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【全年齢版】幼馴染はヤドクガエルの王子様~「1000回契れ」って…これなんの呪いですか!?~  作者: 黒燿
第1章:その美しさは、まるでアルカロイド系の猛毒。

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第6話:触れ合う肌の温もり。

カエルは深い溜息をつき、口を開いた。


「『禁戒の森』の魔女は…… 私の父上と古い仲だったのだ」

「父上と魔女との友好のあかしとして、父上は魔女にこの森を与え、かわりに我がフィンザー家の者は、魔女に祈ると願いをかなえてもらえる約束になっていた」


カエルは一呼吸置き、続けた。

「――とはいえ…… 相手は魔を扱うもの。 なにかしらの代償が必要となるのだ」

「願いの大きさによって、その代償も大きなものとなる――」


「私は10年の間カエルの姿から戻れぬほどの強力な魔法をかけられ、かつ、この魔法を解除するには『清き乙女との契り』……カリンに触れ、契ることで人間に戻れることになっていたが――」

「さらに、この魔法を解くために自力ではなく、誰かに話し解除した場合、代償として永遠に戻れなくなる縛りも課せられてしまったのだ」


「最悪なことに、この縛りは魔法をかけてからでないと、どんな縛り―― 『呪い』が発動するのかもわからない」

「魔女からも、本当にやるのかと何度も咎められた しかし、カリンの命の危機、考えている暇はなかった」


わたしの頬を、熱い涙が伝った。

「ルカ…… ああルカ…… わたしを救うためにそんな重い決断を……」

衝撃の真実に、わたしはその場に膝から崩れ落ちた。


「猛毒のあるカエルを模したあの姿では、誰もが私を忌み嫌い、私も誰かに触れることができなかった」

「そして、醜いカエルの姿では、私の言うことには誰一人として耳を傾けようともしなかった」


わたしはギクリとした。

わたしもその『誰一人』のうちの一人だからだ。


「もうだめだと思っていた。 その期限はカリンが18歳になる日までだったからな」

「しかし……」

「カリンが奇跡を起こしてくれたのだ――。 一瞬とはいえ、本当の姿に戻れた」

「だから今、この話をお前にすることができたのだ」


胸が張り裂けそうだった。

ルカにはこの10年間ずっと、信じられるものがわたしの心のほかになかったのだ。


「ルカ……」

あまりの健気さに、目の前のカエルを抱きしめたくなり、手を差し伸べようとしたそのときだった。


ブーーーーーン……


小さな虫が私たちの間を横切った。


その瞬間。


シュッ!

小虫を捉えたカエルの目が両生類のソレとなり、小虫を捉えようと滑らかな舌が瞬間で伸びた。


バチーーーーーン!


一瞬の隙を遮るように、タッチの差でわたしの手はカエルの横っ面を平手でぶん殴っていた。

カエルはその勢いですっ飛んでいき、大木に正面からぶち当たって貼り付いた。


あ…… あ…… あ……

危なかったーーーーー!!!!!


木に貼り付いたままになっているカエルに向かって、わたしは顔を真赤にして涙ながらに叫んだ。


「わたし!は! あなたがあのルカだなんて! まだ!完全には! 信じ! ま! せん!!」

肩で息をしながら、わたしは続けた。


「ルカは! 小虫なんか! 食べ! ま! せん!!」


その瞬間だった。

カッ!っとカエルが七色の光を放ち、眩しさに見えなくなるほどになり、 わたしは目を覆った。


な…… なに…… なにが起こったの……?

恐る恐る、指の間から光の方向を見る。


すると……。


「え……?」

そこにはあの、昨晩情熱的な口づけを交わした、輝くばかりに美しいルカの姿があった。

(またしても全裸だったが。)


