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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第1章 昇天
3/73

まほまほ?

ついに彼女が言葉発してしまった。えっ?”まほまほ”って?

 大学受験を2か月後に控える、俺”千乃工口くぐち”が学校からの帰宅の為に乗り込んだバスは、何の集会があったのか、いつになく老人達で超満員であった。


 俺はひしめく老体を奥へと押しやり、やっとの思いでその超満員のバスの中に体を押し込むと、辛うじて乗車に成功を納めることが出来た。

 だが、ホッとしたのも束の間、さらに俺の後から超満員のバスを目掛けて飛び込んで来た、濃紺の制服の奴がいた。


 外を向いてバスに乗り込んだ俺は、なんとそいつと向い合わせで、全身が密着状態。

 もちろん、その瞬間は、不快な気持ちに襲われたのであったが、そいつが発する芳しい香りから、俺はそいつが女子高生であることに気付いてしまった。(・・・ごちそうさま)


 俺の心理的状況は一転し、俺は全身で幸運を勝ち取る喜びに震え、若き血潮が一点に収束するのを感じたのは当然のことである。

 だが、そんな状態が長く続く訳もなく、微妙な距離が彼女との間に出来てしまったのだ。


 俺はその隙間と欲望の狭間で心理戦を繰り広げていたのだったが、そこで新たな事象が勃発してしまったのだ。


 バスの右折である。


 それをきっかけに・・・、再び・・・。


☆★ 第 3 話 ♂ ☆★

★☆ ♀ まほまほ? ★☆


 人に存在する相対する二つの心、正義と悪。道理と無理。真実と虚偽。常識と非常識・・・。

 今、俺の心身は道徳と背徳の狭間で、部分的な偏りを見せていた。

 だが、所詮、体は一繋がりであるのだ。


 バスが右折する。

 それにより、働いた遠心力が俺の体を彼女の方へと引き寄せていく。


 ここで、俺の煩悩を彼女に触れさせる訳にはいかない。

 俺は、道徳心に忠実な左手と両足に力を込め、彼女との距離を必死に保とうと頑張った。


 だが、この手足に込めた力が、当然そこだけに収まる訳がない。

 それに繋がる部位にも力が入ってしまうのは当たり前の話だ。

 そうだ、握った拳の薬指を伸ばすと、小指も一緒に伸びてしまう様にである。

 

 その力は、目の前の彼女と小康状態を保っていた、俺の最も背徳の部位にも力が入ってしまったのである。

 18年と言う人生の経験値からは、気付いて然るべしなのだが、今はそんな冷静な状況でない。


 やばい!


 と思うが、バスはそのまま右折を続ける。

 込めた力が、俺の全身に何とも言えない心地良さを与えて行く。


 め、目覚めてしまう。

 も、もう・・・だめだ。


 走り出したこの現象は、理性が届く範囲のものではない。

 ついに、俺の”僕”が”覚醒”の時を迎えた。


 バスは、そのまま俺の状態を知ってか知らずか、容赦なく右折と言う大きな遠心力を乗客に与えて行った。

 俺の後ろに居たご老体達は、それに同調して俺の背中に物凄い圧力を加えていく。


 俺と彼女の距離が、次第に縮まっていく。


 よし!

 いや、違う、拙いだった・・・


 ついに、願望が成就して、ではなかった。図らずも、俺は覚醒を始めた状態で彼女に惹きつけられる様に、再び全接触(密着)してしまった。


 彼女の右足は、図らずも覚醒を迎えた俺の”僕”との押し相撲になる。

 そして、俺の右足は彼女の間にすっぽりとジグソーパズルの様に吸い込まれていく。


 覚醒をしてしまった”僕”は、小康状態の間に備蓄してしまっていた栄養によって、瞬時に50%の状態にまで成長を成し遂げていた。


 そして、更に今の密着で出力は70%に達してしまった。


 70%・・・、それは所謂 ”解・放!” である。


 ついに、俺は1回目の能力解放の時を迎えたのである。


 ”解放”状態の俺は、同時に複数箇所の快楽も貪るマルチ機能が可能となり、瞬時に身体の隅々の神経の活躍が、俺の頭に伝達されていった。


 最も刺激を吸収する解放された”僕”を初め、彼女の隙間に紛れ込んだ俺の右大腿部。それに、彼女の柔らか胸の膨らみも右胸に熱く伝わってきた。


 ちょっと待て、これは、夢にまで見た三所攻めではないか。

 んっ?違う一箇所は俺が攻められているのか。

 この際そんな理屈はどうでもいい。


 いかん!叫ばれてしまっても、しかたのない状況だ・・・。

 背筋には熱い汗と冷たい汗が交差する。


 まずい・・・。

 拙いが、今の俺には”解放”を抑止するだけの要素が足りない・・・。

 完全に彼女の魅惑に溺れてしまっている。


 ”僕”の”解放”が、彼女の右太腿へ過剰な圧力を加えている。

 その感触が、反作用として手に取る様に伝わって来る。


 そして、”僕”の支点が、その反作用の感触を当然の様に楽しんでいる。


 ”僕”よ、やめてくれ。それを俺の大脳に伝えてくるな。俺が完全支配されてしまう・・・。


 事故とは言え、俺と彼女の間の相対性理論から言えば、俺からのアクションが原因と言うことになってしまうであろう。

 この70%の状態を知られては、いつ叫ばれても弁解のしようがない。


 いかん・・・!


 このままでは・・・ただの好色高校生だ。


 なす術が無い・・・。


 俺は、ただ彼女のご好意を願うしかなかった。


 だが、そんな状況下で、追い打ちを掛ける様な事件が、更に起こってしまったのである。

 バスのブレーキと共に俺の右足が図らずも動いてしまったのである。


 図らずも?

