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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
32/73

第3希望はカーブもキレる

工口くぐちに接触して来た、穴井狭子あないきょうこと言うクラスメイト、彼女の目的は?

 里緒(千逗里緒せんずりお)との距離が遠ざかるに連れて、偶然にも俺、(千乃工口ちのくぐち)の人気は上がっていく。


 アルパカ組では”天才現る”的に持てはやされ、柔軟体操部では尊敬の眼差しだ。


 もちろん、このAV界に来て俺の頭が急激に良くなった分けでもは無ければ、残念ながら人徳が高くなった訳でもない。


 この世界の高校の学力が、AV撮影に力を注いでいる分だけ俺の世界よりも当然低いだけのことであり、それに、柔軟体操部で尊敬されているのも顧問の塩南しおな先生に俺の世界の情報を提供しただけのことである。

 

 そのお陰で、不本意にも来月の”へ校AV祭”の実行委員にも選ばれてしまった。


 だが、そんなことは大した問題ではない。

 問題は俺の人気うんぬんよりも、里緒との距離が遠ざかって行っていることである。


 偶然とは言え俺のこの”人気上昇現象”、里緒の眼にはどの様に映るのだろうか?


 俺は誰よりも里緒一人からのスペシャル人気第一希望なのだ・・・。


 しかし、もしそれが無理なら、この際、第3希望でもいいかナ・・・。

  

★☆ 第 24 話 ★☆

☆★ 第三希望は♂ ☆★

★☆ ♀カーブも ★☆

☆★  キ レ る  ☆★


 元女子高であった、この”へ高”だけなのだろうか?


 このへ高の男子は揃いも揃って、みんな小さな虫も食べない草食系オタクである。

 殆ど女子に話し掛けているのを見たことが無いのだ。


 と言うことは、逆も真なりだ。恐らくこのAV界の女子も男女間については消極的なのだと思う。


 だが、それでも女子の方がまだマシである。男女間のことはお互い様なのかもしれないが、全ての校内活動は女子が男子をリードしているのである。

 先程まで出席していた”へ高AV祭”の実行委員会も男子は俺を含めて3人だけである。


 もちろん、柔軟体操部で俺と”へ高AV祭”の実行委員会に出席していたのも女子である。

 2年AV科南組の”リンリン”こと林林はやしりんである。


 彼女も消極的なのか、俺と殆ど会話をしてくれないのである。

 会議中も俺の言葉には、俯いて頷く程度に返事をするのみである。


 最初俺は嫌われているのかと思っていた。ところが、そうでないことが少し前に分ったのだ。

 むしろ、俺の手応え的には少なくとも人間的な好意は持たれている様なのである。

 決して買い被りではない。


 なぜならば、委員会が終わり、柔軟体操部の部室である”第一スタジオ”に戻る途中で、辺りに誰もいなくなった瞬間に・・・。


「先輩って、他の男子とはちょっと違いますね・・・。頼もしいっていうか~、その~今度、今度エロについて、教えてもらえないでしょうか」


 恥ずかしそうに、そう言って来たのである。


 りんりんは赤毛の奇麗な小柄な女の子で、いつも里緒に出欠確認の報告をする子である。

 部活では物凄く元気な子なのだ。


 と言うことは明らかに人目を気にしている・・・。そうとしか思えないのである。


 それに関連して、俺にはこのAV界の高校生で気になることが一つある。

 それは、”へ高”に限らず男女交際らしき姿を、一度も見たことがないのである。


 と言うことは、どう言うことなのだ?


 それは、男女交際を見られることが恥ずかしと言う感覚が異常に強いと言うことではないのだろうか?


 この惜しげもなく人前で色んなものを露出し、非常にアクティブに男女が絡む”AV撮影大会”と言う大会が存在するにも関らずである。


 それって、不自然ではないだろうか?

