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萬のエロはしその香り   作者: 工口郷(こうこうごう)
第2章 初演
20/73

AV科担任三人衆

千乃工口は、併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう”、通称”へ高に転入することになった。

そして、工口の前に現れたAV科3年の担任達は・・・。

 俺、千乃工口が、うっかりAV界なる世界に来てしまって、今日で2日目である。


 八方とそれなりの調和を保つことが信条な俺であるのだが、早二日目にして不覚にも苦手な人を作ってしまった。


 それも、AV界初夜をお世話になった恩人、千逗家のご主人の孫娘”千逗里緒”である。

 彼女はきっと俺のことを敵視しているに違いない。


 しかし、千逗家を後にした今、恐らく彼女と会うことは、この先まず無いないと想像する。

 今となっては、万が一道端で偶然に会った時は、素知らぬ振りで通り過ぎればいいだけなのだ。

 今後は、今回の失敗を教訓として、新たな苦手を作らない様に気をつけるとしよう。


 そんなことよりも、”移転届け”を提出した役場にて、俺に吉報が舞い込んで来たのである。

 それは、なんと!この俺にもこの世界の高校に通う権利があると言うことなのだ。


 この世界の女性の質は、俺好みにハイレベルだ。

 もちろん、聞いた瞬間から俺の気持ちは一つである。進む方向に揺るぎはない。


 新たな刺激を欲している俺の脚は、役場からの帰りに、早くも無意識に意中の高校へと向っていた。


 向った先は、”併性へノ路学園高等学校へいせいへのじがくえんこうとうがっこう”、通称”へ高”。

 なんと、男女比率は1:4。


 俺はそこで、新しい人生を切り開くのだ!


 もちろん、万が一このまま元の世界に戻れなかった場合だが・・・。 


★☆ 第 12 話 ★☆

☆★ AV科担任♂ ☆★

★☆  ♀三人衆  ★☆


 校長はこの俺を前にして興奮気味だ。

 異世界と交流のあると言う奇異なこの世界において、異世界からスカウトされて来たと言うのが、そんなに特別なことなのだろうか?


 この世界の常識を知らない俺には、疑問なところだ。

 だが、これは俺にとって決して悪い状況では無い。

 校長がこの俺に対して好意的であることは間違いないのだ。やっと暖かい南風が吹いて来たと言うことになる。


 併性へノ路学園高等学校、学校長。俺の中での通称”へ校長”は、小さな体の広い額に大粒の汗を掻きながらもう30分近くも、この俺に為に自らの高校の素晴らしさを力説を続けている。


「・・・でして、我が校は併性になって依頼この学区内トップなのです。代表が出場した大会でも、毎回優秀な成績を・・・。まあ昨日の”お願いします”は、たまたま不運で残念だったのですが・・・」


 俺に媚を売る様にも見える、もみ手を交じえて語るへ校長の話には、終わりが見えてこない。

 一体いつまで続くのだろうか?

 そんなことよりも、俺は入学の手続きしたいのだが・・・。


 そんな気持ちとは裏腹に、へ校長の話は手前味噌に続く。


「そして、卒業生達はJRAV会の各大会でも好成績を納め、このAV界の為に多くの人材ふが活躍を・・・」

 

 俺はへ校長の話を、後半から半分以上も聞き流していたのであるが、あることに気付いた。

 時々俺の顔色をうかがい、一瞬だけ言葉を止めるのである。 


 俺に、何かを期待しているのか?

 一体何をすればいいんだろうか?


 ここはAV界だ。普通のことを期待されているとは思えない。まさか、昨日の千逗里緒の様に半裸でブリッジでもすればいいのか・・・。

 そんな冗談は自分を苦しめるだけであった。忘れるとしよう・・・。


 俺は取り敢えず、へ校長のトークに飽きた事をそれとなく知らせようと、話の合間に様子を窺いながら小さく腰を回したり、若干の首の体操を試みたが、校長のトークは身ぶり手ぶりを加えて激しくなるばかりである。


 困った・・・。

 気付いてくれない・・・。


 昨日の千逗里緒事件がトラウマとなり、積極的な行動には出にくい。 


 しかし、間もなく、


「どうですか?この学校が他校とは違うことを少しはお分り頂いたでしょうか?」


 不安げな顔付きで、へ校長が俺に何かを求めて来た。

 もしかしたら、俺の行動を気にしてくれたのかもしれない?


