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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
46/73

欲求と油汗と想いの中で(凹)

初演のAVビデオ撮影も大詰め。

その出来栄えは?

£――――

 ごめん・・・。


 私がダメなせいで工口くぐち君の大切な初演を躓かせてしまった。

 工口くぐち君はラミア様にスカウトされた特別な人。だから、こんな最初から躓くわけには行かないのに。そんなことは、私だって充分判っていたはずだった。なのに、いざとなって思いっきりどん詰まってしまって、自分のことすらも見えなくなってしまっていた。


 きっと、これが私本来の実力だったんだ・・・。


 名門と言われる”へ高”で柔軟体操部の部長を任され、校内ランク1位にもなり、そして、学校代表としてたった一人しか出場出来ない新人戦にも推薦されたことで、気付かないうちに自分のこと買い被っていたんだと思う。

 特別な人になれた、スカウトされた工口君と対等だ。なんて思っていたんだと思う。


 だけど、だけど本当はそれに相応しい人じゃなかったんだ。

 全然、大したことなかったんだ・・・。


 自分の実力何て何にもなくて、気が付いたら運良くそんな立場になっていただけなのに、そんなことにも気付いていなかったんだ・・・。


 それなのに、工口君の相方になるなんて・・・。


 もしかしたら、私、ラミア様から罰を受けてしまうのだろうか?

 こんな情けない私じゃ、罰を請けても当然かもしれない・・・。


 もう、柔軟体操部の部長だって辞めたって構わない。校内ランクなんて何処まで落ちても構わない。もう一度、一から頑張ればいいんだし・・・。


 でも、もう遅いのかもしれない。

 遅いのかもしれないけど、やっと、工口くぐち君の黒い瞳が思い出させてくれたお陰で、子供の頃に思った強い気持ちを取り戻すことが出来たんだ。

 だから、せめて残りの時間は工口君に全てを任せて、私はそれを精一杯受け止めるようと思う。

 工口君の演技の為に一生懸命頑張ろうと思う。


 それが、工口君や柔軟体操部のみんな、それに、塩南先生へのせめてもの償い。

 

 だから、何をされても構わない。

 何をもくっつけられても大丈夫・・・。


 でも、お願い。我がままだとは判っているの。だけど、パンティーだけは脱がさないで。

 お母さんとの約束だけは守らせて・・・。


 初演から終着地には着きたくないの・・・。

――――£

★☆ 第 38 話 ★☆

☆★欲求と脂汗と♂☆★

★☆♀想いの中で凹★☆


「うぅぅっ・・・」

 里緒を引き寄せた俺の腕は、里緒の胸の感触を確かめる為の行為であったのだが、その寸前に予想外の出来事が起こってしまった。

 予想外に気持ち良い出来事。

 

 それは・・・。


 俺と里緒の間を近づけまいとする邪魔者が現れてしまったのだ。だが、そいつは他の何でもない俺の煩悩の叫び。

 だから、邪魔と言うのは正確な表現とは言えない。ただ単に、そいつは素直に一早く里緒に触れようとしてしまっただけなのだ。


 俺は、自分の視線がカメムシくんと言うハイテクカメラを通して視聴者に気付かれない様にと、極力正面をを見ながら下目遣いでそっと見てみると、そいつは体の中央やや下で俺の体の全景が”ト”の字になるようにと、”どうだ”と言わんばかりに凛々しく地面と水平な横棒を担当しているのである。


 だが、俺はその凛々しさとは裏腹に、想像よりもよりも早い里緒との接触に心の準備が間に合わず、思わず動揺してしまって取った行動は、善良な高校生の行為としての行動。

 腰を引いてしまったのだ。


 しまった!と思うも、もう遅い。俺は自ら自然な流れを壊してしまったのだ。


 そのまま何気なく押し付けて抱いてしまえば、恐らくは上方に位置を流していき、上手く納まったものを、返って里緒にその存在の意識させてしまう結果となってしまった。いや、俺が意識してしまっている。


 だが、どちらにしても体の構造上こいつを里緒と接触させない限り、俺は里緒を抱きしめることが出来ない。

 いや、そうではない。そいつを一番里緒に触れさせたい。ただ、こいつが再度、里緒に押し圧を与えた時、里緒はどう思うのだろうか?

