ラミア様はインスタント スカウター?
ラミアの過去とは?
俺、千乃工口に巻き起こった一連の異世界騒動は、元はと言えば全て”あいつ”が原因である。責任を押し付けている訳ではない。客観的にそう思うところである。
ララカー・ミラミ・アポストロ。このAV界では”ラミア”と呼ばれ、彼女自身は仕事中以外には”ミラミ”と名乗り、俺はつい”まほまほ”と呼びそうになってしまう。あいつは、火のない所に火を起こし、油っぽい話に対しては水のように軽く流してしまい、そして、エロくない俺をエロくするのだ。
最後だけは無理があったかもしれないが、間違いなく”まほまほ”は、何かを起こす運命の下に生まれて来たトラブルメーカーとしか思えないのである。
しかし・・・だ、何でだろう?
あいつと一緒にいても不思議と不愉快にはならないのだ。
それに、完璧なボディーに幼い顔つきと言う”ミス二次元世界”と言っても過言でない外見を誇っているにも関わらず、あいつと居ても緊張症の俺の腹の調子がすこぶる快調なのである。
それどころか、返って気楽であり、騒動を起こされても多少腹が立つくらいで、何故か平穏な生活よりも起伏があって楽しい気持ちにさえさせてしまうのである。
全く不思議な奴である。
それが天使的な存在”スカウター様”と言うものなのだろうか・・・。
★☆ 第10話 ★☆
☆★ ラミア様は ☆★
★☆インスタント★☆
☆★ スカウター ☆★
★☆ ♂ ? ♀ ★☆
あの後、俺は直ぐにミラミを追って店の外へ飛び出した。しかし、もちろん追いつけるはずもない。
せめて何処へ向かうのかと、見通しの良いミンジュ塔に繋がる大通に出て、ミラミと思しき小さな光を視線で追っていたのだが、その光は次第に小さくなりながら真っ直ぐに塔に向かって行き、直ぐに消えてしまったのだ。
確か、初めて一持兄さんと会った時に、彼は塔の上の方にはスカウターの出入り口があると言っていた様に思う。きっと、ミラミはそこに向かったのだろうと俺は思う。
元々、ミラミは人の眼には滅多に触れることの無い存在のはずなのだ。
となると、一旦繋がりが切れてりまえば、このまま、あの”へんてこりん”なスカウター様に会うことは、もう無いのかもしれない。
やっと会えたばかりなのに、もう会えないのだろうか・・・・。
そう思うと、自分の軽薄な発言に後悔をせずにはいられない。
俺は彼女に何を言っても平気だと勝手に思い込んでいたのだ。
自分の言ってしまった言葉を辿っては、自分に言い訳をしてみるが、それも空しいだけである。
何てバカな奴なんだろうか。
自分に腹が立ってしまう・・・。
その後、どの位あいつの光の消えた塔の方を見つめていただろうか・・・。
いつまでも取り返しのつかない後悔を追い掛けている自分のダメさ加減に気付き、俺は自嘲しながら店に戻った。
店の中には、店主と一持兄さんの二人だけであった。
里緒もやはり、自分の発言に相当ショックを受けてしまったらしい。食事も取らずに部屋に戻ったとのことであった。
俺は里緒の事が心配で、彼女の部屋に行くことを希望したが、俺の何倍も里緒のことを知る店主に「そっとしといてやって欲しい」と止められてしまい、店主のおごりの食事をご馳走になり、静かに帰ることとした。
二人も、余りの驚きから、口数が少なかったが、帰り際に一持兄さんから”特許”申請のことを真剣に考える様に念を押された。
それに俺も一応頷きはしたが、はっきり言って自分のことを考える気にはなれなかった。
それでも、一持兄さんの持ち出した、明日の火曜日にもう一度この里緒の家である”G3☆食堂”で会う約束には、同意することにした。
これはこれで、進めなければならないことなのである。
もう会うことが無いかもしれないが、あいつの望んでいることに近づくことでもあるのだ・・・。
と、言うことで俺は今、自分の住むアパートに帰る途中なのである。
そう言えば、また”まほまほ”の意味を聞き損なってしまった・・・。
未だにその意味を確認出来ないでいる。
まあ、今回はそれどころでは無かったのだが・・・と、思い出したところで、
あっ!
