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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
23/73

二度会うからには三度会う

里緒、何故お前が此処にいる。それになんだ、その生徒会長の態度は・・・。

 俺、千乃工口がうっかりAV界と言う異世界に来てしまって、まだ2日目である。当然、この世界の勝手も分らない。


 だが、そんな状況にも関わらず、早くも正式にAV界の住民となる権利を得、さらに、AV界の高校に通えることまでが決まってしまったのである。


 その名は、”併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう”、通称”へ高”である。


 それだけではない。

 柔軟体操部と言う部活も決まれば、アルパカ組と言うクラスまでもがとんとん拍子に決まってしまったのだ。

 そして、何とその部活の顧問、並びにクラス担任の塩南先生は、AV撮影大会の組織”JRAV会”の現役G2戦士だと言うのだ。


 ちょっと、順調すぎないか?

 そんな疑問もよぎるのであるが、路頭に迷う寸前だったことを考えると余計な心配である。


 そして、展開は俺を新しい級友達へ紹介するという運びへと進んだ。


 緊張もするが、俺の新しい一歩だ。期待もある。

 ただ、その過程で、塩南先生と行った会話の中、嫌な予感が小走りしたのも事実である。


 そんな気持ちが交差する中である。

 俺は塩南先生の後に続いてアルパカ組の教室に入ったのだった。が、・・・その瞬間、俺は固まった。


 なんと、そこにお出で有らされたのは、このAV界で唯一の天敵 せんずり王・・・。

 嫌な予感があたってしまった。


★☆ 第 15 話 ★☆

☆★ 二度会う♂ ☆★

★☆ からには  ★☆

☆★ ♀三度会う ☆★

 千逗里緒よ、どうしておまえが此処に居る。

 それはきっと、おまえも思っていることだろう。

 何せ、先に此処にいたのはおまえであり、俺は今日来たばかりなのだ。

 完全に俺に部が悪い展開だ。


 だけど、信じてくれ。決しておまえの後を付けて、この”へ高”に転入した訳ではないのだ。

 千逗里緒、世の中の偶然を信じてくれ。頼む・・・。   (byくぐち)



 今、俺は頬を中年オヤジの肝臓の様に膨らませた千逗里緒に案内されて、”柔軟体操部”の活動拠点に向っている。と、言っても校内(1階)にあるのだが、部活動第1位に与えられる”第1スタジオ”と呼ばれる練習所である。


 何故、天敵の彼女と一緒かというと、俺と千逗里緒が既知の間柄と理解した塩南先生が、二人の関係の問題点を全く無視し(いや、変な解釈を付加した為かもしれない)、俺のサポートを彼女に指示したからでる。


 問題はそれだけではない。クラス中が俺と千逗里緒の間に特別な解釈をした可能性も否定できないのだ。

 この状況の負担は何キログラムの重荷になるのだろうか・・・。


 それは、ほんの30分前のことであった。

 俺は塩南先生に続き、アルパカ組の教室に人類(俺の世界の)史上初の第一歩を踏み入れた。


 俺の登場は、”しーん”とする教室にひそひそ話を広めて行った。

 そんな中である。


 ゴトリと椅子が動く音がした。この瞬間、俺の脳裏のカラータイマーが点滅した。

 俺を見た瞬間に、大きな口を開けて立ち上がってしまった新しい級友がいたのである。


 それは、この世界唯一の天敵であり、3度目はの出会いは無いと信じていた、”千逗里緒”である。

 まったく、嫌な予感が当たってしまった。


 彼女の怒りであろう真赤な視線と、俺の凍てついた真白い視線が空中で衝突。

 俺はこの時点で呆気なく彼女に撃ち取られ、石の様に固まってしまった。


 恐怖で顔を動かすことが出来ない俺は、彼女から反射的に視線のみを逸らすのみだ。

 横眼で覗くと、彼女も俺から視線を逸らし時々こちらを覗いているのが伺える。


 こんな時の場の繕い方を俺は全く知らない。

 ただ、”時”の流れに身を任せるより術がない。それが、俺の今の実力なのである。


 だが、この”時”と言う奴は必ず何かしらの結論に向けて動くものなのだ・・・。



 ・・・<時の主役> 塩南間子先生(27歳)