 もしかして、不味かっただろうか・・・。

 行動を起こしてしまった後で何だが、気分を害してはいないか心配だ。


 ”不安気”に見えるへ校長の様子が、実は”不満気”かもしれないのだ。

 何せ、ここはAV界だ。昨日の千逗里緒との誤解のこともある。


 一体、何んと応えれば・・・。


「はい」と一言を言ってしまえばいいのだろうか?

 それでは、いつまでこの状態が続くか分からない。それも避けたい気がする。


 何れにしても、このままではでは何処かで勝負をかけなければならない様な気もする。

 この際、プレッシャーでお腹の調子が悪くなる前に。

 そうだ、この際はっきりと言ってしまおう。無難に受け身に回るのにも限界がある。


「あの~、お話は十分にお聞きしましたので、こちらに転入したいのですが、転入試験とかが必要なんでしょうか?」


 えい、やっ、で言ってしまった!


 俺は気分を害してはいないかとハラハラしながら、へ校長の顔見る。目が合う。


 顔が驚いている。


 やはり、話の先を静かに聞くべきだっただろうか・・・。


 しかし、


「し、試験!試験なんて、とんでもない。そ、そうですか・・・我が校に来てくれますか。それは良かった」


 へ校長は顔を燦然と輝かせ、テーブル越しに身を乗り出し、俺の手を握る始末だ。

 へ校長の手は異様に汗ばんでいて、あまり感じのいいもではない。だが、そんなこと後で手を洗えばいいことだ!


 俺は遅まきながら気づいた。へ校長はこの俺を入学させようと頑張っていたのだあった。

 俺は遠慮うせず、早くそれを告げるべきだったのだ。

 どうも、昨日の”千逗里緒の変”が俺の勘を狂わせている。


 こんな勘の悪い時は誤解を生み易い。とっとと手続きを終えて帰るべきだ。

 そう思い、


「入学の手続きを・・・」

 と、事を先に進めようと言い掛けたのだが、彼はそれを遮って話を更に続ける。


 へ校長は俺の意志表明を聞き、喋り疲れも忘れ更に興奮しているようだ。


 どっちにしても、話は止まらなかったのだろう・・・。

 しかし、一持兄さんといい、この校長といい、AV界の人は本当に説明が好きである。

 これは最後まで付き合うしかない・・・のかもしれない。


 へ校長の話では役場からは俺が転入希望で、3校の何れかの高校に行くだろうと言うことしか聞いてなかったらしいとのことだった。

 きっと、彼は俺の獲得の為に必死だったのだろうと思う。


 気を良くしたへ校長は、この後、俺の決断に惜しみない賛辞を振るまい、選択に間違いが無かったことの裏付けとばかりに学校の歴史を語り出した。


 この学校は5年前までは”塀の字学園女子高等学校へいのじがくえんじょしこうとうがっこう”と言う女子高であったとのことである。


 此処までは既知のことであるが、その理由までご丁寧に教えてくれた。


 何故共学(この世界では”併性”と言うらしいが)になったかと言うと、それまで”第27部第二学区”で、へ高は30年間学区内トップの座を守って来たのであったのだが、それが8年前にトップの座を明け渡して、2年連続でトップの座を他校に譲ってしまたらしいのだ。

 これが、事の発端らしいのだ。


 そこで、校内での練習環境の充実が急務と言う声が、生徒、教員だけでは無く保護者からも上がり5年前に共学になったとのことである。


 しかし、成績トップの座を奪還するのに、共学(併性)にして何の練習をするのだろうか?

 ちょっと解せないところである。


 ただ、共学になった2年後にはしっかりと第27部第二学区のトップの座を奪い返し、昨年はAV界全体でもトップ10に入った程の優秀な成績を納めたのだから、練習の成果が出たのは間違いなさそうなのだ。


 そして、解せないことがもう一つある。

 そんな学力優秀で名門にも関わらず、この学校の男子生とは初年度から全く増加しないそうなのである。未だに、全生徒の8割が女子なのだ。

 

