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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
33/73

一人で前夜祭

千逗家を出た工口くぐち

無事、”AV撮影大会”出場に漕ぎ着けることが出来るのであろうか!


☆今回は初めに登場人物の紹介をしております。本編は☆★マークに囲まれたサブタイトル名のところからです。★

 俺(千乃工口ちのくぐち18歳 男性)が単身AV界に来て、7日が経過しようとしている。

 この短い間に俺は様々な個性と出会い、そして、様々な心に触れることとなった。

 ここで、今後の展開への対策として、主要な個性について一度整理したいと思う。


 まずは、ずっとご無沙汰の・・・。

・ララカー・ミラミ・アポストロ 年齢:未確認だが16~18歳位。まず女性のはず。

 強引に俺をAV界にスカウトした張本人。


 AV界ではラミア様と呼ばれている。(ただ、俺は”まほまほ”と呼んでいる)

 AV界5人のスカウター様の1人で、神の使いとして相当高位な存在。

 空を飛び、異世界間の移動が出来るという凄いところもあれば、ドジで舌っ足らずで相当頼りない。


千逗里緒せんずりお年齢18歳 女性。家号かごう:千逗豆

 (※家号:AV界では、元々は一族の総称で現在では店名や俳優名に使われる)


 俺がAV界に来て初めて話をしたのが彼女。

 俺と同じ ”併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう”、通称”へ高”のAV科3年アルパカ組。

 柔軟体操部部長で校内生徒ランク1位(生徒は順位付けされている)


 利発で清楚な顔立ちのスレンダー系美人。身なりは飾り気がなく質素。

 性格は生真面目。さらに頑固で意地っ張り。


 現在は”G3食堂”を経営している元G3戦士の祖父と二人暮らし。

 行方不明の両親もG3戦士であった。彼女の母”香出かおで”は俺の母”顔出かおで”と、字は違うが同じ名前。さらに、不思議にも共通点が幾つもある。


塩南間子しおなまこ27歳 女性。家号:魚民ぎょみん

 現役バリバリのG2戦士でありながら、”へ高”の教員で2年目。

 3年AV科”アルパカ組”の担任で柔軟体操部顧問。

 昨年新人教員ながらも、部活ランク1位となった。


 いつもふわふわとしており、マイペースを崩さない。よれよれの服装で身だしなみに問題があるが、本気を出すと心身共に光沢を増す。ここ一発に強いタイプ。

 部活動には厳しいと言う噂があるが、俺はそんな所を見たことがない。


宝家棒薔薇たからいえばーばら 27歳 女性。家号:農耕家 愛称”オスカル”

 現在活動はしていないがG3戦士で”へ高”の教員、5年目。

 3年AV科”頂組いただきぐみ”担任。さらに、へ高最大70名の部員を持つマッサージ部顧問。

 昨年の部活ランク2位で、因みに一昨年は1位。


 ファッションモデルの様なスタイルで、いつも黒のスーツに身を包んでいるが、カラフルなオーラを撒き散らす。塩南先生とはAV大学の同期生。


太棒御先たぽうみさき 27歳 女性。家号:家政業 愛称”先っちょ”