「カリン……」

大木にめり込んだ身体を引き剥がしつつ、ルカが、いや、ルカの形をした人が、わたしの名前を呼ぶ。


『ど…… どうなっているの……』

心底混乱した。


『昨晩と同じように、カエルをぶん投げたらルカに……? まさかこれが呪いを解く鍵……?』

『いやいやいや…… ルカを食べてしまった魔物が、ルカの皮を使って悪さをしているのかもしれない』


『でも…… どうして?』


わたしの混乱をよそに、このルカ(?)に名前を呼ばれたわたしの心は、身体は、共鳴するかのように激しく震えた。

胸の奥が切なく痛み、動悸はどうにかなってしまったかのように早鐘を打ち、全身の血が沸騰したみたいに熱い。

耳や顔が流行り病にかかったときと同じくらい燃えるような熱を帯び、唇や、胸や、下腹部の奥がキュッとなった。


大木にぶつかった衝撃からか、額から血を流すルカ(?)が、わたしに向かってよろよろと歩み寄ってくる。

「カリンよ…… 元の姿に戻してくれてありがとう……」

笑顔で語りかけてくるルカ(?)には、やっぱり()()ルカの面影を感じられる。


でも……。


「わ、わたしはどうしたら……」


突然、ブワッと大量の涙が溢れ出た。

なんだかわからない感情が涙となって溢れ出て、止まらなくなってしまった。


「わたし…… わたしは……」


わたしはもう、なにを信じたらいいのだろう……。

誰を頼ったらいいのだろう……。


もしかしたら、この先永遠に誰も信じられずに一人ぼっち。

真っ暗な闇の中に自ら飛び出してしまったこと――現実――を今自覚してしまい、恐怖で身体がガチガチと震え始めた。


ルカ(?)は、そんな震えや嗚咽が止まらないわたしを、ふんわりと優しく抱きしめた。

そして、わたしを落ち着かせるように、ゆっくりと身体を撫でながら静かに語り始めた。


「カリン…… この10年本当によく我慢していたね。 周囲の人からは腫れ物に触るように扱われ、義母や義妹からも冷たく扱われ、実の父上でさえも今日のような仕打ちを……」

「さらには帰る家すらも失い…… さぞ辛かったであろう……」


「すべて…… すべて私のせいなのだ」

「お前を孤独に陥らせてしまったのは、すべて私の…… あの時の決断を誤ったせいなのだ」

「すまない……」


そう言うと、ルカ(?)も身体を震わせて涙を流し始めた。

わたしの頬に、幾粒もの涙が落ちてきた。


温かい……。

そこには、懐かしい人の温かさがあった。

お互い、この10年、誰とも触れ合わず、感じることもなかった、人の温もり。


そう言うルカ(?)だって、10年もの間、醜く禍々しいカエルの姿で忌み嫌われ続け、国にも帰れず、誰にも秘密を打ち明けられず、そしてわたしからも心を拒絶され……

同じくらい、ううん、もっともっと、わたしの想像もつかないくらい、孤独で辛く苦しかったことだろう。


わたしたちは抱きしめ合って、人の温かさを感じながらただ泣いた。



月が夜の帷の頂点に差し掛かるころ、泣き疲れてしまったわたしたちは、風を避け休めそうな大きな木の下で横たわっていた。

寒さを凌ぐため、わたしの背後にピッタリとくっつくようにして、ルカ(仮)が抱きしめてくれていた。


「寒くはないか、カリン。 ほら、もっと私に体を寄せて……」

「は、はい……」

ぐいっと力を込めて、ルカ(仮)がわたしを引き寄せる。

その力強さに、心の底から安心感を覚えた。

そしてドキドキもした。

まだ完全に信じ切れはしないけど、あの愛しい(多分)ルカと、こうして身体を寄せ合っているのだから。


背中に感じる、ルカ(仮)の体温。

ルカ(仮)は少しの間モゾモゾとして、時々わたしのお尻のあたりに、熱くて硬い()()()が触れている。

寒がるわたしを気遣って、焚き火で温めた石などを湯たんぽの代わりにしてくれているのかもしれない。

心地のよい温かさに、わたしはその()()()に身体をグイッと押し付ける。

そのたびにルカが「うっ……」と声を上げ、息を荒げていた。


「ルカ…… どうしたの?なにか苦しいの? まさか、カエルの呪い……!?」

心配になって振り返ろうとするわたしを、ルカが制した。

「だ、大丈夫だ、カリンよ……。 これはむしろ、正常な反応とも言える」

「そ、そうなの……?」


「そ、そのまま…… なにがあっても振り向かず、そのままの姿勢でいてくれないか」

「わかったわ……」

ルカが絞る出すような声で言うので、わたしはそのままの姿で眠りにつくことにした。


――眠りにつこうとした。のだ。

徐々に息を荒げる背後のルカ(仮)の唇は、わたしのうなじに時々触れ、さらに熱い吐息がかかり、そのたびにわたしの身体中の毛穴が総立ち、ビクンと身震いがして小刻みに反応していた。


『な、なんなの…… この感じ……』

『昨日も感じた…… もっと……』

『もっとルカ(仮)に触れてほしいと思ってしまう…… そう、抱きしめるだけではなく……』

『ああ、ルカ(仮)…… ルカ(仮)…… 今日は…… 昨日のような、情熱的な口吻もしてもらえないのかしら……』

『こんなことを思うわたしを、ルカ(仮)はふしだらな女だと思うかしら……』


『ああ、ここ…… ここに…… 触れて…… ほしい……の……』


夜は更けてゆき、東の空は白み始めていた。

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