表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
34/73

AV界での俺は”なに”者?

いよいよ、工口くぐちは初のAV撮影大会出場の日を向えた。

初日は相方探しの”お願いします”である。

 俺、千乃工口ちのくぐちがやって来たこのAV界という世界は、全部で48ある”部”と言う地域で構成されている。


 さらに、この”部”と呼ばれる一つの地域には、複数の”地区”が存在している。

 例えば、俺の居る27部は”あ地区”から”と地区”までの20の地区がある。50音順である。


 解り易く言うと、”AV界”が”国”に相当し、”部”が”県”、”地区”が”市町村”の様なものである。


 そして、各地区には干支の名前が付けられた街があり、その街の一つ一つはに基本的に1つの役場が設置されている。


 毎週開催されている”AV撮影大会”は、この”部”と言う単位が基本単位となって開催されており、今回開かれる新人大会は第27部の単独大会である。

 因みに先週のオープン大会は1~48部の全部合同の開催であった。


 と、言うことはだ。

 今回の大会は、前回俺が驚いたイナゴの大群の様な大騒ぎの大会にはならない筈である。


 恐らく、俺は里緒のことを簡単に見付けられることだろう。


 しかし、簡単に見つけたからと言っても、俺が里緒に対して何の支援が出来るかは全くのノープランなのだ。もしかすると、指を加えて見ているだけになるのかもしれない。


 だが、俺の決意に変わりはない。

 俺は里緒の為に全力をそそごうと決めたのだ。少しでも手助けが出来て、彼女が無事相方を見付けることが出来ればそれでいいのだ。


 ただ問題は俺が手助けをしていることが分ると、あの里緒の性格である。返って拒絶するであろうことは容易に想像がついてしまう。

 俺の存在は、里緒には気付かれない様にしなければならないのである。


 更にだ。

 校長からも言われた通り、俺が”へ高”の生徒であることは、誰にも知られない様にしなければならないのである。

 よって、俺は誰からも正体を知られていない”謎の人物”でなければならないことになる。


 そこで取り敢えず俺は変装をすることに決めた。

 頭には昨日買ったアルペンハットを被り、顔には白い風邪ひきさん用のマスクをすることにした。


 これで里緒だって、簡単には俺のことに気づかないであろう。

 おそらくは・・・。


 しかし、この怪しい姿では俺に近寄る女性等、一人もいないのではないだろうか?

 拙いだろうか?


 いや、そんな事はどうでも良いのだ。今回の俺の目的は里緒の応援であるのだから・・・。


 俺のこの気持ち、かなりマジである・・・。 

  

★☆ 第 26 話 ★☆

☆★ AV界での ☆★

★☆ ♀ 俺 は ♂ ★☆

☆★ ”なに”者? ☆★


 そして、日曜日がやって来た。

 今朝はちょと肌寒いが天候は見渡す限り雲一つ無い快晴である。心身ともに引き締まる思いだ。

 だが、今日の俺の臀部にある口は締ってはいない。緩い・・・。


 俺に襲った緊張は、例の如く腸内速度を活発にし、今日も朝から3度もトイレのお世話になってしまった。


 しかし、それも3度で打ち止めである。

 出るところまで出してしまえばもう安心!

 これは俺の18年の経験値からである。


 それでも、取り敢えず念の為にお腹だけは冷やさない様にするとしよう。

 今日は野外活動が多いのだ。更に大切な日なのである。

 粗相が有っては絶対にならないのだ・・・。

 

 俺はお腹に細心の注意を払って家を出たのであった・・・。


 と言うことで、もちろん今日は、”第27部 第一回 サラ18歳新人大会”の初日である。


 今日のAV撮影の相方探し”お願いします”で、見事に相方を見つけることが出来れば、晴れて明日のAV撮影大会に進める分けである。

 俺は何としてでも里緒を本戦である明日のAV撮影大会に進ませなければならない。


 間もなく午前11時である。俺は既に集合場所に来ている。

 昨日、大会の参加登録直後に、AV用子機にて集合の時間と場所のメッセージが届けられた。その時間である。

 しかし、そのメッセージでは本番の”お願いします”が始まるのは、12時からと言うことであった。


 本番までには大分時間がある。

 これから何らかの説明、もしくはセレモニー等があるはずである。


 通常は面倒な事は苦手なのだが、今回は別である。

 俺としても、何らかの説明があってもらわなければ困るのである。


 この大会、全く勝手が分らない上に、”御法度”を犯せば重大な罪となると言うことが昨日分ったのだ。

 それに、昨日読んだ大会規約には各大会の詳細については何ら書かれてはいなかったのである。

 情報は一つでも多く知りたいところである。


 俺は些細なことも聞き逃さない様にと、会場に来てから常に集中を続けていた。


 その説明を”27部そ地区羊役場”で待っているのは、もちろん俺だけではない。他にもいる。

 

 ただ、その人数が余りにも少ないのである。俺を含め8人の女性と6人の男性が集まっているだけである。その中に知っている顔はいない。

 と言うことは唯一大会参加で知っている里緒の姿が無いことになる。

 

 一体どういうことなのだろうか?

 確か塩南先生は200〜300人程度の人が参加すると言っていたはずなのだが・・・。


 変装しているとはいえ目立てない俺は、この状況に不安を抱きながらもキョロキョロと少し離れた太い柱の影から辺りの様子を眺めていた。

 もちろん、不安でこれ以上お腹を壊さないようにと、左手で常にお腹を温めるのは忘れてはいない。


 すると、そんな俺の名前を後ろから小声で呼ぶ者がいる。


 変装している俺に何故気付くんだろうか?


