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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
31/73

制服のち食い込みは、エロんピー

次のAV大会に向けて・・・。

 それは束の間であった。

 この世界での初日のことである。俺(千乃工口ちのくぐち)が初めて会話を交わした相手、千逗里緒せんずりおとは行きがかり上の不運と、このAV界と言う世界に対する俺の無知さにより、不本意にも溝が出来てしまった。しかし、その溝はお互いに不可抗力の為の物だとは分っていたのだ。

 出来た溝はそれほど深いものでは無く、むしろ、それが縁で彼女の部屋でAV撮影大会のビデオを鑑賞するまでに接近したのである。


 ところがだ。それは更に束の間であった。

 そのビデオ鑑賞の最中に、何と俺の不注意な一言により再び新たな溝を作ってしまったのである。

 一時の温まりつつあった関係は、一瞬で嘘の様に冷え切ってしまい、物理的に1メートル以内に近づくことさえ出来ないのである。


 こんな状況下で無策な俺は、とにかく彼女のご機嫌が直るまで耐え続けなければならないのである。


 一体、今度の溝の深さは前回と比べてどの程度なのであろうか?

 里緒の心がさっぱり掴めない。 


 この溝、埋めることが出来る程度であるならばいいのだが・・・。

 

★☆ 第 23 話 ★☆

☆★ 制服のち♂ ☆★

★☆ ♀食い込みは ★☆

☆★ エロんピー ☆★


 俺はあの時と同じミスを犯してしまった。

 それは、この世界に移動する最中、彼女の腕の中で空高く運ばれている時であった。


 ”まほまほ”と言う言葉の裏に、何かが潜んでいる事に薄々気付いていたにも関わらず、”まほまほ”に、ではなかった”ラミア”に対して俺の中で作り上げた愛称、”まほまほ”と呼んでしまったのである。

 

 すると、その言葉に反応した彼女は「いけませ~ん」と絶叫すると、俺の首に回していた腕に力を込めてしまい、憐れ俺はそのまま落ちてしまったのである。


 そのお陰で、俺は彼女からAV界に対する説明を一切聞けず仕舞いで、訳も分からず一人この世界に来てしまう破目になったのである。

 もし、その説明を聞けていれば、違った展開になっていたかもしれないのだ。


 そんな苦い経験をしていながら、俺はあの”忌まわしき名前”ではなく、”なぞの言葉を”再び軽々しく発してしまった。


 結局、あの日の里緒は凄い剣幕で、俺はそのまま部屋を追い出されてしまったのであった。

 短い幸せな時であった。


 そして、あの日から2日が過ぎた・・・。


 俺は学校にもこの世界にも、それなりに慣れて来た。

 それは常に俺の近くで里緒がサポートしてくれているからである。


 ただ、あれ以来、里緒が俺に発する言葉は、「あれ」「それ」「そう」「違う」「ごはん」「行くわよ」「お風呂」の単語のみだ。

 殆ど直接目を合わせることも無い。一度、鏡越しで目が合っただけだ。


 それでも先生から俺のサポート役を受けたせいか、俺の意思には関らず千逗家を追い出されることは無かった。

 いや、と言うよりは会話にこそ出ないが(単語だけなので)、彼女は俺の同居を当たり前かの様に行動するのである。


 そんなことで、俺は成り行き上、千逗家でそのまま気まずい生活を送っているのである。


 それも、明日には役場の住民課が俺の住む場所を紹介してくれることになっている。

 何せ俺はスカウトされた特別な身なのである。大会に規定回数出演する限り無償で住めるのである。

 明日、学校帰りに役場に寄れば必然的に千逗家を出ることになる。


 それにしてもだ。あの”まほまほ”と言う言葉には、どんな意味が隠されているのであろうか?

