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日常(ラルク視点)

 ーー魔道士長に与えられた執務室。


 あれから2週間。

 ベット越しでお互い喋った後、3日目には凛は体調が回復したので、ラルクは王宮近くの魔道士塔に凛の住居を用意しそこで暮らして貰っている。

 宮廷魔道士長として仕事のあるラルクは本来であれば、そう頻繁に凛と会うことは出来ないのだが、この世界で知人もいないたった1人の少女の為、少ない時間でも1日1回は会うようにしている。


 ラルクは何でも卒なくこなせたし、魔力も国随一で、実は王位継承権はないが第三王子で魔道士長でもあり、顔もスタイルも良く性格も愛想もよいので、それなりにモテる。

 人から見たら順風満帆な人生を送っていると言われるであろう。

 ただ、平和に見えても王宮育ちの王子である。


 ラルクの母親は踊り子で、王が一目惚れして無理矢理側妃としたが、庶民である事から、子供が出来たとしても王位継承権は無いと定められていた。

 だが、ラルクは龍人族の血が濃く出たのか生まれた時からの膨大な魔力故に、権力闘争に巻き込まれながら育った。

 その為、身を守る為の処世術は上手くなったが、愛する者が出来たことはなく、側に置く者も最低限とし他人とはいつも一線を引いている。

 ラルク自身、愛する者が出来なくても良いと思ってるし、必要性も感じないし、何なら自分の子供が新たな火種になり得る可能性もある為、結婚すら不要だと思っていた。


 そんなラルクなので、よく恋愛でうつつを抜かす者やハニートラップに引っかかり身を滅ぼす者を見ては”馬鹿だな”と冷ややかに思っていた。


 が、そんなラルクでも、あの貴族の屋敷での微笑みを浮かべた凛の事が頭から離れない。


 凛は軍の施設で育ったと言っていた通り、あまり女物の服を着た事が無かったようで、ワンピースやスカートを渡した時には戸惑っていたようだが、髪も整え、実際に白いワンピースを着せたら黒髪に映えとても似合っており、ラルクは思わず見惚れているという事もあった。


 最近は他愛無い話の中でも、表情の変化が出てきて(側から見たらまるで変化なしだが)ふとした瞬間に凛の事を考えてしまっている自分に戸惑っているラルクだった。


「なぁ、ユベル、イリヤ。俺が結婚するなら相手はどんなのがいーかな?」

「「は!?」」


 執務中の突拍子もない質問にユベルとイリヤの声が重なる。


「頭大丈夫ですか? 頭がおかしいのはいつもの事ですが、あんなに結婚は嫌と言っていたのはあなたなのに、何でそんな話題に? とうとう王から結婚命令が下ってしまったんですか? あの王が言うとは思いませんが……」


 と、一息に言ったのは銀髪眼鏡で宮廷魔道士であり、ラルクの補佐を担当しているイリヤである。


「もしかして、あの少女ですか?」


 見た目はゴツく体も大きく燃えるような赤い髪に鎧を纏った姿はいかにも騎士らしいのだが、喋ると一気に優しいお兄さん風になる青年はラルクの乳兄弟であり護衛騎士兼補佐のユベルだ。

 本来は護衛騎士であり四六時中ラルクについていなければならないが、よく護衛を振り切って行動してしまうラルクに王宮の中だけは四六時中張り付くのは諦め、最近は頼まれれば補佐業務も行うようになった苦労性のお兄さんでもある。


「少女?」

「ラルク様が2週間前位に貴族の屋敷から拐ってきたという少女ですよ」

 イリヤの問いにユベルが補足を交え答えた。

「あー。先に帰った筈のラルク様が王宮におらず、何かあったのではとバタバタしてる最中ひょっこり帰ってきたと思ったら、変態貴族の厄介ごとを持ち帰ってきて、ホントに処理が大変でしたとも!!」

