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状況整理(ラルク視点)

「リンの方が馬鹿だよ……。でも俺の方が大馬鹿だ」

 ラルクは手紙を持ったまま泣き崩れた。

 はじめは、凛がこんな綺麗な字を書けるわけがない、誰かが騙っているだけだと思ったが、手紙を読んでいくうちに凛だと分かった。


 初恋に浮かれ過ぎてた自分が悪い、相手をちゃんと見ずに幻想を押し付けてた自分が悪い、相手の気持ちを汲んでなかった自分が悪い、行動が遅くてちゃんと言葉にして伝えなかった自分が悪い


「……俺の方が罪深いよ」


 この日は、1日ベットの住人とかしていた。



 ーー翌日。


 凛に誤解を与えてる事が多い。せめて誤解を解きたいし、意識が戻った事であの生命力も戻るだろうか? せめてそれだけでも確認したい。


 何らかの表に現れない疾患なのか、気がつけばだんだん凛が弱っているようだった。

 回復魔法を毎日かけているラルクだから気が付いた異変だ。

 保護した時もそうだったが、凛は表面上何も見せない事がうまい。

 目覚めと共に回復しているのなら良いが、回復していない場合、あの体の弱さで旅に耐えられる気がしない。


 ……嫌だが、お互い離れて生きる事になるとしても、そこはどんな形であれ援助させて貰いたい。



 ーー久しぶりの執務室。


 凛の誤解を解く為、空いた時間は捜索に当てる事を2人に告げると、“国外も視野に入れるなら捜索は体調を万全に整えた来週以降にしましょう”とイリヤが言った。

 ラルクとしては一刻も早く凛を探しに行きたいのだが、ユベルの眉間の皺が気になって取り敢えず頷いておいた。



 ラルクの誘拐事件については、ユベルとイリヤの独断先行で行ってしまった為、証拠不十分で事件事態を無かった事にする事になった。

 筋書きとしては“賊に襲われ負傷し、近くの民家で世話になっていた為一時的に行方不明になっていて今は無事王宮に帰ってきている”となった。

 なので、ユベルとイリヤについては罰もないが褒賞もなしという事になった。


「そういえば、助けてくれたのはやはりリンか?」

 ラルクは不意に問いかけた。

「む」

 ユベルは口を引き結び眉間に皺を寄せる。

「あー、うーん」

 イリヤも何か知っているそうだが、言うか言わないか迷っているようだ。



 2人は、凛に対して幻想を抱いているラルクに配慮したのだ。

 情報を洗い直す作業の指示はとても12歳にも17歳にも見えず、完全に仕事の上司であった。

 情報収集中の凛は無表情なのに終始不機嫌な事が分かる位ピリピリしていたし、口にはあまり出さなかったが、呆れているし、“こんな事も出来ないのか、この愚図”と言われているようで違う意味でずっと怖かった。

 平然と暗殺得意と言い切るのも凄かったし、あの華奢な体で軽々とラルクを抱く姿も、本当に現実かと何度も目を擦ったものだ。

 そんな実態を知らず凛に妖精とでも言わんばかりの幻想を抱いているラルクに夢を壊すような事を言っても良いものか2人は迷ったのだ。


 2人の反応に口止めでもされたかとラルクは判断し、それよりも気になる事もあった為、この話を切り上げる事にした。

「まぁ、大体分かった」


 そんなラルクの言葉に2人は顔を見合わせ

「「(絶対“鬼上司リン”の事分かってないですよ(ね))」」

 と、心の中で語り合った。



 その後イリヤが席を外した時、ラルクはユベルに向き直ると問いかけた。

「ユベル、リンの事で何か知ってるか?」

「いいえ」

 ユベルは即答したが、眉間に皺を寄せているのは、自分の行動に迷っている時の嘘や誤魔化す時のユベルの癖だ。

 イリヤは嘘が上手いので分かり辛いが、ユベルは真面目な男らしくそもそも嘘が苦手なのだ。


「(口止めでもされているのか、“来週”という言葉がキーかな)」

 注意深く2人の動向をうかがう事にした。



 ーー次の日

 ある西の侯爵がまだ現役だったというのに病気療養の為、息子に家督を譲ると言い出し、周りは突然の事に驚愕したのだった。

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