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トランセンデンス・リアライザー〜理想ノ世界への旅路〜  作者: 由良神零
第一章魔王討伐編

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8/17

再戦 ― 逆転の理想、顕現

―轟音。

 大地が再び裂け、炎が天を焦がした。

 マルバスの咆哮が峡谷を揺るがす。

 その姿は以前よりも巨大で、背の炎の翼が八枚に増していた。

 炎帝は、敗北した者の憎悪と怒りを力に変えていた。

 「超越者……まだ生きていたか。」

 声は雷鳴のように響く。

 ユウキはゆっくりと立ち上がった。

 焼け焦げた衣の下、紅と蒼の光が脈打つ。

 〈逆転の理想〉――その力が、彼の中で確かに息づいていた。

 「お前に焼かれても、俺は終わらない。」

 ユウキの瞳が二色に輝く。

 「俺は、絶望を抱いて立つ。」

 マルバスが嗤った。

 「人間が絶望を誇るか。滑稽だ。」

 「滑稽でもいい。理想だけで立てるほど、この世界は優しくないからな。」

 マルバスが手を振り上げる。

 業火が渦巻き、天を覆う。

 「“焔天滅界アポカリプス・ブレイズ”――この地を灰に還す!」

 空が燃える。

 紅蓮の光がすべてを呑み込もうとした瞬間、ユウキは地に剣を突き立て、叫んだ。

 「〈逆転の理想リバース・リアライズ〉――発動ッ!」

 大地が反転する。

 焼ける世界の中、蒼と紅の光が交差した。

 マルバスの炎が空へ吸い上げられ、逆流する。

 炎が光へ、破壊が再生へ――因果が“逆転”していく。

 「なっ……!? 我が焔が、消える……だと……!」

 ユウキの声が響く。

 「お前の“未来視”が見ているのは、理想の延長線。

  だけど、俺の“逆転の理想”は――理想と絶望、両方を現実にする!」

 マルバスの瞳が揺らぐ。

 未来視の力〈真炎の眼〉が、二重に交錯する運命を捉えられず、焦点を失う。

 「貴様……“決まった未来”を、同時に二つ存在させているのか!?」

 ユウキが一歩踏み出す。

 その剣は、もはや光でも闇でもなかった。

 ――“現実の剣”。

 「未来を読むなら、読めばいい。

  俺はその未来ごと、超えてみせる。」

 斬撃が走る。

 マルバスの炎の翼が裂け、灼熱の爆風が吹き荒れる。

 マルバスが吠える。

 「我は五大魔帝の一角、“炎帝マルバス”だァァ!!

  人間如きに、この炎が負けるものかッ!!」

 ユウキが剣を構える。

 「俺は人間だ。だけど、“理想を超える人間”だッ!!」

 蒼紅の閃光が走る。

 マルバスの胸を貫いた。

 炎が散り、空が晴れた。

 重い音とともに、マルバスが膝をつく。

 「……見事だ、人間。

  お前の“理想”……我は、否定できぬ。」

 その瞳が、かすかに笑っていた。

 「貴様のような者が……我らの主、魔王陛下と同じ“矛盾”を抱えている。

  ならば、やがて――お前も、陛下の座に辿り着くだろう。」

 そう言い残し、炎帝は静かに崩れ落ちた。

 灰となり、風に溶けて消えていく。

 静寂。

 リリアが駆け寄る。

 「ユウキ!」

 ユウキは笑って応えた。

 だが、その笑みの裏で、胸の奥が痛んでいた。

 ――勝ったのに、痛い。

 ――理想を掴んだのに、涙が止まらない。

 リリアが手を握る。

 「もう無理しないで。あなたはもう、十分戦ったわ。」

 ユウキは小さく首を振る。

 「まだ、終わってない。

  マルバスが言ってた。“魔王と同じ矛盾”……

  それを知らなきゃ、俺はまた同じことを繰り返す。」

 リリアの目が揺れる。

 「あなたが……また壊れるかもしれないのに?」

 ユウキは微笑んだ。

 「壊れてもいい。

  でも、もう逃げない。

  理想も絶望も、俺が全部背負って――“超えてみせる”。」

 風が吹く。

 灰が空へ舞い、光に溶けて消えていった。

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