 俺と千逗里緒のぎこちない様子を、きょろきょろと交互に確認する塩南先生。

 そして、先生は小首を傾げて、一言。


「あら、千逗さん千乃君とお知り合いなのねん」

 そう、ひょうひょうと簡単に片づけた。


 立ち上がった千逗里緒は私服姿の俺以上に級友達の注目を浴びている。


「い、いえ、まあ、は、はい。ちょっとだけですけど・・・」


「あら、それは良かったわん」

 と手を合わせて喜ぶ塩南先生。


「でも、千逗さん座ってねん」

 そこで、千逗里緒は自分がうっかり立ち上がった事に気付く。


 爆笑の渦の中心の彼女は身体中を真赤にして席に着く。

 そこに聞こえる、若干のひやかしの声。


 その後も、俺と彼女の視線は偶に合うことはあるが、基本逸らせ相大会。

 それに耐えかねた俺は、腹の調子を崩してトイレに急行。


 塩南先生が交互に俺と彼女を見つめる視線も手伝って、級友達に広まる二人の妙な関係。

 その一連の姿、つまり、彼女からのプレッシャーで俺がトイレに逃げ込んだ構図が大完成。

 (以上、想像を含むだが)。


 と、言うことで、トイレから帰ってくると級友達のスペシャル視線に包まれて、どう言う訳か俺のサポート役が、彼女、千逗里緒になったのが、<主役>塩南間子先生による”時”の出した結論なのである・・・。



 ”第1スタジオ”に向って不満そうに、俺の前を歩く彼女の足音は雪女の様に冷たい。

 サポート役にも関わらず、俺が掛けられた言葉は必要極最小限の「ついてきて」その一言だけである。


 会うはずでは無かった彼女に、三度目の出会を果たしてしまったのだ。

 この縁は少しは温めないと、このままでは冷たくなった手足が凍えてしまう。


 しかし、昨日の今日である。あのホームルームでの様子からも怒っていることは疑いようもない。

 

 誤解とは言え、俺はあろうことか、ノックもせずに彼女の部屋に入ってしまい、下着姿のブリッジを”もろ見”してしまったのだ。

 それも、一番美味しい角度からだ。彼女の部分的形状は目をつぶると、今でも瞼に浮かんでくる。


 せめて、今朝、何か繕うことが出来ていればと思うのが正しい考えであったのだが、つい、喜んでしまった。つけが回ったのだろうか?

 先に立たないのは、後悔と、○ん○とは良く行ったものだ。

 聞いたことはないが・・・。


 ボヤキはこれ位にするとして、どうする、工口くぐち

 彼女からのアプローチは未だにないぞ・・・。


 えい、ここは声を掛けて見るしかあるまい!

 この状況を耐え続けるよりはましだ。一か八かの勝負だ工口!


「せ、千逗さん、お、怒ってらっしゃいますでしょうか」

 だめだ、何て日本語だ!

 丁寧で且つ、お硬く無い言葉が上手く喋れない・・・。


 しかし、俺の言葉に千逗里緒は振り向いたのだ。一応無視はされなかったことは喜ぶべきか・・・。


「何よ、その聞き方、苗字で呼ぶなって昨日言ったでしょ」


 あれ?触れられたのは可笑しな言葉ではないぞ。苗字の方だ。

 確か、塩南先生は苗字で呼んでいたのだが・・・。

 でも、そんなことはいい、それよりも思っていたよりも彼女の口調は柔らかいぞ。


 こうなったら、名前に”さん”付けは呼びにくいが、ご要望とあらば・・・、


「あの~、里緒さん昨日はすみませんでした」

  

 それに里緒さんは、少し満足そうな表情を見せたのは気のせいだろうか。

 

「なに、謝るならさっきのことでしょ!何で、何でその~、さっき目を逸らしたのよ。私と何かあったみたいじゃない。普通にしててよね」


 えっ、昨日のことが問題になっていたのでは無いのか?


 ”時”と”女性心理”の移り変わりに付いていけなかった不覚はあるが、普通な態度で接しなかったのは、そっちも同じでは無いのか?


 俺にも主張はあるが、そんなちっぽけな事はどうでもいい。下手な論争をするよりも、ここはモットーの低姿勢でいくのがパラダイスには近道だ・・・。


「ご、ごめん。びっくりしてしまって、つい・・・」


 ”すみません”の方が良かっただろうか?


「びっくりしたのはこっち、こっちだって同じよ」


 大丈夫だ、”ごめん”は問題ではなさそうだ。


「じゃあ、昨日のことは、怒っては・・・」


「え、AV女優を目指す私が、いつまでも練習を見られた位で怒っている訳・・・無いでしょ。き、昨日は急で驚いただけよ。失礼ね!」


 どうやら、昨日のことは言わない方が良さそうだ。

 何やら、心の中の葛藤が感じられる。俺にはその意味が分らないが、俺の向かう方向は一つ、無難と言うパラダイスだ。


 よし、このまま・・・と思っていた打ち解けムードに、俺が体温を取り戻した所だった。そこに、水を入れ、いや、茶菓子付きでお茶を入れる邪魔者が現れたのだ。ゆるさん!


