表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第4話 あの時のこと

子爵のお屋敷での従士見習い生活。


朝はご家族のお世話や、お手伝いなど雑用一般。たまにお勉強。

午後は武術のお稽古。装備のお手入れなど。


住み込みスタッフとして三か月ほどみっちり頑張ったところ、弓術スキルが0から1に上がって、HP増えた。


やったよ!やっとHP上がったよ!


でも、まだ7だけどね。

低いなあ。


こんなHPじゃちょっとした魔物の攻撃で即死だからもうちょいなんとかせねば。


HPを上げる方法は、単純に身体を鍛えてVITを上げる他に、体力系のスキルを取得したりして上げたりすることや、位階を上げて魂も体も全体的に底上げすることなんだけど、その中で位階を上げるのはかなり難易度が高い。


つまりは地道に体を鍛えるか、武術のお稽古を頑張るしかないんだ。

ああ、あと体格の成長による自動加算があるか。これはもう、ボーナスみたいなもんだね。


そんなわけでステータス確認、どん!


名前:セドリック・マルタン

性別:男

年齢:12歳

職業:見習い従士

状態:健康


位階:1


能力値

HP:7/7(+3)

MP:6/6

STR:5

VIT:4

AGI:6

DEX:7(+1)

INT:18

LUK:18

CHA:18


スキル(戦闘)

魔法:20(レジェエンド)

精霊:20(レジェエンド)

格闘:3(初級者)

剣術:6(中級者)

槍術:2(素人)

(新)弓術:1(素人)


スキル(非戦闘)

鑑定:20(レジェエンド)

商売:11(上級者)

政治:14(専門家)

医術:14(専門家)

動物:4(初級者)

料理:1(素人)

建築:20(レジェエンド)

栽培:12(上級者)

採掘:0(素人)

工芸:20(レジェエンド)

芸術:20(レジェエンド)

研究:20(レジェエンド)

古代語:20(レジェエンド)

外国語:12(上級者)

社交:8(中級者)


なお、各スキルの評価はこんなもの。

0〜2:素人

3〜5:初級者

6〜9:中級者

10〜12:上級者

13〜15:専門家

16〜18:達人

19〜20:レジェンド


上がったばかりだから、(新)とかついてるね。

あと上がったステータスは(+)で表示されてて親切。

ありがとう神様。


槍も剣もちょろちょろ練習してるから、そのうち上がるかもしれないし、毎朝、厩で子爵たちの馬のお世話をしているからひょっとしたら動物スキルも上がるかもしれない。まあ、そんなに力を入れていないから期待薄だ。上がったらラッキーくらいの気持ちでね。


VITはまだ4しかない。

大人の平均値が9から12くらいだとして、十二歳男子としてはちょっと低すぎるような気がする。

小柄な少年だと、VITはこんなもんなんだろうか?