「ごめんってイリヤー。次からはちゃんと連絡するからさー」

「お願いしますよ! あなたはそんなんでも第三王子なんですから!!」

「(そんなんって)分かった分かった」


「それで本題にもどりましょうか。何故結婚するならなんて突然そんな事を言い出したんです?」

 イリヤは手元の書類から目を離し、ラルクに問いを投げかけた。


 ラルクは言いにくそうにしながら言葉を紡ぐ。


「いやぁ……。笑顔が頭から離れないんだよね。あとふとした瞬間に、凛の事を考えるようになったし、毎日会ってるんだけど足りない。俺だけを見て欲しいし、凛を何処へもやりたくない」


「「……。」」


「……これは噂に言う恋だろうか?」

 ラルクは恥ずかしそうに、2人にたずねる。


「……明日は雪が降りそうですね」

「何言ってるんだ? もうすぐ夏になるんだぞ?」


 イリヤの冗談(半分本気)の言葉はラルクに通じなかった。


「真面目な話、何処の派閥にも属していない女性で、単純に内部の権力闘争の事だけを考えるならばよいのではないでしょうか? ただ、未だにラルク様を王位にと考えている者達や、頭の硬い元老院からは良い顔をされないでしょうが。

ただ、それは普通の女性の場合です。身元不明、尚且つ元娼婦? なんてのは流石に無理ですよ。愛妾位にならなんとかなるかもしれませんが。」


 ラルクが言う前に答えをイリヤに言われてしまった。

「ダメかぁ?」

「……。」

「どーしても、ダメかぁ?」

「……。」

「どーしても、どーしてもダメかぁ?」

「……しつこいですよ。……ラルク様がどうしてもその少女じゃなきゃ嫌だとなった上ならば考えますが……」

「そうか!! 言われて想像してみたんだがリン以外との結婚生活等想像出来ないし、やはりリン以外と一緒にいたいとは思わないんだわ。それにリンが俺以外の誰かと一緒にいるのを想像するだけで、相手を殺したくなってくるわ。これが恋かぁ」

 ラルクは物騒な思考含め頭がお花畑となってしまったようなので、イリヤはユベルに少女の話を聞く。


「ユベルから見て少女はどうですか? 私は眠っている所を1回見ただけなのですが、ユベルは何回か見ていますよね?」

「はい。1度文字の読み書きが出来ないとの事だったので、教えましたが飲み込みの早い子でしたね。後は、色白で華奢で美少女なんですが、何だかたまに手練れのような雰囲気を醸し出してるように感じるんですよね。魔力はない筈なのに」

「……間者では無いんですよね?」

「ラルク様曰く”異物”だそうです」

「!?」

 イリヤは驚いた後、ラルクに向き直る。

 

「ラルク様! 戻ってきてください! 少女は”異物”なんですか!? あなたはなんでそんな大事な事を言わないんですかねー」

「あー。すまんすまん。リン自身の事もまだ聞いてる段階だから言ってなかった。いずれお前達には話そうと思っていたよ」

「王や他の方達には言わないのですか?」

「……言わない。下手に言って取り上げられても困る。俺のリンだ。誰にも渡さない」


「俺のリン……誰にも渡さないって……。(さっきのお花畑から急に犯罪臭がしてきた)ちゃんと無理矢理ではなく少女の許可は得てくださいよ!」

「……それがな。。。リンの心が育って無いのか、心が壊れてるのか、何でも許可が出そうなんだ」

「「は!?」」


 ラルクは顔を曇らせながら初めての会話のやり取りを掻い摘んで話す。


「肉壁……」

「性欲処理係……」

 2人は凛の応対にショックを受けているようだ。

「今のリンに死んでくれと言ったら、”はい”と2つ返事で死にそうだし、結婚してくれと言っても”どうぞ”とか言われそうで。。。」

「「それは……(最初のやり取りから変わってないのであれば言いそう)」」

「まぁ、リンの心も含めて俺の物にするのが当面の目標かな。明日は夜時間が出来そうだから取り敢えず現状確認も含めて告白してくるわ」


 話に一区切りついた為、お互い予定していた仕事に戻った。

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