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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第3章 三校合同AV祭
55/73

AV界二大奥義(まほまほVS里緒)

 ”G3☆食堂”の窓ガラスに映った女性の顔とは・・・。

「く~ぐち、遅いれすよ~。

 何処《ろ~こ》行ったのレスかね・・・。

 くぐちのお家はここれすよ~


 ろ(お)~い、ろ(お)ーい!

 く・ぐ・ち~、く・ぐ・ち~、


 くぐち~はエッチ、

 くぐちはエロエロ、

 くぐちはお豆を、こーろ、ころ・・・」


 止まらない小言に、途中からメロディーを付けて歌い始めたのは、このAV界の人々から”ラミア様”と言う名で呼ばれる、天使的な存在の”スカウター様”だ。


 ただ、この”ラ・ミ・ア”と言う名前も、本人によるとフルネームの”ララカー・ミラミ・アポストロ”の頭文字を取った”愛称”なのである。

 彼女自身は自分のことをミドルネームの”ミラミ”と名乗ることが多いのである。


 今、彼女は千乃工口ちのくぐちの住むアパートに上がり込み、なかなか帰って来ない工口の帰りを、今か今かと待っているのである。


 もちろん、それは千乃工口の了解を得ての行動ではない。勝手に上がり込んでのもので、工口はその事を知る由もない。


「スカウターは家族かろく同然ろうれんな~のれーす・・・。

 くぐちー、早くお家に帰って来るれすよ。門限決めなきゃ駄目ラメれすねー」


 自分勝手な思い込みからの行動である。


 それでも多少増し?なのは、彼女が工口の元の世界で行なった様に、窓を突き抜けて強引に進入して来たのではなく、どうやらアパートの管理人の所に行き、工口くぐちの妹を装って鍵を開けてもらったらしいと言うことである。


「管理人さんは良い人れすね。それに比べて・・・・、

 くぐちー!油ばかっり売ってると、オイルショックになってインフレ魔王に襲われるれすよ。コワイれすよー。

 あ、でもデフレだから大丈夫かもしれないれす・・・」


 彼女は暫く部屋の真ん中にあるテーブルの前に座り、そんなお小言を呟いていたのであったが、さすがに喋り続けに疲れたのか、それとも飽きたのか、テーブルに両肘を付いて顔を乗せると、黙って目の前に置かれている”もの”を恨めしそうにジッと見つめ出した。


 その顔は怒ってはいるのだが、体の力は妙に抜けていて、しっとりと潤った肌はホンノリと赤みを帯びており、どこかくつろいでいる雰囲気でもある。そして、濡れた頭髪にはタオルが巻かれている。


 どうやら、工口の家で勝手にお風呂までいただいた様である。

 しかし、彼女も厚かましいばかりではない。全く手ぶらで来た訳でもないらしいのだ。


「お祝いに特別とくれつに奮発したれすよ~、ん~も~」


 口を膨らませた彼女の視線の先には、彼女が持参した特大の”特性味噌味カップラーメン”が二つ置かれており、そして、それぞれの上にあんパンが一つずつ乗せられているのである。


