ひとりぼっちのあなたへ
「大丈夫ですか?」
僕の問いかけにその女性は、俯いたままただ首を縦にコクコクと振るだけ。
「とりあえず、ハンカチ置いていきますね、僕は、仕事に戻るんで。」
結局俯いたままその女性はハンカチを受け取り、なんの反応もなくハンカチで目元を押さえて動かなくなったので、気になりつつも会社に戻った。
「おそーい、休憩10分オーバーだぞ〜。」
「すみません、」
初めて上司に注意を受けたが、その時の僕は彼女のことを心配してそれどころではなかった。
一日の仕事を終え、ずっと気になっていたので公園のそばを通って帰ることにした。通りすがるとそこには誰もいなかった。
「無事に帰ったんだな。」
と一安心して家路に着いた。風呂や飯、日課のトレーニングを済ませ、ベッドで横になり、考えていた。20くらいの女性、髪は長くて、身長は160位はありそうだった。簡単に言うならモデル体型、泣いてうつむいていたので顔が美しいかまではわからなかったが都会にでも行ったら声をかけられてもおかしくないと思えるほどだった。
「しかしなんで大人が平日の昼間の公園に1人で…」
とても不思議だった。まぁ、地方だから多少は大人や学生が1人でウロウロしていることはよくある。だがそれは夕方や休日なわけで、今回は違う。
「次また会ったら理由の一つでも聞いてみようかな。」
そう思い、目を閉じた。自分でも驚いた。22時には就寝していたからだ。きっとそのくらい、驚き疲れたんだと思う。
翌朝、今日は土曜だ。僕は普段休日は午前ランニング、昼食後ジム、夜は家でダラダラ、というのを繰り返している。僕が務める会社は給与はそこそこいいのに休みも土日でしっかりくれる。実にホワイトな企業だ。おかげで趣味に没頭できて仕事の効率もどんどん上がってる。ランニングを終え、一応あの公園でお昼をすごしてみたが、彼女の姿はやはりどこにもなかった。「まぁ、そりゃそうよねw」と独り言を吐きつつジムに向かった。ジムには小学校からの親友がいる。トレーニーではなくトレーナーとしてだ。せっかくだから昨日のことを親友に話した。
「大人が1人外で泣いてるなんてよっぽどの事があったんじゃないか?」
「んー…警察沙汰とか?」
「だとしたらお前どうすんの?巻き込まれるよ?」
「いや、そうかもだけど、悲しそうな顔のまんまだったから、寝心地悪くてさ…」
「世話焼くのもいいけど、行き過ぎた甘やかしはダメだぞ?」
「おぅ。わかってる、聞いてくれてサンキュな。」
「だべりはおしまい!さて、お前最近脂肪増えてるみたいだからガンガン鍛えるぞ〜。」
「お見通しのようでwご指導よろしくお願いしますw」
にしてもきつかった!いくらなんでもインターバルしか休憩が無いのは鬼だ!おかげで全身筋肉痛、帰り道も、ぎこちないマネキンのようによろよろ歩いた。疲れて風呂など済ませたあとは一目散にベッドinダイブ!10秒で寝たと思うw。
日曜日、の午後3時。どうやら寝すぎたようで、夕方になりかけていた。何もする気が起きなかったので、一日ダラダラと過ごして今日は終わる。
月曜日、さて、1週間の始まりだ!なんて新鮮味のある意気込みは入社して最初の1週間だけ。普通に家を出て普通に出勤。意外とこの何事もない時間の経過が1番の幸せではなかろうかと思う今日この頃。お昼休みに入り、例のごとくひとりで公園へ。
「やっぱ平日限定なのか?」
そこには先週と同じように、いや、ひとつ違う点をあげるなら、ブランコにぼーっと座っている、彼女をまた見つけた。