俺は失言を他にもしていることに気付いてしまった。
そう言えば、あいつが飛んでいく時に、つい”まほまほ”と叫んでしまったのだ・・・。
もしかすると、里緒はそのことにも怒っているのかもいしれない。
店主が部屋に行くことを同意しなかったのは、そっちの意味だったのだろうか?
その不安も俺に追い討ちをかけてくる。
何か全てが一気に悪い方に向かってしまった気がしてならない。
これが、天使的な存在スカウター様を蔑にした罰なのだろうか・・・。
そんなことを考えて歩いていると、間もなく冬を迎えようとしている寒くなった気温が俺の心を戒めている様な気がしてくる。
俺は帰る途中、そんなマイナス思考のことばかり考えていたのだった。
意識がそちらに向いていたせいか、俺はいつの間にかアパートまで戻っていた。
かじかんだ手が、無意識にドアノブを回す。
鍵が掛かっている。
鍵、ちゃんと掛けて出たのか・・・。
あいつも常識があるじゃないか・・・。
ちょっと嬉しくなる。
嬉しくなりながら、はっきり言って、かなり凹んでいる。
しかしだ、思考的にはこの気持ちに違和感が無い訳ではない。
よく考えれ、俺が今こんな生活をしているは、全てあいつのせいなのだ。そりゃ、はっきりと断りきれなかった俺にも責任がない訳ではないが、色香で迫るのは卑怯とも言える。
そうだ、俺が責任を感じる必要なんか、何もないんだ・・・。
と自分を弁護すれど、それほどこのAV界が嫌いな訳ではないのだ。
それは元の世界に戻れるならば、戻るだろう。しかし、それは自分の為というよりは、家族や、数少ない友人達を安心させる為である。
正直言うと、この世界には刺激があり、元の世界よりも自分の居場所も大幅に広い。
俺はいつしか、この世界の方が好きになっているのかもしれない・・・。
そう思うと、少し笑えてしまう。
あいつの責任何て、俺の感情は少しも責めてはしないのだ・・・。
俺は鍵を開けると、苦笑いをしながら中へと入った。
きっと、こんな姿を誰かが見たら、さぞ気持ちの悪いことだろうと思う。
アパートに入ると、女性の甘い香りが未だにうっすらと残っているのが感じられる。
本当にあいつが居た証拠である。
本当にあいつが、部屋の中で待っていたのだ。
そう思うと、あいつを待たせない様に、早く帰るべきだったと後悔をしてしまう。
靴を脱ぎ、短い廊下の先のドアを開けると12畳程のLDKがあり、その左の引き戸を開けると寝室になっている。
その短い廊下を渡り、LDKとをつなぐ扉を開けた途端である。
俺はカップラーメンの食べ後の異臭に襲われてしまった。
この臭い、どことなくリバースをした時の臭いとちょっと似た気がして、あまり好きで名ない。
もちろん、カップラーメンを食べること事態は嫌いではなく、元の世界でも結構愛食していたので、意識だけの問題で、直ぐに解決は出来る。
しかし、問題はそこではなく、俺はこの世界ではまだ食したことがないのだ。
何で、こんな臭いがするのだろうか?
俺は食べてないぞ?
と不審に思いながら照明のスイッチを入れた。
そして、シンクの隣に置いている冷蔵庫から、この世界特有の無糖でも若干甘い”エーブ茶”の紙パックを取り出し顔を上げると、電気調理器の上には置いたはずの無い、俺の部屋にある唯一の鍋が乗っている。
あいつが使ったのだろうか?
