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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第1章 昇天
4/73

まほまほ!

”まほまほ”とは、いったい?

 俺”千乃 工口くぐち”は、高校の帰宅中に乗り込んだバスで、思いもよらず女子高生との二度の身体的な接触を味わってしまった。


 暫しバス中で、理性と煩悩との戦いを繰り広げていたのだったが、乗客の降車により、止む無く彼女との距離を取らざるを得なくなってしまった。


 だが、この距離をとった事が、返って俺を目覚めさせてしまったのだ。

 俺が彼女の容姿に気付いてしまったのだ。


 彼女の可愛さは俺の二度の接触の価値を高め、ついに俺はその記憶の回顧で、若さの暴発を限界点に近づけてしまったのだ。


 どうする、工口くぐち


☆★ 第 4 話 ♂ ☆★

★☆ ♀ まほまほ! ★☆


 逃げると言う行為。


 人はこれを卑怯な行為と扱うことが多い。しかし、相手次第によっては、賛同して頂きたいものである。 (by 工口くぐち


 そうだ、こんな時は物理だ。苦手な物理の公式を唱えるんだ。

 こんな時は、一番力を発揮出来ない宿敵に気持ちを移すんだ。

 俺は、頭の中の欲望、煩悩、夢見心地と言う雑念からの”解放”を、嫌悪の極みである”物理の公式”で包み込み、そこから逃避をする計画を企てた。


 工口くぐちよ、公式を恐れよ!


 俺は必無我夢中で、必至に公式を唱えた。

 F=-kx、F=μN・・・


 いかん、これは弾性力と摩擦力の公式だ。煩悩が残っている。これではだめだ。

 V=kq/r・・・俺は必死に唱えた。すると、


 俺の頭の中で、好色色ピンクいろの雑念に、嫌悪色あまちゃいろの”物理の公式”の二つが混ざり込む。


 次第に頭の中では、その二つの区別がつかなくなっていく。そして、面倒になった俺は、二つから逃避癖を図ろうとする。


 そうだ、そのまま逃げ込むんだ。

 いいぞ、いいぞ、逃げてしまえ。

 

 いつの間にか頭の中全てをがボ~ッとして行き、次第に収束していた若き血潮が体内で分散していくのを感じていった。


 出力が急激に落ちて行く。

 今や、俺の”僕”は50%前後、半○ち状態である。

 これは、解放状態が解けたことを意味する。


 これで、ホッとひと安心だ。


 バスの中はには危機を切り抜けた平穏な空気が蘇った。

 野鳥のさえずりが聞こえてきそうだ。


 清々しい、一仕事した後は何て清々しいんだ。

 人ゴミのバスの空気が、山の朝の様に美味しい。


 俺は大きく深呼吸をした。


 暫くの平穏は俺に安寧の時を与え、このまま一時の夢は醒めるかと思われた。


 だが・・・バスは侮れない。


 バスはそれから二つの停留所を過ぎ、三つ目のバス停で止まると言う行為に出たのだ!

 バス停に二人のお客がバスを待っていたから、当然のことである。


 俺の”僕”はこれに反応した。

 ”僕”の頭はこの状況に瞬時に反応し、心拍数を上げていく。

 俺の上の頭も、既に混雑したとは言えないバスの中ではあるが、微かな期待をしている。


 いかん、まだ、解放が完全に解けていなかったようだ。

 一度上がった出力は、再浮上し易いのか?

 勉強になる・・・。


 もちろん、バス停で待っていた二人は、当然の如くこのバスに乗車して来た。


 背中に全神経を集中させている俺がいる。

 悲しいさがだ。


 しかし、そんな悠長なことを言っている場合でないのである。

 出力がMAX時より下がったとは言え、このさがと言う備畜タンクに蓄えられる栄養は、既に満タン寸前なのである。

 これ以上、栄養が与えられることは、体内での保持量を超えてしまい、危険な状態は免れまい。


 その危険状態から己の心身を守るには、出力を再び自ら上げ、二回目の解放をするしかないのである。

 それは、○○砲に繋がることになることを意味する。


 危険である。

 つい先程回避したことが無意味になってしまう。

 そんなリスクは背負いたくない。


 俺が初めて覚醒を迎えてからの数年、過去の経験値から言って、満タン寸前はまず間違いないだろう。

 あと、どれだけ持つことか・・・。 


 だが、俺の不安を他所よそに、聞きわけの無い奴がいる。

 これでも望むのか、俺の性よ、俺の”僕”よ!


 とは思うものの、70%は妄想であり、実のところ、そこまで心配をしていなかった。


 現実のこのバス内の人口密度からでは、欲望で終わることは確実。再接触をするには非常に無理があるのだ。まず、危険は免れるだろう。


 内心、客観的に安心をしていた。

 そう、只の儚い夢と・・・。

 

 しかし、予想に反した危機が俺を待っていたのであった。


 彼女は二人の乗車を妨げる位置に敢えて、己の座標をずらし、自ら背中に押し圧を受けたのであった。ホンの軽い圧力であったように見えた。

 しかし、彼女は愛くるしい顔を赤くし、臭い芝居でよろめきながら、不自然にも俺に迫って来たのだ。


 明らかに彼女の意思である。

 と、言うことは一連の接触も紛れもない彼女の意思であると予想される。


 彼女は自分の意志で俺の左側面に食らいついた。


 来た~!

 

 と、正直思ったのだが、彼女の意思で来たことに素直に喜べない俺がいた。

 俺の脳裏でプロテクターが働いたのである。

 これは重要なことである。


 ”不可解?”なのだ。


 幾ら何でも、ここまで来ると、彼女の行動は不可解以外の何物でもない。

 人間ウォッチングを趣味としている俺としては、疑いを持ってしまうのである。


 俺は考えた。

 この彼女の行動は、何かの罠ではないだろうか?