 その片方のカップラーメンの白い容器には、何やら彼女が書いたと思しき落書きがぎっしり詰まっており、賑やかなことになっている。


 どうも、彼女の行動は膨らませている顔や口調と一緒で、色香の漂うスタイルとはアンバランスに、無邪気、いや、幼いところが多分に残っているようである。

 しかし、彼女自身は顔と口調に行動、即ち首から上の成長が遅いことになるのだが、全くその事に対して自覚がないのである。よって、改める様な努力をするはずも無い。


 彼女は暫くその幼い顔を膨らませたまま特大の”特性味噌味カップラーメン”を見つめていたのだったが、いきなり何を閃いたのか急に瞳が輝き出した。


 名案が思いついたのである。幼い分、感情が非常に分かり易い。


「あっ、そうだ!きっと、あそこれすよ。さっき工口くぐちが言ってたところれす。

 よ~し、行くれすよ!」


 しかし、


 ぐぐぐっつ・・・。


 お腹が鳴てしまう。 


「ん~・・・でも、おらか空いたから先に食べるれすよ。工口が悪いのれすからね・・・」


 しかし・・・。


 暫く、テーブルの上の特大カップラーメンとアンパンを見つめて、体をクネラセもじもじする。

 そして、おもいっきり唾液を飲み込み。


「いや、やっぱり、一緒に食べた方が美味しいれすね。工口のお祝いなのれすから・・・」


 そう言って、勝手に上がり込んだ千乃工口ちのくぐちのアパートを飛び出したのだった・・・。


★☆ 第 9 話 ★☆

☆★ AV界♂ ☆★

★☆ ♀二大奥義 ★☆

☆★(まほまほ ★☆

★☆ VS里緒)☆★


「キャーッ!」

 窓に映った若い女性の顏・・・。


 その、第一発見者は里緒であった。


「うわっ!」


 俺も直ぐに里緒の視線の先に焦点を合わせるとその現実に、たちまち背筋に冷たいものが走り、小さくではあるが不覚にも声を出してしまった。

 だが、よく見るとそれは怪しいと言うよりもコミカルなのである。


 んっ?


 さらにジッと見つめると、向こうもこちらをジッと見返して来るではないか。


 ナニ?


 俺の直感が働く。

 すると、我が脳は直ぐに”既知”と言う方向で記憶を検索し始めた。

 そして、その検索には1秒と掛からなかった。こんな奴はそんなにいないのだ。


 潰れて変形はしているが、俺の検索機能に間違いはない!


「ま(ほ)、ラ(ミア)、ミラミ!」


 呼び名がいくつもあって面倒だ。危なく”まほまほ”と言うところであった。

 一瞬噴出した大量の汗が身体の主要部をしっとりさせる。

 しかし、”まラ”と叫んだのは問題なかっただろうか?


 ミラミの顔は窓ガラスに押し付けられて、鼻がおもいっきり潰れている。それに、口も大きく曲がっているはで、この世のものとは思えない顔になっている。


 俺は直ぐに、ミラミに対する店内各位の判断が心配になり、順に確認をした。


 先ずは一番危険な里緒の様子を見ると、既に生き物とは認めていない顔をしている。

 それに、店主マスターのフライパンを振る音も聞こえてこない。更に、一持兄さんの腰も若干引けて、目が点だ。

 完全にこの世のもの扱いではない。


 この場を治めるには・・・・、


 俺の咄嗟の判断は、窓ガラスに押し付けられた化け物顔を元のまともな顔に戻すことである。


 俺は慌てて窓ガラスに近づくと、格子窓の鍵を開けると、素早く手前に引き開ける。

 すると、崩れた顔は瞬時に元に戻る。


 現れたのは間違いなく、


「うぉ、わっ、えへへへ」

 

 この世界の天使的存在、スカウターのラミア様こと、飛とぶ不思議痴女”ミラミ”である。

 

 笑っている・・・。


 こいつは人の家、正確には店ではあるのだが、覗き見をして騒がせた上に嬉しそうに笑っているのである。それに、ちょっと俺はムカついてしまった。


「なにやってんだ。お前?」


「迎えに来たれすよ?」

 

 小首を傾げて俺に笑顔を向けて来るが、何の話か判らない。


「誰をだ?」


 俺の疑問に対し、


「決まってるれすよ」


 嬉しそうだった顏が疑問の顏に変わっていくのが解り易い。


「何がだ?」


 言ってる意味が良く解らない。

 俺がそう言うと、ミラミはどういう訳かマジな顔で口を膨らませ、


「ん~っ・・・」


 唸りながら開いた窓をよじ登って来た。


「ちょ、ちょっと、・・・・」


 ちょっと待て、入るのならせめて玄関から入って来い。と、言う間もなくミラミは窓枠から上半身を店の中へと乗り入れた。


 おい、何をする気だ・・・。

 

 声を出す間もなく、ミラミは無理やりに細い窓に体を半分せり入れると、頭から店内に入って来た。丁度前転する様にだ。もちろん、パンツ丸見えだ。

 そして、バサバサになった髪の毛を掻き分けて、俺が疑問の言葉を投げかけるより早く、まずは一言。


「工口を迎えに来たに決まってるれす・・・」


 何故か勝手に怒っている。

 

「・・・遅いれす。家で待ってたのれすよ」


 何で、お前が怒るんだ?