そうとしか思えないが、恐らくあいつの事だから、精々お湯を沸かすので精一杯であろうことは予想出来る。という事は、
と、言うことか・・・。
案の定、部屋の中央のテーブルの上には、大きなカップラーメンが乗っている。
ミラミが俺を探しに来る前にお湯を沸かして食べたと言うことになる。
あれ?数が2個ある・・・。
あいつがこの大きなカップラーメンを2個も食べたのだろうか?
確か、里緒のところで、まだご馳走になろうとしていたはずだ。あいつは、どんだけ大食いなんだろうか・・・。
そう思いながらよくると、その内1個はまだ開封もしていなく、その上にはパンが乗っている。
何でだろうか?
俺がテーブルまで行き、未開封のカップラーメンを手にしてみると、白い容器には沢山の丸文字がカラフルに書かれているのである。
一番目立つのは”お祝いれ~す”と書かれている、ピンクの大きな文字だ。
こいつ、書くときまで”れす”なんだと思うと、笑ってしまう位に愛くるしい。
他に書かれているものを追ってみると、似てない似顔絵らしきものが書かれている。恐らくは俺なのだろう。そして、羽根を広げて飛んでいるのが、きっと、あいつ自身なのだろう。
更に、”おめでとう”、”特大れす!”、”今日はご馳走れすよ”、”ミラミのおごりれすなのれす”、”スカウターは家族も同然!”なんて言葉が書かれている。
あいつのご馳走って、カップラーメンの特大なのか?
実在する神様の使いのご馳走が”カップラーメンの特大”というのは、AV界の人のお供えものが、いかにケチ臭いかということに辿り着くいてしまうが・・・そう言う事なのだろうか?
あいつの食生活を考えると、胸が痛くなってしまう・・・。
そんなことを考えながら読んでいくと、俺の心を締め付ける小さく書かれた文字があった。それは。他の文字から見ると見逃す程に小さく読み難い。
”ずっと一緒れすよ”そしてその後ろにハートまーくが書かれている。
”一緒?”
・・・。
俺の心は、何かに叩かれた様な衝撃を受けてしまう。
”コツン”と音を上げる。
その音が、いかにも生々しい。
それに、この”コツン”と言う音、俺の心の衝撃にしては小さ過ぎる。今の俺の衝撃はこんな小さな音で表現は出来ない。
となれば、この家の中で鳴ったと言う事になる。
ま、まさか、誰かいるのか?
”ザワッ”と、俺の背中に冷たいものが走る。
この世のものか、そうでないのか、何だ・・・?
このAV界に存在、いや存在しないものも含めて、俺は全てを把握した訳ではないのだ。
”ブルッ”と体が震えてしまう。
そんな震えの中、もう一度”コツン”と言う音が響いた。
壁が叩かれるような音である。
やはり聞き間違いではない。ど、どこからの音だ?
この音源、”怪奇現象”と”不審者”のどちらが俺にとって幸せなのかと思いながら、つい、怖いもの聞きたさで耳を澄ましてしまう。すると、ゴソゴソという音が隣の寝室から聞こえて来た。
こ、これは、拙いだろう・・・。
まさか、俺が寝室の引き戸を開けた瞬間、誰かが襲って来るとかないだろうな・・・。
と思いながらも、こうなれば開けるしかないではないかと思ってしまう。
俺はおそるおそる部屋の引き戸に手を掛け、まずは聞き耳を立ててみた。
すると、
んっ?
中から寝息の様な音が聞こえて来ている。寝ているのならば先手必勝だ!
俺は引き戸を2cm程スライドさせ、覗いてみる。
あれ?
なんだ・・・。
2cmの程の隙間から入り込むリビングの光が寝室の奥にあるベッドの一部を照らした。
そこだけの判断ではあるが、ベッドで誰かが寝ている様に見える。
はっきりと断定は出来ないが、あの布団の盛り上がり方は恐らくは間違いない。
それとも、ここは俺の家ではないのか?
