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トランセンデンス・リアライザー〜理想ノ世界への旅路〜  作者: 由良神零
第一章魔王討伐編

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逆転の理想 ― 絶望の底で

 ――暗闇。

 音も、色も、感情さえもない世界。

 ユウキはその中心で、ただ浮かんでいた。

 焼けた身体も、痛みも、もう感じない。

 あるのはただ、空虚な心。

 (……俺は、負けたのか。)

 “超越世界”は破られた。

 理想は届かず、仲間を守れず、すべてを失った。

 その瞬間、足元に亀裂が走る。

 闇の下から、紅の光が滲み出た。

 ――声が、響く。

 「情けないな。かつて“理想の勇者”を名乗った者が、この有様か。」

 その声は、自分と同じだった。

 だが、そこに込められたのは怒りでも嘲笑でもない。

 “諦観”だった。

 闇が裂け、そこに立つもう一人の自分。

 黒衣に身を包み、紅い瞳が闇を貫く。

 その背には、黒翼が二枚。

 ――魔王ユウキ。

 「……お前が、“俺”か。」

 「そうだ。お前の心の底に棲む“影”。

  理想を描く度に、現実を憎んだ者。

  誰かを救いたいと願いながら、救えなかった記憶の亡霊だ。」

 ユウキは拳を握る。

 「お前が……俺の中の“魔王”だって言うのか。」

 魔王はゆっくりと頷く。

 「お前の“理想”が積み重ねた矛盾の果てに、俺は生まれた。

  お前は現実を壊すことで理想を作ろうとした。

  それが“超越世界”という歪んだ力。」

 「……違う。俺は――」

 「違わない。」

 魔王が冷たく言葉を断ち切る。

 「お前は救うために殺し、守るために壊した。

  理想という名の暴力で、現実をねじ曲げてきた。」

 ユウキは沈黙した。

 思い出す。

 仲間を救うために犠牲を選んだ夜。

 魔族を“悪だから”と決めつけた日。

 それらすべてが、彼の“理想”の上に築かれた偽りだった。

 「……じゃあ、俺はどうすればいい?」

 魔王の瞳が微かに揺れた。

 「簡単だ。理想を捨て、現実を受け入れろ。

  痛みも、汚れも、すべてを抱えた上で――“それでも前に進む”と誓え。」

 「……理想を、捨てろって?」

 「そうだ。理想は夢だ。夢に逃げた者は、現実を失う。

  だが――夢を殺した者は、現実を変えられる。」

 ユウキは静かに目を閉じる。

 頭の奥に、リリアの声が響いた。

 “理想を貫くなら、私が支える。”

 その言葉が、心の奥でまだ温かく燃えていた。

 「……違うな。

  理想を殺すことが正しいなら、俺は何のためにここにいる?」

 魔王の紅の瞳が細まる。

 「……まだ、理想を信じるのか?」

 ユウキはゆっくりと剣を構える。

 それは“自分自身”に向けられた刃だった。

 「理想は、現実を壊すための力じゃない。

  現実を超えるための“願い”だ。

  お前が俺の絶望なら――俺は、それを超えてみせる。」

 魔王が嗤った。

 「ならば証明してみろ。

  お前が俺を超えるというのなら、この闇を切り裂け!」

 剣が交わる。

 “理想”と“絶望”――

 二つの意志がぶつかり、闇の世界が震えた。

 蒼い光と紅の炎が衝突し、

 闇が光を拒み、光が闇を貫く。

 ユウキは歯を食いしばりながら、叫んだ。

 「俺は……俺を否定しない!

  理想も、絶望も、全部――俺だッ!!」

 刃が閃く。

 蒼と紅が一つに重なり、爆ぜた。

 ――“世界が反転する”。

 光が収まった時、ユウキは立っていた。

 黒と白が交錯する装束。

 背には、片翼の光と片翼の闇。

 その瞳には、蒼と紅の二色の輝き。

 魔王の姿は消えていた。

 ただ、彼の声だけが心に残る。

 「これが、お前の“逆転の理想”か。

  ならば、見せてみろ――世界に、真の希望を。」

 ユウキは剣を掲げた。

 蒼と紅の光が交差し、世界の裂け目が修復されていく。

 「〈逆転の理想リバース・リアライズ〉――

  理想と絶望を、同時に現実へ。」

 その瞬間、彼の身体が現実世界へと引き戻された。

 焼けた大地。

 崩れ落ちた峡谷の中で、リリアが泣き崩れている。

 「ユウキ……お願い、戻ってきて……!」

 光が降り注ぐ。

 蒼と紅が交わる輝きが彼女の前に降り立つ。

 ユウキは微笑んでいた。

 血にまみれたまま、しかし確かな光を宿して。

 「……リリア。

  俺、ようやく見つけたよ。

  理想は、“壊すため”じゃなく、“抱きしめるため”のものだ。」

 彼の背に、再び翼が開く。

 ――世界を超える光。

 リリアは泣きながら笑った。

 「おかえり、ユウキ……!」

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