 俺にはこの感覚、大いに疑問である。


 その為、俺の世界では消極的な部類であったこの俺が、このAV界と言う世界では、相対的にエラく肉食動物になってしまっているのである。


 平気で女子に話し掛けたり、目を合わせたりしているのは俺くらいのものである。

 話すと言っても特にナンパ的な行動を取る訳では無い。校内生活上の必要な会話と、挨拶程度のコミュニケーションである。

 それに、平気で目を合わせるは俺の習性だ。


 その程度でさえも俺は良い意味で特異な目で見られ、俺の周りには人が集まって来るようになって来たのだ。主に男子だが・・・。

 それも、偶然だと思うのだが、再び里緒と不仲になってからである。


 りんりんが今、俺に言った”他の男子とは違っている”と言うのは恐らくそう言うことなのだと思う。


 俺がりんりんに、


「もちろん」

 そう一言応えると、りんりんは嬉しそうな顔を見せてくれた。

 

 やっと、りんりんと親しくなれる。そう思ったところであったのだが、第一スタジオ二階の部室(屋根裏部屋を含めると3階まである)に着いてしまったのである。


 誰も居なければ、まだ話が弾むところであるが、ぽつんと一人っきりでたたずむ人影が見えるのだ。


 それは、柔軟体操部部長の千逗里緒である。


「お疲れ様・・・」

 里緒はりんりんに向いそう声を掛ける。


 もちろん俺とりんりんの二人に掛けた言葉だと思う。恐らくはだが。

 むしろ彼女の意識は俺の方に向いている様に見えるのである。


 それに、りんりんは里緒と俺を交互に目を配りを見せる。すると、


「委員会の報告は明日します」

 そう言って、慌てて部室を出て行ってしまった。


 ちょっと待って、二人にしないでくれ~!と言いたいところだが、口が裂けても言える訳が無い。

 広い部室には、俺と里緒の二人になってしっまたのだった。

 気まずい雰囲気が流れる。


 もしかすると、りんりんは既にこの雰囲気を感じ取り、耐えられなくなって慌てて帰ったのかもしれない。


 りんりんでは無いが、俺も帰りたい雰囲気だ。

 と、言うよりも今日は本当に俺も急いで学校を出なければならないのだ。

 今日は役場に寄って俺の新しい住居の鍵をもらわなければならないのである。


 これで、千逗家での里緒との同居生活も終止符を告げることになる。

 複雑な気分だ・・・。


 俺が静寂の中、思い切って、


「里緒・・・」

 久しぶりに呼んだ呼び捨ての名前と、


「今日・・・」

 言いにくそうに口に出した里緒の言葉が重なってしまった。

 

 お互いに言葉を飲み込んでしい、緊張した時が流れる。

 そんな一時の間を破ったのは里緒が先であった。


「・・・なに、・・・先に言って」

 気まずい顔が、出鼻を挫かれた不機嫌さに変わって行き、その雰囲気がヒシヒシと俺に伝わってくる。

 が、俺は思い切って切り出した。

 

「うん、今日は役場に寄るから、その~、先に帰って欲しいんだ・・・」

 会話こそ単語で、二人の間には常に物理的に一定の距離があったが、俺と里緒は毎日一緒に登下校をしていた。


「鍵・・・」

 里緒の口元が微かに動いて、かすれた里緒の声が聞こえた気がするが、それは次の言葉で消されてしまった。


「言われなくたって帰るわよ。あんたを待ってたわけじゃ無いんだから、委員会が終わるのを待ってただけなんだから・・・部長として・・・」  


「ごめん」

 謝ることが適切かどうか俺には分らないが、俺を待っていたことに変わりはない。

 役場が閉まるまで時間が無いので、そう一言いうと俺は急いで部室を飛び出した。

 

 何かした分では無い。だが、何となく後味の悪さを感じてしまう。


 俺が今、義務感の様に役場へ急いでいるせいなのか?

 こんなに急ぐ必要があるのだろうか?

 どうしても今日から一人暮らしをしなければならないのか?


