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救助(ラルク視点)

 背中に鞭を受けた日、濡れた体もあって、熱を出した。太陽の光が入らない為、1日の移り変わりが分からないが、体感であっていれば次の日は何もされず食事を出された。

 熱と痛みで食べたくは無かったが、少しでも体力を回復する必要がある為無理矢理食べた。

 その次の日はまた吊り下げられ、今度は胸等前面を鞭打たれ、最後はやはり塩水をかけられた。

 その次の日はまた休みが与えられた。

 そして5日目、男達の方に背中がむけられるようにまた吊り下げられる。

 一度も回復魔法をかけられる事なく休みを挟みつつ続く拷問は、目的が分からず恐怖に駆られた。


「(リン、リン、リン)」

 心の中で、凛を呼び続ける。凛はもっと耐えていた。この位で何を言っているんだと。そう言い聞かせても、体は何をされるのか学習しているようで、男たちの声を聞くと勝手にブルブル震えた。


 ーーそして、目隠しをされ拷問が開始される。


 ラルクにとっていつ終わるか分からない永遠とも言える時間。

 声だけは出さないようにと耐えていた時、不意に続いていた衝撃が止み、男たちが騒めいた


「なんだぁーお前は?」


 次の瞬間には


 ーートスッ、トスッ、トスッ


 と、軽い音がして、


 ーードサッッ。


 何かが崩れ落ちるような音が聞こえた。


 ラルクは火照った頭で考える。助けがきたのだろうかと。ただ先程から何も声を発さない相手。もしかして新手なのかもしれないと思うとやはり怖くて体が震えた。


 誰かが静かに近付いてくる。


 ーー怖い。


 吊り下げられた状態から下ろしてくれる。


 ーー怖い。


 痛む体で無意識に後ろに下がる。


 ーー怖い。

 

 味方では無かったら次は何をされるのかと思うと怖くて仕方がない。



 そのやってきた誰かはひんやりとした小さな手で頭を撫でるとラルクをそっと抱きしめてくれた。


「リ、リン?」


 見せたい幻想がそうさせるのか凛なのではないかと感じ、思わず声をかけてしまったが、相手からは声をかけられることもなく、いつまでたってもラルクの目隠しも手枷も外されない。

 そして、すっとラルクを抱き上げて簡単に移動する様は、やはりあの華奢な凛では無いのかと残念に思った。

 考えてみれば3ヵ月以上眠ったままの凛がタイミングよく目覚めるなんて奇跡はそうそう起こるものでもないし、例え目覚めたとしても直前まで寝る事しかしていない人間が普通に歩けるわけがない。


 凛では無いのなら味方なのか、ただ違う場所に運んでる敵なのか分からず抵抗せずじっとする。


 暫く抱えられるまま進んでいると、


「「ラルク様!」」


 いつも頼りにしている腹心の声が聞こえた。助けられたのかと実感すると急速に意識を闇へ飛ばした。


 ーー早くリンに会いたいなぁ。という思いを残して。



♢♢♢



「ん、ここは、、、」

 目覚めると自室のベットだった。


 ーーガタガタッ。

 ベット脇からユベルとイリヤが近寄ってきた。


「ラルク様お加減はいかがですか?」

「何かお持ちしましょうか?」


「いや、大丈夫だ。2人とも心配をかけた。助けてくれた者は?」

「私達の手の者です」


 イリヤの回答にあり得ないとは分かっていたものの、やはり凛では無かったのかと残念に思った。


「……リンは?」

「大丈夫です。いつもと変わらずですので、今は私の部屋で横になられています」

「もう俺は大丈夫だから連れてきてくれないか?」

「いいえ! 傷は治癒の回復魔法で治しましたが、体と心の疲労は取れませんので暫く安静にしていてください。王や王太子様もご心配されています。リンちゃんの事は暫く私達にお任せください」


 イリヤはこんこんとラルクに説く。確かに自分の落ち度ではあるので今はイリヤの言う通りにする事にした。


「少し休む」


 そう言うと、ラルクは眠り始めた。











 イリヤはドアの方に顔を向けると、

「これで良かったですか? リンちゃん」

 と、声をかけた。

 凛は無表情で肯くと部屋から出て行った。

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