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第28話 講座選び 続き


残りコマ数は五だ。


そっちも結局、サービスカウンターのお姉さんに、文官志望者向けのおすすめ講座を教えてもらった。


「このあたりが人気ですよ~」

にっこり微笑むお姉さん。

きれいで優しい。


王国法制論

行政論

租税制度研究

領地経営概論

公文書作成実務


このあたりが就職に関係ある講座だそうだ。


他にも、地理学や会計学なんかも配属部署によっては使うし、貴族的な教育を受けていないのであれば、宮廷礼法や近代史も身につけるべきだそうだ。


書簡作法や弁論術なんかも役立つそうだし、典礼言語講座の証書は上級職になるためには必須とのこと。

役所文書や契約文面は、日常会話とはまったく別物になっちゃうよね。

他にも隣国の神聖帝国語や、南方諸国で使われている教皇国語なんかもできると評価が高いらしい。

外国語に関しては実は自信がある。

僕のステータスは『外国語:12(上級者)』となっている通り、前世である程度身につけちゃったからね。

だけど、前世の能力を今世で使うには、『それを学んだ』という周囲の認識が必要になることには気づいてますよ。

十四歳の少年がいきなり外国語をペラペラと話し出したら、驚かれちゃうに決まってる。


そうなってくると、受けたい講座が多いな。

コマが足りなくてコマる。

どうよ。

日本を離れて二百年以上たっても切れ味いいな。


さっ、履修組みは、ここからが難しいんだ。


当たり前だけど、同じ時間に二つの講座を受講することはできない。

だから、例えば『会計学』と『租税制度研究』は、同じ月曜午前の講座だから、どちらかしか受講できないってことになる。

しっかり考えようぜ。


というか、そもそも役人向けの講座を全部受講して証書をもらったからといって、役人になれるわけでもなく、有利になるだけなんだけどね。


極端な例を挙げると、強力なコネさえあれば、無証書でも上級官吏になれちゃったりする。

貴族社会の序列ってやつだ。

完全な公平なんてないのさ。


ま、この元天才魔法少年も、捨てたもんじゃないけどね。


なんたって十四歳で貴族様に学舎に通わせてもらえるだなんて、大したものさ。

そんな大した貴族のコネが出来たなら、それ使って就職したら?と思うかもしれないけどそれは違うんだ。


お世話になっているペスナリス子爵も、クラナス伯爵も武門の家柄で当然そっちに強い。


もしも僕が「役人になりたいです」とお願いしたならば、彼らはその人脈で『王宮騎士団』(一応役人)だったり、『要塞事務官』(現地)なんかの職を紹介してくれちゃうと思う。


しかも、結構喜んでもらえると思う。



誰が好き好んで前線送りにされるかっつーの。



だから地道に時間をかけてでも、自力で文官になりたいんですよ。

まあ、まだ十四歳だしね。

時間はたっぷりあるのさ。

そもそも一年や二年で講座の証書がもらえるわけでもないし。


どうだろう、三年から四年くらいは通わせてもらえるんじゃないかな。

コツコツ真面目に勉強して、証書を集めていこうじゃないか。

そういうゲームだと思うと楽しみだしね。


その証書をもらう方法は、講座の主によって違うんだ。

ある講座は、授業の出席回数と教師からの印象でもらえたりする。

ある講座では、講座に出席していなくても年に一度のテストで高得点を取れればもらえてしまう。

そして、場合によっては、講座への寄付金の多寡でもらえるのが早くなったり遅くなったりするようなこともある。


講座によって確実に、取りやすい、取りにくいがある。

そして、取りづらい講座の証書ほど価値が高く、取りやすい講座の証書は価値が低い。

講座自体の権威が大事なのさ。

そういうところをきちんと調べないと、時間を無駄にしちゃうからね。


昔からある講座はなんとなくわかるんだけど、今どうなってるのかがわからん。

それに、このサービスカウンターのお姉さんのおすすめが正しいかどうかも、実は疑わしい。


このお姉さんが、特定の講座講師から利益供与を得て、新人におすすめとして紹介しているということもあるかもしれないから。

やーねー、考えすぎかな?

