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バラの乙女とバラの騎士と黄金のバラ  作者: 香田紗季
バラの乙女とバラの騎士編
4/35

短めです。

 1年後、クラベルは11歳、ガロファーノは16歳になった。クラベルに釣書が届くのは当然だが、ここのところガロファーノ宛ての釣書がアシェル伯爵家に届くようになった。「ベルとガロ」の仲睦まじさを見た令嬢たちの一部が、結婚さえすれば自分も同様に大切にしてもらえるのではないかと思い込み、親に頼み込んで釣書を送らせているという。親の方も、よく調べればガロファーノがアシェル伯爵の実子ではないとわかるし、あの2人を引き裂くような真似はしないはずだが、情報収集能力に難があるのか、ただの親馬鹿なのか、考えていないのか、アシェル伯爵にはさっぱり理解できない。公爵家からガロファーノ宛ての釣書が届いた時は、アシェル伯爵もさすがに頭を抱えた。下位貴族が否と言える相手ではない。ちょうどそのタイミングでやって来た使者と神官にこのことを伝えると、非常にいい笑顔になり、こちらから手を回すのでご心配なく、と言われた。実際3日後には縁談取り下げの話が来た。あの使者と神官は、思っている以上に優秀なのだろう。


 使者と神官は、相変わらず先触れ無し、不定期の訪問を繰り返していた。一度だけクラベルとガロファーノを庭園に呼び出し、「ヴェレッド王のバラ」の世話をしているところを見せてほしいと言った。アシェル家の庭園に植えられた「ヴェレッド王のバラ」は大きく丈夫で、病気1つしたことがない。剪定の時期だったため、ガロファーノに確認しながらクラベルが剪定ばさみを入れ、切った葉や枝を丁寧に集めて、近くの穴に入れるところを観察していた。


「あの穴は、堆肥を作るための?」

「そうだよ。『ヴェレッド王のバラ』以外のこの家のバラの堆肥にして、有効利用しているんだ」

「『ヴェレッド王のバラ』用の堆肥にしていたという記録はありますが、他のバラに与えたという記録はありません。何か顕著な影響は出ましたか?」

「顕著と言うほどではないが、病気に強くなった気がするよ。病気にかからないからなのかもしれないけれど、花付きも良くなり、花のサイズも一回り大きくなっているように思う。記録はつけているから、いつか渡せるはずだ」

「ガロファーノは、本当に研究熱心ですね」

「バラのことなら、何でも知りたいんだ」


 神官とガロファーノの話を、使者がじっと聞いている。そして、機嫌良く他のバラにも水やりをしているクラベルを見た。ヴェレッド王国はその建国の由来から、あちこちに様々なバラが植えられている。貴族の邸宅はバラを中心とした庭園が造られ、配色を楽しんだり、「赤の庭園」「黄色の庭園」のように色別にまとめたり、高さのあるものとミニバラを配置して立体的にしたり、新品種を作り出すことが最も名誉のある仕事とさえ考えられている。庭師は、バラが扱えなければこの国で庭師として生きていくことはできないのだ。クラベルが世話をしているのは「ヴェレッド王のバラ」だけではない。庭の管理計画とガロファーノや庭師たちと立て、自分も参加しているのだ。他の「バラの乙女」候補と全く違っている、と使者は思った。1年間でさらに2人の候補が脱落し、「バラの乙女」候補は6人になった。


 クラベル様には、最後まで是非残ってほしい……


 公平な心を捨てたのではない。この令嬢なら、と思える。この感覚が正しいかどうかを証明できるのは最後の選定会の時だ。


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