AV界二大奥義(その1)
工口の初演であるAVビデオは大好評を得ていた。
その喜びの最中、相方である里緒の家”G3☆食堂”を訪れると、そこにはこの世界での恩人、一持握が来ていた。
この一持握と言う男もある目的の為、工口と会おうとしていたのであった・・・。
第27部そ地区、その西の外れに天に向かって雲よりも高く白くそびえる”ミンジュ塔”がある。
そこは、司法、立方、行政、AV撮影等のこのAV界権力の中枢機能を持ち、その存在はあるゆる面で神がかっていると、AV界の民衆からは認識されている。
塔の前には幅100メートルはあろうかと言う白い石畳の幹道が東の地平線に向かって真っ直ぐに伸びており、”第27部”を南北二分している。
この大通りは”大通り広場”と呼ばれており、ミンジュ塔と共に、”そ地区”がこのAV界の中心と成った時に生まれたものなのだ。
そんなAV界の中心27部そ地区、ミンジュ塔からその大通りに沿って約1キロメートル程行った処から北へ2本入った裏通りに、”G3☆食堂”と言う食堂がある。
骨董品のようなお洒落なランプ調の玄関灯が目印となる2階建ての小さな古い一般家屋である。
今、その店内には還暦はとうに過ぎた店主と、三十路前後の一人の常連客の二人のみである。
店主の名は”千逗利吉”。そして、客の名は”一持握”と言う。
二人は他に誰もいない隔離された店内であると言うのに、用心深く声を潜めて会話をしている。
太陽は西の砂漠に沈み掛け茜に空を染めていた。
「店主、里緒ちゃんのビデオ観ましたよ。凄く良かったじゃないですかー。アクセス数も凄いし、街の若者の間では物凄い反響ですよ」
「いや~、お恥ずかしい。里緒は何もしてませんよ。相方に恵まれただけです。
あの相方、なんて言いましたか? ん~、え~、あっ、そうそう”エロン棒様”でしたか。
彼は素晴らしい素質の新人さんだ。一持さんはどう思いますか、彼のこと?」
店主の右手を後頭部に当て照れ笑いする姿からは、孫である里緒の初演の大成功を手放しで喜んでいるのが伺える。それに、一持握も嬉しくなる。
「一持さんだなんて、そんな、また改まって。昔の様に”握君”で結構ですよ」
店主は話初めだけは、思いついた様に改まって彼を”一持さん”と呼ぶのである。
「いやいや、そうはいきません。今やJRAV会で最年少レジェンドになった人を捕まえて恐れ多い。それに、この流行らない店を営んでいけるのも全部、あなたのお陰じゃないですか」
レジェンドとは、AV撮影において成功を修めた者だけに与えられる地位の総称で、ミンジュ塔の内でAV界を納めている者達のことである。
「それは、こちらもこの店をいつも使わせていただいてるから、当たり前じゃないですか。それに、僕がこんな立場になれたのも全ては・・・、あの香出さんのお蔭ですよ」
握は、話の流れ上、自ら口走ってしまったその名前に胸を詰まらせる。そして、また
「香出さん・・・」
店主も思いもかけず握の口から飛び出したその名前を復唱し、悔いるような表情で俯く。
「一体、彼女は・・・」
店主は過去を振り返るように、少しの間目を閉じた。
握は口に出すべき名前でなかったことを訂正する様に表情を明るくつくり、話を元に戻す。
「里緒ちゃん良かったですよ。相方のエロン棒様からは、あの技が自然に生まれて出てきている様だった。里緒ちゃんと気持ちが合っていたからこそだと思いますよ。
ところで、あのエロン棒様ですけどね・・・、
・・・あれは間違いなく工口君ですよ」
その言葉に、店主はそれ程驚いた表情を浮かべなかった。それは、店主もある程度の想像はしていたからであった。
「あ~、やはりそうでしたか。もしかしたらとは思っていました。
アイマスクはしてましたが、恐らく黒い瞳ではないかと、それに銀色の髪もカツラであることは判りました。遠目に映ってましたが、他の毛が黒であった様にも見えましたからね。
あそこまで混じりっ気の無い、黒い瞳に黒い色の毛は、このAV界では里緒と工口君以外には恐らくはいないでしょうからね。
