第004話 炎の残る香り
夜明け前の現場には、まだ、焦げ臭い匂いが漂っていた。
夏丘孝枝は黒く変色した床の片隅にしゃがみこみ、指でそっと焼け跡をなぞった。某の粒子がまるで粉雪のようにふぁっと舞った。
「自然発火じゃないな・・・」
後ろから声がして振り返ると、羽山六郎が腕を組んで立っていた。煙で傷んだ天井を見上げながら、彼は低く続ける。
「モバイルバッテリーに見せかけているが、発火元は別だな、ケーブルの焼け方が不自然すぎる」
松添飛雅は周囲を見回し、目を細めた。
「バッテリーを"犯人"に仕立てたって事かっ、つまりこれは、養殖火災だ」
その言葉に孝枝は息をのんだ。自然災害に見せかけて人が仕掛ける、養殖火災。
空済友香が現場の写真を撮りながら、ぼっそり呟いた。
「一連の火災って、全部つながっているのかも・・・、モバイルバッテリーの事故のニュースが増えている事に紛れて・・・」
天壁知恵が黙ってうなずき、持参した資料を広げる。
「被害者のほとんどが、ある保険契約していたことが判明した、契約直後に火災が発生しています」
その場の空気が一瞬重くなった。お金の流動の匂いが、焦げ跡よりも濃く漂う。誰かが利益の為に炎を操っている。その確信が五人の目に宿った。
「必ず証拠を固めよう」
飛雅は短くいい、立ち上がる。
そのせなかに孝枝は静かに決意を重ねた。
炎に包まれた人々の無念を晴らすために。
外に出るとまだ冷たい風が焼けた匂いを遠くへ運んでいく。
完全にニオイは消えることはない。事件の闇を暴くまでは・・・。




