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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第1章 昇天
5/73

隣の屋根に立つ影は

見られてしまった?


註)大変申し訳ございません。一部、自主規制致しました。

 帰宅中のバス中で、俺、千乃 工口くぐちは幸運にも女子高生との密着状態を得てしまった。


 なんと、その彼女は見かけとは裏腹に、俺に大胆な行動を投げかけて来るではないか。


 俺はその真意に疑問を抱いたのではあったが、憂いに惑いながらも、その場の勢いで満喫を味わってしまった。

 もちろん、そんなことに不慣れな俺は、一部位への若き血潮の収束が即座に始まり、簡単に抑えきれない状態へと達してしまう。

 その結果、俺は余儀なくバスを降りる判断を下す破目になってしまった。


 俺は彼女の密着が罠でないことを祈りながらも、慎重且つ繊細に歩を進めると、見事無事にバスからの降車に成功を納めたのであった。

 だが、ホッとしたのも束の間、バス停近くのコンビニのガラスに映した自分の姿の後ろには、彼女の姿が映しだされていたのだった。


 通りの反対側、左後方約15m。


 やばいのか?・・・。


☆★  第 5 話  ☆★

★☆ 隣の屋根に♀ ★☆

☆★ ♂立つ影は ☆★

 

 ”えっ、まほまほ?”


 ガラスに映るまほまほは、行儀良く脚を揃えて立ち、こちらを凝視している。おぼろげではあるが、そんな気がする。


 距離を置いてみると、地味目の濃紺の制服が清楚感を感じさせるだけに、アンバランスなマイクロチックに仕立て上げられたミニスカートが妙にエロく感じられる。


 ブラウスの胸元のボタンは、火照った体を冷やすかの様に、二つ開いている。あの開き方は二つのはずだ。さっきは一つだった気がする・・・。


 細面な顔にも関わらず、あどけなさが残る若干の頬の丸み。ガラスに映る姿も魅力的だ。おぼろげではあるが・・・。

 だが、目付きに決意の程が伺われる。これは俺の感覚である・・・。


 間違いない、”まほまほ”だ。

 今でもその温もりが残っている。 


 俺の中では、彼女は既に”まほまほ”と言う名前が、いつのまにか定着していた。


「この状況は、やっぱ拙い・・・のか?」

 俺は彼女の視線の意味に思考をめぐらせた。


 俺の恐れていた、俺への何らかの抗議をする為だろうか?

 それとも偶然、降りる所が一緒だったのか?

 いや、俺に対する好意的な?

 それとも、脅すために・・・。


 俺の脚は、ガクガクと小刻みの震動を始めている。

 どうやら体は既に結論を出している様である。だが、俺の頭は体を否定するかの様に、瞬時に最悪のシナリオから逃げようと、あらゆる可能性の模索を始めるのであった。


 彼女は完全に俺に視線を向けている。

 コンビニに張ってあるコンサートの張り紙が見える距離ではない。その意味は?

 やはり、何らかの抗議であろうか?


 いや、しかし、ここで抗議をすることに意味はないはずだ。少なくても最後の接触は意図的な彼女の行為である。

 ここで抗議が出来る位であれば、バスの中で何らかのアピールが有ってしかるべしだ。


 では、偶然同じバス停で降りただけとか?

 それでは、何故俺の後方でこちらを見ているんだ。俺の周りには誰もいないぞ。


 も、もしかして、俺に好意でも?

 それこそ、自分を買い被り過ぎというものだろう。

 そんなことがある位ならば、18年の人生に彼女の一人、いや、告白の一回位は有ってもいいものだ。


 や、やはり、俺を脅すつもりだろうか?

 まさか、あんな華奢な体に、可愛い顔で?


 いや、最近の女性格闘家は、結構奇麗でスタイルもいいぞ。それに着痩せするタイプかもしれない。

 そうなのか、そう考えるのが自然なのか?


 ちょっと、待て。そうとは決まっていなぞ!