もうちょっとあってもいいと思う。どうなんだろう。


体格もVITやHPと関連している。

体格か。

こればかりは肉を食べて運動をして成長を待つしかないな。

両親は丈夫そうな体つきだったから大丈夫だと思うんだけどさ。


このままだと、小柄+虚弱+魅力MAX少年として、その筋の方々に襲われてしまうんじゃないだろうか。

間違っても騎士しかいない寮になんかいけないわ。

やはり、自衛のために体を鍛えねば!


~~~


お坊ちゃまのお世話をしていると、たまに家庭教師の授業にお付き合いさせてもらうことがある。


といっても、おぼっちゃまはまだ六歳なので、家庭教師も大したことは教えていない。

小学校の一年生か二年生ぐらいの子にする教育だからまぁそんなもんだろって感じ。

算数とか、地理、歴史とか。

でも、この世界での教育は限られた人たちだけが得ることができる貴重なものだから、ご相伴にあずかるだけでも大したものなんだ。


実家では貴族の端くれだったけど家庭教師なんかいなくて、もっぱら母上から文字や計算を教わったしね。まあ教わるふりだったけど。


家庭教師がぼっちゃまに教えるところによると、どうやら前世の自分が死んでから百年は経っていないくらいらしい。八十年くらいかな。


前世で聞いたことのある地名や国名がまだあったり、聞いたことがない新しい国名もあったりする。


そして人間とそれ以外の人類との争いはまだ続いているらしい。


直近で最大の戦いは、やっぱり八十年くらい前、ダナス王の十四年におこったエピラネ平原の戦いだそうである。

例のあれだね。前世のボクが死んだ時の。


先生によれば『およそ三倍の敵軍に囲まれた人間族の軍が必死に抗戦し、敵軍を追い払った』のだそうだ。


人間族の大賢者ヒロキが、その命を犠牲にして敵中に天空の城もろとも地上の敵軍に飛び込み、彼の眷属とともに敵を屠ったのだという。

その戦いでヒロキは命を落とし、その城は封じられ、眷属は散り散りとなったそうだ。


なるほどなるほど。

そう伝わっているのか。


自分の主観で説明するならば、当時、まだヒロキだった転生少年は四人の元妻たちとの生活から逃げたくて逃げたくて、どうしようもなく困っていたんだ。


やっぱり、ハーレムはいかんのだよ。

生活は破綻していたんだ。

はっきり不幸だったよ。


前世では、ひどい苦労の上にようやく強大な魔法の力を手に入れたってことで、浮かれていたんだな。


成り行きとはいえ、夢のような美少女を側に集めた結果、結局は制御不能になって、彼女たちから逃げに逃げ、地上を離れ空の上に城を建ててまで逃げたのに、追いつかれ最終的にはそこで自由のない日々を過ごすことになったんだった。


あいつらをなめてたよ。

二百年生きた大魔導士様より強くなるなんてなあ。

愛の力ってすごいんだな。まじでよ。


結局、ヒロキだったボクは、もはや地にも空にも居場所がなくなったから、死んで逃げることにしたんだ。転移前の令和日本だったら本当に人生終了だったけど、ここは異世界。

本気で探したらやっぱりあったのが転生の秘法だ。


古代魔法の英知を結集した秘法の中の秘法。

その邪悪さから呪文と儀式の秘伝は分割され世界中に封印されていたのを百年かかって集めたんだ。

大変だった。


邪悪なる秘法。

封印されるほどの邪悪とされた理由は、発動に大量の生贄が必要だったからだ。

数万を超える命を一度に捧げなくてはならなかった。


そう、エピネラ平原の戦いとは大賢者ヒロキが人間族を守った戦いではなく、邪悪な大魔導士ヒロキが妻から逃げるための秘法を行うための儀式の場だったのだ。


ははは・・・


あのとき集まってくれていた他種族の皆様には感謝しかない。

本当にありがとうございました。

あなた方の大切な命で、いま、ぼくは幸せです。

自由です。

いただいた命は大切に使います。


などと思い出しながら家庭教師さんの歴史の授業を拝聴していると、いやな言葉を耳にした。


「ふんたらーかんたーらーー・・・それでー、その戦いのあと、大賢者ヒロキ様のご眷属の四人のお后様のうち、ライトエルフである『炎嵐のエルセリーア』様はオークの国を見張るため、ライトエルフの一族をまとめ、東に国を建てました。それからダークエルフである『深潭のラディアーナ』様も一族を集め、ゴブリン族を見張るために南の森に国を作りました。偉大なる始祖であり吸血鬼の君主である、『夜霜のレミライナ』様は落ちた城を封じ、主が戻る日のためにその地を今も守っているそうです。そして最も敵を殺した妖樹族の『血薔薇のリードライム』様は、今も亡き主を探して世界を彷徨っているそうです」


えっ、まじかよ。

うそやん。


いやいやいやいや、彼女らは種族的に長生きだから死んでるとは思ってなかったけど、もう、僕のことは忘れて自由に生きてくれててもいいじゃん。

結婚は終わりだって。

死に際にそう言ったやん。

自由に生きろって、オレはちゃんと伝えたやん。


リードライムが僕を探して世界中を旅してるなんて悪夢以外の何物でもないじゃんかさ。

まじかよ。

まじかよ・・・・・・


「ヒロキ様は死んじゃったのに探してるんですか?」


ナイス質問、ぼっちゃま。


僕はあの時ちゃんと目の前で死んで見せたんだ。

何を探してんだよ。

こえーよ。


「実はですね、その大いくさの後、時の聖女カスティリーネ様が『大賢者ヒロキの魂は天に還りまた戻る』と神託を受けたそうなのです。それを信じて四人のお后様たちはヒロキ様の帰還を今も待っているんですよ」


「へーっ!」

「・・・・・・」


やってくれたな、あのくそアマ、なにぬかしてんだ!

前からゴミ女だと思ってたけどカスだわ!


あの女が転生のことを知るはずはない。

ということは、絶対、四人が暴れそうだから適当に嘘ついてごまかしたに決まってるわ。


くそう。

最後にやってくれてたか、カスが。


「そういったわけで、彼女たちは今も主を思い生きているのです。すばらしい愛ですね。種族を超えて愛される大賢者ヒロキ様は人間族を救った大英雄なのですよ。それでは今日はここまでとしましょう」


「先生、ありがとうございました!」

「ありがとうございました」


先生まじサンキュー。

きつい事実を教えてくれて超センキュー。


前世の元妻四人。

あいつらが、オレを探してこの世を闊歩しているというならば、絶っっっ対に見つかるわけにはいかない。

より一層地味に暮らしていかねばなるまい。


目標は地方役人くらいか。

子爵様に気に入っていただいて、領地のどこかの小さな役所の所長くらいになれればいいと思うんだ。


中央に行ったりとか目立つとこはやめよう。


実際問題、今世の自分が、前世ヒロキであるかどうか、あいつらに突き止められるかなんて不明だ。

見ただけで転生者かどうかなんて、少なくともオレにはわからない。


だけど、この世界はスーパー魔法世界。


転生の秘法があるくらいだから、転生者の魂の行き先を探したり、魂の正体を見破る激レア大魔法があってもおかしくない。

あいつら一人一人が伝説級の大魔導士だし。


カスティリーネのカス女が適当に言ったに違いない言葉に、この件の核心を突く『魂が戻る』という大ホームラン・ワードが含まれていた以上、本当に油断はならない。


とにかく、ステータスを上げて死ににくして、静かに穏やかに生きるんだ。


最後は湖の見える静かな村で命を終えたい。

ああっ・・・

誤字などありましたらご指摘ください。

つたない文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