 そんな疑問もあるが、俺は千逗家の居候なのである。

 家を出るだけの準備が出来れば、直ぐにでも千逗家を出る努力をするべきである。


 でも、それは全て形式ばって考えてのものである。

 必ずしも、里緒やご主人がそれを希望しているのかどうかは、正直なところ俺には分らない。

 

 しかし、二人の本意は仮に言葉を耳にしたところで想像でしかないのだ。

 正直な心かどうか、俺には分らないのである。


 であれば、どちらにしても・・・これが常識なのだろう。

 きっと・・・。



 俺が”への路学園前”バス停に急ぐと、”第27部 そ地区羊 役場”行きバスにぎりぎり間に合うことが出来た。

 俺がバスに掛け込むと、その後にもう一人バスに掛け込んで来る気配を感じた。

 若い女性であることは本能、いや鼻をくすぐった風で気がついた。


 だが、以前の俺であれば直ぐに振り向くところだが、俺の中の女性の価値が低下しているのか、或いは里緒とのことがあったせいなのか、俺にも分らないのだが余り気にせず一番後ろ座席に着いた。


 すると、その女性も俺の後ろを付いて来ていたのである。


「千乃くん、隣に座ってもいい?」

 そう声を掛けて来た。


 顔を上げた俺の前には、防虫剤の香りがしそうな位にまっさらで清楚な女性が立っていた。

 もちろん実際の香りは防虫剤ではない。その反対だ。雄の成長を促す香りである。


 彼女は同じアルパカ組の穴井狭子あないきょうこである。


「えっ、あ、ああ」

 否定の理由はない。

 

 彼女は社会部部長であり、生徒会主催の”へ高AV祭実行委員会”の審査委員長でもある。

 これは、先程まで彼女もAV祭実行委員会に出席していたので分かった事実である。

 

 俺の知っていた情報では、学業だけで言えば生徒会長の稲荷家一子いなりやいちこと双璧であると言うことだけである。

 もちろんAV祭の個人成績を含めれば、里緒がトップである。


 彼女は見た目も行動も絵に描いた様に真面目である。 

 ”へ高”はブレザーの下は自由である。何を着てもいいことになっている。にも関わらず、彼女の服装はいつも少しの遊び心も無い、高校生の正装と言っても過言ではない服装なである。


 因みに今日の服装は、今日一日着ていたとは思えない位に全く着崩れの無い制服に、中には純白で飾りの無い素朴な白のブラウスである。


 もちろん、きっちりとしているのは制服だけではない。

 ヘアースタイルにしても、一片のウェーブも無い胸までのさらさらヘアーのストレートであり、その毛色は自色なのであろう、美しい翠色すいしょくが、里緒とは異なった清楚さを見せている。


 意図してはいないであろうが、黒ブチのメガネが頭脳明晰さをうかがわすアクセントになっている。

 だが、近くで見ると何処となくエッチなアクセントにも見える。

 これは俺の偏見かもしれないが・・・。


「珍しく、今日は一人なんだ・・・」

 彼女はそう言ってきた。


 彼女と話すのは初めてある。それにも関わらず、そう笑顔で話す表情には少し皮肉が見て取れた。

 だが、この男女間に消極的なAV界の高校生には珍しく、男の俺に対して感情を見せているのだ。


 見た目とは、と言うより校内での態度とは全く異なっている。


 今の俺にはこの”正直な気持ち?”が込められた皮肉が、返って心が休まる感じがした。

 それは感情を素直に言葉にしない里緒への想いなのかもしれない。しかし、


「一人って?」


 俺にはこの”一人”と言う皮肉の意味が分からない。

 すると彼女は、


「いつも、サポート役さんと一緒だから・・・」


 言われて見て俺も気づいた。

 そう言えば里緒と一緒なのは登下校の時だけでは無い。いつも一緒だった気がするのだ。

 それは、会話の無い今でもそれは変わってはいない。


「ほら、学校では話がしにくいじゃない。里緒みたくサポート役って名目があれば話易いんだけど・・・それに里緒もいるし・・・。。

 千乃くんが一人なのを見つけたから走って追いかけてきちゃった」

 