 既に里緒はこいつの存在を意識していないはずがない。


 里緒はこのAV界において、珍しく裸に対して極度のはずかしがりやなのだ。

 俺と俺の元気印がこのまま、突っ走っても大丈夫なのだろうか。

 やはり、拒絶されてしまうのだろうか。


 次の一手が出てこない・・・。


 だがだ、これはAVビデオなのだ。他のビデオでは普通に行われている行動である。それどころか、昔のビデオでは激しく陰の部同士を擦り付けているものも多数ある。

 里緒は昔のビデオにも可也詳しいから、当たり前の様に子供の頃から見て来ているのはずである。


 だとすると、これはあからさまにオッパイを鷲掴みにして揉み解すのとは違い普通の、演技行為なのだ。きっと、俺が思うほど意識をしていないに違いない。

 それに、今は里緒の目付きが明らかに変わっている。


 よし、そうだ。そう思うことにしよう。

 ここは、里緒を信じて思いっ切り何気なく行くべきだろう。

 思いっきり、俺のこの”ト”の字の突起物の先端部を里緒の下腹部やや上方へ押しつけてみよう・・・。


 そう決意した俺は、継続する腹痛を気合いで抑えながら再度俺は里緒を引き寄せた。もちろん、いち早くそいつは里緒の体に押し圧を与え、その反作用として俺に快感を与えてくる。


「うっ・・・」


 だが、今度は引かない。そう決めたんだ!健全な高校生の条件反射は男優魂で封印である。


 ぶつかった突起物の行き場は上か下かだ。

 どちらかに方向を変えなければ里緒を抱くことは出来ない。本能的には下に進ませたかったが、その場合、人体の構造上俺の手のサポートが必要となる。さすがに視聴者の皆様の前で、その欲求を満たすことははばかれる。

 俺はナメクジを這わす様に、その感触を味わいながら下から上へと奴を押し流がす。それと共に徐々に里緒の体が近づくと、直ぐに里緒の胸が俺の胸に触れた。


「んっ・・・」


 里緒が小さく声を漏らした。


 うっかりすると、余りに柔らかくて触れたことに気付かぬ程に柔らかい。柔軟体操部の部活では、ブラと言う硬い布に収まった状態でしか触れることは無い。その時の感触とは全く別物である。

 通常生が勝に決まっているのだが、俺だけなのだろうか、どちらかと言うとちょっと物足りなさを感じる。

 俺はもっと感触を味わおうと、背中に回した両手で強く里緒を引き寄せると、里緒は俺の行動にその柔らかい体だを預けて来た。


 背中の反りが両手に感じられる。俺の首筋に里緒の髪が触れ、髪の甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。俺は引き寄せられるように里緒の頭に頬を寄せると直ぐそこに里緒の耳が俺の顎を心地よく掠めた。

 そうなると、


 耳=息を吹きかける


 と言う半ば常識ともなった性式こうしきは俺にだって身に付いている。俺の衝動は止められない。

 腹痛の脂汗を流しながらも、俺は堪らず里緒の耳に息を吹きかける。すると、


「ウゥン・・・」


 背中を反らせた里緒から声が漏れる。

 調子に乗った俺は更に耳の上端を甘噛みしてみる。何処か耳なら何をしてもいいだろうという自分なりの道徳感が俺の行動の制御を外してしまう。


「はぁ、ぁぁ・・・」


 俺は更に、輪郭に沿って舌を這わせる。


「あぁぁぁっ・・」


 里緒から漏れる声が聴覚から脳に伝わってくる。

 これで、耳、鼻、それに、あらゆる箇所の触覚で里緒を感じている。


 でも、俺はもっと里緒を近くで感じたい。もっと、もっと深く感じたい。そんな欲求に満ちていく。

 俺は、素直にただ少しでも多く里緒を感じていたい。純粋にその気持ちのみになっていく。


 だが、これは演技なのだ。作品として成立させなければならない。人に見せることにより名誉と収入を得ることが目的である。俺の場合、スカウトされた特別な男優としての待遇も掛かっている。


 演技をしなければならない。


 だが、俺には未だ体の欲求に従うことと、演じる虚為との違いが今一掴めていない。


 どうすることが演技となるのか?


 この世界のAVビデオとは?

 その位置付けは?

 既にあらゆる年代のあらゆる種類を観てきているが、この世界の人々が求めているものは何なのだろう?


 古いものはものには、単に裸で性的体の接触で終始するもの、性的欲求に近いものが多い。ただ、最近のものにはアクロバチックな要素を取り入れたり、衣装や場面設定を作ろうとしている努力が見て取れる。ただ、それでも最終的には殆どのビデオが真っ裸になり身体的な接触で終わるのは今も昔も同じである。


 俺の世界のAVビデオと同じ様であり、同じで無い。

 俺はこのまま、自分の求めているものに沿って行うだけで良いのだろうか?


 さっぱり判らないが、今の俺にはそれしか何も思いつかない。


 思いつかないのなら出来ることを。

 見せるしかない。

 

 であれば、やってやる。

 俺の性癖を見せてやる!


