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LastWeek  作者: ゆゆ
2/14

二日目

地球が消える。

跡形も無く消える。


本当なのか、嘘なのか。

テレビでやってる訳じゃなく。

人々が噂している訳でもない。




ただ、私の中に浮かぶのは、








世 界 が 終 わ る 、 6 日 前 。



























Last week-2-


























お母さんは最初信じてなかった。

私の冗談と思っていたのか、お父さんの冗談だと思っていたのか。


分からない、知らない。


そう、二回目の電話が来るまでは。


朝早く、火曜日。

私が朝食を食べていた頃。


テレビのアナウンサーの声を掻き消すほど、高く鳴り響く電子音。


向い側で食べていたお母さんは、その音に一瞬顔をしかめたが、

すぐに席を立ち、電話に向った。


「はい、朽木です。あら、正人さん。」







――――――お父さん。








嫌な予感がして、箸を止め聞き耳を立てた。


「それは、それはどういうことです・・・?」


ああ、やっぱり。

地球が、終わるんだ。


「秕奈、よく聞いてちょうだい。」

電話を切って、しばらく経ってからようやくお母さんは口を開いた。



























「六日後、8月20日午後10時5分。地球は突然現れるブラックホールにのまれ、消滅します。」































そう言ったお母さんの顔は白く、今にも倒れそうだった。

それはお母さんも、お父さんはこんな冗談を言う人じゃない、と分かっていたから。


学校へ行く時間はもうとっくに過ぎていた。

一時間目が、始まろうとしていた。


行く気も、しなかった。


そしてお母さんは続けた。


「でも、大丈夫よ。私達3人は助かるわ。」

「・・・どういうこと?」

「今、ここで人類が滅びてしまうわけには行かない。

だから、私達を含む、数名が代表して、スペースセンターに逃げます。

そのとき、一つだけ、あなたの大切なものを持っていっていいわ。」


スペースセンターへ、逃げる。


それはきっと、優秀な宇宙飛行士の家族が集まったり、

地位の高い逃げる人しかいけない。

許された、生きる権利。


日本で現在の宇宙飛行士は、お父さんしか居ない。


だから、私達の家族が日本を、世界を、代表して生きる。









ただ、









ただ、私の脳裏に浮かぶのは、大切なものは。


室井多紀。


私の大切な人。

私の大好きな人。


私の、幼馴染の、顔だった。


















































その、夜の事だった。

また、電話が鳴る。


お母さんは夕食の後片付けをしている途中だったが、電子音が耳に届くと、

すぐに走っていった。


水が、流れるまま。


ザ――。

と流れた、水の音。


私はテレビを見ていたが、

それを止めるために席を立った。


「秕奈、秕奈、あなたに電話よ!」

その声に振り返り、お母さんと場所を変わる。


「水、もったいないわ。」

そういって、私は受話器を耳に当てる。


もうすぐ、地球も消えるのに。

水も、なくなるのに。


「もしもし、秕奈です。」

「あ、秕奈?」


聞こえたのは、今一番会いたい、多紀の声だった。

乾いた心が、壊れた心が、ゆっくり満ちてくる感じ、で。


「今日どうして休んだんだ?風邪でもひいたのか?」

あぁ、やっぱり私達しかあのこと、知らないんだな。


「秕奈?聞いてる?秕奈?」

「多紀・・・。」







涙が、出てきた。









声が、あなたの声が、あと6日後には

もう、聞けないのです。


もう、満たされないのです。


「多紀・・・今から出れる?話が、あるの・・・。」


夜、もう遅くに呼び出した。

それでも、分かった。と言って来てくれる、あなたがとてつもなく大好きで。


待ち合わせは、近くの公園。


私の家の前の公園。


夏、といっても夜は少し寒い。

薄い上着を羽織って家を出て、公園に入る。


辺りは真っ暗で、外灯だけが、機械的な音を立てて

静かに立っていた。


ブラックホールに呑み込まれたら、地球はどうなってしまうのだろう。


外灯もなく、本当に暗く、真っ暗で、光なんて見えなくて。

いや、太陽の光も届かず、寒くて、死んでいくのだろうか。


いや、それ以前に。

ブラックホールに呑み込まれるときに、吸い寄せられ、その時に

死んでいくのだろうか。


ブランコに腰をかける。

ギィ、と揺らしながら考える。

錆びた、鉄の匂いも今なら気にならない。


普通は、私は生き残れるのだから、喜ぶはずなのかもしれない。

だけど、だけど、私は。


ブランコに乗ったまま、地面を蹴る。

ギィ、と音を立てて、大きく揺れた。


「秕奈、何やってるの?」

後ろから、声が聞こえた。


少し、息を上がらせているのは、走ってきれくれたのだろう。


「多紀。」

多紀の顔を見ると、また涙があふれてきた。




























そんな、6日前の夜。



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