 昨夜一人ビデオ鑑賞していた時にも一度遭遇してしまった。

 それは、非常に色んな面で盛り上がった場面であった。


 と言うことは、普通に考えて”あっち系統”の言葉なのかもしれない。

 しかし、その程度で里緒や、”まほまほ”では無かった、ラミアがあんな剣幕で怒り出すだろうか?

 何せ、ここは裸体を見せることが標準仕様のAV界なのである。単語の一つや二つは、何て話では無いはずなのだ。


 とは言うものの、とにかくこの言葉の真意、迂闊に誰かに聞くのは危険である。

 確認が出来るまでは、禁句と言うことで封印をするのが安全なのは言うまでもない。


 取り敢えず俺は当面は”触れない”と言うことで行こうと思う。

 

 まあ、そんな事件は抱えているが、今日は俺がAV界入りして4日目である。


 因みに今日は水曜日である。

 へ高では、週初めに行われるAV大会の学校代表者を発表する日である。


 いつもの様に午前の一般授業を終えると、柔軟体操部の面々は活動場の第一スタジオに集合なのだ。

 もちろん俺も里緒と3メートルの距離を置いて、第一スタジオに向ったのである。


 第一スタジオに到着すると、いつもの様に部員の代表から里緒に出欠の報告があり、里緒の、


「じゃあ、”への路高体操”やりまーす」

 の掛け声で制服姿の体操が始まった。


 この準備体操すらもAV大会の為のトレーニングなのだ。みんな真剣に制服体操を行っている。


 本当に、こんな部活があっていいのだろうか?

 そう思うのだが、このAV界の全高校の全部活がAV大会に出場する為の団体なのである。

 部活動にその他の目的は存在しないのだ。


 そんな世界にも関わらず、既に俺はこんな生活に慣れ始めている。

 ホント、人間の適応能力とは恐ろしいものだ。自分ながら・・・。


 恐ろしいと言えば”部長ちゃん”こと里緒の今日は一段とピリピリしている。


 その責任の半分は既に述べた様に俺にあるのだと思うが、恐らくもう半分は、この後に行われる次の”AV大会の学校代表”の発表であるのだと思う。


 言ってるそばから、その発表者がふわふわと現れた。

 どんな時でも締まらない顧問の先生”塩南間子しおなまこ”先生である。

 

 いや、それは語弊があった。ある時を除いてはだ・・・。


 今日の登場は、ハッタリにゴージャスである第一スタジオの入口の扉からではない。いつからそこに居たのか、第一スタジオ二階の部員室からである。

 彼女は教員であるにも変わらず、制服姿で現れた。


 先生が制服姿とは、一体今日は何をしようと言うのだろうか・・・。

 俺にとっては、この現役G2戦士がこの世界以上に不明である。


 ”への路高体操”が終わり、集合する俺達部員達の前には制服姿の塩南先生と、部長ちゃん殿が向い合わせに並んでいる。


 そして、塩南先生のお話が始まる。


「まずは、嬉しいお話で~すわよ~ン。

 昨日の校内AV委員会で、来週の”224卯年度 第一回 サラ18歳新人大会”の学校代表には・・・、ドドスコドドスコ・・・正式に部長ちゃんに決まりましたわよ~ん。みんな拍手~」