 多分、図らずもだ

 図らずもであってくれ・・・頼む。

 ・・・maybe

 

 これは、非常にまずい! 

 し、しまった!痴漢扱いされてしまったら・・・


 背中に冷たい汗が流れる。

 俺の体の表裏の温度差は、恐らく耐熱住宅並の差違があるかもしれない。

 

 心臓が、ドキドキと高鳴る。

 もしかすると、この心音を彼女に感じられてしまっただろうか。

 興奮と取られてしまったかもしれない・・・やばい。


 今は、ただ、彼女の過剰な言動が無いことを祈るしかない。

 俺は自分の未来を彼女の言動に乗せた・・・。


 長い時間が祈り続けた様に感じられた。しかし、ほんの数秒であったかもしれない。

 俺の願望に反して、ついに彼女が唇を動かしてしまったのだ。


 まずい、うわぁぁぁ~!

 俺は心の中で叫んだ。


 一瞬にして、体全身が凍てついた。

 密着バスと言う宇宙空間に”耐熱住宅”は無意味であった。

 俺の未来の灯火が消えて行く。


 だが、その瞬間、彼女の発した声は、囁く程度の小さいものだった。

 

「ま、まほまほ」


 んっ?


 今なんて言ったんだろう?

 た、多分”まほまほ”?


 何だ?

 聞き間違いだろうか?

 俺は耳を疑った。


 少女は、先程よりも息を荒めて、頬を染めている。


 んっ、これで終わりだろうか?

 終わりであってくれ、頼む!

 俺は心の中で彼女に手を合わせた。


 通じたのだろうか?

 俺は幸いにも、彼女に叫ばれる様な事態には陥らなかった。


 良かった!

 本当に良かった。しかし、先程の言葉は何だったのだろうか?

 いや、何て言ったかなど、この際どうでもいいではないか。

 そんなことよりも、良かった・・・。


 ホント、本当に良かった!!


 暗くなりかけた俺の未来が再び点灯を始め、安心した俺はもう一度脚を動かしてみたい衝動にかられた。

 が、故意に行ってはいけない。


 それだけは、絶対に行ってはならないのだ!


 何を考えているのだ!

 工口くぐちよ、今、安心したばかりではないか。


 と、戒めながらも、バスよ・・・再び左折を・・・。

 完全に、願っている俺がいる。全く懲りない・・・。


 そんな、よこしまな俺の心を見透かしてか、前方の降り口が開き、数人の乗客が降りて行く。

 今のブレーキは、バスが停止する為のものであった。


 すっかり彼女に気を取られていた俺は、”降りますボタン”の音に全く気付いていなかった。


 喉元を過ぎた俺は、すっかり落胆の気持ちに支配されていた。

 気持ち的には、結構な人数が降りてしまった気がする。


 失望の溜息が出そうになるのを、辛うじて飲み込んだ。

 次に起こる事象は当然・・・決まっている。


 バスの中は次第にゆとりが出来てしまった。


 このまま向い合っている分にはいかない・・・。

 俺の脳裏に客観的に移る映像が、俺にそう語りかけてくる。


 出力70%の解放如きでは、俺を完全に支配等することは出来はしないのだ。

 この映像は、僕の”解放”を抑える為の充分な、”抑制力”となった。

 

 当然、俺は、倫理心溢れる好青年として離れるべきである。

 そう、今までのことが不可抗力であるかのように。


 ちょっと、待とう。

 俺は何を言ってるんだ。不可抗力ではないか。至って俺は・・・。

 多分・・・perhaps。 


 俺は、無念を噛み締めながら、彼女とのに距離を取ろうとしたのだが、安易に離れられない訳が別にあることに気付いた。

 身体の表面が、通常のほぼ、なだらかな直線ではないのである。


 例え、彼女の大腿部が”僕”の押し圧を感じていたとしても、彼女を直接の目撃者にする分にはいかないのだ!

 どうする、工口くぐち


 なんて、未練がましい言い訳を考えている自分が、せつない。

 簡単であるのだ。対策は一つである。


 こんな時の基本である。

 俺は止む無く体を離すや否や、鞄を前方中央部に当てると、彼女に横を向けた。


 これだけのことだ。


 背を向けなかったのは俺のみれんであることは、認めるしかない。

 これ位は問題ないだろう。


 今まで近すぎて良く見えなかったが、少し離れて見ると、彼女の顔立ちがはっきりと分った。


 俺は、その映像をそれをインプットしていく。

 これは、家に帰ってからのイマジネーションには大切なのだ。

 

 横目で見た彼女は、大きな黒い瞳に、白い透きとおる様な肌、全体的には細面にも関らず、少しだけふっくらとした頬。


 か、可愛い・・・。


 つい先程までの出来事に、俺はうっすらピンクのエロの花を満開に咲かせてしまった。

 

 先程までのドキュメントが走馬灯の様に蘇る。

 離れたことが返って、記憶の美化により出力状態を上げてしまった。

 自分の得たものの大きさに気がついてしまった。

 もはや95%だ。


 俺は、若干のエネルギーの垂れ流しに冷たい感触を覚えた。

 余剰の栄養が出ているのだ。これは危険信号である。


 これ以上の出力上昇は、二回目の解放を行ってしまう。

 もし、”○○砲”の乱射と言う事態になれば、民間人への被害が出てしまう。

 俺の今後もだいなしだ。


 思考の制御をしなければ、バス内紛争にもなりかねない。

 

 どうする、工口くぐち


 俺はそれに備える必要に迫られた。


 <つづく>

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