表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/36

焦燥(ラルク視点)

「……。(まだ見つからないのか)」

 ラルクはイライラと机を叩く。

 凛が消息を経ってから1ヶ月が経過していた。


 1ヶ月前、ラルクが凛に謝ろうとしていた日はタイミングが悪く緊急で討伐遠征が入った。寝ていた所を叩きおこされ、見事2日酔いのまま取り敢えず現地へ赴き作戦を練り、討伐する事になった。 

 イリヤは王都居残り組で、緊急討伐でバタバタしており、朝凛が王宮を出た事をラルクに伝えられなかった。当初の予定は往復含めて3日の予定であった事もあり、帰って来てから話せば良いと判断していた。


 ただ、間の悪い事に討伐対象の魔物が、森に逃げ込み、逃げに逃げまくり5日を過ぎても討伐が完了しない事態となった。

 ラルクは上の立場の為、自ら動く事は少なく、基本的には討伐部隊の指揮を取る。ラルクが前に出ると魔法の威力が高く森が破壊される事もあり、ラルクが直接手をかけるのは最終手段となっているのだ。


 ラルクの方が時間がかかっている今、イリヤは凛に”割とすぐに迎えに行くと思う”と言った手前、様子見を兼ねた一報を入れておこうと、部下を使って“森の木の実”へ使いをやった。


 そして、その夜初めて“森の木の実”という店が王都に存在せず、凛が消息不明である事を知った。


 これはマズイと6日目にラルクとコンタクトを取ると、ラルクは討伐対象が岩場に移動した瞬間に火炎放射を浴びせ、7日目にはいつものごとく単身で先行して帰ってきた。


 因みに岩場は溶岩になっており、辺りが高温で近付くのも危険な状態となっていたらしいが森を丸焼けにされるよりは良いと皆に納得されていた。


 なりふり構わず帰ってきたラルクとイリヤでお互いの話をすり合わせた所、凛の話の殆どが嘘である事が分かった。

 ラルクの部屋を訪問した筈の凛だが、部屋の前にいた護衛騎士はその日ラルクが部屋に篭ってからは誰も訪れていないと言う。

 ただ、凛がイリヤに話したお酒の話は合っていたのと、ラルクは机で寝ていたような気がするのに朝ベットにいたことから、もしかしたら何らかの方法で入った可能性があり、メモなど残っていないか部屋中を探したが何も無かった。

 

 ラルクが最初に凛を見つけた方法“異物”としても勿論探索してみたが、凛がこの世界にきてこちらの食べ物を食べ生活している為、初期に比べもう”異物“としての捜索は難しくなっていた。

 ただ、気配が薄く場所は特定出来ないが、王都内からは出ていないような感じはしている。


 その為、王都内の情報屋に頼んで情報を探るのと同時に、凛を見つけた最初の貴族の邸宅のように、非合法の売春等を行なっている貴族の摘発を片っ端から行っていた。


 と、部下から情報が入った。


”アルブン子爵の屋敷に黒髪の少女が居るのを発見しました”


 ラルク、イリヤ、ユベルの3人はすぐにアルブン子爵邸へ向かった。


♢♢♢



「(あー。からだがあつい。この体がおもいのも、なんかもうすぐだよって言ってるみたいで、うれしいんだ。しぜんとえがおになっちゃう)」



「(はやくあいたいなー。がんばったよって。いってあたまなでなでしてもらうんだー)」



「(てんしさまはみたいけど、てんしさまはおかあさんのところにつれていってくれないからあわなくていいの)」



「(からだがあとちょっとっていってる! うれしい! あとちょっとがんばるね!)」



「(はやく! はやく! いきたいな)」



♢♢♢


 ーーアルブン子爵邸。


「ラルク殿下、その、お探しの子の容姿は合ってるのですが、年齢が12才より下のようですし、保護される事を拒んでおりまして、部屋から出そうとすると暴れてしまい……」

「良いから連れて行け」


 部下を先頭に進み、1つの部屋の前に通される。


 ーーガチャッ


「いらっしゃいませー」


 舌足らずに笑顔で向かい入れてくれたのは、黒髪に擦り切れた青いリボンを付け、碧の石の付いたヘアピンで前髪を止めた少女だった。


「リン……」

「ん? なにしてあそぶ?」


 ――確かに凛なのだが、ラルク達の事が分からないようだった。


「ん? 遊ばないの?」


 ラルクが膝から崩れ落ちる。

 

「リンごめん。ごめん……」


 そう言ってそっと“リン”の体を抱きしめる。


「んー。いたいの? じゃぁいたいのいたいのとんでいけー。いたいのとれた?」


 無邪気に声をかけてくる凛に益々泣きじゃくるラルク。


「……リン帰ろう」

「ん? おうちはここだよ」

「リンの家はここじゃないよ。俺と一緒に帰ろう」

「やだ! ここがいいの! ねぇここであそぼう? たのしいのいっぱいあるよ?」


 甘えるように微笑みながら近くにあった鞭を泣いているラルクに差し出す。


 ラルクは首を振り

「リン、俺と一緒にいこう」

 鞭はそのまま床に放り投げ凛を連れて行こうとする。


「いや、いやだってばー! ここにいるの! あそばないならかえって」

「ほら熱も出ているじゃないか。まずは治そう」

「いやだー!! やめてよ! やめて! さわらないで! やだ! やだ! やだー!」


 ラルクが治癒の回復魔法をかけ始めると凛は暴れ始めた。小柄だとはいえ、力が強く思いっきり暴れられると1人では抑えきれない。


「やだ! やだ! やだーー!! やめてよー!!」

 ユアンとイリヤも抑えるが、拉致があかないと一度回復魔法はやめて眠りの魔法をかけた。


「リンはこのまま連れて帰る。あとはいつも通りやれ」

 ラルクは暗い顔と苛立ちを隠しきれないまま、部屋に案内してきた部下に命じて意識のない凛の身支度を整え、抱きラルクの転移で一気に王宮へ戻った。

執筆の励みになりますので、よかったら1つでも、良いので↓↓↓ポチりお願いします。

☆☆☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