俺は部屋を間違えたのか?
いや、そんなことはない。鍵が合ったし、部屋に置いてあるものは間違いなく自分のもので、自分の部屋の配置に存在している。
紛れもない、俺の部屋だ。
では、やばくないか!
誰かが侵入したことになるのだが・・・。
心臓がドキドキと高鳴る。
もしか、寝た振りをしているだけで、俺が近づいたら・・・と言うこともあるかもしれない。
俺は”右の翼”ではないが、”左の翼”では絶対にない。
武器が必要だ!
長くて丈夫な物が必要だ!
俺は玄関まで行き傘を手にし、取りあえず引き戸を自分が入れる最小限まで静かに開けた。
そして、ゆっくりと音を立てない様にして中に入って行く。
2歩、3歩。
間違いない誰かベッドに居る。
取りあえず俺が先手を取った様だ。
間違いなく本当に寝ている。
布団を頭まですっぽり被っているが、俺の脳は人物の想像に入っている。
結構、華奢だ。
「ん、うん~っ」
ベッドで寝ているヤツが声を出す。
俺は思わず傘を振りかぶるが、大丈夫だ。寝返りをうっただけである。
それに、その声は男とは思えないのだ。
今の寝返りで布団から出た脚が膝上10cm位まで肌蹴てしまっている。
それを見ると、
パジャマを着ている?
何故かパジャマを着ている。そして、その柄がバラの花束を手にした愛らし沢山の熊なのだ。
それに、すね毛が全く無い。
という事は、オネエでない限り女性である。
ありっ?
この瞬間から、はっきりと俺の感情が好転を始めている。
不安が期待に変わっているのだ。
俺の頭の片隅では、今ベッドに寝ている奴がとんでもなく可愛い女の子で、何らかの良い間違いがあって、そこに寝ているのかもしれない。何て、ことを期待しているのだ。
さっき、後悔していたばかりなのに、人間って、何て現金なものだ。と思うが、俺が現金主義なのだ。カード払いは嫌いだ。
リビングからの光では、はっきりとは判らないが肌も滑らかである。
間違いない、若い!
それに、香りが良い!
心が落ち着けば香りだって味わうことが出来る。
しかしだ・・・。
この香りには覚えがある・・・。
さっき玄関に入った時に、俺が”ミラミ”が来ていた証拠を、香りで判断した。その匂いと同じなのである。
そうなのだ、俺はあいつの香りを記憶しているのである。
「まさか・・・」
と思いながら、俺は思い切って頭まで被った布団を捲って見ることにした。
そ~っと、捲る。
起こさない様に・・・。
この起こさない様にと言う行動の裏にある俺の心理には、自身若干の問題を感じながらも、取り敢えず起こさない様にと、少しずつ布団を捲る。
すると、
「ミラミ・・・」
どう見ても、ミラミに間違いない。
ミラミの目じりには涙の跡が残っている。
それに、シーツもまだ少し濡れている。
「戻ってたのか・・・」
おまえ、どんだけ泣いたんだ・・・。
と言いながら、俺の眼も正直言って五十歩百歩だ。
それに、”戻っている”と言っていら段階で俺は、こいつの進入を認めている。
俺の下心はすっかり消えてしまった。
もちろん、ミラミでがっかりしたのではない。ホッとしたから。
安心して、また会えて、嬉しくて、下心の割り込む予知など何処にも無いからだ。
このエロでスカウトされた”エロン棒様”の俺にしても・・・。
俺はベッドの端に腰を掛け暫くミラミの寝顔をを見つめていたのだが、テーブルの上に残されたミラミからの”お祝い”が気になり出してしまい、リビングへと戻ることにした。
今度は、こいつの思いを大事にしてやりたい。そう思う。
であれば、これを平らげなければならない・・・。
俺は早速キッチンに行き、湯を沸かすと、特大のカップラーメン&アンパンに立ち向かった。
