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戸惑い(ラルク視点)

「お帰りなさい。楽しかった……とは言い難そうな雰囲気ですね」

 まだ執務室で作業をしていたイリヤは、珍しく余裕のなさそうなラルクを見て、お茶を用意する。


 イリヤはお茶を3人分入れ、簡易応接セットのソファーに腰掛ける。

 本来、護衛中は立って控えているユベルも今はソファーに座って話す態勢を整えた。


「で、何があったんです?」

「……あぁ。帰り際に……」

 ラルクが帰り際に起こった事を全て話した。話し終えた後、暫く沈黙が流れる。


 そして、ラルクはユベルに確認する。

「ユベル、お前は近くで見ていたと思うが、あのナイフはリンが受け止めたのか?」

「はい。まるで驚く程の事でも無いというように慌てる事なく簡単に掴んでました」


「「……」」


「投げ返していたのも見ていたと思うがどう思った?」

「あれはプロの手つきですね。それも一流の。一朝一夕では身につかない技術だと思います」

「だよな……」



 重苦しい沈黙の中、ラルクはポツリポツリと呟くように語る。


「……本当に戦争に参加していたんだな。俺はてっきり小姓として同行していたのかと思っていた」


「「……」」


「何だか良く分からないんだ。庇護対象だと思っていたリンが実は俺なんかの庇護なんて本当は必要なかったんじゃないかとか。それと……あの熟練の暗殺者かとでも言うような異様な雰囲気に恐怖を覚えたんだ」


「ラルク様がですか?」

 イリヤが驚きの声を上げる。戦うものであれば、己より強いか弱いか大体は推し量れるものであり、強い者はその精度も上がる。

 大人になってからはそんな恐怖を味わった事がない国1番の宮廷魔道士が恐怖を感じるとは俄かに信じられなかった。しかも相手は12歳位にしか見えない美しい少女である。

 イリヤにはとても信じられなかった。


「いや、確かにあれは私も恐怖を感じました。でもどちらかというと“底知れなさ”に恐怖を感じたのかと思いました。強さの恐怖と言うよりも、”未知なるもの”と相対した時の恐怖と言いますか……」


「ユベルもですか。。私には全く想像出来ないですが、相当なんでしょうね。……ラルク様のリンちゃんへの思いの問題もありますが、町中でそんな事をしていたのなら、今日のリンちゃんの目撃者は結構いたって事ですよね?」


「そうですね。一応他の護衛騎士には口止めしましたが、周りにいた民達には口止めしてないですし、

すぐ立ち去りはしましたが、中にはしっかり目撃した者もいるかもしれません」


 イリヤは先程から黙ってしまったラルクをみつつ、今後の事について打ち合わせる。

「他の王族や貴族に見つかると厄介ですね。そこで機能停止しているラルク様にはリンちゃんとの事を考えて貰って、周りについては私とユベルで進めておきましょうか。リンちゃんを取り込みたいと接触してくる人もいるかもしれないですし、下手に接触しないように見ておかなくてはいけませんね。

 ……暫く距離を置いても良いかも知れませんが、リンちゃんも戸惑ってるかもしれないですし、手元に置くのか遠ざけるのか、どうするか早めに答えを出してくださいねラルク様」


 一同は自分の世界に入ってしまった、ラルクを置いて解散した。



♢♢♢



 ラルクは執務室から自室へ戻る時、どんな顔して凛と会えば良いのか一緒のベットで寝ることが出来るのか、緊張していたので、自室に誰も居ないことに思わず安堵してしまった。


「(そうだ。俺はユベルが言っていたように、凛が“未知なる者”として恐怖を感じたんだ。考えてみれば一緒にいた期間は少ないし、そんなにお互いの事を話したわけでも無いのに、俺の幻想をリンに無意識に押し付けていた気がする)」


「(でも……そんな恐怖を感じた相手とこれからも過ごしていけるのだろうか?)」


 何でも卒なく熟ていたが故に、挫折経験が少なく、1つの躓きが尾を長くひくことになる。

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