 怒りたいのはこっちだろう・・・。


 それに、一体、何でよじ登って来る?

 お前は窓ガラスをする抜けられるのでは無かったのか?

 飛んで入ると言う方法もあるだろう?


 言いたいことは一杯あるが、取り敢えず一番気になる”何処の家で待ってたんだ”それを聞こうとしたが・・・。


「誰、誰よ。その娘!」

 

 俺の前に里緒の言葉の方が”1/2馬身”早かった。


 その為、俺の疑問の言葉は里緒への回答の言葉に移行してしまう。

 後手になってしまったが、せめて、正解を返せることを願う。


「ミラミです・・・」

 俺の咄嗟とっさの紹介に、


「そうれす、ミラミれす」

 胸を張って名乗る、のぞき魔不思議痴女。


「工口君の知り合いかい?」


 店主マスターは言葉だけの参加で、こんな状態を目の前にして、何を安心しているのかいつの間にか料理を続け出している。


「ええ、ま、まあ。実は~、僕をスカウトしたのが、このミラミなんです」


 言ってしまって、何も問題はないはずだ。秘密の話とは聞いていない。


「えっ?スカウトって、彼女がスカウターってことかい?」

 

 これに、一番驚くいたのは一持兄さんである。


「はい、ま、まあそう言うことになりますか・・・」


「あれ?しかし、スカウトしたのは”ラミア様”じゃなかったのかい?」


「はい、このミラミが、その”ラミア ”・・・さ・ま?と、言うことになりますか」


 ”さま”を付けることには、どうも抵抗があって上手く喋れない。


「えっ? でも、今、ミラミって・・・」

 

 俺と一持兄さんのやり取りに、ミラミが割り込んできた。


「ミラミは”ラミア様”れすよ」


 こいつは、自分に”様”を付けた上、平然とした顔で詳しい説明をしようともしない。

 それも腹立たしい。もっと真剣にこの状態を元に戻す努力をしれと言いたいものだ。が、ちょっと待て・・・。


「んっ?」


 でも、どう言うことなのだろうか?

 容姿は実物を見たことがないのだから当たり前としても、一持兄さん程の雑学王が、ミラミのフルネームを知らないなんて、有り得るのだろうか?


 いや、そんなことはないだろう。仮にもこのAV界においては、天使的存在、神に仕えるスカウター様なのだ。

 そうだ!きっと、ミドルネームだけで言ってもピンとこないだけなのかもしれない。

 ここは、もう少し詳しく・・・。


「”ララカー・ミラミ・アポストロ”、頭文字を三文字取って”ラミア・さ・ま”ってこの世界では呼んでるんですよね。

 ”ミラミ”と言っているのは、そのミドルネームの”ミラミ”のことなんですが・・・」


 って、ここまで言わなくも普通、分かると思うのだが・・・。


「んっ?”ララカー・ミラミ・アポストロ”って?」


 あれ?


 知らないと言う顏をしている。


 一持兄さんは、本当に知らないのか・・・。

 どういうことだ?


「あれ~?ミラミのフルネームれすよ?」

 

 ミラミは口に人差し指をあて、上目遣いになっている。

 ミラミ自身も、自分のフルネームを知られていないことに疑問を感じているみたいだ。

 

「ハハハ、そんな話は聞いたことがないよ。工口君そんな冗談は・・・」


「冗談じゃないれすよー、ホンロれすよー・・・」


 ミラミもどうして信じてくれないのだろうと言う顏をしていたが、こいつは割り切りが早いようだ。


「・・・あれ~?まらまら(まだまだ)、ミラミは無名なんれすかね~」


 と、そんなことを言っている。

 しかし、俺が思うに、恐らくお前はこの世界で5本の指には入る有名人のはずだ・・・。


「そうよ、もっとましな嘘つきなさいよね!」


 そこに、里緒が割り込んできた。

 お前も知らないのか?


「いや、うそじゃ・・・」


 ないはずだ。

 この世界の人はフルネームを知らないのか?

 そんなことって、あるのだろうか?

 それとも、俺がこいつにずっと、だまされていたのだろうか?