満腹状態に”特大”と甘いものはかなりきつかったが、ここは誰も見ていないが、男を見せ無ければならない。
格闘することと暫し、俺の若さは何とか胃袋に押し入れることに成功した。
「うっ、く、くるしい・・・」
苦しいのだが、たかが食べきっただけと言う、それだけの達成感に大満足である。
ただ、限界だ。
俺は動き難い体を何とかソファーまで持って行き、ミラミと会ってからのことを思い出しながら横になる。すると、俺はいつの間に眠りについていたようだ。
そして、どれだけ時間がたったのか、
「わあ~っ!」
と言う寝室から叫び声俺は叫び声で起こされた。
俺が慌てて飛び起き寝室に行くと、ミラミは状態を起こして、瞳を大きく開いている。
まるで何かに驚いているみたいだ。
「どうした、ミラミ!」
ミラミはの目から大粒の涙が零れている。
そして、次から次へと、零れ落ちる。
「怖い夢でも見たのか?」
俺が側に寄ると、ミラミは俺の肩に額を乗せ抱きついてきた。
その手の力が尋常じゃない力で俺を締め付ける。
「どうした?」
「ミラミは何ですか?」
「何って・・・」
「ミラミは誰ですが?
何で皆と違うのれすか・・・。
何処から来て、これからろうなるのれすか?」
ミラミはそう言うと大声で泣き出してしまった。
こいつ、どうしたんだ・・・。
「一緒に、一緒に居て欲しいれす。
何処にも行かないれ欲しいれす。
一人にしないれくらさい・・・」
「大丈夫、ここに居るから・・・」
俺が背中に手を回し抱き寄せると、少しして安心したのか泣き声から涙をすする音に変わった。
俺は暫くそうしていたのだが、ミラミの落ち着きを感じ、
「平気か?」
と俺が尋ねると、ミラミは自分から俺に話し出したのである。
自分の抱えている不安のことを・・・。
「ミラミね・・・・・・」
いつものノー天気なミラミとは、全く別人と思える様な落ち着いた声で話し出す。
と言っても、口調はいつもの”ラ行”言葉のままではある。
ミラミの話では、彼女は自分の過去が全く分からないとのことなのだ。
何処で生まれたのか、どうやって育ったのか記憶がないらしいのである。気が付けばスカウターラミアだったらしいのだ。
正確に分るのは、1年前の夕方に空を飛んでいた時からなのだそうである。
しかし、自分がAV界の人々からどう思われていて、どんな役目であるのかだけは頭の中にしっかりとあり、それをしなければならない衝動にかられるのだそうである。
彼女も自分にどんな能力があるのかさっぱり分からないらしいのだが、強く思うことでそれが叶い、そして、その力を使って異世界に行き、自分の役目であるスカウト活動をする毎日をおくっているらしいのである。
彼女は26人目まで全くスカウトが出来る感じもなければ、実際相手にもされなく、ひたすら何処から来るのかも分からないプレッシャーに追い詰められていたそうなのだ。
それが、やっと27番目のターゲットで、スカウト出来る予感がしたらしいのである。
それが俺だったと言うのだ。
いつもの様に、暫く俺の行動を観察していては、チャンスを伺っていたのであったが、ある時、
「工口は、エロ~く迫ればきっと、スカウト出来るのれす」
そう閃いたらしいのである。
それで、ある日俺の後を追いバスに乗り込み、自分でも驚く位に”あんなこと”をしてしまったと言うのである。
と、言うことは俺はエロ仕掛けで簡単に落ちると判断されたことになるのだが・・・事実がその通りだけに納得するしかない。
ただ、ミラミはこう付け加えた。
「ミラミはね、どんなことをしてでもね、工口を”スカウト”したくなったのれす。
そう思ったのは工口だけなのれす。
ぜんぜん、役目とは関係ないれすよ。
