彼氏を拾いました。
「今日からお世話になります、沖 柊花と申します。皆さま、程々にお願いします」
「おう! 綺麗な姉ちゃんはいつでも歓迎だー!!」
まーうん、予想通りですね。若くて生きのよさげな男子が、近所のゴミ収集してるわけがないんですよ。わたしも若いけど、わたしより若そうな男子なんていなかった。
「そうそう、ウチは真面目で通ってる社風だから、職場にいる男連中に色目とか使うのは禁止だから、そこは気を付けてくれ」
あり得ないです。おっさんに色目とか無いし。真面目な社風って……ここはもしや黒い場所なんじゃ。
「柊花さん、大型あんのかい?」
「や、無理です……大型って何ですか?」
「いや、免許のことだが、車も乗ったことが無さそうだな……」
何だー車のことなんだ。分かってたけど、大型って言われてすぐに分かるとかそれはキツイかなと。
「じゃあ、事務でいいかな? それか、分けの仕事もあるけど」
「分け?」
「そう、分ける仕事。分別って奴だ。リサイクルとか、聞いたことあるでしょ?」
「ありますあります!」
「ウチは大手の集積所と違って、リサイクル出来そうなモノを分けることもやってんだよ。それやるかい? まぁ、多少は汚れたりするけどどうかな?」
多少の汚れ仕事が怖くて仕事なんて出来ないし、やるしかないでしょ。
「やります!」
「じゃあ、C区画の分別担当の奴ん所に話しとくから、とりあえず現場行っていいよ」
「わっかりましたぁ~」
C区画の分別……あ、あれかな。なんだーいつも見るペットボトルじゃん。これを分けるなら汚れなんてほとんどないよね。簡単、カンタン~。
調子よくペットボトルをポイポイと分別してたら、何か違和感を感じてしまった。明らかにペットボトルじゃないものが紛れてるんですけど? もしかしてここの担当者が昼寝してた?
「え、えーと……初めまして! ここを担当になりました柊花と言います。あのっ、起きて下さい」
「……」
起きない。というか、もしかして過労で倒れてるとか? まさしく黒の……。
「いや、遅くなったね。あんたが沖さん? ん? 何して?」
「や、えと、ここに男性がいまして……あれ? 担当者さんじゃないんですか?」
「困るな。彼氏を連れて来て、そこに隠れさせてるとか……もうキミ、帰っていいから。ウチには合わないな。男連れで仕事をするとかあり得ないな」
「ええっ!? ち、違いますよ! 彼氏なんかじゃ……」
「とにかく、仕事の邪魔だから帰ってくれ」
「ええええ」
なんてことですか。未知の男が彼氏って、あり得ないんですけど? しかも初日にクビって……。
「もしもし、雪花ちゃん」
「ん? どうしたのシュウ」
「彼氏を拾ったー」
「――は?」
とりあえず会社も首になったので、彼氏なる男を連れて部屋に帰るしかなかった。何て日ですか……。