さすがラミア様にスカウトされただけのことはある。あの大技、この歳になった私でも度肝をぬかれました・・・」
店主が嬉しそうに顔に寄せる皺の深さがいつもよりも深い。握は、それを頼もしく思いながら本題へと話を進めていく。
「ああ、僕もですよ。
そこでなんですが、店主の意見を聞かせて欲しいのですが、工口君の大技の内、あの”互いの口を付ける”技ですが、もしかすると特許を取れるのではと思っているんですよ・・・」
握は緩んだ顏を真剣な顔に戻し、店主の目を見つめた。それに、店主は少し考える様に間を取って、
「ええ、そうですね、私もそう思いますよ。だが、それはもしかすると二人には大きなリスクになるんじゃないかと思うのですが・・・。
彼らが、またあの時と同じように何らかの工作はやって来るんじゃないのかい?」
「ええ、恐らくは何らかの手は打って来るでしょう。自分達の実権を、いや利権を守る為に。
しかし、これが大きなチャンスであることも事実です。これを逃して果たして次に同じ様な機会が、いつやって来るか・・・。
問題は二人を守れるか、そして、彼らに取って良い結果としなければなりません。
それに店主、あなたに取ってもです。二親等以内の貴方も危険なのですから」
握は店主が危険になることと同時に、この”G3☆食堂”が集会場所として使えなくなることを恐れていたのであったが、それは口には出さなかった。変に誤解されることを恐れてである。
「私はもう年寄りだ、この世界の若者達の為になればそれでいい。それに、香出さんに対する・・・」
そこで、店主は口を止めた。
「罪、滅ぼしですか・・・、彼女はこの世界の為にと危険を冒してまで”萬”と言う家号に”特許”を残したままにしてくれた。その気持ちに報いる為にも、そして、香出さんに代わって里緒ちゃんを守らなければならない・・・。
ただ、その特許もそれを引き継げるのは二親等以内の里緒ちゃん、或いは将来生まれて来るであろう里緒ちゃんの子供のみです。私も里緒ちゃんに意思がない限りは巻き込みたくはありません。
当然、今回特許を取れたとしても同じことです。となれば、まだ若い里緒ちゃんには権利を辞退してもらうしかないと思っています。それが安全だ」
「しかし、それならば里緒には大方話さなければならない。里緒は工口君を騙す様な真似をして、自分だけ守られるのは納得しないでしょう」
「里緒ちゃんには、もし将来その意思があれば、家号を”萬”に変えてもらい、あの香出さんの特許を使って、参加してもらえばいいじゃないですか。僕はそれが香出さんの意向だったと思います。
今回の特許は無理にでも辞退してもらいましょう。
幸いにもまだ彼らは、香出さんの娘である里緒ちゃんの存在、あの特許の権利者がもう一人存在していることに気付いていない」
「それで納得するような子ではないと思うが・・・・、それに、工口君にも申し訳ない、彼の歳も里緒と同じだ。それに他の世界から来た人だ・・・」
「まさか、こんなに早くこんな機会が来るとは思ってませんでしたからね。
しかし、現状集めた私達の仲間で、再びこんなチャンスを作るのは難しいでしょう。いや私を含め無理でしょう。残念だが、第三の勢力を作るにはは彼を無くして作れないのは確かです。
それに、このまま放っておいたら、恐らくは来週行われるG2大会で同じ、口を付けると言う演技を行い自分の演技として特許申請をしてしまうでしょう」
「すると、もし彼らが特許を取得してしまえば、さらに力を増してしまう。と言うことですか・・・」
店主は迫られる判断に顔を歪める。
「いつかは工口君にはそれなりの説明をして、特許登録をしてもらはなければならない。仮にこれを諦め、次の機会がやって来たとしても・・・」
「もしやって来たとしても、やはり同じ危険にぶつかると言うことですか・・・」
「返って、学生と思って彼らが油断する可能性がある今の方が危険は少ないかもしれない。その間にこちらが手を打てば・・・。
