ローシェルティア号(4)
もうすっかり外も暗く、本来であれば果実酒なんかを木の実と一緒に楽しみつつ、星空を眺めるなんて小粋な事をしたいものだが、
「ねぇ、いつまで私の部屋にいるつもりなの。」
「ひっ、ご、ごめんなさい!」
このやり取りも何回目だろうか、何度突き放しても諦めて帰る気配がまったくない。
なにか言いたそうにしているものの、ずっとモジモジしたり羽をパタパタさせたりしているだけ。
「もうこれ以上居座られると流石に迷惑よ。かと言って貴女の話を聞くつもりもないけど。」
最終警告。
もうこれ以上居座られると寝ることすらできない。
眠りにつくまでの私の夜の楽しみが奪われてしまう。
というか早く果実酒が飲みたい。
「わ、わかりました。冒険者様自身の得になれば良いんですよね?」
「うん?何だか違うような違わないような。まぁ、そうっちゃあそう、なのかな?」
急に決意したようにビッと身を引き締め、私の目を真っ直ぐに見つめる。
その視線からは使命感のようななにかを感じる。
「でしたら、今晩、それからグランピレオでの食事を全て私がご馳走します!」
唐突、あまりにも唐突。
人間というものはまったく的外れな回答を堂々と突き付けられると一瞬頭が真っ白になるものなんだなと学習させられた。
「ふふ、あはははははは!」
「えっ、へぇっ!?私、また変な事言っちゃいました?」
「まったく、ふふっ、変。あなた変よ。」
「ううう、ごめんなさい。」
的外れ。
いや、一周回ってど真ん中だ。
私は私自身の旅が脅かされる困難にしか立ち向かわない。
要はマイナスの要素が降り掛かる場所が問題なのだと私は伝えたかったのだが、彼女は彼女なりに頭を使ってマイナスが現れる前にプラスをぶつけてゼロにしようとしたのだろう。
そんな事しても、マイナスは要素として消えやしないと言うのに。
それに、私にあそこまで言われておいてなおも折れない彼女の芯。
耐えざるを得ない理由があるにせよ、なかなかどうして見た目に反する強さを持っているじゃないか。
「ここまで笑ったのはいつぶりかしら。いいわ、話だけなら聞いてあげる。」
「ほ、本当ですか!?」
「ただし、条件を変更させてもらうわ。」
きょとんとした彼女の目。
美しい赤色を帯びたそれは、持ち主の感情の変化について行けておらず、まだ涙を溜めている。
「ご馳走してもらうのは今晩の食事、それからお酒だけでいいわ。」
「えっ、そんな。」
「私は晩酌の時間が何よりも好きなの。そんな時間を邪魔してくれたんだから、貴女も私の宴に付き合いなさい。」
多少お酒が入っているためか、何だか自分で言ってて恥ずかしくなるほど格好つけたセリフだったなと少し後悔した。
私は立ち上がり、メモに大量の果実酒と肉料理を書いてヒモを引いた。
「ふぇっ、私も飲むんですかぁ!?」
「飲めないなら、話はここまでよ。」
「ああああっ、飲みます飲みますぅ!」
「それでいいのよ。さぁ、船員が来たら甲板まで届けてもらうように言わなきゃね。」
星空の下で、小粋なパーティーと洒落込もうじゃないか。
ただ、酒が旨くなるか不味くなるかは、この少女から出て来る話次第である。
なんだか少し賭け事をやっているみたいで気分が高揚する自分がいる。