 気のせいと言う可能性だってあるではないか。

 バス中の俺の記憶全てが錯覚だったとか。


 取り敢えず、この場を早く立ち去ろう。それが無難だ。

 結論に達した俺は再び帰路に付こうと、向きを変え様とした。その瞬間だった。


 俺の肩を叩く人がいた。

 それに、俺は凍りつく。


 ガラスに映った人影は、紛れもない”まほまほ”である。

 俺が驚きで体をビクつかせると、それに、何と彼女の体も一緒に反応し、ビックと動いた。


 彼女の口元が動いた。

 

「ごめんなさいれす」


 あ、あ~~あ?謝られた。

 驚いたことに彼女が謝ってきた。


 この時点で、最悪のシナリオの可能性が消えた。

 しかし、安心はするものの、意外な展開に即座に対応が出来ない。

 俺は体を反転させ、彼女と向き合った。


「な、何で?」

 と応えるのが精一杯であった。予想外の展開と、純真無垢な瞳が俺の脳天を一撃したからである。


おろろかしてしまって、ごめんなさいれす」

 頬を真っ赤にする彼女。あ~、愛苦しい。


 俺は何か言いたい衝動に駆られるが、話す言葉が全く見つからない。

 頭の中は、漂白剤にさらされた真っ白なハンカチ状態だ。


 彼女は、もじもじとしていたが、俺に向かって右手を差し出した。

 手中には見覚えのある物が・・・。


「これ、落としましたれす」

 か、可愛い過ぎる幼い言葉遣い。


「あ、ありがとう(れす)」

 思わず言葉尻を真似るところであったのを必死に押さえ、俺は台本通りの様に、ありきたりの動作で、それを受け取った。芸がない。


 な、何か話したい。何かを・・・

 と気は急くのであるが、こんな時の言葉のストックが何もない。


 そう思っている間に彼女は真っ赤な顔で踵を返すと、猛ダッシュで去っていってしまった。


 追いかけたい。追いかけたいと思うのだが、その必然性が見つからない。

 嘘でした。それは、後付けでしかない。

 情けないことに、金縛りにあった様に全く身動きが出来なかったのである。

 

「速いな」

 俺は彼女が去って行くのをを呆然と見送るだけであった。行ってしまった。


 しかし、いつの間に後ろに近づいたのだろうか。謎が残る。だが、そんなことより何も出来なかった自分が悔やまれる。


 何か非常に大きなものを逃がしてしまった虚脱感に襲われる。

 しかし、過ぎてしまったことだ。これも俺の人生と諦めるしかない。

 合理的に考えるのは得意な方だ。今まで、そうやって、自分を慰めて来たではないか。


 それよりも、何の問題も起こらなくて良かったではないか。

 それに、充分過ぎる程の栄養の貯蓄が出来たのだ。

 後ろ向きな思考を、一見前向きに見せるのも得意な方だ。


 帰ってから、色々楽しめるではないか・・・。

 俺は自分に言い聞かせる様に呟きながら、再び帰路に付いた。空想は得意な方だ。


 その後、俺は帰り道で、何度か誰かに付けられている気がした。

 その度に振り向くのだが誰もいないのである。

 

 おかしい、俺の感覚器がおかしいのだろうか?

 きっと、まほまほが付いて来ないかなんて思っているから、錯覚をするのだろうか。

 そうも思った俺は、余りにも気になるので、急に道を曲がると電柱の影に隠れて様子を伺ってみた。


 俺が急に道をを曲がったのが意外だったのか、直ぐに足音が駆け足で近づいて来た。


 やっぱり付けられていたのか!

 俺の心臓は期待と不安の相乗効果で、頭の芯まで響いて来る。


 もしか、通り魔的な者であったどうしよう。

 しかし、まほまほであったら・・・。


 俺は一部の望みに期待を込め、攻防の二つを瞬時に切り替えられるように、頭と体をニュートラル状態に移行した。逃げ脚には自信がある。


 来た!

 一瞬チラッと、黒っぽい人影が曲がり角の塀の影から現れたのだ。

 だが、俺の存在に気づいたのか、直ぐに引き返して行ってしまった。


 誰だ? 

 俺はその影を確認しようと、交差点に飛び出したが、その時既には影も形も無くなっていた。

 そんなに早く隠れられる場所は、見当たらない。


 誰だろう?

