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偵察(イリヤ視点)

 ーー主人の居ない執務室。

 執務室の中には執務机とは別に、近くに簡易応接セットがあるので、そこに件の少女こと凛を呼び出した。

 ラルクがハマっている少女について周りに聞き取り調査をしていたのだが、不自然なほどに存在感がなく、当たり障りのない情報しか得ることができず、王宮に来て1月は経ったのに驚く程、凛の性格等の判断できる材料が無かった。

 ラルクが、凛の世話係として侍従を付けているのだが、服はクローゼットの中に入れているものを自分で着ているようで、洗濯物はちゃんとカゴに入れて置いてあり、食事を部屋の中に運ぶ時はいつも居ないが、しばらく経って食器を下げに行く頃には全て綺麗に食べた後、食器を纏めて置いといてくれる為、初日にラルクに住居の説明と紹介されて以来、凛と会った事がないらしい。


 表面上ラルクと凛をくっつける事に協力する姿勢は見せているが、あくまで凛という存在に害がないと判断出来たらの事であり、害があると分かったら、恨まれようともラルクから凛を離すつもりである。

 その為に、情報収集していたのだが、全く集まらず、これではらちがあかないとイリヤ自ら会って判断する事にしたのだ。


「ご足労いただきありがとうございます。宮廷魔導士でラルク様の補佐官を努めているイリヤと申します。そちらにおかけください」

「はい。凛と申します。失礼します」

「紅茶ですが良かったらどうぞ」

「ありがとうございます」


 それにしてもとイリヤは凛を見る。綺麗な黒髪なのに、前髪を鼻の下まで伸ばしていてのびるに任せている姿はどうみても野暮ったいし、確かに色白ではあるが服のせいもあるかもしれないが凹凸のはっきりしない少女という体付きで、ラルクが惚れ込む程の少女には思えない。


 そう思いつつも、見た目ではなく中身かと、探っていく事にする。


「随分野暮ったいようですが、どーやってラルク様を誑し込んだのでしょうか?」

「(誑し込んだ? 側から見たら誑し込んだと見えるのか)……分かりません」

「分からない? あなた娼婦なんでしょう? 体を使って誑し込んだのじゃないですか?」

「(確かにライが初めて私を見た時全裸だった。その時に一目惚れしたと言っていたし、しかも、ちょくちょく胸に視線が行っているのも知ってる。上官曰く私は”脱いだらすごいんです系の着痩せするタイプ”らしいし)そうかもしれません」

「(あれ? まだヤッてないんじゃなかったでしたっけ? しかも反論も怒りもせず認めてしまう? なら)ただの娼婦如きがラルク様の近くにいつまでもいられると思わない方がよいですよ。それに貴方はいつまでただ飯食らいでいるんです?」

「(……確かに。与えられるままでいたけど、普通は”仕事をして糧を得る”んだっけ)おっしゃる通りです。申し訳ございません。可能であれば私に仕事をお与えくださいませんでしょうか?」

「何でもするの?」

「はい。ラルク様の不利益にならないことで私が出来ることであれば。」

「( ”ラルク様の不利益”を考えられるとは、そこはしっかりしてるのですね。でも……)何でもと言いましたね。……では手始めに娼婦らしく私に奉仕してみなさい」

 イリヤは凛がやりたくて娼婦のような真似事をしていたのではない事をラルクに聞いて知っている。

 こちらに来たばかりで右も左も分からない中貴族の屋敷に売られてしまい、どちらかと言えば抵抗出来ずに無理矢理されていた事も。

 嫌なことを言った場合に、どう言う反応を示すか見たいと思っての言葉だった。怒るのか、上手く避けるのか、嫌だという事を隠して大人しくいう事を聞くのか、媚びを売ろうとするのか。


「かしこまりました」


 答えは特に表情を変えず即答だった。この王宮で幼少の時よりラルクの側にいたイリヤは優れた洞察力、推察力とその経験から隠そうと思っている表情や心の内を暴くのは得意だ。そんなイリヤだが、未だに凛が何を考えているか分からなかった。


 一方凛は手慣れたもので、イリヤの足元に跪くと、イリヤの腰帯を外そうとする。


 イリヤは大抵人が考えている事が分かる自信があった為、今回分からない事にかなり動揺して思わずされるがままになっていたが、本当にやってもらうつもりはなくこれ以上はまずいと慌てて止めようと手を出した時


 ーーガチャッ

「予定がズレたから俺も参加……」

「「「……」」」


 ラルクは自分の執務室なのでノックもなくそのまま入室し、護衛についていたユベルも入ってきた。


 そこで見たものはソファに座っているイリヤが凛の頭を押さえ無理矢理奉仕させようとして見える姿。


 イリヤからすれば実際には止めようと慌てて、凛の頭を押さえているだけだし、凛もベルトではない腰帯の外し方が分からず、よく見ようとしているだけだった。


 因みに凛は”鍵掛けるの忘れちゃったのかな”と呑気に思っていた。


 そんな4人の時間が一瞬止まった後、


「イリヤ……」


 低い唸り声と共にラルクの魔力が膨れ上がる。


 イリヤはタイミングの悪い男である。


 そして、”終わった”と思った。

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