AV界95年の歴史
AV界の小さな疑問は解決していくが、大きな謎が次第に・・・。それに、工口と里緒の母、”顔出”と”香出”は。
このAV界と言う世界の中で、俺(千乃工口)が異世界から来たことを知っている”人”は役場の住民課を除けば、現在7人である。
それは、”併性へノ路学園高等学校”通称”へ高”の腰の低い校長先生(代理)と、AV課3年の担任”宝家先生”、太棒先生、それに、俺の担任になる”塩南先生”の合計4人。
それと、俺が今来ている”G3☆食堂”のご主人と、孫娘で同じアルパカ組の”千逗里緒”、それに客として来ている恩人、一持兄さん”一持握”の3人である。
今、その一人である千逗里緒は、俺と一緒に帰宅(G3食道)したのだったが、張り切って食事の支度の為、奥に入っていった。
今日はご主人のお店の料理ではなく、里緒の手作り料理を食べることが出来るらしい。
せっかくの里緒の好意でなのだ。腹は減っているのが、過度の期待はせずに気長に待とうと思う。
その間俺は、一持兄さんと話をしようと思う。
聞きたいことは、山ほどあるのだ・・・。
★☆ 第 20 話 ★☆
☆★ ♂AV界♀ ☆★
★☆ 95年の歴史 ★☆
「一持さん、来てたんですか・・・」
今、俺がこのAV界と言う異世界に馴染め初めているのは、この一持兄さんに出会ったからこそであり、どんなに感謝しても感謝し過ぎということはない。
本当に心からそう思う。
「・・・今日は有難うございましした。お陰で、明日から正式に高校に通えることになりました」
心からの感謝に一持兄さんは、
「それは、良かった。おめでとう!
高校は”へ高”かい?」
いきなりのご正解だ。
「なぜ・・・、分るんですか?」
もちろん、俺は驚いた。
仮にAV界にスカウトされた高校生がAV科に転入することを予想したとしても、少なくてもこの地区にはAV科のある高校だけでも3校あるのだ。
すると、
「願望さぁ!
僕はね、あの高校を高く評価しているんだよ。
僕が君の立場なら、間違いなく”へ高”を選ぶよ。
それはいい高校を選んだね・・・」
こうも様に喜んでくれると、俺も”へ高”を選んだことに悔いはない。
「・・・あそこの校長も、あ~まだ校長代理だったかな、彼は優秀な人材だよ。
それに、”へ高”のAV科の先生達なら実力者揃いだと思うよ」
確かに、そうかもれない。他の高校の事は知らないが、3年生の担任は皆”G”が付く。ちょっと変わってはいるが、何と言ってもG戦士だ。
しかし、いくら説明好きで色々な事を知っている一持兄さんでも、ちょっと詳し過ぎではないだろうか?そこで、
「一持さん、詳しいですね」
ちょっと聞いてみた。すると、
「ああ、あああ~ハハハ・・・」
少し変な間を置いて、
「・・・ウンチク? うん、そう。そうなんだ。ウンチクが好きでね、ウンチクマニアってとこかなー」
うんち食うマニアだと言う。
確かにこの人は”うんち食う”、いや、ウンチク好きだ。
色んなウンチクを仕入れて、人に聞かすのが好きなのだと俺も思う。
だが、何を慌てているのだろうか?
もしかして、”へ高”は女子高生が多い。まさか、一持兄さんは”JK趣味”でもあるのだろうか?
俺の趣味は大河の様に広い。おそらく、一持兄さんも多趣味なのだろうと思う。
ここは、お互いに個人の趣味趣向のことを掘り下げるのは無粋と言うものだろう。
それよりも、溜まりに溜まった疑問を解決してもらうことにしよう。と思う・・・。
「一持さん、教えて欲しいことがあるんですが、ちょっと良いですか?」
「おっ、何か疑問にぶつかったんだね。どんなことだい?」
一持兄さんは額の汗を拭き拭き、豊富な女子高生の知識(想像だが)で、俺の疑問を解決するき満々である。そこで、俺は柔軟体操部に入部し、既に練習を見学するまでに至った経緯を簡単に説明をしてみた。そして、
「どうも、この練習の意味が良く分らないんです・・・。その~、柔軟体操の前にストレッチを行ったり、柔軟体操なのに身体のことを考えているとは、とっても思えないんです。何か別なことを目的としている様な・・・」
そう、質問をしてみた。
すると、一持兄さんの顔の筋肉はブルドックの様に緩み、大声で笑いだした。
他にお客さんがいないので、店的には問題は無いが、果たして俺は何かおかしなことを言ったのだろうか?
