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トランセンデンス・リアライザー〜理想ノ世界への旅路〜  作者: 由良神零
第二章スタンピード編

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16/17

魔物の大暴走スタンピード

 ――世界が、再び悲鳴を上げた。

 それは、誰も予期しない形で訪れた。

 空が曇り、地が震え、

 魔力の流れが“逆流”する。

 人々はまだ、その異常の意味を知らない。

 だが、各地の冒険者ギルドでは、

 同じ言葉が次々と報告に記されていた。


 > 「群れが、統率されている……!」


 > 「知性を持つ魔物が、数万単位で動いている!」


 > 「これは――ただの暴走じゃない!」


 ギルドマスターたちが震えた。

 彼らが恐れた“禁句”が、現実になったのだ。


 ――〈魔物大暴走スタンピード〉。


 ユウキは、王都の高塔から異変を見下ろしていた。

 地平線の向こう、海の彼方、

 空にも大地にも、黒い渦のような光が揺らめいている。


 「あれは……転移門ゲート?」


 ギルド本部からの報告が届く。


 「報告! 確認されたのは計六つ!

  それぞれが未知の魔力波を放っています!」


 ユウキは低く呟く。


 「六つの門――群れを統べる“王”がいるってことか。」


 地図の上に浮かび上がった、六つの名。


 『ブルーオーシャン』


 『空虚の塔』


 『世界樹』


『最強ダンジョン』


『羅生門』


 ――そしてもうひとつ、未確認の第六のゲートが北方氷原で脈動していた。


 ギルドの観測士たちが震える声で報告を上げる。


 「各地のゲート内で確認された魔物の群れ数、

  およそ――三十万体以上!」


 「……三十万!?」


 「しかも群れを率いている存在の魔力値、

  既存のランク測定器が反応不能……!

  ギルド規格外の“E級”と認定されました!」


 場が凍りつく。

 S級の冒険者ですら“災厄級”と呼ばれる。

 その上――“測定不能”。

 “人間の理解を超えた存在”という意味だ。


 それぞれのダンジョンの奥底で、

 “何か”が目を覚ます。


 ――〈ブルーオーシャン〉。

 深海の底で、海を割るような咆哮が響く。

 巨大な鱗が蠢き、波が空へと昇る。

 「……我ハ、大海ヲ統ベル者ナリ。」

 名を、大海のオーシャンロード

 海そのものが、その体。


 ――〈空虚の塔〉。

 無限に続く螺旋の上で、風が渦を巻く。

 空気が震え、声なき声が囁く。

 「虚ろこそ、我が存在。」

 名を、虚空の御霊ヴォイド・スピリット

 形を持たぬ、概念の魔。


 ――〈世界樹〉。

 大陸中央に聳える樹海が、突如として動き出す。

 根が地を裂き、枝が雲を貫く。

 「芽吹きは滅びをも孕む。」

 名を、災害樹ディザスター・トレント

 生と死の循環を司る、世界の代弁者。


 ――〈最強ダンジョン〉。

 死の気配が漂う闇の底で、鎌が擦れる音が響く。

 「オイ、退屈してたんだよ。」

 名を、死神君デス・キッド

 その笑いは、命を断つ鎮魂歌。


 ――〈羅生門〉。

 地獄の門が軋み、紅蓮の炎が噴き上がる。

 「六道を巡り、修羅を極める。」

 名を、修羅婆アスラヴァ

 戦のために生まれ、戦うために存在する鬼神。


 その報告を聞いたユウキは、拳を握りしめた。


 「六体のE級……この世界が試されてる。」


 リリアが問いかける。


 「ユウキ……どうするの?」


 彼は静かに答えた。


 「行くさ。

  俺たちが生きるこの世界を――もう二度と失わないために。」


 風が吹く。

 夜空に光る六つのゲートが、まるで天の瞳のように輝いた。

 そして、その光を見上げる“誰か”がいた。

 遠い異空間、八重の光輪を背負う存在――エラー。


 「……へぇ。

  やっぱり退屈は続かねぇな、ユウキ。」


 彼の唇が歪む。


 「この戦い、見せてもらうぜ――

  “世界を護る者”としての本当の姿を。」

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