でも、よくあることだと思うけどね。

この優しそうなお姉さんにはそのくらいの影響力があるってことを忘れてはいけない。


~~~


受けたほうがいい講座の時間割と、講座自体の評判なんかを教えてもらいながらパズルゲームをしばし楽しんだ結果、だいたいのコマ割りを決めることが出来た。


あとは金曜日の午後のコマに何を入れるかだ。

普通に考えれば租税制度研究か近代史あたりなんだけど、ひとつ、気がかりがあったので後回しにした。


それは、僕の前世、大魔導士ヒロキであった時の唯一の弟子ユシュが始めたユシュ魔法学講座のことだ。


実はこの講座一覧表は、規則性がないと見せかけて実はある程度の決まり事がある。

それは、一覧表の初めのほうに名前があるほど、学舎内での権威が高い傾向があるってことだ。

あくまでも傾向だけど。


昔、ユシュ魔法学講座は、ダントツ一位のプペシュ魔法学講座のすぐ後に名前が来ていたんだ。

大魔法使いプペシュが創設しその名を冠した講座以外で、最も権威ある講座の一つだったのに。


なにこれ。


見る影もないほど下のほうに来てしまってる。


……97番目だってさ!上から97番目!

信じられないんだけど『魔力でお絵かき講座』より下ってことあるのか。

ショックだよ。

悲しいなあ。


伝統あるプペシュ魔法学に対する新進気鋭のプペシュ魔法学と並び称されて、魔法使いもプペシュ派、ユシュ派に分かれて競い合っててさ。

王国魔法は諸国の中でも抜きんでたものだったのに。

はあ。


……気になってしまったんだ。

没落したのか?

ユシュの弟子たちはよく勉強するいい魔法使いで、師匠のユシュよりもうんとまじめで、魔法書もたくさん書き残してたし、あれらが残ってればそうそう没落するようなことはないと思うんだけどな。


あああっ、いけない。

ユシュの顔を思い出してしまった。

その弟子たちの顔も、弟子の弟子たちの顔も。 ああっ。


研究室に遊びに行くと、みんな、ししょーししょー言ってって寄ってきてさ。


もう、前世のことにはかかわらないほうがいいと頭ではわかっているのに、気になってしまうさ。


僕の前世が死んだ後に、いったい何があったんだろうか。


これはもう聞くしかないな。


お姉さんに、実は魔法が使えるということを説明した上で、おすすめの魔法学講座を教えてもらった。


するとやっぱりプペシュ魔法学講座を一番におすすめされた。

まあ妥当だろう。昔からそうだし。


で、他にもいろいろ聞いてみたけど結局、ユシュ魔法学講座の名前は上がらなかった。


……そんなら、踏み込んで聞いてみよう。


「実は、金曜午後のコマをどうしようか悩んでおりまして、えー、例えば、このユシュ魔法学という講座が金曜午後にあるんですがこれはどのような講座なんですか」

どうだ。


「あーっ……そこですか。そこは、ちょっとアレかもですねえ……」


「アレ?」


「ええ、その、あの、内緒なんですが、ちょっと評判が……アレでして」


「そうなんですか?どんな感じです?」


お姉さんの歯切れが非常に悪い。

前世で女性社員にライン聞いた時くらい悪い。

送別会のお知らせを送るだけのグループラインじゃないかよ、そんくらいいいじゃんか。

あきらめて後輩に聞かせたらスグ教えてくれたっていうのがまた悲しい。

そんな嫌なこと思い出すくらい、歯切れ悪いぞちくしょー、なんなんだ。

これ、そんなにマズいこと聞いてるのかな?


少しためらって、ようやくお姉さんが言葉を発した。


「その、なんといいますか、受講生が全然成長しないらしくて……」


「えーと、それはどういう意味ですか……?」


「魔法を覚えないし上達もしないそうでして……」

非常に言いづらそうだ。

もしも、この人が悪意を持って評判を下げているのではなく、純粋な善意からこれを言っているのだとすれば大問題だ。


「あと、その、証書が割と簡単にもらえるみたいで」


「ええっ……」


「受講料がお安いので興味本位で受講する方もいるんですが、みな、すぐに辞めちゃうんですよね……」


なんじゃそりゃ。


意味ないじゃん。

そんな講座の存在は意味が無い。

大丈夫じゃないなあ。


ああっ、いかん、気になってしょうがない。


決めた!一度見てこよう。


「あ、あの、そこ、体験受講とかはできます?見学というか」


「え!ユシュ魔法学講座をですか?」


「は、はい、よくないですか?」


「あ、いえ、いえ、もちろんできますけどー講座選択は自由ですので、はい」


「では、お願いします、次の金曜で」


心配そうなお姉さんの顔。

止めたのに何でって感じだろうか。

優しいんだね。


こんな優しいお姉さんが受講するのを心配する講座って何なんだ。




誤字などありましたらご指摘ください。

つたない文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

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