 邪魔者の声は、俺達の後ろから聞こえて来た。


「あら、今頃殿方とご一緒とは、まだ相方探しを続けているのかしら?

 今頃”お願いします”をしても撮影大会には出られなくてよ・・・。

 まあ、どっちにしても、あなたじゃ~どうせ断られるでしょうけどぉ、オ~ほほほ」


 なんだ、いきなり後ろからやって来てこのベタキャラの笑いをする女は?


 不愉快な思いで振り向いた俺の前には、派手な3人の女子生徒がムンムンの色気全開でポーズを作って立っていた。


 里緒を挑発する言葉をのたまったのは真中の一番いい女、いや、嫌味な女の様だ。

 彼女は、里緒に向ってさらに続ける。


「”お願いします”で相方が捕まえられなかったなんて、”へ高”10年ぶりの珍事ね。

 まあ、学校代表に選ばれるのも、せいぜい今週の大会まででしょうから、最後のチャンスをがんばることね。

 来週にはわたくしも18歳の誕生日を迎えるわ。そうなれば、どうせ私がこの学校の代表になるのだから。ホ~ホホホ」


 その卑劣な言葉に、里緒は顔を赤くし拳を握るが何も言葉も出せないでいる。


 どうしたんだ、里緒!


 言われっ放しじゃないか。

 いくら、お前より色気があっていい女だからと言っても、そこまで言わせていいのか?

 

 説明が遅れたが、この高校の制服はスカートとブレザーは校則で決まっているのだが、そのブレザーの中は自由なのだ。もちろん、スカートの中もである。

 そして、男子はと言うと、どうでもいいだろう。それに付随する。


 その女子生徒は制服のブレザーの下には、エラく派手なキャミソール、具体的に言うと限りなく透明に近いブルーのキャミソール1枚である。ブレザーの前のボタンが外れているので、確信するが、ノーブラである。スカートは股下5cmと言ったところか。あくまで前から見ての目測である。


 それにお供の二人もタイプは違うが、3人合わせればアイドルグループも可能であろう。

 この世界で見た全女性の中(2日間だが)でも、俺の好みではかなりの上位に位置する。


 しかし、しかしだ里緒。

 いくら、俺の欲望が翼を広げようとも、今の俺はお前の味方だ。

 なにせ、この世界で初めて会話をしたのは、他ならぬお前じゃないか・・・。


 だが、里緒はその後の嫌味の攻撃にも終始黙ったまま身体を震わせ、何も言葉を返さず耐えていた。

 そして、嫌みに飽きた彼女達が去っていくと、悲しげに笑って俺に、


「さぁ、行きましょうか」

 一言だけ言った。


 どうしたんだ、らしくないぞ。


「誰なんだ、あいつら」

 俺の少し粗くなった言葉に、いや、自分の感情を俺に見せないようにとの配慮だったのかもしれない。

 一呼吸おいて、


「生徒会の人。あの真中の子が生徒会長の”稲荷家一子いなりやいちこ”」

 そして、俺の感情を収める為なのか、こう言った。


「私が、悪いの。昨日のお願いしますで、会い方を探せなかったから。学校代表なのに・・・」

 その言葉は、俺の心を締め付けた。

 

 そうだ、里緒は昨日の”お願いします”に出場していたのだ。

 と言うことは、塩南先生の話から行くと、彼女が柔軟体操部の部長であり、エースであるのは間違いない。さらに、学校のトップであり昨日の”お願いします”ではこの学校の代表と言うこになる。


 遅まきながら俺は全容を理解した。

 昨日のお願いしますで相方を、見つけれ無かったと言う嫌味は、俺のせいなのか!?

 資格も無いのに、あの場にいた俺のせいなのか・・・。


 お前は俺のせいで、校内の笑いものになっているのか。


 お前の昨日のつれない態度はそう言う訳だったのか・・・。


 それなのに・・・、それなのに、何だ?今の優しい笑顔と言葉は。

 俺を気遣ったと言うのか。里緒!


 俺は、俺はお前のプライドを必ず取り戻してやる!

 絶対にだ!

 

 俺の下半身の拳が黙っていないぞ!!

 

 しかし、それにしてもミニの下から覗く、去りゆく生徒会長の半尻はんけつは、たまらない。一度、一度でいいから両手でぷにぷにしてみたい・・・。


 <つづく>

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