 そう言って、穴井狭子は小悪魔的に舌をペロリと出した。


 確かに男女間に消極的な学校内では周りの目があって、俺に話かけることは出来ないであろう。

 この世界の高校生としては男女間に特異な俺でさえも里緒の目があり、中々雑談の領域には手が出しずらいのである。この部分は、彼女も同じだったようだ。


 俺はこの後、異世界から来たことをバレない様にする為に必死であったが。意外性のある彼女と久しぶりに楽しい会話を続けた。

 何か彼女と話していると、里緒と一緒でない今が気楽な状態に感じてくる。

 

 里緒との距離が遠ざかるに連れて、俺の女子からの人気が反比例するのは偶然ではないのかもしれない・・・。そう思えてきた。


 そんな中、俺は少しずつ彼女に惹かれていくのを感じながらも、彼女の意外な表情や行動に驚いていたのが顔に出ていたのだろうか、


「私のこと、イメージと違ってるって思ってるでしょ」

 彼女がそう言ってきたのだ。

 怒ってはいないとは思うのだがちょっとドキリとする。


 正直そう思っているのだが、折角、里緒以外の女性と仲良くなれるチャンスだ。いや、今では目の前の彼女だけである。

 俺としては彼女を喜ばせたい。肯定すべきか、それとも否定すべきか・・・。


「いや、そんなことは無いけど・・・」

 咄嗟に、俺は肯定顔で否定していた。すると、

 

「違うって言ってもらった方が嬉しいなぁ~。ほら、私”校内AV委員会”の生徒代表だから、きちっとしてきゃならないでしょ。」

 そう言う彼女は嬉しそうである。


 どうやら、俺の回答は正解だったようだ。


 彼女は不機嫌で言ったのではなく、意外性を強調したかったようだ。

 それに、もしかすると”校内AV委員会の生徒代表”と言うことを俺に言いたかったのかもしれない。

 

 確か、この委員会は、”AV撮影大会”の学校代表を決める教員と生徒からなる決定機関だった気がする。

 その生徒側代表が、彼女と言うことになる。


 と言うことは俺が予想するに、校内ランク1位の里緒と、生徒会長稲荷家一子、それに穴井狭子あないきょうこの3人がこの学校の生徒の中心と言うことになる。

 1.里緒、2.一子、3.狭子 の順だろうか・・・。そう思いながら、


「そうなんだ・・・」


 俺は無愛想かもしれないが、生徒でも地位により見出しなみが違うと言うの初耳である。里緒はまだしも、稲荷家一子は論外の格好である。そんな応えしか出来なかった。


 すると彼女は、


「そうなんだって、おかしい~。千乃くんの住んでいた地区だって、AV委員会の生徒代表って、きちっとしてたでしょ?」


 そうなのか?

 何か、話し方まで変わってきたが・・・。


「も、もちろん」

 俺は一応合わせることにした。それしかない。

 しかし、身だしなみまでが必要と言うことは、1.狭子、2.里緒、3.一子 の順だろうか・・・。

 だが、順番どうのを考えているべきではなかった。


「へ~、千乃くんって、やっぱりどこか違う匂いがする~。

 どこか別世界から来た見たいよね」

 

 狭子はそんな事を言ってくるのだ。


「えっ?どうして」

 何かおかしなこと言っただろうか?

 それに、彼女は、


「そんな分けないじゃん。格好は私の趣味に決まってるっ!」

 そんなことを言う。 


 こいつ、俺の何かを知っているのか?

 拙かっただろうか?

 もしかして、魔女かもしれない・・・なんて。少し俺も構えてしまう。


 でも、何か引き付けられてしまう。本当に魔法にでも掛かってしまった様な気分である。

 俺はこの異世界に魔法や、超能力系統が存在するのかどうかをまだ認識していないのだ。

 まあ、無いだろうが・・・。


 本当は俺としてみれば、異世界から来た事を話してもいいのだが、何上、あの人の良い校長と約束したのである。きっと話すことは拙いのだと思う。


 良い人を裏切る訳にはいかない。それが俺の信条だ・・・。

 であれば、


「俺の趣味と一緒で良かった~」


 こういう時は話はチャラく逃げ切るしかない・・・。


「うまいな~。千乃くん。

 流石、突然現れた天才な~んだ」


 何か意味深である。

 俺のこと本当に何か知っているのだろうか?