 先生自前のドラムロールの発表に、どよめきと拍手が巻き起こる。


 その発表に里緒は安堵の表情を半分浮べているが、残りの半分はピリピリ状態のままだ。

 もちろん、残りの半分は俺に対するものなのだろう。


 まだ一度も目を合わせようとしない・・・。


「部長ちゃん、今度は楽勝よ~ん。”お願いします~ン”に参加するのは、新学年に入って2ヶ月だから、右も左も分からないウブい子ちゃんばかりよん。チョロイわよねン。

 参加者も、少ないとは言っても2~300人は参加するから、”お願いします”は積極的に行けば直ぐに相方が見つかるわよン。

 部長ちゃんは可愛いから、黙って待っていても目立っちゃって大変かもしれないニョン!」


 と言って、塩南先生は自分の肩を里緒にぶつける。


「それと、撮影大会の方は20分と短いから、アッという間。それだけに、無駄な動きは出来ないから構想は練っておいてねン」


 塩南先生の言葉に、

「はい」

 里緒は引き締まった声で返事をする。


 他の部員に聞いたのだが、”お願いします”に二度失敗すると校内順位を相当落としてしまうらしい。

 そうなると、暫くは学校代表に選ばれない可能性が高いそうだ。それに、柔軟体操部自体に対する評価が下がることに繋がるとのことである。

 学校代表が決まっても里緒の顔が真剣なのはそのせいなのだ。


 塩南先生はさらに話を続ける。

「それと、今日は遅くなりましたけど今年の目標を発表しま~す。みんな聞き流さないようにぃ~ねン!」


「『はい』」

 直ぐ様、部員達は気合いの入った表情に変わっている。さすがAVで回っている世界である。


「今年度は”制服”のち”食い込み”は、”エロんぴー”でいきますわっよ~ン!!」

 珍しい先生の興奮した音量に、部員達からのどよめきが湧き起こった。数人が一番後ろの隅に居る俺に向かって振り向く、気恥しい限りだ・・・。


「みんなも知っての通り、”食い込み”はくぐっちゃん(俺のこと)が考えた言葉で、”エロ”とは、これまた、くぐっちゃんの故郷の言葉ですのんよン。

 この”エロ”と言うのは抽象的で大変難しい言葉よねン。

 先生も皆さんのヒントになればと思って、一所懸命考えましたン・・・」


 別に食い込みも俺が考えた訳ではないが、ここは否定することもあるまい。気恥しいが・・・。


 そして、塩南先生そう言うと自分の穿いているスカートをヒラリと捲り上げた。すると中から”立位体前屈専用ユニフォーム”、ショートパンツがお目見えした。

 過剰なフィット感がと、伸びない生地が売りのユニフォームである。 


 この時点で、塩南先生はいつもの掴みどころのないふわふわ感が何処へやら、魅力的なG2戦士に変身している。


 だが、この程度。驚く程の行動ではない。

 俺はこの程度の事には既に慣れてしまっている。

 とは言っても、もちろん俺の情熱が一点に収束していくのは言うまでもない・・・。


 先生は部員に向かってお尻を向け、素早い動きで完璧な”立位体前屈”を披露し始めた。


 すると、勢い押し出された尻肉は、両足を分離する5cmほどの布地を一気に追い込んでく。

 行き場の無くなった布地は、自らを守るために必至に中央の一光の溝へと逃げ込んでいくしか手立てがない。

 だが、その溝は余りに狭く深いのだ。


 余儀なく布地は紐の様にダイエットしていくのであった。


 先生は部員のみんなに、


「は~い、これが食い込みで~す」

 とお尻を振っている。愛嬌で振っている訳では無い。更に食い込ませているのだ。


 俺に取ってはこの段階で十分にエロいのだが、何せこの世界で育った他の部員達は、物心ついた時から、”あんなもの”や”こんなもの”を見ているのである。

 何とも思わないに違いない。


 そう思って部員達の顔を覗いてみると、決してそんなことは無かった。

 塩南先生を尊敬の眼差しで見つめている。憧れの目で顔を赤くしている女子部員もいる。


 決して何も感じていない訳ではないのだ。大いに感じているようだ。

 これが現役G2戦士の力と言うものなのだろうか?

 それともG2戦士が敢えて選んだ行為である。それ以外の何かがあるのかもしれない・・・。

 

 しかし、俺に取ってエロいと言っても、5日前の俺とは違う。

 既にこの辺りは俺の範疇はんちゅうとなりつつある。


 だが、塩南先生はさらに次の行動に移ったのだ。


「よ~く見て下しょんセ」

 先生はそう言ってショートパンツに手を掛けると、お尻を左右に振りながら一気にずり下ろした。


 おっ~つ!!!


