表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/65

64 新たなる旅路

 四年が経った。


 セレスは今も変わらず、制御室の黒い金属製の椅子に座ったまま、塔の制御デバイスとして稼働し続けている。

 “セレスとして”の再起動の目処は、いまだ立っていない。

 けれどハルトは、迷いなく言った。


「風は止まらない。だから、きっとまた目覚めるよ」


 彼女の頬にそっと手を当て、その温もりを確かめる。

 ──そのとき、たしかに彼女が、こう囁いた気がした。


「……そのとき、わたしは……“命令に従うだけの機械”じゃなくなっているでしょうか?」


「もうなってるよ。だって、セレスは大切なこの街の“仲間”だ」


 ハルトの答えに応えるように、セレスの閉じた瞳が──ほんの一瞬、かすかに震えたように見えた。


 外套を翻しながら、発掘隊の指揮を取るハルト。目指すは東の大遺跡。

 その為に、発掘隊を育てあげ、北の遺跡を肩慣らしに、実力をつけてきた。

 もし道中、生き残った人間の集落を見つけたなら、経済圏への加入の打診と通商路の開拓へ。


 セレスが遺していた、膨大なデータログ。

 そこに記された記録を、一流の技術者たちが読み解きながら、塔の管理維持に努め、壊れたコンピュータの復旧へと挑んでいた。

 ハルト自身も、この四年の間で科学への理解を深め、今ではその技術者たちと肩を並べて働くようにもなっていた。

 ハルトが大遺跡で探しているもの──それは、失われた制御基盤。

 必ず見つけ出し、彼女ともう一度、話すために。

 技術者たちに見送られながら、一団は塔を後にする。




 ジノーとヴィータの幼馴染カップルは無事に結婚し、一人の男の子が生まれた。

 名前は──なんと「ハルト」だ。

 今やウィンドリムの新生児が「ハルト」だらけという有様で、笑い話にもなっている。

 ルウォンも最近、料理の上手な彼女ができたと浮かれている。

 彼によく似た、恰幅のいい、優しい女性だ。


 ラヤと僕は、男女の関係になった。

 とはいえお互い、恋愛に関しては不器用で……今回の旅も「危険だから行かないでほしい」と、彼女に泣きつかれて、少し喧嘩になってしまった。

 ──四年前には「行ってこい」なんて、言っていたくせに。

 暫く帰れない旅だから、喧嘩したまま出発は嫌だなと思うけど、そういうところも、彼女らしいと微笑ましくも思う。


 けれど彼女は、ちゃんと──見送りに来てくれていた。

 南の大通り。

 荷馬車が行き交う大きな門の前に、彼女は立っていた。

 こちらに気がついて、駆け寄ってくる彼女を、片膝をついてぎゅっと抱きしめる。


「行ってくるよ」


 耳元で囁いて、そっとキスをする。

 涙を浮かべた彼女の頬に手を伸ばし、そっと涙をぬぐい、安心させるように微笑む。


「隊長、熱いですね」


 歳の近い部下たちにそう茶化されても、構いはしない。

 四年前とは違う。

 もう大人と子供くらいの身長差になってしまったから、立ち上がると、彼女の頭はちょうど手を乗せられる高さにある。

 癖っ毛の金髪は、もふもふしていて、とても撫で心地がいいのだ。


「ハルト、お腹の子の名前……何がいいかな?」

「……は? え? ちょっと待って? え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