スカウターとしての役目でスカウトしたのれすけど、役目じゃないのれす。
良く解んないけど、自分で決めたのれす」
それに、
「そうか・・・」
と一応言ったのものの、はっきり言って、言っている意味が良く解らない。
でも、意味は解らないが気持ちは充分に伝わってきた。だから、俺なりにだが・・・。
俺のなりの解釈の範囲で応える。
「・・・わかった。一緒に、AV界を上り詰めよう・・・」
それがお前の役目であり。恐らくおれがこの世界にスカウトされた理由なのだろう。
その意味だってその内分ってくるさ・・・。
「・・・そして、その先は一緒に考えよう」
なんて、言ってしまった。
自分なりにいいことを言った気がするのだが。言ったことに責任を持てるかと言うと正直言って、微妙なところではある。
果たして、こいつの反応はと思って、顔を覗いてみると、なんと、いつの間にか俺の腕の中で眠ってしまっていた。
道理で急に静かになったはずだ・・・。
ホント、気が抜けてしまうヤツだ。思い切って言ったのに・・・。
しかし、きっと、こいつは不安を誰にも話せないまま一人っきりで過ごしていたのだろう。と思う。
ノー天気なミラミは、きっと深く考えないようにしていた為なのかもしれない。
孤独と不安にずっと耐えていたのだ。
こんなに寝顔が愛くるしいヤツがだ・・・・。
俺は、もっと強く抱きしめたい気持ちになってしまったが、
「こんな状況じゃ、何も出来ないってか・・・ハハハ」
自分の善人さに鼻で笑ってしまう。
「いいよ、朝までこのままいるよ・・・」
そのまま、暗い寝室のベッドの上で俺はやさしくミラミを抱いていた。
・・・。
そして、抱いたまま俺もいつの間にかラミアを抱いたまま眠っていたらしい・・・。
目が覚めると、俺は一人でベッドで横になっていたのだ。
慌ててリビングに行くと、何故かミラミがプンプンに怒っている。
何だ?昨日の愛くるしいミラミは何処にいったのだ・・・。
と思うが、時は流れるものらしい。
今のこいつの旬は、どうやら俺が昨日無理に食べた特大のカップラーメンとアンパンの行方のことのようなのだ。
「ミラミが朝食べようと思ったのに、食べたのレスか・・・」
そんなことを言ってくる。
あれ?あれは俺のお祝いじゃなかったのか?
絶対にそうだろう・・・。
と思い、
「あれは、俺の分じゃ・・・」
と言うが、
「工口の分じゃないレスよ。工口は、あそこの食堂で食べて来たんじゃないレスか?
だから、ミラミのに変わったのれす!」
こいつは、テーブルの前に座り、人差し指でテーブルを不満そうにたたいている。
確かに俺は食べて来て腹いっぱいだったが、お前の為に無理して食べたんだぞ。と言いたいが・・・。
「まあ、今日は許してあげるです。でも、今度から勝手に食べたら、家から追い出すれすからね」
何て言ってくる。
ここは、俺の家なんだが何の権利で言ってるのだろうか?
やはりスカウターは、家族も、いや親も同然だと言うのだろうか・・・。
やっぱり、油断のならないヤツだ。理不尽で腹が立つ。
それでも、今日のところは俺も許すとしよう。
これで、俺にとっては不条理だが、お相子と言うことにしておく。
しかし、昨日の涙は何だったのだろうか?
やはりノー天気なヤツである。
そうだ、AV界の天使的存在、スカウターラミア様はこんなヤツなのである。取り敢えず、罰が当たらないことを里緒に教えなければ、あいつの精神が心配だ。
こいつに、そんな権利も無ければ、そんな真似出来る筈がないのである。
しかし、昨日咄嗟にとは言え、再び里緒の前で”まほまほ”と言ってしまったことは大丈夫だっただろうか、心配だ・・・。
<つづく>
次回から3章の本題が少しずつ進んで行きます。行くと思います。