 昨夜のAVビデオの見過ぎで、乾いてしまっていた俺の目が一気潤いを取り戻す。

 さすがに公開ライブとなると迫力が違う。

 言われなくてもよ~く見ますよ、先生!


 俺は目を細め、瞳の焦点距離を調整する。


 塩南先生は、スルリとそのままショートパンツを膝の位置まで下げ、再び立位体前屈を披露したのである。


 う、う、うわ、わわわ~。


 さ、さ、さ、先生、さすがにそこまでは・・・。 


 この二日、AVビデオで色んな”御姿”に巡り合ってるとは言え、俺の心身への影響が懸念される。


 慌てて隣にいる俺以外の男子部員二人目をやるが、砂万名風琉さばんながぜると、その向こうの島宇摩しまうまはメモでも取りそうな真剣な眼差しで先生の臀部を見つめているのだ。


 確認の為、風琉がぜるの若さの象徴を盗み見るが、全く地殻変動は見せていいない。平静状態のままである。

 それであれば、ここで俺が隆起させる訳にはいかない。それが先に生まれた男としてのプライドだ。


 そうだ、くぐち、植物と思え!

 あれはきっと食虫花だ。ピンクに咲いた怖い花だと思うんだ・・・。


 そんな俺の気持ちも知らずに、先生は屈伸状態のままで、あっけらかんと、


「さっきの方がぐっとくるでしょん」

 と、自分の足の間から顔を覗かせニコニコと楽しそうである。


 先生!俺には今の方がずっと刺激的です。心で叫ぶが、部員のみんなは納得している。

 何故だ?


「部長ちゃん、なんでだと思う?」

 先生が里緒にそう聞くと、里緒は首を傾げ、


「何か、いきなり最終回を観てしまったような・・・。そんな感じで呆気ないっていいますか・・・」


「そうなのよん。さすが部っ長ちゃ~ん。先生も、何かそんな感じがするのよン」

 そう言いながら、キラッと自信にみなぎった顔を見せる。

 一体、その自信満々な笑顔は何に対する自信なのだろうか?


 確かに、論理的には当たらずとも遠からずな気もするが、俺には間違いく今の方がエロい。

 官能的です!


 しかし、そう思っているのは俺だけらしい。隣の男子部員の宇摩うまも、名風琉がぜるも納得している。


 それって、どう言うことなんだ?

 幼い頃から色んな凸や凹を見ているから、麻痺していると言うことなのだろうか?

 見慣れてしまうって見飽きてしまっているのだろうか?

 だとすると、恐ろしいことだ。

 

 俺がそう思っていると、塩南先生は、

 

「くぐっちゃん、そう言うことよねン」

 そのままの格好で俺に同意を求めて来た。


 そんな無防備な格好で急に振られても、


「は、はいっ!」

 俺は慌てて肯定の言葉を返すしかない。


 すると、部員のみんなが俺に注目だ。


 大丈夫だ。

 ”俺の若さ”は外見には影響を出さない程度で保たれている。見られて問題なことは起こってはいない。見よ、これが俺の適応能力だ!


 だが、そこでは無い部分で俺を緊張に追い込む事態が発生したのだ。


 集まった俺への視線が尊敬の眼差しになっているのである。

 

 尊敬って、こんなことでいいのか・・・何か心に痛いと言うか恥ずかしい限りだ。

 俺の世界では絶対に関心などされないぞ。それどころか、低俗扱いは必至だ。

 でも、少し良い気持ちがする・・・。


 俺が恐縮に縮こまっていると、いつの間にかパンツを上げた塩南先生が、


「来月にある今年度1回目の”へ高AV祭”の実行委員を決めますわよン」

 と、話を次に移した。


 視線を先生に戻すと、隣に立っている里緒と久ぶりに視線が合ってしまった。


 彼女の何んとも言えない冷やかな視線に、俺の若さの象徴は縮みあがるのであった・・・。


 <つづく>

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