に尽きるが、それよりも実益が欲しい。しかし、それよりも穏便に行きたい気もする・・・。

 

「ろうしてもれす」


 唇を噛むこいつは、妥協しようとしているのだろうか?


 暫し・・・。


「じゃあ、・・・」


 そして、こいつは決心したように顔を上げると、見つめ合う二人。

 お許しが出るのか?


「あれれ?」


 と思ったが、里緒の瞳を見つめていたこいつが、更に何かに気づいた様に驚いて口を開けている。

 驚くこと何て、もう何もないだろう?


 しかし、こいつの顔色が再び真っ赤になっていく。どうしたんだ?


「あ~っ!!、

 駄目らめれす。絶対れったい駄目れす。絶対に絶対に駄目れす」


 叫ぶ、こいつことミラミ。

 ここは俺の出番だ。ここは俺が間で納めなければ。


「どうしたんだ、いや、どうしたのですかラミア様」


「ろろろ、ろ、ろうもしないれす。れすけろ、れすけろ、プライベートは駄目らめれす。ん~、やっぱりAV大会も駄目れす」


 急に穏便さを忘れてしまったのはどうしてだ?

 一体、どうしたんだ。俺がエロを教えなければいいだけじゃないのか?

 さっきまでの、あの穏やかさを心掛ける姿勢は何処にいったんだ?

 何をそんなに慌てている。


 口を膨らますラミアに面喰う里緒。


「AV大会も何て、どうしてですか?あんなに評価も高かったのに」


 そうだ、里緒の言う通りだ。

 前回の俺たちの大会の結果はお前だった喜ばしいことじゃないのか?


「そんなのは関係無いれす。駄目らめといったら絶対に駄目れす」


「そ、そんなこと、幾らラミア様だって・・・」


 もともと、理不尽なことが許せない里緒は、納得がいかないだろう。

 里緒も震えながら丁重に対抗する。


「帰るれす・・・」


 こいつが立ち上がった。空間が心なしか明るくなった気がする。


「早く、帰るれす!」


「ど、どうして・・・」


 里緒もつられて立ち上がる。


「どうしたんだ、ミラミ・・・」


 俺もラミア様ごっこをしている気にはなれない。


「・・・いいじゃないか、プライベートはともかく、AV大会は関係ないだろ」


 とは言ってはみたものの拙かったか。それを切っ掛けに、明らかにこいつの周りから光がこぼれ始めた。拙い。


「ラ~メれす。駄目らめ絶対れったいの絶対の駄目なのれす」


 こいつが叫ぶ。


 こいつことラミア様から零れ出した白色の光が、背後に次第に広がり出し形をなしていく。それに気圧され、じりじりと後ろに下がる里緒。次第に玄関へと近づいて行ってしまう。


「分かりました。今日は帰ります」


 玄関まで追いやられた里緒がミラミの顔を見つめる。

 ラミア様から零れ出した白色の光が背中に楕円を描き始めている。しかし、気圧されながらも里緒は真剣な眼差しを、ラミア様にぶつけている。俺にも、何かの決意が感じられる。そして、



「でも、でも・・・


 た、たとえあなたが、自然神様の使いのスカウター様でも、


 わ、私、それだけは納得いきません」



 震える声でそう言うと、里緒は玄関飛び出して行った。


 ごめん、里緒・・・。


 出掛った声が、音に出来ない。

 里緒も心配だが、今はこいつの精神状態が心配だ。


 ごめん、里緒。

 

 追い掛けられそうにない・・・。


 <つづく>

起承転尻としたかっただけでした。

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