 と言うより、誰かであって欲しい。

 そんな希望に変わっていった。


 今日は当たり日かもしれない。

 変なものにあたらない内に早く帰ろう。

 逃げた者について深く考えるのは止め、俺は急いで帰ることにした。  


 家に帰る頃には、すっかり俺の頭は切り替わっていた。ではない。元に戻っていた。


 行う気満々な俺は、まず玄関で妹、少毛しょうもの靴が無いことを確認した。

「よし、大丈夫だ」

 俺は自然と握った拳に力を込める。


「ただいま~」

 俺の声に反応するのは、

「お帰り、今日も早いのね」

 お袋だけだ。絶好の環境だ。


 応えるのが面倒な俺は、

「ああ」

 無視も出来ないので、一応返事だけは返しておく。


 俺は帰ったらまず、手を洗う。子供の頃からの習慣だ。衛生的である。

 

 俺は洗面所から出ると、二階の自分の部屋に駆け上った。

 

 二階は6畳二間で、俺の部屋と、妹の少毛しょうもの部屋だ。

 少毛は、未だ自分部屋と俺の部屋の区別が付いていない。いつ俺の部屋に飛び込んで来るか分らないのである。


 しかし、今、少毛はいない。お袋が二階に上がって来る理由はないはずだ。

 当面、二階に居るのは俺だけだ。この機会を逃すわけにはいかない。

 今であればリラックスして射撃訓練をすることが出来るのだ。


 まず、俺は座椅子に腰を掛けた。

 このポジションが、言わば俺の”それの”定位置と言うやつである。


 何故ならば、ここであればカーテンを閉めなくても良いのである。

 この角度で窓から見えるのは、通りを挟んだ隣の屋根位である。という事は、隣の家の窓からは絶対に俺の姿は見えないはずなのだ。


 存分にフリータイムを楽しむことが出来る。


 俺は、右手の先にティシューがあることを確認すると、そそくさと手を・・・・。


 その前に壁に据付の洋服ダンスの天井裏に潜ませている、取って置きの絵本を用意しようか?

 いや、今日の俺には必要は無い。

 想像の方が色が濃い。

 

 俺は一旦止めた手を再び・・・


 ******************** 

   <自主規制 73文字程度>

 ******************** 


 僕が少し汗ばんでいる。

 わかるぜその気持ち。熱いよな。俺の体も全開に・・・


 ******************** 

   <自主規制 31文字程度>

 ******************** 


 ここと言う一歩手前で、何故か俺は沈み掛けた夕陽に目を奪われた。

 窓とキャンバスに映える、青と橙色のコントラスト。綺麗だ・・・。


「おや?」


 しかし、そのシンプルなキャンパスの中央に、突如黒い影が現れたのだ。

 

 最初はホンの僅かに上部が現れただけであったが、次第に影はこちらに近づいてい来ると、それに従い全貌がシルエットとして浮かび上がった。

 

 俺は、座椅子毎退けぞった。


「ひ、人だ~! 屋根の上に人がいる!」


 夕暮れの屋根にすっくと立つ影一つ。

 逆光でよく見えないが、ミニスカートであれことはシルエットから明らかだ。

 隣の家は確か老夫婦のはずだ。

 誰だ?

 

 と思っている暇は無い。

 見られてしまった。完全に見られてしまったか。

 いや夕暮れ如きの明るさでは、詳細までは・・・。


 とにかく、ここは途中でもお片付けだ。


 何て、焦りでおどおどしている間に影が


「飛んだ~!」


 トタン屋根を大きく蹴ったミニスカートは、脚を肩幅程度に広げ、両手は体に揃え掌で風を受けながら、華麗な前傾姿勢で飛び出した。


「あ~~」


 俺はこの先の惨状に目を背けようと、背けようとしたのだったが、だが少しばかり重力が弱い気がする。

 

 気のせいかミニスカートは、俺にまっしぐらに向かって来ている気がする。いや、間違いなく向っていた。


 なんだー!

 あぶないっ!

 窓ガラスにぶつかるー!


 んっ、あれ?

 まほまほ?


 いったい、どうなってんだ?


 <つづく>


自主規制前後の意味は通じているでしょうか。

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