 現在活動はしていないがG3戦士で”へ高”の教員。3年AV科”盛組もりぐみ”担任。

 宝家先生と同じ教員5年目。昨年部活ランク3位の畳部顧問。


 白い透きとおる様な肌で、メイド服やお姫様ドレスの派手な格好が好み。

 小柄で供っぽい妙な言葉遣いをするが、何故か宝家先生に対してはめっぽう強い。

 塩南先生、宝家先生とは、AV大学の同期生。


一持握いちもつにぎる年齢32~33位だと思う。男性。

 石焼芋屋をやりながらメジャーAV男優を目指す苦労人。諦めが悪いだけかもしれない。

 俺がこの世界に馴染めたのは彼のお陰。千逗里緒の母親”香出”の大ファンだった。

 やたらと色々なことを知っている雑学王。


稲荷家一子いなりやいちこ本名:珍宝一子。稲荷家は家号。女性。

 年齢17歳だが来週18歳の誕生日を迎える。

 ”へ高”AV科3年頂組。”へ高”の生徒会長であり、マッサージ部部長。

 校内生徒ランクは里緒に次ぐ2位。


 上下とも露出の多い制服を好む派手好きの目立ちたがり屋。

 気取った言葉使いをし、意地が悪いが、里緒は本当は真面目な性格だという。

 母親同士の付き合いから里緒とは幼馴染。里緒に極度のライバル心を持っている。


穴井狭子あないきょうこ 年齢18歳 女性。家号:巫女宮みこみや

 ”へ高”AV科3年アルパカ組。校内生徒ランクは3位。

 肩書きが多く、社会部部長 で”校内AV委員会の生徒代表”。さらに。生徒会主催の”へ高AV祭実行委員会”の審査委員長。生徒内では実質の一番の実力者かもしれない。


 2面性も持っており、表の顔は清楚で頭脳明晰。非の打ち所がないタイプなのだが、裏の顔は・・・まだ俺も掴みきれていない。


その他

・校長 ”併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう”、通称”へ高”の 校長代理。校長が存在しないので、校長代理の報酬のままで、実質校長の任にある。


 背が低くてお人好しだが、実は行動派で校内の制度を次々と改革してきた。

 500万下戦士と、AV界で身分が低いので校長になれないでいる。


林林はやしりん年齢16歳 女性。

 へ高 AV科2年南組 愛称”リンリン”時期柔軟体操部エース候補。


砂万名風琉さばんながぜる1年AV科 年齢15歳 男性。柔軟体操部男子部員 筋金入りの草食系オタク。多分俺をを尊敬してくれていると思う。


島宇摩しまうま1年普通科 年齢16歳 男性。柔軟体操部男子部員 名風琉よりもややましの草食系。彼も俺を尊敬してくれているはずだ。


鉾田矛ほこたほこ1年AV科西組。年齢15歳 女性。柔軟体操部。体が弱く休みがち。

 

 上記人物は押さえていてほしい・・・。

  

★☆ 第 25 話 ★☆

☆★  一人で♂  ☆★

★☆ ♀前夜祭  ★☆


 部屋の中央で仰向けになり、部屋の中を見渡す。

 まだ馴染まない景色に俺は物足りなさを感じてしまう。


 その広さの割には、生活物質が圧倒的に少ない。がらんどうな部屋である。


 俺の心に空虚な空間が広がっているのはそのせいだろうか?

 広さのせいなのか?

 

 いや、それは大した問題ではない。


 では、

 生活感の無い匂いが俺に孤独感を伝えてくるのは・・・。

 緩んでしまった緊張感が脱力感を与えるのは・・・。

 何のせいだ?


 自問するまでもない。本当は分っている。


 部屋を埋める生活物資がない様に、俺の心を埋めるものが欠落しているのだ。


 AV界に来てこの数日、俺は常に緊張していた。正直重く感じる時もあった。

 だが、今、その緊張から開放されたことに喜びは無い。


 今までその緊張感は俺の寂しさを埋めるべく、常にある程度興奮を味あわせてくれていたのである。


 この俺に適度な興奮を味あわせてくれたものは・・・。


 他でも無い。


 ”里緒の存在”である。


 彼女を近くに感じない、意識しない。そんな生活がこんなに空虚であるのかと思い知らされてしまった。


 きっと、見知らぬAV界の生活に馴染めたのは、彼女在ってのものだったのかもしれない・・・。

 正直そう思う。


 俺が今居るのは”第27部そ地区羊役場”の”住民課”が用意してくれた新居である。

 役場から”へ高”方面に徒歩で10分位のところである。

 1LDKの間取りは、12畳位のLDKに、8畳程度の寝室である。


 このアパートには、俺の世界のウイークリーマンションの様に簡単な家具は備え付けである。

 特にAV大会のビデオ鑑賞の設備は、里緒の部屋以上である。もしかすると、異世界からのスカウト仕様なのかもしれない。


 40インチのモニタにJRAV放送受信チューナーはもちろん、立派な音響設備の他にも良く分らない機器が縦型ラックに並んでいる。それに、AVビデオ観賞用のペアのソファーも里緒の部屋にあった物よりも豪華である。


 もう一度、このソファーで里緒と並んでAV大会のビデオを観たいのだが、それは恐らくもう無理であろう。


 里緒は今ごろどうしているのだろうか?

 明日の大会に向けて緊張しているのだろうか?