 俺の決意が体に興奮を与え、武者震いが起こる。

 すると、それと同時に更なる


「グググ~、ゴロゴロ・・・」


 興奮が急速に腸内の異変を進展させていった。


 どうやら俺の限界が近づいて来たようだ。腹痛を抑えることで流れる脂汗がハンパでない。

 だが、耐えなければならない。耐えてそれなりのビデオを完成させなければならない。そうでなくても出だしで躓いているのだ。このままでは、里緒の立場も来年の柔軟体操部の1位の座も守れなくなってしまう。


 俺は全身の力を括約筋に力と思いの全てを込めて、肛門の穴を塞ぐ。

 これっぽっちも漏らさぬように。

 時間との戦いだ。


 あと数分漏ってくれ・・・。いや、漏らないでくれ。


 俺は汗ばんだ左手で里緒の腰を引き寄せる。

 どんな腹痛でも演技は続けなければならない。そう誓って・・・。


 思考は次第に働かなくなって来ている。

 もう、演技も性癖がうんぬんでも無い。煩悩のままに出来ることをするだけだ。


 俺は激痛に震えながら、右手を里緒の背筋に沿って這わすと、里緒は俺の行為に吐息を微かに漏らし、僅かに体をくねらせた。

 何か腹痛に苦しみながらも、ちょっと面白さを感じてしまう何て、我ながら呆れてしまう人間だ。


 俺のサド的な部分が目覚めてしまったのだろうか?いやマゾか?


 なんて思いながら苦しみの中で”苦笑い”を思わずしてしまうが、手は更に下へと這わせることは忘れない。

 やがて、両手が半分だけお尻を隠しているピッチピチの布、パンティーに再び手が届く。

 これが男の性なのだろうか、幾ら苦しくてもパンティーを後ろから触れるとこれをせずにはいられない。


 俺は腹痛の谷間に四本の指を下からパンティーの仲へと滑り込ませ、上に少し持ち上げ親指を上からねじ込み、腰ひもに当たる部分を鷲掴みにした。

 そして、上に引き上げる。


 男として生まれたからには。一度はやって見たい、即席Tバック・・・。


 脂汗を流しながら、それが見事に完成させた。

 それに、若干であるが弱まった腹痛の中で感慨深いものを感じるが、その姿が俺の視覚に入らないのが残念でならない。


 しかし、その満ち足りないものを埋めて余りある事が同時に起こったのだ。

 里緒が少し仰けに反り顎を上げ、そして、唇を開くと、


「ま、まほ・・・」


 艶やかな顔に、久々に聞く”禁句”。

 囁く程度ではあったが、里緒の口から漏れたその言葉は、至近距離の俺の耳には確かに届いた。


 薄目を流した里緒の顔が俺を招いている。

 俺はたまらず。唇を里緒の唇に重ねる。


 さらに即席Tバックを上に引き上げると、俺を求めるかの様に重ねた唇が軽く開きながら動き出す。


 この接吻と言う行為は俺にとって肉体的に何処かが気持ちよくなる訳ではない。で、あれば意味が何処にあるのか解らないが、ただ何故か心に触れてくるのは確かである。


 これが、AVビデオの演技として認められるのあろうか?


 しかし、そうは思うが、今の俺には心が求めて止めることが出来そうにもない。

 何故か腹痛の中でも心が気持ち良くなり、物体としてではなく心として里緒を求めている。


 心を近づけたい欲求は純粋に体を近づけたい性的欲求となり、Tバックを作っていた両手を放し、思いっきり里緒の体に巻き付け強く抱くに至る。


 その心を里緒も感じてくれたのだろうか?それとも演技なのか?

 里緒の手の温もりが、いつからか俺の背中で感じられている。自らの意思で俺の背中に手を回し、引き寄せているのだ。


 俺はその事実に陶酔し、陶酔し・・・陶酔しかかったが、こんな時に腹痛が激痛へと姿を変えた。


「グググ、ゴロゴロ・・・」


 俺の腸内の発酵が恐らく腸を風船の様に膨らませているのだろう。

 肛門は今にも開門しそうである!


 危うい!限界が近い・・・。


 我慢だ!頑張れ俺。頑張れ肛門さま!


 我慢をする程に全身が震えだす。

 もう撮影時間はそんなに鋸っていないはずだが、時計は俺の位置からは見えない。ハイテク自動撮影カメラの”カメムシくん”の点灯が青から赤に変わると撮影は終了である。だが、まだランプは青のままだ。

 

 出る、出てしまう!


 が、我慢を・・・、いやだめだ!!


 もう選択の余地は残されてはいない。

 もう勝負を出来る状態ではなくなってしまった俺は一瞬の判断で最悪を回避していた。

 

「ごめん・・・」


 無視の鳴くような声でそう一言を残すと、俺はトイレに全速で駆け込んだ・・・。


 <つづく>

 

 


思ったように日本語が操れないもどかしさに苦しんでおります。

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