このまま”レジェンド”と言うこのAV界の最高機関を、これ以上特許を持った二つの家号達の独壇場にする訳にはいきません。
AV撮影の成績でこの世界を左右する立場の人間が決まってしまうと言う法律がある以上、今のままではAV界の衰退は止められません」
握は、つい大きくなってそいまった声を、握は自制するように咳払いをして、続ける。
「勝手な言い分ですが、彼はこの為に私達の世界に来てくれた、スカウトされた。そんな気がしてるんです。本当に勝手なのですが・・・」
店主は握の言い分を否定せず、暫く黙っていたが、
「今でも未来でも、大なり小なり、工口君にとって私達は悪人になると言うことですか」
店主は諦めた様に結論と言える言葉を出した。
「不本意ですが・・・」
それに握も同調する。
陽も暮れて足元が冷えて来たせいなのか、心が冷えたせいか寒さを感じ店主は暖房器具ののスイッチを入れた。
そして、幾分か心が温まったと錯覚した頃に、入り口のドアが緩やかに開いた。
そこからは、もう少年と呼べ時期も残り少ない一人の少年が顔を覗かせたのであった・・・。
★☆ 第 4 話 ★☆
☆★ AV界♂ ☆★
★☆ ♀二大奥義 ★☆
☆★ (その1) ☆★
アパートに帰った俺は早速、AV端末で我が作品、全く柔軟体操の要素の入っていない”初めての柔軟”のアクセス数を確認すると、モニタに映し出されたその数は塩南先生の言っていた通り、本当に呆れる位の暴走モードになっていた。
何せ昨日からのアクセス数は、数時間前に塩南先生と部室で確認した1万アクセスに迫ろうとする物凄い結果の更に倍以上、2万アクセスを超えているのである。
この数、幾らこの世界に来て10日足らずとは言え、どの程度のものでるか位は分かっている。
AV界でG1戦士とまで呼ばれるG1クラスまでとはいかないが、恐らくはG2クラスの中に入ってもそれ程引けを取らない数であることは間違いないのではないかと思う。
それも、ローカル開催の新人戦としては、幾らAV界全世界に視聴が可能だからとは言ってもあり得ない数字のはずだ。少なくても俺の記憶には存在しない。
お気に入り数だって200件を超えているし、塩南先生の言っていた作品に対する感想なるものも結構来ている。
数えてみるとその数50件。初めて見るので多いのかどうかは分らないが、来ているだけでももの凄いことだと俺は思う。
本当は感想をゆっくり拝見したいところだが、それにも増して俺にはこれから行きたい所がある。
消されない限り残っている筈の感想は戻ってからゆっくりと楽しむとして、取り敢えずどんな人達からなのかザッとだけ見てみえると、感激なことに主に同年代の女性からの反響だ。
俺の18年余りの人生で、同世代からこんなに受け入れられるのは、元の世界では有り得ないことであり、妄想らもしたことが無かった。
だから、それに俺は一瞬にして舞い上がりそうになったのだが、ここで慎重なのが俺の性格である。
全ては千乃工口宛てではなく、眩いばかりの銀髪に、赤いアイマスクにこれまた赤いマント姿の”エロン棒様”宛てに来た感想の数々であることを俺は間違えてはならない。
本当に俺と結び付けているのは数人であるのだ。
だが、慎重に考えた結果、ここは素直に喜ぶとしよう。外見は多少変えても中身まで俺は変えた覚えは無いからだ・・・。
だが、このまま外へ出てしまうと、周囲の陽気とは余りに温度差を生じ、当然危険な人だと思われてしまうのは想像に遠くない。俺はニヤケて歪んだ口元えを指で摘まんで戻そうとするのだが、今日の顔の筋肉は俺の握力をも上回っている様だ。
どうにもならない・・・。
人通りの多いところで、幾らなんでもこんな間抜けた顔では拙いだろう、変な奴だと思われてしまう。
よし、こんな時は顏を強張らせることによって相殺するしか方法はない。
と言うことで俺は床に仰向けになり、せっせせっせと腹筋を始める。目標は50回だ。
久々の腹筋は思った以上にきつく、目標の50回を数えた時にはほど良くニヤケた顔も・・・あれ?