 ドッキリか?

 いや、この俺にドッキリを仕掛けて何の意味がある。俺は芸能人ではない。

 

 もしかして、彼女のお遊びか?

 俺の脳裏をそんな疑いが過っていく。


 自分から寄って来て、カモの男を痴漢扱いをして楽しむ女子高生がいると言う話を聞いたことがある。

 罠かもしれない。先程までの一連の行為は撒き餌だったのかもしれない。


 悲観的な境遇で育った俺は、身を交わそうと言う気持ちが脳裏に浮かんだ。


 左側面にへばり付く彼女を引き剝がそうと・・・。

 だが、だが駄目だった。


 身体が動かない!


 すっかり、俺はあの感触を知ってしまっている。

 彼女の行動を避ける術を、今の俺は持ち合わせてはいなかったのだ。


 こうなったら、仕方ない。

 叫ばれたら叫ばれた時だ。


 男に危険は付き物だ。それを覚悟で受け止めるのが男の性と言うもの。

 為されるがままだ。


 彼女は俺の脚を見事に挟み付けて行く。


 急速な栄養補給に、俺の血潮は急激に一点に収束を始めた。

 可愛いと言う付加価値を知ってしまった以上、その加速度は大きい。

 限界への挑戦だ!


 俺は、さらに迫りくる彼女を敢然と受け止めたのだ。鉄の棒の様に。


 すると、俺に全身を預けて来た彼女が俺の耳元で、真っ赤な顔で唇を震わした。

 

「ま、ま、まほまほ~・・・・」

 

 や、やっぱり、”まほまほ”って言っている。

 間違いない。


 しかしだ、何なんだ”まほまほ”って?


 だが、それを確かめる程の余裕は俺には残されていなかった。

 俺の鉄棒の出力はすでに110%は有に超えている。二回目の解放、すなわち○○砲発射まで後10%もない。


 げ、限界がやってきた。

 

 拙い、拙い、拙いぞ~、こ、こんなところで。


 どうする、どうする、どうするんだ~!


 立ちあがるんだ、正義の心よ。今お前の為すべきことの為に。


 そうだ、思い出せ。

 こんなところで、この先の人生を狂わすわけにはいかない、俺には受験がまっているんだ。

 その先の女子大生との合コンも控えている。


 こんな、こんなところで、俺の人生を終わらせてた、たまるか~!!


 うぉ~ぉ~ぉ~!!!


 俺は、頭部、膝頭、鼻の頭、”僕”の頭の穏健派の部分、全ての理性と道徳、それに、未来への妄想を振り絞り左手を”降りますボタン”に手を伸ばした。


 そして、苦しみの中、本来降りるバス停の二つ手前ではあるが、そのボタンを押すことに成功した。

 最後の一歩は、バスの揺れではあったが。


 ・・・。


 バスが、停車した。

 ”ピンポン”と”降ります音”を鳴らして、降りない勇気など俺にはない。バスのボタンのプレッシャーは何より強い。


 俺は鞄で前を抑えながら、そろり、そろりと、足音を立てない様に、降車口へと向かった。


  

 頼む、ここで変な叫びを上げないでくれ!

 俺をもてあそんだのではありません様に!


 頼む、頼む、一生のお願いだー!!


 そう彼女に願ながら・・・。


 ・・・。


 バスを降りた俺は、まだドキドキと、心臓の高鳴りを抑えきれないでいた。


 一応、何事もなかった。だが、この場を早く離れなれた方が安全だ。


 俺はバスが発車するエンジン音を確認するまで、何事も無かったかの様に帰路を進んだ。

 すると、バスは、間もなくエンジン音を通りに響かせた。


「発車した」

 俺が発射しなくて良かった・・・。

「終わった」


 立ち止まった俺を、先程まで俺が乗っていたバスが俺を追い抜いて行く。安心した。

 俺はそれを確認し、大きく深呼吸をした。


 空気が旨い!


 そして、再び、歩き出す。明日に向って。


 よかった、ホンと良かった。

 次からは、自ら危険は避けることにしよう・・・。


 俺は未だ喉元にある後悔に反省しながらも、今後、2~3か月分の栄養は充分に頂いたてしまった喜びに、爽快勘が満ちていた。


 早く家に帰り、陣地で○○砲の射撃訓練をするのだ!


 既に、後悔は喉元に僅かに引っ掛かっているだけの様だ。

 まあ、いい。結果オーライだ、早く帰ろう。

 楽しみはまだ残っている。

 しかし、この鞄で前を抑える姿は、いかにも不自然極まりない。

 

 いかにもだ。

 見る人が見れば一目でばれてしまう。


 俺は直ぐに高速で思考を巡らした。もちろん、この不自然な状況を自然に帰す方法をだ。


 流石に受験生だけのことはある。直ぐに名案に辿り着いた。

 さすが、日々使っている頭は回復、いや回転が速い。


 俺は、早速左のポケットに手を突っ込むと、”僕”の首根っこを人差し指と中指の二本で押さえつけてやった。


 どうだ!


 だが、この状態は客観的な目線で、一度確認する必要がある。


 俺は”僕”と二本の指の膨らみの繋がりが、外見で認識出来ないことを確かめ様と、通りを渡った数件先のコンビニに移動した。


 そして、ガラスに己の姿を映して気が付いた!


「あぁぁ~っ、うそだろ~」


 何と後には、


「”まほまほ”が!」


 まさか・・・。


 <つづく>

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