 ・・・・・・・。

 

 いや、こいつに”騙す”なんて高等テクニックがあるはずがない。

 だとすれば、ラミア違いだろうか。現に俺はスカウトをされて来ているのだから・・・。


 もしかして、裏ラミアか?


「う~~・・・」


 でも、ミラミも嘘つき呼ばわりされたことには本気で怒っている。これは嘘とは思えない。

 やはり、幾らこいつが頼りないとは言え、この手の存在が何人もいるとは思えない。

 俺の直感は本物の”ラミア・さ・ま”だと言っている。


「いや、こいつはホントに”ラミア・さ・様”なんです」


「そうなのれす!!」


 と、言い切ったてみたものの、見た目は女子高生、喋ると小学生以下。しかも汚れた黒の制服を着ているとなれば、初対面の人であれば、きっと、俺を狼少年と言うだろう。


「まあ、工口君の友達だったら、一緒にご飯食べていくかい?」

 

 さすが、店主マスター、年の功だ。ふところが1ha位は広い。


「ホントれすか~、うわ~ご馳走りそうになるれす」


 なに?

 ご立腹より空腹の方が勝るのか? さすが、こいつ、単純で割りきりがいい・・・。


 しかし、里緒が許すはずもないのだ。


「な~に、おじいちゃん。こんな嘘つくに、何で、ご飯食べさせるのよ!

 工口君、一体この子は誰なの!

 仲良くしちゃって・・・」


「いや、誰って、さっきから・・・」


 それにそんなに仲良くしているつもりもない。

 と言っても無駄だろう。俺は狼少年なんだ・・・。


「う~、嘘じゃないレス」


 ミラミの顏は再び赤みを増していく。

 どうも、里緒とミラミは愛称が悪いみたいだ・・・。 


「ラミア様を名乗るなんてどう言う根性しているのよ、ラミア様がこんな錆びれた食堂に来るわけないじゃない」


「おいおい、錆びれたはないだろう・・・」


 店主マスターもそこだけは、明確に否定する。


 里緒、それは言っちゃいけないだろう。

 それでは店主マスターが可愛そうだ。


 しかし、堅物の里緒にとっては、窓から覗かれて驚かされた上に、勝手に侵入して来た汚い女子高生だ。熱くなるのも仕方がないと言うより、当然だ。


 さて、どうやって、この場を治めるべきか・・・。


「工口君、彼女は本当にラミア様なのかい」


 一持兄さんは、俺が嘘や冗談で言っているのではないと思ってくれたのだろうか、再度俺に確認してきた。

 それに俺が頷くと、それを聞いていたミラミは自身満々に


「そうれすよ!」


 うん、うんと応える。


「ラミア様がそんな薄汚い訳ないじゃない」


 そうだ、まだ汚い制服姿のままだ。しかし、さっき見えたパンツは綺麗だった気もする。


「綺麗れすよ、工口のおうちでお風呂に入って来たれすも」


 なに?

 と、俺が言う前に、


「どういうことよ」


 里緒、目が釣りあがった。

 これが鬼の形相と言うやつなのか・・・。


 しかし、どう言う事か、それは俺の方が聞きたい。


「工口の家って、まさか、俺のアパートの風呂に勝手に入った訳じゃないだろうな。鍵だって俺が持ってるんだぞ・・・」


 でも、こいつは俺の元の世界で、閉まった窓をすり抜けて俺の部屋に入って来た実績がある。


「何で俺の家に入れた。まさか、また窓を突き抜けたのか?」


「窓は、いつもすり抜けれるわけじゃないれす」


「じゃあ、いつなんだ」


「わかんないれす」


 いやいや、問題はそっちではない。


「どうやって入った!」


「管理人さんがいい人で、お願いしたら開けてくれたれす。可愛い妹さんだって言ってたれす」


「お前が、妹だっていったんだろう」


「妹とは言ってないれす。工口お兄ちゃんと言ったらけれす」


「それで、充分だろ!」

 

 そこに、里緒が割り込んできた。 


「ちょっと、窓なんて突き抜けられるわけないじゃない」


 もう、その話しはとっくに流れただろう。そこに食いつくなと思うが、簡単に説明だけしておこう。面倒だが・・・。

 

「いや、だからスカウター様で、みんなが言う”ラミア様”だって・・・」


「ま、まだラミア様だなんて・・・。キ、キスをした相方の私にも嘘をいうの?」


 俺に向って、怒り出した。


 何故、怒るんだ?