 そのこともあって、まだまだ圧倒的に女子の力が強い。生徒会長も未だ代々女子であると言う。それどころか、主要な部分は全て女子生徒が占めているのだそうだ。


 男女均等の力があってこそ、学校の発展があると力説するへ校長に取っては、この俺が希望の星であるのだろうが、買い被り過ぎは後で落胆も大きいはず・・・。


 一般人の脳みそしか持ち合わせていない俺に大きな負担になりそうだ・・・。


 まあ、ここまで来たら、後はなる様にしかならない。

 とにかく入学手続きが終了するまでは、このまま買い被ってもらうことにするしかないのだが・・・。


 へ校長の話、第二段も永遠を感じさせていたが、恐らく昼のチャイムであろう。その音が校内に響き渡るとへ校長の顔がほころんだ。

 そして、一息を入れる様に椅子に腰を掛けると、入学に必要書類を用意する様にと、電話で指示を行い始めた。


 窓から入る陽が眩しい。影の位置からも昼を告げるチャイムであろう。俺は昼のチャイムに救われる形となった。


 編入手続きが、やっと始まった事に、俺は内心ホッとしたのである。



 だが、それから、まもなくである。第三段の幕が開けた。


 コン、コン・・。


 と、校長室内に向けて、重厚なノックの音が響いた。

 へ校長室の扉は、良い木材を使っているらしい。


「どーぞ」

 校長の待ってましたと言わんばかりの言葉に扉が開いた。


「校長、お呼びでしょうか」


 その歯切れが良く、あぶらの乗り切った色気を感じる女性の声が聞こえて来た。

 それに、へ校長はソファーから立ち上がって彼女を迎える。


「待っていました、宝家たからいえ先生」


 へ校長の声に招かれ一人の女性が入室して来る。

 俺はその宝家先生と言う女性の入室に息を呑んだ。そして、茫然と見とれてしまった。


 それは月並みだが一言でいうと、彼女から発せられるオーラがもの凄いのだ。

 俺は人として格の違いにあてられてしまった。


 青黒い髪を耳が隠れる程度のショートカットで揃え、黒のスーツに身を包んだ彼女、宝家たからいえ先生の姿はまるで本場のファッションモデルの様であり、さらに顔付きからは知的さが伺える。


 彼女、宝家たからいえ先生は入室して直ぐに、こちらに向って一礼をした。

 それは、校長に礼をしたのであろうが、俺も釣られて立ち上がり深々と一礼をしてしまっていた。


 正直言って、俺は名門と言われるこの”へ高”にあって、校長の威厳のなさからAV界の高校に対し、多少の疑問を持っていたのであるが、それもこの宝家先生の出現で俺の心は一掃された。

 流石は、名門と言うだけのことはある・・・。そんな気持ちになった。


 ところが、この宝家たからいえ先生が扉を閉めようと、取っ手に手を掛けると、その手の下を掻い潜って、もう一人の姿が飛びこんで来た。


 一瞬にして校長室を引き締まった雰囲気に変えてしまった彼女のオーラを、これまた一瞬にして、妙な世界に上塗りをしてしまう強い個性が現れた。


「こ~長~!お呼びだワッオ~ん」


 いきなり陽気な珍獣が出没した。

 この珍獣は、華麗な宝家先生を追い越して、校長に向ってピンクの物体が猛ダッシュを始める。


 甘くフレッシュな香りが俺の前を通り抜けて行く。

 白い透きとおる様な肌に、メイド喫茶の衣装の様なフリルの付きのワンピースを纏い、ウェーブの大きい、ブロンドを靡かせる。


 多少小柄で、舌っ足らずな喋りは愛らしいが、


「お~、太棒たぽう先生もお出で頂いていましたか」

 この人も先生らしい。


 唖然とする俺の前に、二人の好対照な女性が、いや先生が並んだ。

 これ程、好対照な女性を並んで見ることも人生初の経験である。しかも同職である。 

 

工口君くぐちくん、こちらのお二人はAV科3年の担任の宝家棒薔薇たからいえばーばら先生と、太棒御先たぽうみさき先生です。

 そして、宝家先生、太棒先生、こちらが・・・」


 校長は俺を紹介する前に、自慢げに二人の先生を見つめる。少し間を開けたのはどう言う意味か?


「なんと、我が校にも初のスカウトされた生徒が来られました・・・」


 初だったのか・・・。

 校長の興奮は、そこから来ていたらしい。

 と、言うことは俺が珍獣なのかもしれない。


 俺を見ていた二人の先生が顔を見合わせている。


 そんなに、凄いことなのだろうか?

