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トランセンデンス・リアライザー〜理想ノ世界への旅路〜  作者: 由良神零
第一章魔王討伐編

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12/17

魔王、そしてもう一人の俺

――光の扉を越えた先は、静寂の世界だった。

 白でも黒でもない。

 色という概念が存在しない“原初の空間”。

 すべての始まりにして、すべての終わり。

 ユウキとリリアは、足を踏み出すたびに“世界が形づくられていく”のを見た。

 それは〈超越世界〉の最深部――理想の起点オリジン

 そして、その中心に。

 一つの玉座があった。

 玉座には、ひとりの男が座していた。

 ユウキと同じ顔。

 だがその瞳は、宇宙のように深く、冷たい。

 「……ようやく来たか、ワクラ・ユウキ。」

 男が立ち上がる。

 声も、表情も、呼吸までもが――自分と同じだった。


 「お前は……誰だ?」

 問いかけるユウキに、男は静かに笑った。

 「俺の名は〈ユウキ=イデアル〉。

  神の創造した、最初の“理想の勇者”だ。」

 その名を聞いた瞬間、ユウキの心が震えた。

 ――イデアル。

 ベルゼナの記憶に出てきた“神”と同じ名前。

 「……まさか、お前が神イデアルなのか?」

 「違う。」男は首を振る。

 「俺は神に創られた“原型”だ。

  神々が理想の人間を創るために作った最初の転生者。

  そして……お前は、俺の“最後の継承者”だ。」

 リリアが息を呑む。

 「最初と最後の……勇者……?」


 玉座の周囲に、光の文様が浮かぶ。

 それは古代神文字――転生のコードだった。

 「神々は“理想の世界”を求めて、無数の人間を転生させた。

  理想を描くたびに、その未来を観測し、データとして蓄積した。」

 ユウキは言葉を失う。

 神々の創った世界は、理想のための実験場。

 転生者は、神の創造を進化させる“素材”だった。

 「だが――誰も完璧な理想には辿り着けなかった。」

 「だから神々は、“理想そのもの”を人間に埋め込んだ。」

 男は胸を叩いた。

 「それが、〈超越世界〉という力だ。

  未来を描く力ではなく、“神の理想を強制的に実現する力”。」

 ユウキの手が震える。

 「……俺の力は、神の理想を押し付けるためのものだったのか。」

 「そうだ。

  だが、お前は“理想を自分の意志で描いた”。

  それが、神にとっての誤算だった。」


 ユウキは静かに目を閉じた。

 思い出すのは――

 仲間、失った者、そしてベルゼナ。

 「俺は、神の理想なんて興味はない。

  俺が見たかったのは、人が願う“未来”だ。」

 男――イデアルの瞳に、わずかな光が宿る。

 「それが、お前の“人間らしさ”か。

  だが、それこそが世界を壊す。

  理想を自由に描く人間など、神々は許さない。」

 「だったら、神ごとぶっ壊す。」

 ユウキは剣を構えた。

 その刃が光る。

 〈超越世界〉――その理想の象徴が、彼の手の中で脈動する。

 「俺の理想は、誰かの犠牲の上じゃない。

  “すべての命が選べる世界”だ!」


 イデアルが右手を掲げると、世界が反転した。

 無数の記憶、転生の断片が光の粒となって舞い上がる。

 「見ろ、ユウキ。

  これが、お前たちが歩んできた理想の屍だ。」

 「……違う。」ユウキは剣を掲げる。

 「それは屍じゃない。“軌跡”だ!」

 刃がぶつかる。

 光と闇が爆ぜ、世界が裂ける。

 理想と虚無が交差し、無限の可能性が混ざり合う。

 その中で、ユウキの声が響いた。

 「俺はお前だ。お前は俺だ。

  だが、俺は“理想を諦めない俺”だ!」

 イデアルの瞳が揺れる。

 「ならば証明してみろ。

  理想が絶望を超えられるということを!」

 世界が――白く、爆ぜた。


 光の中で、ユウキとイデアルの剣が交わる。

 そして、同時に叫んだ。

 「〈超越世界〉――終極顕現エンド・リアライズ!!」

 爆光が世界を貫く。

 時間も因果も、理想も絶望も、すべてが融け合う。

 その中で、ユウキは見た。

 ベルゼナ、ルミエル、アスモデウス、マルバス――

 皆が、微笑みながら彼の背を押していた。

 (ありがとう。俺は行くよ。)

 ユウキの剣が、イデアルの心臓を貫く。

 しかし、同時に自分の胸にも痛みが走る。

 イデアルが微笑む。

 「……やはり、俺はお前で……お前は、俺か。」

 「そうだ。

  理想も絶望も、全部含めて“俺”だ。」

 イデアルの身体が光に変わる。

 「ならば、進め。最後の勇者よ。

  神々の理想を超える、“人の未来”を。」

 光が弾け、静寂が訪れた。

 目を開けると、リリアが涙を流していた。

 「……ユウキ、終わったの?」

 ユウキは空を見上げ、微笑んだ。

 「いや……始まったんだ。

  今度こそ、“本当の世界”が。」

 空に光が満ちる。

 誰かの理想ではなく、無数の命が描く未来の光。

 それが、新しい世界を形づくっていく

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