 

 千逗家を出てしまった俺には知る由もない。


 俺は千逗家を出て3回目の夜を迎えているのである。



 千逗家を出たのは一昨日の夜であった・・・。




 一昨日役場を出た俺は、千逗家に置きっ放しの荷物を取る為、そして、お世話になったお礼を告げる為に新居には直接向かわずに、千逗家に寄ったのである。


 いや、そうではない。

 一番の目的は新居に移ることを切っ掛けに、里緒と話すことであった。


 俺はせめて里緒と一言話をしたい。

 そう思い、里緒の家である”G3食堂”で待たさせてもらったのである。


 しかし、その日の里緒はなかなか家には帰って来なかった。


 俺はまだこの辺の地理に詳しくない為、新居にすんなりと辿りつく自信がない。その上、取り敢えず今夜と明日の朝使うもの位は買い揃えなければならないのである。時間に制約がある。


 それでも、俺は帰って来ない里緒のことが心配になり、千逗家を出れなくなっていた。

 里緒を探しに行こうかどうしようかと、時計ばかり眺めていた。


 そんな時、ご主人が俺を気に掛けてくれた。


工口くぐち君は里緒が母親に連れられて、初めてここに来た時の事を聞いているかい」

 いきなり、そう語り掛けて来たのである。


「えっ、ええ、まあ」


 その話であれば”酉センターモール”の買い物の帰りに聞いていたから凡そは知っている。

 しかし、急に何を話し出すのだろう。正直そう思った。


「そうかい」

 そう確認してからご主人は話してくれた。里緒の小さい頃の話を・・・。


「里緒は小さい頃から、家に来たお客さんが帰る時に、よく涙を流してたんだよ。

 きっと、母親の香出かおでさんが出て行ったきり戻らなかったのと重なってしまうんだろうね。

 

 工口くぐち君が、この家を出て行く時に涙を流しそうで。

 きっと、恥ずかしくて戻って来れないんだろう」


 ご主人の心配は家に帰って来ない事ではなかった。里緒の心の方の心配であった。


「里緒は中学に入った頃から、いつもお別れの時はいなくなるんだよ。

 涙を見せないようにね。

 工口君。今晩もう一晩泊ったらどうだい。そんなに急いで我が家を出ることもないだろう。

 まあ、一人の方が落ち付くと言うこともあるから、無理は言えないんだが・・・」


 そう、ご主人はもう一晩泊まることを進めたが、今の里緒との関係では正直それもしにくい。

 それに、仮にご主人の想像通りだとしても、新居が決まった今ではこれ以上ご好意に甘える訳にはいかない。


 理由が何にせよ里緒が故意に帰って来ないのであれば、今日は出るべきだ。

 それが俺の結論であった。


 俺はこれからも学校では毎日会えるのだ。

 何も永久の別れではないのである。


 しかし、それでも何か里緒とは、遠いお別れになった気になってしまう。

 やはり俺に取っては里緒が断トツの一番なのかもしれない。


 そう思いながら、俺はご主人に丁寧にお礼をすると、G3食堂の重い扉を内側から開けたのだった・・・。


  

 そして、昨日からは学校で顔を合わせても、今までの様に一緒に行動することは全く無くなってしまった。もちろん単語だけの会話もである。


 やはり、せめて里緒と一言会話を持ってから家お出るべきであっただろうか?

 今更ながら後悔してしまう。

 教室で思い切って話し掛けようともしたが、逃げられてしまう。


 そして、部活では尚更であった。

 里緒は次の大会に向けて、終始ピリピリとしているのである。話し掛けようと出来る状態ではないのである。


 今回の”サラ18歳新人大会”という新人だけの大会での成績如何では、校内生徒ランク1位の座から大幅に落ちてしまい、さらにこの柔軟体操部自体の成績にも関ってしまうのだ。


 柔軟体操部部長として、責任感の強い里緒自信として、そして、あの嫌味な女、生徒会長でありマッサージ部の部長である稲荷家一子いなりやいちこの手前、失敗は許されないのである。


 こんな中で、俺のことに気を使わす訳にはいかない。

 ここで俺のすべきは、当面は里緒をそっとしておくことだろう。


 そう思い、俺は敢えて自分から遠ざかる様にすることにした。


 今日の練習は味気のない淡々したものであった。俺がそう感じただけかもしれないが・・・。


 練習が終わると、里緒の壮行会となった。

 