 それに、キスは関係ないだろう・・・。


「それと、これとは話が・・・」


 まずい、顔が鬼の形相どころではない。まさか邪気は入っていないだろうな・・・。


 しかし、このエッチなAV界で、里緒にとってキスがそんなに重い位置づけにあたるのだろうか?

 それとも、大技を共有した相方としてと言う意味だろうか?


 俺がそんな心配している間に、”キス”と言う言葉反応したヤツがいた。

 

「ミラミも工口とキスしたれすよ。スカウトした時に。だからミラミの方が早いれす」


「な、何で、キ、キスしなきゃならないのよ!」


 里緒が俺のさらに睨みつける。きっと邪気が入っている。

 完全に鉾先が俺に替わっている。


 何で、俺に変わった?

 元凶はこいつだ!


「こら、こじれるようなこと言うな」


 俺の言葉に、こいつは負けじと余計なことを言いやがった。


「こじれないれす、事実れす」


「そうよ、こじれるとかそんな問題じゃないんだから!」


 だめだ、ここはごまかさなくては。

 せっかく、里緒とは上手くいっているのだ。


 そうだ、こんな時は話を変えよう。

 くそ~、全部こいつのせいだ!


「だいたい、他人の家を覗いて、勝手に窓から入ってきたらいけないだろう」


「工口が窓開けたから入って来たれす、ミラミは悪くないれす」

 

 勝ち誇った様に胸を張っている。


「ん~、美味しそうな匂いれす」


 ちくしょう、余裕を見せるその姿がいかにも腹立たしい。ここでの反撃はこれしかない。

 

「お前の分は無いぞ!」


「あるれすよ。さっき誘われたれす」


「誘おうとしただけだ。まだ決まっちゃいない」


「まあまあ、工口君・・・」


 店主マスターごめん、ここは広い懐を俺に狭くして下さい。


「いや、ここははっきりさせないと・・・」


「仲間外れれすか?」


「もとより、仲間に入ってないだろう」


「仲間じゃ・・・、ないのれすか?」


 みんな仲間とか、そんな関係じゃないだろう、何言ってるんだ!


 あれ?強気だった”まほまほ”の目蓋が震えだした・・・。


「解かったれす。いいれす。ミラミはやっぱり一人なのれすね・・・」


 そして、目が輝き出した。


 もしかして、泣いてるのか?


「くぐち、なんて・・・」


 そう言うと、ラミアの頭の少し上辺りから何処からともなく光のしずくが現れ、床に落ち始めた。

 そして、その光、床に落ちる前に消えていく。

 

 なんだ、この光は・・・。

 

 光の現れる速さは次第に早くなって行き、ミラミの両側を挟み込む様にして光輝かせている。

 その光は、現れては消え、現れては消えを繰り返し、瞬きした一瞬に羽を形作っていた。

 白い透き通る光の羽根である。


 こんなに綺麗だったんだ・・・。

 俺は、今までのやりとりも忘れて、見入ってしまった。


 ミラミがその羽を広げると、光りの粉が飛び散る様に一面に光が零れ落ちる。だが、床には届かない内に消える。

 しかし、ミラミが踵を返すと、その中の一滴だけが床まで届くとシミとなって跡を残した。そして、ミラミはそのまま窓から飛び去ってしまった。


 俺が一緒に飛んだ時は、いつもこいつの胸に抱きしめられていたので、まじまじと羽を見た事が無かった。それに、日中だった為かこんなに綺麗だったとは気付きもしなかった。

 改めてミラミを神秘的に感じてしまう。やはり天使的な神に仕える存在”スカウター様”なのだ。


 それは、ここに居る皆も同じであった。


「ラ、ラミア様だ。ホントに・・・」

 一持兄さんが呟く。


「ラミア様・・・」

 店主マスターが料理していた手を止め、窓に向って両手を合わせる。


「うそ、どうしよう・・・。私、バチがあたっちゃう」

 里緒は泣きそうな顔だ。


 そして、俺は、

「まほまほ、ちょっと、待てよ!」


 キムタク風に、叫んだ・・・。


<つづく>


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