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第5話 奥様の病気

「セディー!セディー!」


「はい、若様、御用でしょうか」


「剣のけいこしよっ!」


「かしこまりました~、ではお庭へまいりましょう」


転生少年の今世の魅力度は人間族の最大値18。

カンスト魅力が大爆発。

ここ、ルドナタ家で大人気だ。


特におぼっちゃまに大人気。

就職三か月目で早くもセディー、セディーと何かにつけご指名をいただいています。


しかもこの子は、明るく素直で非常にかわいらしい。

「とうさまみたいな騎士になりたい!」とのことで本日も剣のお稽古。


本音を言うと午後の時間は、自分のスキル上げをしたいのだけど、顧客の満足度が大事です。

お仕事先で最も重要なのは仕事の結果ではなく上司の印象。

上司の印象こそが成果。

これはガチ。

新人諸君が「結果出せばいいんでしょ!」とか言ってソロ狩りしちゃいがちですが、ダメダメのだーめだめ。真の顧客は社内にあり。上司の満足度が一番大事なんです。

実務の結果ももちろん大事ですが、それよりも上司がこいつ出来るなって思うことこそが本当に求めるべき結果なんですよ。


「セディが来てからヒムが稽古も勉強もまじめにやるようになったわね」

そういってほほ笑むのはメイル奥様。若くて美人。優しくって大好き。


なおヒムというのはヒムエス様のこと。

通称は若君、おぼっちゃま。


「あなたに褒めてほしくって一生懸命なのよ、ありがとうね、セディ」

「わたくしも修行の身、ヒムエス様に負けないよう精進いたします!」


そーれ、いきますよぼっちゃま。

カンカンパンパンカンパンパン


おぼっちゃまと木刀を打ち合う。


転生少年の剣術のスキルレベルは6。

やっとこさ中級者ってところ。

一般的な騎士は12くらいだろうか。

15くらいまでいけば剣の達人として尊敬されるくらいのはず。


ぼっちゃまは練習を始めたばかりなので0か1くらいくらいかな。


鑑定スキルを使えばもちろん見えるけど、この世界の鑑定は相手が鑑定を受けたことに気づいてしまうというデメリットがある。対象物が光るからわかっちゃうのさ。


そのため、無断で鑑定をすることは大変に失礼なこととされているのだ。

もちろん鑑定はレアスキル。

そしてスキルレベルはカンストの20。


鑑定もちであるということは内緒である。


鑑定があるよってカミングアウトすれば食うには困らない稼ぎを得られるけど、鑑定は、研究を重ねた学者や、百戦錬磨の目利きをもった商人が得ることができるスキルだから、まさか十二歳の少年が持っているのがばれると王国の大ニュースになって、偉い人に呼ばれちゃう可能性が高いのですよ。