まだ多少残っているがこれ以上はきついので、腹筋は止めてアパートを出ることにする。
向かう先は、もちろん”G3☆食堂”俺の相方である里緒の家だ。このアパートに移り住んでから一度も行っていない。
正直いつも気にしていたので、やっとあそこに行けると身分になったと思うと、軽い緊張と興奮をしてしまう。一旦、部屋に戻ってトイレに寄ったのは言うまでもない。
目的は里緒とゆっくり話したいのは勿論であるが、もう一人会いたい人がいるのだ。あそこに行けば会える確率は高い。と言うより、G3☆食堂でしか今の俺には会う方法がないからである。
アパートを出た時には、外は陽が沈み薄暗くなっていた。
そう言えば、つい先程まで一緒だった待望の”まほまほ”改め、”ラミア”改め、”ミラミ”は、あの空まで伸びている白い”ミンジュ塔”に戻ったのだろうか?
スカウター ミラミは、結局、俺のアパートの前まで俺の後を付いて来たのだが、外から4階の角部屋である俺の部屋を見上げると、にっこり笑ってとっとと飛び去ってしまったのである。
もしかすると、俺の部屋に上がり込んで来るのではないかと言う、ちょっと淡い期待?いや、心配は無用となってあいまった。
あの高所に飛び立つ時に胸に抱かれた何とも言えない感触と香りはもったいないのだが、俺の勘ではあいつの痺れるような甘い香りからは魔女の匂いがするのだ。
と、言っても魔法を使う魔女では無くて、何の悪気もなく自然と男を振り回すと言う、知人に一人位はい、あの魔女のことである。
あの魔女予備軍と想像するミラミとこれ以上一緒に居ると、きっと何か突拍子もないことが起こる。そんな気がしてならない。
いや、既に充分に起こってはいるのだが、今回の異世界移動はまだマシな方だったのかもしれない気がする。
きっと、あいつは男を色香と言う魔法を掛ける、”下げまん魔女”に違いないのだ。
しかし、そんなあいつがこの世界で、天使的な存在の”スカウター”と言うのだから皮肉なものだ。
俺は二度も一時の魔法に迷う程、俺は愚かでは無いと自分を信じたい。
それに、やっと今里緒の家に向かえる関係となったのだ。買い被り過ぎかもしれないが、余計な色香に迷うべきではない。
あいつの香りは、里緒との未来を壊す麻薬かもしれないのだ。
それにしても、何の連絡方法も確かめず別れてしまったのは、それで良かったのだろうか?
考えてみればこちらからは会う手段は無いのである。
クドイが、今でも信じられないことに、この世界では”ラミア様”と呼ばれる尊い存在なのである。と、言うことは、一介の一般人では会うことが出来ないのは当然のことである。
俺の場合、スカウトされた身なので、一般人かどうかはまだ俺自身計れていないのだが、恐らくは、彼女からすれば一般人類と言うことになるのであろう。
だとすれば、聞くだけ無駄なことなのかもしれない。
どうせ、彼女からは元の世界に戻る手掛りがほぼ得られなかったに等しかったのだ。
唯一の方法がAV撮影大会で、存在するのか、しないのかさっぱり解らない自然神とか言う神様に認められるだけの成績を収めなけれならないと言うのだ。それも、未だそれ該当する俳優は現れてはいないのだそうだ。ミラミ曰く。
全く雲を掴むより現実離れした話である。であればこの先彼女に会う用は出きないであろうと思われる。
だが、今になって良く考えて見ると、雲を掴むよりも現実離れした出来事が、今が夢でないのならば、現実にこの俺に起こっているのだ。この上、更に有り得な事が起こっても不思議はないのではないのだろうか。
俺の何処かではそう思っているのであろう。それを聞いても余り絶望を感じてはいない。
それに、この世界の方が元の世界に居たときよりも生きている実感を感じているのは事実なのである。 元の世界でいかに流されて生きていたかと言うことなのかもしれない。
更に、ミラミが希望に満ちた輝いた顔を見せ俺にて言ったのだ。
「分からないれすけど、良いことが待っているのれすよ、きっと・・・ミラミがずっと待っていたことが起こるのれす」
意味も分らずに信じて疑っていない、あの言葉が妙に気に掛かってならないのである。
だから、正直俺はこの世界にスカウトしたミラミの為にも頑張ってみようと思っている。
もしかすると、俺はもう魔女の放った魔法に酔ってしまってているのか?