「千~乃さん、不安そうな顔して・・・。もう、頑張って下さ〜いよー。”そ地区羊役場”全員が応援してますですよ〜」

  

 振り向くと、黒ブチメガネが会う度に卑猥度を増していくこの役場の住民課窓口の女性が、俺と同じ様に腰を屈めて立っている。


「や~っぱり、変装してきたんですね」

 彼女は成る程と言う顔をしている。


「何で、分ったんですか?」

 俺が少し驚いて聞くと、当然とばかりに胸を張って即答した。


「そ~れ・は、役場には大会課があって、JRAV会主催のAV大会の運営の仕事もあるんですよ。

 今回の大会でこの27地区羊役場に集合するのは14人なのよ。ほら、千乃さんを入れて全員が集まってるでしょ。

 当然役場としては全員の名前を知っていますから~、・・・ねっ、他の13人に千乃さんらしき人はいないでしょ」


 そう言うことであった。

 さらに何故、この役場に14人だけが集合しているのかを教えてくれた。


 AV撮影の”相方”は、抽選的な偶然性と本人の意志の半々で組める様にと、”お願いします”と言う大会を撮影大会の前日に設けているとのことである。

 これは誰にでもチャンスがあり、且つ、努力が必要にする為のものらしいのだ。


 つまり、この時期の新人戦は人数が少ないので、示し合わせて組めない様にと、”27部そ地区”にある12の役場に参加者を分けているとのことである。


 里緒が此処にいないのはそのせいなのである。 


 会場も少人数の為、先週大会が行われた空まで続く白い塔”ミンジュ塔”から始まる幅が100m程もある大通りではなく、千々怜木公園ちぢれぎこうえんで行うと言うことである。


 彼女の話では、千々怜木公園ちぢれぎこうえんは少人数の大会の”お願いします”には適した場所だと言うのである。

  

 彼女は、さらに小声で続ける。


「それはそうと、その変てこな格好はちょっといただけないで~すよ~。

 それって、へ高の生徒達に正体がバレないようにって校長先生からの指示なんでしょ~」


 彼女は勘がいい。その勘が更に俺の変装の粗を見つけ出したようだ。


「もう、学校もちゃんと変装まで手伝わないとねン。そんなセンスじゃあ、女の子が寄ってこないんだから~・・・」

 やはり、思った通り俺の変装には問題があるようだ。


 しかし、今回の目的は里緒への応援である。格好何てどうでもよいのだ。

 とは言っても、せっかく応援してくれている彼女にそんなことは言えない。

 それに、この世界のファッション感覚は彼女の方が圧倒的に解っている。不自然の無い格好にこしたことはない。


「そうですか?」

 

 彼女は俺の返事に頷くと、俺のマスクを外してくれ、自分の掛けているメガネを俺に掛けた。

 度が全く入っていない。彼女のメガネは実用目的ではないらしい。


「う~ん?

 以外と似合ってるわね。そうね~後は・・・」


 そう言い、手にもっている二つの紙袋の一方からカツラとマフラーを取り出した。

「これで、髪の毛とあごの骨格を隠すの、ね」


「帽子じゃ、駄目ですか?」

 一応おれも髪の毛を隠す為に帽子を被って来たのである。


「もちろんよ!モミアゲからウナジまで隠さないと。はい、いいから付けて見て」


 そう、断りずらい笑みを浮かべて言ってくると、彼女はさっさと俺の帽子を取り、俺の頭にカツラを被せた。

 耳が隠れる程度の茶髪で、大き目のウェーブのかかったものである。

 そして、顎の線が隠れる様に薄手のマフラーを俺の首に巻きつける。


 鏡がないので自分の姿が良く分らないが、気恥ずかしい感じが湧いて来る。

 それに、彼女が、


「ん~まあまあね。」

 及第点を俺にくれた。それ程不自然では無いようだ。


 しかし、ここまでの変装が必要なのだろうか?

 不思議である。

 それに、それよりも不思議なのは明らかに前もって準備して来ていることである。


 俺はそれを聞いてみようとしたが、


「後ね、これが撮影大会の時用の変装」

 そう言って、二つ持っていた紙袋の内、カツラとマフラーを取り出した袋とは別の袋を俺に渡して来た。そして、


「じゃあ、頑張ってね。明日絶対にビデオ観ますから・・・」

 そう、小声で言うと手を振って急いで帰って行った。


「あ、ありがとうございます」

 質問をする間が無く、俺は咄嗟にお礼を口にしていた。 


 そう言えば、今日の彼女は私服である。

 今日は日曜日だから、役場では大会課以外の課は休みのはずである。

 彼女は大会課ではなく住民課なのだ。


 と言うことは、わざわざ俺の変装チェックの為にワザワザこんな準備までして休みに来てくれたことになる。


 相方になれば別だが、見ず知らずの人が一々俺を覚えているのだろうか?

 大げさ過ぎる気もする。


 個人の判断であろうか?


 それはないだろう。意味がない。


 と言うことは、そこまでしても俺の素性がバレない様にしなければならないと言うのが、住民課としての判断と言うことになる。


 俺はヘ高の生徒のみばかりではなく、役場にチェックされる程に住民の混乱を招く可能性がある存在と言うことになる。


 それって・・・、ホントなのか?


 そうなると、俺はもっと危険人物としての自覚が必要と言うことになるのだが・・・。


 一体、俺はこのAV界で何者なのだ?


 何の危険性があると言うのだろうか??


 何か変な方に動いて来た気がする・・・。


 そんなことを考えている内に、今回の大会”第27部 第一回 サラ18歳新人大会”の説明が始まった。


 <つづく>

次第に、AV界と言う世界が何故生まれたかと言うことに迫って行きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