よって、内緒。


カンカンカンカン、カン、カンカン。


ぼっちゃまが疲れて休憩すると、マークぱいせんが参加してくる。


「おねがいします!」


「おう!」


マークぱいせんは、おそらく剣術スキルが8か9くらいの上級者よりの中級者ってとこだと思う。

今年十八歳って言ってたから、もう十年は剣の稽古をしてるはず。


なかなかの腕前だ。


自分よりも上級者と練習するとスキル経験の取得がはかどるので実にありがたい。

この分ならレベル7にあげれそう。

剣術スキルの上昇で上がるHPは高いから嬉しい。

なんとか、HP50台には早めに持っていきたいもんだ。


低いHPの上昇は騎士の修行で何とかなりそうなことが分かって安心したんだけど、そうなると、MPのほうが問題だよな。

いま、まだ6だからなぁ。

第一位階の魔法の消費MPは1~2くらいだけど、それにしても数回しか使えない。

せっかく、この世のほとんどの魔法を覚えているのにもったいない。


MPを上げるには上昇時MP上昇効果があるスキルを上げるんだけど、そのほとんどが前世からカンストしたまま移行できてしまっていたから、これ以上あげられないという。

もはや呪いともいえるな、この設定。きっつ。


ダメもとで「祈り」とか「神聖魔法」のスキルが取れないかと考えて、ずっと毎日、朝夕に祈っているけどスキルは生えてこない。

神聖魔法のスキルが取れればMPがドーンと上がると思うんだけど。

無理くさいな。


「あいたっ!」


マークぱいせんからアタマにぽこんと一撃。


「集中してないぞ!」


すみましぇーん。


「もう一回こい!」


「はいっ!」


次はボクが休憩でマークぱいせんとおぼっちゃまが打ち合う。


最後はみんなで井戸に行って冷たい水を浴びて汗を流し、震えながら広間の暖炉でほんわかと火に当たりながら今日の反省会。

奥様が直々に香草でつくったあたたかいお茶を入れてくれて飲む。


その後は夕食までお馬さんのお世話や、雑用をこなす。


夕食の後は、城に住まうスタッフたちは暖炉に集まってお茶を飲んだり、歌を歌ったり、だれかが物語をしてくれたりもする。

それはよくある町の噂のこともあるし、吟遊詩人が教えてくれた他国の騎士と姫の物語だったり。

そうして、しばらくしたら明かりがもったいないので早く寝る。


いいよなこの生活。

屋敷のみんなは優しいし。

魅力度高いからかもだけど。


あらためて、子供って最高だなって思う。

勉強と修行してれば褒められるんだもんな。

ずっと子供でいたいな。


~~~


もうすぐ春になろうかというころ、屋敷に心配事が起きた。

メイル奥様の体の具合が悪いのだ。


顔色が悪くなり、めまいで倒れることが増えた。

優しく美しい奥様の元気がないので子爵はもちろん、ぼっちゃまも屋敷のみんなも元気がない。


転生少年は、前世から引き継いだ医術スキルが14でなかなかに高い。

なので、優しい奥様の病気を診察したいところだけど十二歳の少年が診察したとて、だれも信じてくれやしないので見守るしかない。


子爵が呼んだ医者は原因がわからず、何の効果があるかわからない薬を出して帰っていった。


それからしばらく奥様は寝ていたけど、一向に回復しないので、子爵家の守り神である火の神の神殿から神官を呼んできて、高いお布施を払って治癒の祈りを使ってもらった。


すると、あろうことか、その日から奥様は具合がもっと悪くなってしまったのだ。


火の神の神官が使った治癒の祈りは、光の系統の性質をもっていて、エネルギーやらなにやらを生み出したり、進めたりする系の癒しの魔法が得意のはずだ。

それは傷や欠損を治すにはとても効果があるんだけど、逆に、病気の種類によっては進行を早めてしまい逆効果になることがあるため、慎重に使わなければならないんだ。


今回はまさにそうなんじゃないか?


悪化させてしまう病気といえば、癌なんかは特にそう。


火や光の神様の治癒の魔法で癌があっという間に進行することがあるから、何の病気かを調べる初期診断がとても大切なんだよ。


癌の場合は、悪いものの進行を止めたり消したりする魔法や、問題なかった時に戻す魔法が効く。

大きな分類でいうと闇の系統だね。消す。止める系。

そういう祈りが得意なのは月の神殿の神官や水や土の神殿の神官だ。

そっちに見てもらったほうがいいと思うんだけど。

子爵様いかがでしょうか。


しばらくすると奥様は頻繁に熱が出るようになり、ほとんどベットから出れなくなってしまった。

お付きの者の話では鼻や口から血を流すこともあるという。


あれから子爵は違う医者を呼んでみたものの原因はわからずじまいだ。


暗い顔をして医者を送り出す子爵様を見ていると胸が痛む。


なんだあのヤブ医者め。

百年弱で王国の医術はこんなにレベルが低くなってしまったのか?

前はもうちょっとましな医者がいたはずだぞ。

技術が下がるってあるのかよ。

ここは王都だろうに。

いい医者はいないのかな。


僕の見立てでは、たぶん、白血病。

血液の癌だ。


白血病は現代日本では重い病気だったけど、遠い宇宙から隕石だって召喚できるスーパーな魔法が飛び交うこの世界では回復可能な病気だ。

この場合は月の神殿から神官を呼んで、祈ってもらう。

それだけのこと。


つまり病気の診断だけが問題の話なんだ。

正しい病名を突き止めて、正しい魔法をかける。


前世のころはもっとまともな医者がいたと思ったんだけどな。

どこ行っちゃったんだろうか。

このままでは、奥様が危ない。


どうしよう。

十二歳の僕はどうしよう。


奥様は優しい。

この前お菓子くれたし。

お茶も入れてくれた。

子爵もおぼっちゃまも、家じゅうの者がみんな大好きな奥様だ。


十二歳の僕が「白血病です、月の神殿の神官なら治せますよ」なんて言って誰が信じるだろうか。

そして信じてくれたとして、その後どうなる?

目立つわけにはいかない。


じゃぁどうする。

このまま見殺しにするのか?


考えろ、人間族の最大数値18のINTよ。

われに答えを与え給え。


ぐうううう。


むうう。


やはり困ったときは魔法だな。

誤字などありましたらご指摘ください。


つたない文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

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