六日目
二人で一人なの。
二つで一つなの。
そんなの見ただけで分かるでしょう?
片翼だけじゃ、大空へ飛び立てないのよ。
ねぇ、分かるでしょう?
Last week-6-
目を開けると真っ暗だった。
私の他に人の気配は無く、真っ暗闇の中に、一人。
「多紀?多紀、何処?」
無意識の内に多紀を呼ぶ。
居ないのに。
当然返事は無い。
目が慣れてきた。
どうやらエアポートの中のロビーだ。
椅子が並んでいる。
誰も居ない。
視線をそらす。
時計が見えた。
AM11:20
と、いうアナログ。
「どうして、こんな・・・」
そして気付いた、この暗さ。
電気はついていない、しかし、昼だ。
そう思い、そして次に思い詰まる。
昨日は飛行機に乗っていて、どうやって日本へ戻るかしか
考えて無かったから、気付かなかった。
もう、ブラックホールが来たのだ。
だから昼なのに、暗いんだ。
闇 な ん だ 。
人が居ないのは当然だ。
仕事なんかしてももう意味は無い。
そして私はお父さんとお母さんから逃げた。
裏切りに入るのだろうか。
お母さんが小声で言ってくれた、
「行きなさい。」
この一言がどんなに嬉しかった事だろうか。
と言う事はここはアメリカのエアポート。
そこで一人・・・、どうしよう。
あぁ、やっぱりもう日本へは帰れないのだろうか。
多紀、多紀。
私はただ、彼方に言いたい。
8月20日、あなたへ誰よりも送りたい言葉。
でも、無理なのだろうか。
日本へ向う、ゲートの前で、祈るようにして私はすがりついた。
「おめでとう、と言えないのがこんなに悲しいとは・・・。」
多紀・・・。
「What your doing ? Are you all right ?」
その一言に振り向くと、黒髪の綺麗なお姉さんが立っていた。
「あ、あのっ、えっと・・・。」
「あら、日本の方なのね、中国の人かもしれないから英語で話しかけたの。」
そう言ってお姉さんはニッコリと笑った。
そして私に手を差し伸べた。
「事情はわからないけど、日本へ帰りたいのね?」
私はただ、首を縦に振った。