天才には女心がわからない!
『なろうラジオ大賞4』参加作品です。
キーワードは『天才』。
勢いで振り切りました。
どうぞお楽しみください。
「この馬鹿!」
「痛い! 何をする暴力女! この天才の脳細胞が傷付き失われたら世界の損失だぞ!」
「何が天才よ! うちのお父さんが薄毛に悩んでるからってあんたが作った薬! 副作用で身体が女になるとか訳わかんない!」
「髪は生えた! それが全てだ!」
「父親が艶髪美人になった娘の複雑な気持ちを考えなさいよ! ……胸だって私より大きかったし……」
「何だ胸が欲しいのか? 豊胸薬ならあるぞ? 乳房は四つに増えるがな」
「牛か私は!」
「痛い! 殴るな!」
「今日はあんた研究禁止! 代わりに私の買い物に付き合う事!」
「横暴だ!」
「嫌なら研究機材を塵にする!」
「行けば良いんだろう行けば!」
くそぅ……。あの暴力女……。
天才の俺をぽんぽん殴りおって……。
その上買い物だ映画だと、何かと俺を連れ回す……。
あいつを大人しくさせないと、今後の研究に差し支える……。
……そうだ!
「何よ、あんたから呼び出すなんて珍しいわね。で、用件は?」
くくく、のこのことやって来たな?
食らえ!
「きゃっ! 何!?」
よし成功!
今浴びせた光は、敵意を好意に変換する催眠効果を持つ!
威嚇する野良猫達に放射したら、猫ハーレムが完成した!
いつも私の帰り際に舌打ちするコンビニ店員に使ったら、全品タダで持って行って構わないとまで言わせた!
こいつの俺に対する敵意なら、奴隷になると申し出てもおかしくない!
ふはは! ひれ伏せ!
「……何なの今の?」
「さぁ、俺の事をどう思う!」
「変態マッドサイエンティスト」
んん〜? まちがったかな?
いや、俺は天才だ! 効果が出ないはずなど……!
「あ! その顔! またあんた何か妙な発明をしたのね! 言いなさい! 何したの!?」
「ぐわー! コブラツイストー!」
「私を惚れさせる催眠術!? それともエッチな命令を聞かせるやつ!?」
「お前なんぞにそんな事するかー!」
「それはそれで腹立つ!」
「ぐわわー! タワーブリッジー!」
くそぅ、これだけの敵意があるのに、何故好意に変換しないのだ……!
は! まさかこいつは脳の回路が常人と異なるのでは!?
その秘密を解き明かせば、今度こそ研究の邪魔は……!
「ていっ」
「ぐへぇ!」
……おのれ、天才の俺を床に叩きつけおって……!
「さ、行くわよ」
「は? どこへだ?」
「買い物よ買い物。あと映画」
「何故だ!」
「当然でしょ! 休みに化粧する羽目になったんだから! 早くする!」
くそぅ、今だけは従っておいてやる……!
いずれこの天才の足元にひれ伏させるその日まで……!
読了ありがとうございます。
ないものは変換しようがないからね。仕方ないね。
あとヒロインのお父さんは元に戻りました。
髪も元に戻りました。
次のキーワードは『えんぴつ』の予定です。
よろしくお願いいたします。