 俺に物凄いプレッシャー圧し掛かる。


 校長は再びたっぷりと、もったいぶった後に、俺の紹介を続けた。

千乃工口ちのくぐち君で、3年生に編入致します」


 校長の言葉は、常に謙虚である。

 

「宜しくお願いします」

 俺が頭を下げると、当然の流れで向い側からも「宜しく」と声がするが、二人の先生の声には俺に対する驚きが隠せない。

 だが、その声と共にもう一人の声を聞いた俺も驚きを隠せなかった。


 俺が頭を下げた更に下からも、少し遅れて声が聞こえたのである。


「よ~ろしく~おねがいしま~す」


 ふわふわとした掴みどころのないこの声の出所が、俺を下から覗いているのである。


 肩までの黒髪に、ふちなしのメガネ。前で立っている二人から比べると、段違いに地味な女性である。

 だが、この後気付くのだが、それはある一点を除いてのことである。


「お〜、来てくれましたか。塩南しおな先生」


「遅く~なりました~」


 いつの間に現れたのだろうか、校長も気付いていなかった様である。それにしても、気配を感じないくらいに影が薄い。


「工口君、こちらが塩南間子しおなまこ先生で、同じAV科3年生を受け持って頂いています」

 全くを持って、腰が低い校長だ。


「よ、宜しくお願い致します」

 俺の戸惑った挨拶にも、


「よろしく~、おねがい~しま~す」

 物凄くゆったりと喋るこの塩南先生はマイペースを崩さない。


 縁なしメガネのフレームを抑えながら俺に微笑む。どうやら、フレームが緩んでいて落ちそうなのを抑えている様である。


 この塩南先生は、派手なオーラを撒き散らす宝家たからいえ先生と、様相が派手な太棒たぽう先生に比べ、内外共に地味一色。これまた正反対な先生である。 


「校長、彼は本当にスカウトされて我々の世界に来たんですか?」

 そう言うのは、凛々しくオーラを放つ宝家先生である。バラの花が舞って見えるのは錯覚だろうか。


「そうなんですよ、宝家先生。それも、あのスカウター”ラミア様”のスカウトなのですよ」


 校長はご満悦であるが、俺は更に気が引けていく。


 俺はそんなに凄いのだろうか?それは、一番付き合いの長い俺が一番よく知っている。


 それは、

 あり得ない・・・、

 話だ。


 そうだ。”まほまほ”の勘違いか早とちりで来てしまっただけなのだ。


 つい先ほどまでは、無事に編入出来るまでは買い被っていてもらおうと思っていたが、ここまで言われると、どうも気が重い。

 重すぎる。


 だが、嘘だとは言えない。早とちりにせよ紛れもない事実なのだから・・・。


 それにしても、俺は校長の言葉の”ラミア様”って言うのが気に掛かる。

 ”ラミア様”って、”まほまほ”のことではないのか?

 

 ”様”?

 スカウターの地位の高さは一持兄さんから昨日聞いたばかりではある。

 だが、それは”様”を付けて呼ばれる程なのか?

 あの、まほまほを思い浮かべると、いくら不可思議なAV界とは言えども納得がいかない。


 すると、


「おー、それは凄い。ラミア様が・・・」

 宝家先生が感嘆の声を上げれば、


「ぽよ~ん!」

 太棒先生も、恐らく口調と顔付きからは感嘆の声だと思うのだが、一言お発っしになられた。


 二人は、この俺を高級アワビでも観る様な目付きで受け入れてくれている。

 やっぱり、この俺はどう控え目に捉えても、相当期待されているようである・・・。


 だが、そんな中、塩南先生だけはふらふらと笑顔で揺れている。

 何も発しなければ、表情も変なレベルで安定している。

 

 流石はAV界と言ってもいいのだろうか・・・?



 この後、当然へ校長がこの場を取り仕切り、俺の所属するクラスと部活を決めることになった。

 AV科は部活に在籍するのが必須で、今では学校生活の比重は、勉強よりも重くなっているとのことである。

 前代未聞のスカウトされた生徒としては、この謙虚な校長の一存では決められないと言うことのようだ。


 校長の隣に俺が座り、テーブルを挟み向い側の長椅子に3人の先生が腰を掛けた。


 この3人の先生が並ぶ姿は、きっと見たものにしか分からないだろう。

 長椅子に、マネキンと、雛あられと、アルパカが同等に座っている様なものである。


 何んとも壮絶だ!

 

 <つづく>  

今回は”下”系が一つもなかったのですが、それも”あり”でしょうか?

先に進まないので、切ってしまいました。


未だ設定段階から抜け出せていないもので・・・。

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