だが、ここはAV界だ。どこに笑いの壺が隠れているのか俺には分からない・・・。
「工口君は、体操をしようと思ってその部を選んだんだね」
柔軟体操をしたいと思う高校生がAV界にいるのだろうか?
そう思ったが、それは飲み込んで、
「まあ、選んだと言うよりは、顧問の先生の押しに負けて・・・」
事実をそのまま伝えた。
「そうかい。でも悪い部じゃないよ。柔軟体操部はね。
工口君の疑問は、恐らく一言で解決できると思うよ。」
前置きはいいから、早く教えて欲しい。
「高校の部活はね、”AV撮影大会に出演するのが目的”なんだよ。
それは、柔軟体操部に限らず、全部の部がね」
「えっ?」
なんだ、それ?
一つ二つの部ではなく全部の部が・・・AVなのか?
俺はその徹底したAV魂に驚いた。
「AV科は全員が、どこかの部活に所属する校則になっているだろう。そして、一般授業よりも部活のウエイトが重要視されているはずだ。特に”へ高”はね」
そう、へ校長も言っていた。
「はい、確かに校長先生からそう聞きました」
「つまり、そう言うことなのさ。部活動は全て”AV撮影大会”の為のトレーニングを目的としているんだよ。
それが、今のこの世界の高校の部活なんだ。昔は、違ったらしいがね。ねえ、店主」
一持兄さんは、ご主人(店主)に話を振った。
すると、ご主人は調理をしながらも俺と一持兄さんの話をしっかりと聞いていたらしく、一持兄さんの頼んでいたメニューをこちらに運びながら、話しに加わってきた。
「ああ、私が高校生の頃は、まだAVに関係しない部が幾つかあったね。
そのころは、スポーツ系、文化系、AV系と言ってたよ。でも、その頃でもAV系が、全部の8割近かったかもしれないなあー」
「そうなんですか~」
俺は平静を装って納得するが、顔はほころんでいるかもしれない。
何せ、塩南先生の考案したと言う制服姿の”へノ路高体操”に、食い込みショートパンツの立位体前屈への謎が好ましい方向で、すなわち、その手の催事が継続方向で疑問が解決したのだ。
これで、1年間正式な柔軟体操に明け暮れなくて済むのである。
体操に”付加するもの”への期待に俺の胸はC、いやEカップ・・・。
俺がすっきりした顔をしていると、
「部活ではどんな練習をしてたんだい」
一持兄さんがそう聞いて来たので、練習の一部始終を細かく話してみた。もちろん塩南先生が興味を抱いたエロについてもだ。
すると、
「斬新だね~、柔軟体操部の先生って、何という先生なんだい?」
そう聞いて来た、
「塩南先生です。確か、フルネームは塩南間子だったと思います」
俺が応えると、
「そ、そっか・・・、し・お・な・先生か・・・」
ちょっと、動揺した気がする。また額の汗が光り出した。
「知ってるんですか?」
「ああ、まあ、ちょっとね。ゆ、有名なG2戦士だからね」
知り合いなんだろうか?
それとも、単にビデオ上で好んで観ているとか・・・。
ちょっと、聞いてみたかったのだが、一持兄さんからの質問に俺の疑問は消されてしまった。
「”エロ”とは工口君の世界では有名な言葉なのかい?」
やはり、”エロ”に興味を持ったようだ。
「まあ、有名と言うよりは、一般的な言葉ですよ。特定感情の表現、いや、特定感情の為の手段っていうんですかね」
そう応えると、
「エロね」
何かを考えている・・・。
一持兄さんも塩南先生と同様、この言葉を軽く流そうとはしない。
何を考えているのだろうか・・・。
ウンチク好きの一持兄さんだったら、もしかしたら何か知ってるのかもしれない。そう思い俺は聞いてみた。
「この世界には本当に”エロ”と言う言葉がないのですか?」
すると、
「今はね。
昔はあったかのかもしれないがね」
そう応えた。
「ああ、私は聞いたことがある様な気がするね~、多分、私の亡くなったお祖父さんからだと思うがね」
ご主人がそう言うと、
「そう、昔は有ったのかもしれないんだ。普通にね・・・。ただ、”正式な”記録がないんだよ」
一持兄さんは、そう付け足す。
「どう言うことですか?」
何か、この世界にも問題がありそうな口ぶりだ。
「外にミンジュ塔と言う、空まで続く白くて高い塔があるだろ。昨日説明した通りあの塔は95年前に出来たんだ。
現在では公式な、いや、恐らく非公式も含め書物類では、それから後の歴史しか残っていないんだよ。