 いや、知らないだろう。

 俺は決して天才ではない。ただの受験生だ。数日前までだが・・・。


 そう思って、彼女の次の言葉に構えていると、彼女は話を変えてきた。


「それより、千乃くん、家こっちだった?

 って、違うわよね。いつも里緒と一緒だものね。

 もしかして、一緒に住んでるとか・・・?」


 攻める方向を変えて来たのか?


 俺としては問題ない質問だ。ただ、それは俺だけの問題であれば、である。

 それは里緒の問題にもなるのだ。


 里緒とはたった数日同じ屋根の下に住んだからと言って、やましいことは何もない。

 期待はしていたが・・・幸か不幸かそれも叶わなかった・・・。


 それに、何故里緒と一緒に済むことになったかを説明させられると、異世界から来たことに辿り着いてしま・・・んっ、待てよ?

 そう言うことなのか?


 遠くから大きく曲げて探りに来たと言うのか?

 

 念の為、これも回避するしかない。

 俺は初めに聞かれた家の方向にのみ間接的に応えることにした。


「これから、役場なんだ」


 俺は彼女の次の言葉に神経を集中している。

 何に対してもモザイクを掛けてやる。そんな気分を楽しんでいる自分がいる。

 しかし、彼女は質問に対して肯定も否定もしなかったことに何も追求はしてこなかった。


「役場に私の姉が働いてるのよ」

 彼女も間接表現をしてくる。

 

 それに俺は動揺してしまった。

 まさか・・・。いや、住民課の彼女もプロである。個人情報を家族にだって言うはずがない。

 また、ひっかけだろうか・・・。


 そう思っていると、彼女の降りるバス停まで来たらしい。

  

「いっ、行けない。降りま~す。じゃあ、また明日ね

ああ、そうそう今度私にも”エロ”を教えてねー」

 彼女はそう言って慌ててバスを降りて行った。


 エロを?

 エロが一人歩きしている。

 既にそんなに有名になってしまったのかこの言葉?


 しかし、俺の動揺はバレただろうか?

 明日、何か仕掛けて来るのだろうか?

 そんな不安もあるが、それ程嫌悪感を感じなかった。


 彼女は、魔女なのだろうか?


 いや、秘密を持っていることに俺の方が踊っているだけなのかもしれない。

 正体を隠しているヒーローの様に・・・。

 嫌悪感も感じないのはそのせいなのかもしれない。


 まさか、彼女がそんな俺の感情まで計算して、話しているとは思えない。

 だが、少し注意することにしよう。人の良い校長の為に・・・。


 それにしても、本当に彼女の姉が役場にいるのだろうか?

 確か住民課の彼女も同じクロブチのメガネを掛けていた。

 しかし、顔が似ているならともかく、メガネが似ていて姉妹と言う法則は普通に世界では成り立たないだろう。普通かどうかは分らない世界だが・・・。

   

 この後、俺は役場に行き家号と俳優名の登録をし、持って行った写真で身分証明書を作ってもらった。

 そして、アパートの鍵を受け取った。

 これで、異世界からの移転手続きは全て完了だ。


 因みに住民課の窓口の彼女に妹がいるかと聞くと、ニタニタして肩を小突かれた。

 「いないわよ~」そう言う回答だった。


 そうだろう。幾ら何でも出来すぎである。

 違う役場って言うこともあるし、俺が遊ばれたのかもしれない。


 どっちにしても、もう考えるのは止めにしよう。考えても何も変わりはしないのである。

 既に俺が知らないだけで回答は決まっているのだから・・・。


 それよりも、俺はこれから里緒と合わなければならないのだ。

 そちらの方が頭が痛い・・・。


 俺は頭の中を里緒への対応に変えて、重い足取りで千逗家に向った。

 こちらの回答はこれから出るのである・・・。


 しかし、既にはっきりしていることがある。


 これで里緒との同居も終わりと言うことである・・・。 


 <つづく>




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