 相変わらず何が起こってもふわふわと、マイペースを崩さない塩南先生の隣には、緊張で強張った表情の里緒がいる。


 塩南先生の話と、後輩からの激励の言葉が終わり、部員みんなでエールを贈った。

 そして、最後に里緒の挨拶である。


「明日から、27部の”第一回 サラ18歳新人大会”が始まります。”お願いします”は明日の正午からです。前回は”相方”を見つけることが出来ず、AV撮影大会には・・・」


 里緒の挨拶の言葉が少し震えている。

 只でさえ男女に消極的なAV界において、彼女は更に”あがり症”なのだ。

 挨拶の段階でこれでは、とても心配だ。


 その心配は、塩南先生も同じの様であった。里緒の後ろに回り両肩に手を当て、リラックスを促している。


 俺はそんな彼女を見て、改めて今回の大会は自分のことよりも里緒にバックアップに回ろう。

 そう決意した。


 だが、それは後付けである。

 と言うよりは、気持ちの出所は里緒に関り合いたい。それが本音である。


 そんな気持ち前後関係はどうであれ、俺は陰から里緒を助けるんだ。

 そう気持ち盛り上がっていた時であった。俺は里緒の挨拶の中の一言が俺に引っ掛かった。


「へ高の代表として、柔軟体操部の代表として精一杯の成績を残します。皆さんも・・・」


 あれ?

 俺は”へ高”の学校代表では無いのである。

 高校生の場合は学校の推薦が必要なのだ。と言うことは、俺は大会に出場出来ないことになってしまう。


 俺が出場するには、里緒に勝ってへ高ランク1位にならなければならないことになる。

 俺がたった今決意した”里緒を応援する”どころか、その真逆ではないか!

 

 俺は大会に出場しなければ、新しい住居を追い出されてしまうのだ。生活費も底を突いてしまう。


 まずい!

 塩南先生に聞かなければ、いや、直接校長 (代理)にお願いした方が・・・。

 そうだ、校長だ。俺に積極的に転入を進めたではないか!


 里緒の挨拶の後に、塩南先生が付け加えた。


「取り敢えず大会の登録は昨日、先生が行ったから安心してねン。後は~、部長ちゃんが思いっきり弾けてくればいいのよン」


 俺は、再び引っ掛かった。

 ”登録”って・・・。


 登録ってなんだ?そんなものが必要なのか?

 明日だぞ。まだ間に合うのか?

 いや、その前に俺に出場の権利があるのか?


 俺は役場で貰った、2冊の本”生活の心得”と”JRAV会大会規約”にまだ殆ど目を通していない。


 拙いぞ、工口くぐち

 俺は不安からの緊張で腹の調子が悪くなって来た。


 さらに拙いの上塗りだ!

 早く確認がしたい。トイレにも行きたい。


 みんなの気持ちが一つになっている最中に恐縮であったが、


「先生、すみません・・・」

 俺は青い顔で、小声を出した。

 すると、塩南先生は、


「あはっつ!うんこさんね。

 ウフッ、いってらっしゃ~い。

 ゆっくり、お茶でもして来ていいわよン」


 物わかりが良過ぎだ。


 何故だ、何故トイレと分るんだ?

 それも大きい方だと・・・。


 それに、お茶とは何だ?

 それよりも、そんな嬉しそうに言わなくてもいいじゃないか。

 緊張に包まれた場が一気に、笑いと和みに変わってゆく・・・。


 しかし、俺にはそれに構っている余裕がない。

 俺は括約筋を目一杯活躍させて、極力平然とした歩行でトイレに向った。


 こんな俺を里緒は軽蔑しているだろうか。そんなことを思いながら・・・。


 便座に着いた俺のお通じは快調に流れていく。

 一気に流れ出た。

 

 よし、用を足せば、次の用だ。

 俺は塩南先生のお言葉に甘えてそのまま校長室に向った。


 校長こうちょうだいりは待ってましたとばかりに、自ら俺にお茶を入れてくれた。

 既に、準備をしていたとしか思えない・・・。


 塩南先生といい、校長といい、一体この人達は俺の心を読めるのだろうか?