もちろん、人づてには残っているんだが、それも大した情報量ではないんだ。
何故か人々から、過去の出来事が消えていってしまっている気がするんだ。それでなければ、たかが95年でそれ以前の歴史が殆ど消えてしまう訳がない」
そう言う一持兄さんには、いつものヒョウヒョウとした感じが見て取れない。
俺はこのAV界は、思っていたところと違った部分で、何かある世界なのかもしれない。そう思った。
その時の俺の様子を伺ったのだろうか、一持兄さんは自分の言ったことを訂正する様に、
「・・・まあ、僕の勝手な想像だけどね」
いつも通りの雰囲気で、手を左右に振りながらそう言い、
「まあ、過去はどうであれ、変えられない過去よりも、僕たちは今を、これからをどう生きるかなんだけどね。聞きたいことは、それだけかい?」
そう言った。
今の俺には一持兄さんの言う通りこの世界の過去を考える余裕はない。それよりも、小さくても今の疑問の解決である。
「あと、部活の校内順位と、学校代表でAV撮影大会に出られる学年1位とは何で決まるのかと・・・」
そう言うと、
「それは、里緒ちゃんに聞いた方が詳しいよ」
「まあ、そうなんですが、ちょっと・・・」
・・・その通りですが、本人が絡むことは聞きにくいです。
「聞きにくいんだね。僕が分る範囲で応えると・・・」
察してくれた。
一持兄さんの模範解答は、次の通りである。
部活の順位は、年に数回開かれる”校内AV祭”つまり、へ高では”へ高AV祭”になるのだが、それで決まるらしいのだ。
それは、俺の世界で言う”学校祭”を分割開催した様なもので、各部活が発表するステージ、ビデオ、展示を一般公開し、それを観た一般観客と生徒の投票、それに教員の採点によって決まるとのことである。
因みに、一般的に”学年1位”と言う順位の決定は、その”AV祭”の個人成績に、学校の成績を加味した総合採点で決まるそうだ。恐らく”へ高”も同じだろうとのことだ。
一通り質問が終わったところに、タイミング良く里緒がお盆を持ってやって来た。
「お待たせ~」
お盆の上の大きな皿には、沢山の稲荷寿司がのっていた。
「『お~お』」
ご主人だけではない。一持兄さんからも歓声があがる。
里緒の料理が珍しくてなのか、それとも、俺と里緒の様に稲荷寿司に思い入れがあるのか分からない。だが、二人とも強い感情を表現している。
その歓声に満足そうな里緒は、自慢げに俺と一持兄さんの座るテーブルの上に置いた。
一持兄さんは、まだ里緒の持って来た”稲荷寿司”改め、”金袋寿司”を見て感慨にふけっている。
本当に、何か思い入れがあるのだろうか?
「どうしたんですか、ボッとして?」
俺は一持兄さんに聞いてみた。すると、思いも掛けず、その応えはご主人から返って来た。
「一持君、失礼、一持さんは里緒の母親の”香出さん”の大ファンだったんだよ」
「一持君でいいですよ、昔の様に・・・」
「いえ、一持さんは大切なお客様ですから」
ご主人と一持兄さんの関係は結構古く深そうである。
それにしても、この里緒の作った”金袋寿司”を見て、里緒のお袋さんの香出さんを思い出すと言うことは、どう言うことなんだろうか?
俺がそう思っていると、その疑問に対する回答は質問もせずに直ぐに返ってきた。
「僕は、香出さんにはファンなだけじゃなくて、個人的にもお世話になっていたんだよ。
僕がまだ君と同じ高校生の時なんだけどね。
その時、一度この”金袋寿司”をごちそうになったことがあるんだよ。懐かしい・・・」
「そうなの?知らなかった」
里緒も知らない事実の様だ。驚いている。
そこに、ご主人がいつの間に料理したのか、炒めものを運んでくれた。
「さあ、食べましょう」
里緒が言う。
「うん、あ、ああ~」
里緒の機嫌は俺が彼女に会って以来、最高に良好である。
最高に嬉しいのだが、それに慣れていない俺は戸惑ってしまい、上手い返事が出来ない。
それでも、里緒は俺の顔つきで理解出来たのだろう。
俺を見てニコニコと微笑んでいる。
「僕も一ついいかなぁ?」
一持兄さんが里緒に聞く。
「まあ、いいわ。今日は特別!」
里緒が応える。
俺は里緒の作った”金袋寿司”を一口食べて驚いた。
もの凄く美味い。お袋の味と全く同じである・・・。
お袋と同じ?
・・・似過ぎだろう。
<つづく>
これからAV界の謎と、その解決が時々出てくる予定です。