でも、それでもいいか・・・。
そんな風に思ってしまう。
やはり、これは魔法に掛かっていると言うのだろうか、誰か客観的に教えてくれないだろうか・・・。
なんて、そんなことを考えている内に、あっという間にその里緒の家である”G3☆食堂”に来てしまったようだ。骨董品のようなお洒落なランプ調の玄関灯が眩しい位に煌々と輝いているのが、通りの先に見えて来た。
店に近づくと、恐らく余計な心配であると、あってくれと思うのだが、もし俺が里緒の相方だと店主が既に知っていたとして、俺は暖かく迎えて頂けるのだろうか?
確かに成績的には、望みはしないが熱く抱きしめられて温かく迎えられてもいいはずだ。しかし、俺は肉親が、それも自分同居している孫娘が裸のお付き合いをした男なのである。
そんな男を目の前にして、この世界の祖父がどう思うのかは全くの未知数なのである。
どう思われているのかが心配で、心拍数も上がって来る。心臓の鼓動が頭の先まで響いてくる。
もしかすると、結婚の了解を得にご両親のところに挨拶に行くのって、こんな感じなのだろうか?
なんて思ってしまう。
やっぱり、トイレ、行っといて良かったなぁ・・・。
そう思いながら、思い切って
「今晩は」
古めかしい重厚な木製扉を開けて、顔を覗かせてみた。
視線の先には、まだこの家を出てそれ程経ってはいないのに、懐かしいと感じられる顏があった。少し驚いた顔であったが、大丈夫。温かい笑顔で迎えてくれた・・・と思う。
そう、信じて良さそうだ。
「ああ、工口君、いらっしゃい」
俺の挨拶に里緒の祖父である店主の声は、あの記憶にある店主と同じに温い。
やっぱり間違いないだろう。
何か、懐かしさが更に込み上げて来る。
まだこの家を出て一週間も経っていないと言うのに懐かしいと思うのは、それだけ色んな事があったと言うことだと思う。
それと何と言っても此処がこの世界で初めて泊まった家なのだ。自分の家に帰った様な気持ちになる。
取り敢えず、俺がお孫さんを抱いたことを知ってか知らずか敵意は無いようで安心だ。
後は俺が里緒の相方であるのかを話題にすべきかどうかなのだが・・・。
そんなことを考えながら、店内に一歩踏み入れるともう一人の顔。俺の会いたかった顏が視界に入って来た。
「やあ、工口くん久し振り・・・でもないかな」
「一持さん!」
「どうだい、この世界の生活は?」
一持兄さんの言葉も変わらず暖かい。
どうやら俺の恩人、一持兄さんは俺の事を気に掛けてくれていたようだ。今日は俺にとって最高の日かもしれない。
「ええ、まあ何とかやってます」
「そうかい、ハハハ、それは大したものだ。ところで、今回の27部の新人大会はどうだったんだい」
一持兄さんは、早速、昨日の新人大会のことを聞いて来た。俺がスカウトされたということも気に掛けてくれているようだ。本当にいい人だ。
俺があのエロン棒様だと言ったら、二人は驚いてくれるのだろうか?
一持兄さんも、店主も俺が異世界からスカウトされて来た事を知っている。隠す必要は無い。それに、店主に俺が里緒に色んな行為をしてしまった相方であることがバレても、今日の運勢なら大丈夫だろう・・・。
なんたって、今日は俺にとって大安吉日、晴天快晴、純白木綿のパンティーの日なんだから・・・。
<つづく>
今回も長くなってしまいましたので、途中で切りました。よって、”その1”です。