 そう思っていると、


「昨日来られなかったので、そろそろ来る頃かと思っていましたヨ」

 腰の低い校長は、そう言いながら応接用のテーブルにお茶を置き、俺に座る様に進めた。


 歓迎してくれるのは嬉しいが、俺はそれどころではない。

 俺の生活と、何が出来るか分からないが里緒への支援がかかっているのだ。


「校長先生、僕は大会には出れないのですか」

 俺は長椅子に座ると直ぐに切り出した。少し声を張り上げてしまった。

 

 が、それにも校長は温和に笑顔を見せると、詳しく説明をしてくれた。


 このAV撮影大会の全ての大会は、18歳以上でなければ出場出来ないことになっている。

 ただ、18歳には高校生が含まれる。


 高校には18歳未満の生徒が殆どであることと、大会の質を下げない為と言う理由で、教育委員会では各校で出場出来るのは基本枠は1名としている。

 それも、学校が責任を持って推薦をすると言うことになっているのである。

 

 だが、例外として地区推薦、特別団体推薦、スカウトはそれに含まれないとのことである。

 俺は場合は、この”スカウト”に該当する。


 ただ例外であっても、そのクラスは”新人”且つ”100万下”と言う最下層の扱いである。その為、出場出来るのは、新人戦か、100万下または、無差別オープン大会に限られてしまう。


 その他注意として、校長からは学校代表以外で出場していることが生徒に分ってしまうことは、生徒達に大きな影響を与えてしまう。更に、スカウトであることがバレてしまうと大変な騒ぎになってしまう。

 その理由で、俺には名前と姿が分からない様に変装して欲しいとの要望があった。

 強勢は出来ないが。とのことである。


 俺はそれを承諾した。


 説明が終わると。時計を眺めた校長が、


「後、締め切りまで30分ですから、今直ぐ登録してしまいましょう」

 落ち付いて、そう言う。


「ホントですか!」

 それなら、それと先に言って欲しいものだ。お腹の調子が悪くならなければ、危く遅れるところであった。


 大会の登録は役場の住民課からもらったスマートフォンの様な装置。名前が分かったのだが、単に”AV用子機”と言うらしい。これでナビに従って登録するだけであった。

 そして、晴れて俺は初のAV撮影大会の出場権利を得たのである。


 昨日はドタバタであったが、そんなこんなで大会の相方探し”お願いします”の前日、土曜日になった。


 AV界では、土曜日はAV課のみが登校することになっている。

 AVに特化した授業のみがあるからだ。

 しかし、一般課が休みなので部活動は無いのである。

 

 授業が終わって部室を覗くと、一人緊張している里緒がいた。

 俺は部室には入らず、里緒を一人にして置くことにした。


 俺は縁の下の力持ちで良いのだ。それに徹しよう。そう言い聞かせた。



 そして、今新居に帰って部屋の中央で仰向けになり、ここ数日を回想しているのである。

 回想することで心を落ち着いて来た。


 そこで、取り敢えず同じ失敗をしない様に”JRAV会大会規約”を読むとことにした。


 そして、読み進めていくと衝撃の事実が記述されていた。

 いや正直安心したと言うか、薄うすはビデオの内容から気付いていたが・・・。


 ”H(本番)と、射精は御法度”なのである。

 

 演技とはいえ、里緒が他の男とHをするのは許せない。

 せめて最初は俺でありたい。

 (そう思ってどこが悪い・・・。)


 それはそれとして、更に重大な一文に廻り合ったのだ。


 御法度を犯すと当然罪になる。それが相当に重いらしいのだ。


 これは大変である!


 里緒のサポートが一番だが、里緒が早々に相方を見つけた場合、俺も”相方”を見つけることになるかもしれないのだ。

 そうなると、待ちに待った、いや待望のどっちも一緒だ。とにかく全裸での絡みの撮影なのだ!

 

 俺はAV界で育ってはいない。それに、残念ながら今までの人生で、そんな男女の絡みに恵まれてはいない。


 慣れていない。


 はっきり言って初めてなのだ。


 誤射してしまう可能性がある。


 拙いぞ! 

 自分の身の安全を考えなければならない!


 その為には過剰なエロルギーを放出しなければ、お縄になってしまう。


 危険だ・・・。

 相当危険な大会だ!!


 この対策で思いつくのは一つである。

 もちろん俺はその対策の為、思う存分前夜祭を行った。


 流石にここで、里緒をおかずにするのは人間的に問題がある。

 ここは、財布に優しい無料チャンネルで昔のG1大会を観ることだ。


 今の俺にはこの体操チックな絡みでも、裸体であるだけで充分である。


 やはり、一人暮らしで良かったのかもしれない・・・。


 <つづく>


長くなってしまいました。

次回はもう少し短く切りたいと思います。

また、読んで頂けると嬉しく思います。

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