頑丈な体
「(うーん。頑丈な体が恨めしい。まぁ、でもそろそろ弱ってきただろう。早く逝きたいな)」
貴族の邸宅に囲われて3週間。売られた日から1日も休む事なく容赦なく嬲られ続けている。日本にいた頃も拷問訓練と称した、上官からの折檻はあったが、メインは戦争であったし、殺人技術も”ドール”の中では優秀な方だったので、ここまで嬲られ続ける事はなかった。
凛は体が頑丈で心も強く、ちょっとやそっとじゃ壊れない事が分かると貴族は喜び同じ趣味仲間を呼ぶようになって、内容もハードなものになっていた。
普通はすぐに心が壊れるだろう。だが凛は日本で心が壊れないように訓練も受けているし、折檻も慰みものになるのも日常だった為、ちょっとやそっとじゃ壊れない。一々心が壊れてたら戦争で生き残り続ける事など出来ないからでもあるのだが、そこが気に入られてしまい今では、凛にもわざわざ回復魔法が施されるようになった。
ーーそう。魔法。凛が喋る事はあまり無いが、お喋りしていく客はそれなりにいて、得られた情報を纏めると、ここは少なくても日本では無いし、地球でも無さそうな事が分かった。
回復魔法と自己治癒能力で体の表面は綺麗に治るが、さすがに内部疲労は溜まっていく。この3日は回復魔法をかけた時は熱が下がるが、30分もしないうちにぶり返して、熱が出たままとなっている。
「(早くその時が来ないかなあ。さすがに疲れたよ)」
熱で眠れない中、ベットから身動ぎする事なくぼんやりと考える。
凛は”お母さん”と”自殺はしない。精一杯生きる”という事を約束させられている。
本来、研究所生まれの凛や”ドール”達には母親も父親もいない。
“ドール”の人権擁護運動が盛んになった時、凛は9歳から11歳までの3年間里親と共に暮らしたのだ。研究所では、人殺しの技術を学ぶ事中心で、感情なんてものが”ドール”にもある事を知らなかった。
それまで凛は倫理観というものがほぼ無かったのだが、里親が読み聞かせる絵本等で世間一般の認識や倫理観を理解すると、”罪の意識”も芽生え、既に訓練で要人の暗殺なども行っていた凛は”自分は生きていない方が良いのでは無いか”と、自殺しようとした事があった。
凛は特に深く考えず自室で行動を起こそうとしており、勘の良い里親が様子のおかしい凛を注意深く観察していた事もあり、間一髪部屋に入って自殺を止め、約束させられた。
死にそうになるたび、あのお母さんの必死に止める泣き顔と、自殺をやめた凛へのお母さんからの温かい抱擁が忘れられず、死にたいとは思っていても今まで約束を守り生きてきた。
「おい、客がきたぞ」
世話係が部屋に入ってきて、凛に声をかける。今日も1日が始まるようだ。
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