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新作始めました。不定期更新となる予定ですが、お付き合い頂けますと幸いです。
ブクマ、ご評価、ご感想お待ちしております。
それではよろしくお願いします。
麗らかな陽射しが降り注ぎ、午後の庭園を暖めている。まだ柔らかな緑の葉を背景にバラの一番花は色鮮やかに春を歌い上げ、絡まるクレマチスは雪の名残りかと清潔な白に輝き、足元のアネモネも調和を乱す事なく彩りを添える。
そんな中、庭の木陰に出された猫足のテーブルセットでは2人の女性がお茶を楽しんでおり、咲く花々にも劣らない華やいだ声が聞こえている。
「敵を知り己を知れば百戦危うからずです!」
が、内容はこの場の何もかもにそぐわないものだった。
「あら、私は敵なの?」
答える方もしっとりしつつも鈴を転がすような声である。
「まさか!敵とはスペンサー公爵ただ一人!見事討ち取ってご覧に入れましょう!」
華やかな声の主はその容姿も、金の豪奢な巻き毛に内側から輝く肌も眩しく、太陽の恵みを一身に受けたような華やかな美少女である。透き通った緑の眼は若干つり気味で意志の強さを眼差しに添えつつも、その活き活きとした表情によってか険のある印象を与えない。
「頼もしいわねー。じゃあ今日はどうして私に会いに?」
答えるしっとりとした声の主は楚々とした黒髪の佳人である。儚げな美貌の中ほんのひと匙艶を足したような絶妙な色香が匂いたち、かねてより傾国の呼び声高かったが、結婚後はその幸せオーラも相まって益々老若男女を虜にしている。
「スペンサー公爵が一番好きなのはお姉様です。
お姉様を知れば攻略方法の手掛かりが見つかると思いまして!」
先程から華やかな声に勢いを乗せつつ、所作・表情はあくま愛らしくしつつも、物騒な言葉を続ける。
「まぁ…」
カップを手に、言葉だけ取れば困惑とも取れる相槌をうっているが、その顔には隠す気もない喜色が浮かんでいる。
「それに将を射んと欲すればまず馬を射よと申します。」
ついに堪えきれずに声をあげて笑った途端に周囲が一段と明るくなったように感じる。
「私、馬って言われたの人生で初めてよ!」
側に控えていた侍女は話の内容が無ければ眼福なのに…と、普通の貴族令嬢たちとは残念な方向に一線を画した会話をする主人達を見ていた。先程から無表情を貼り付けつつも、少しの油断で歪みそうな表情を引き締めるために思考を話の内容から少々逸らしている。
(美女と美少女が美しい庭園で優雅に和やかなお茶会…永久保存版だわ。しっかりとこの目に焼き付けよう。)
そして彼女は閃いた。絵画には音声は残らない、と。