あのさぁ…うちさ…転移するんだけど…よってがない?
許せ、サスケ
「なぁ異世界転生ってよくね?」
締め切られた四方を囲まれた教室に響く。
「どうした、急に。最近の転生物とか言う流行りに乗りまくったライトノベルに頭をやられたかってお前、元々やられてたな。」
「確かに転生物多いよなー。因みにそれをSNSで呟くとラノベ天狗とか言う頭おかしいアスペ集団に襲われるからあまり言うなよってかさりげなく俺を卑下すんのやめろや。」
「事実っしょ?」
「じゃないから。」
「んでも、どうした?」
「いやさ、ね?異世界転生したらこっちの現世の知識をフルに活用して異世界で豪遊できんじゃって思ってなー」
「やっぱりお前、毒されてんじゃねーか。」
「ああ!そうだよ!毒されて悪いか!」
「悪いも何もそんな異世界転生ありえないのが現実だからな。」
「お前、ほんと夢見ねぇよな!いいじゃん!異世界転生!」
「はぁ…もう少し現実味のある異世界転生が世の中に出回れば…」
「小説なんかに現実味求めんじゃねーよ!俺的にすれば小説なんかは現実から逃れる最短距離の様なもんなんだよ!ノンフェクション求めたいなら司馬遼太郎とかそういうあたり読めって話なんだよ。」
「…お前終わってんな。」
「年相応な高校生と言って頂きたい。」
「そう…まあ、とりあえずそれは置いといて。言うが異世界で現世の知識が活用できるのかって話なんだよ。異世界には異世界の文明があり、勿論生活形式もまるっきり異なる。勿論そこで文明の『ズレ』と言う物が生じるしそれに伴い価値観の違いも併発される。幾ら、現代でそう証明されていてもそっちの世界で受け入れがたいものだってある。」
「それに関しては理解を深め合えば解決するじゃないか。」
「まあ、確かにそうだが一番の根本的物を忘れていたな。」
「ほう、それは?」
「環境だ。」
「環境…?」
「そう。環境だ。より正確な表現をするのであれば生命環境だ。異世界は地球型惑星なのか?異世界で果たして地球のような同じような環境があると思うか?違うだろう?そして何よりもだ。魔法と言う概念が存在するのであらば尚更だ。魔法と言う物がどのようなものであるかによって変わってしまうが魔法と言う性質が加算されることによって絶対的に地球とは完全に異なるのは必然。配合割合によって作られる物が異なるように実際問題魔法が及ぼす影響は星レベル。いや、銀河レベルだ。それによって地球では通じた知識が異世界においては無駄な。言うなれば足枷になるのは火を見るよりも明らかだ。知識とは時によっては無駄な…邪魔な存在になることを頭に入れなければいけない。」
「ぐっ…で、でもよくある中世設定なら地球のようなものがワンチャ…」
「ワンチャンもあるか。もし転生してもだ。生まれたばかり転生するのであれば言語を覚えなきゃいけないし何より現世の知識をフルに使ってもそれは異端児として見られるのがオチだ。よくファンタジーものの題材で中世が使われるがそんな甘かんぇよ。お前だって習っただろ?不衛生極まりないしなにより治安が雲泥、いや人工衛星と地下鉱脈ぐらいだぞ。いつ賊が来ても可笑しかねぇんだぞ?中世日本もそんな感じだけどまだ100歩譲って日本の方がマシだって言える生活環境だぞ?そんでもって宗教だ。あんなもんが付きまとう中、お前はそれでもあると思うか?」
「ないです。」
流石にここまで言われると反論の仕方がない。まさに言論の掃討射撃と言う物か。そんな連続攻撃の中ではただ大人しくその硝煙の臭いが発動機の音と共に遥か空に消えるのを壕の中で待つしかない。下手に反論と言う反攻の翼を広げようものならもがれるのは必然。それを察したのか口を紡ぐ。
「しかしだな。ある程度筋の通ってる転生物なら納得するぞ。」
何かを悟ったのか唐突な擁護を開始した。
「ほう…例えば?」
「A氏著の架空戦記。」
「アレ、専らネット界隈じゃチートやおかしいとかの烙印を押されてるぞ。まして某艦船擬人化美少女ゲームの登場に伴い再評価されてもその烙印は消えなかった奴やぞ。んなもんいいと思うの?」
「ああ、だって何にせよ、アレはしっかりとした筋がある。今時の奴と比べても明らかだ。もしかしてお前、ネットに上がってるOVA版しか見てないのか?」
「そうだが…」
「はぁ…どんな作品であろうと一度は原作を見るべきだぞ。言われてるだろう?アニメと原作は大体違うって。」
「そうだけどさ…アレって原作探そうにも、もうねぇやん。」
「だったら密林で買えばいいだろ。ってことは置いといて。いいか、あの作品は転生と言う物の筋がしっかりある。幾らインターネットでそんな烙印が押されようとアレにはしっかり言い訳が通じる。」
「言い訳?」
「ああ、言い訳だ。言うなれば転生できたから成せたってことだな。」
「だったら、それ他に通じんじゃ…」
「では、近年の転生物を当てはめてみよう。大体の転生物は異世界だ。しかも魔法と言う概念が存在し色んな架空上の生物が跋扈している。しかしこの作品は日本と言う実在国家でかつ実在の人物が一回死亡して再度生まれ変わる。詰まる所あの作品においては既存の世界を使用した転生だ。故に未来の知識を活用できたのだ。物理法則も変わらず使用できたのだ。」
「わかった。つくづくお前と言う生物がめんどいとわかったよ。」
「おま。俺なんてまだ序の口やぞ。真にめんどい奴は比じゃねぇぞ。」
「って言われてもなー。」
仰け反り否定する。世界が反転した中で血液の膠着を感じつつ元に戻り溜息をついた。
「はぁ…転生なー」
「どうせ、碌なことがない。」
「おう、二秒で否定すんのやめーや。」
「んな、異世界転生物なんて原型失った今どきの二郎系ラーメンと何ら変わりねぇんだぞ?」
「その例えは草。」
「実際そうだろ?」
「実際そうなので反論のしようがありませぬ。」
「そもな、今の日本にある異世界物なんてファンタジーの概念しか装備してない麺でしかない。」
「そのラーメンの例えが続くのは大草原不可避だからやめろう。」
「この例えが一番しっくりくる例えなんだよなぁ…」
「言わなさそうな淫夢語録を堂々と使われ顔面草まみれや。」
どうしようもない、ネットスラングのぶつけ合いをし合うと結論はなんとなく察していたがその言葉の真意を聞くことにした。
「んでその心は?」
「おう、じゃあ。神話にて語られているバハム―トって元は魚なんだぜ?それじゃ今や、竜の代名詞と来た。」
「ああ、それな。ほんと原型消えてて草しか生えんわ。」
「ホンでもってリヴァイアサンな。」
「正式名称レヴィアタンなのにボップズのリヴァイアサンの所為とか英語発音の所為とかうんぬんかんぬんでそっちの方が広まってしまったガバガバ伝承RVIA兄貴ちゃっすちゃっす。しっかりその点理解してんの?って思えてしまうほどガバガバなゲーム会社ほんとひで。」
「そしてスライム。」
「そういや、スライムって元聞いたことないんだが実際どうなのさ、日向。」
「スライムってド〇クエが最弱にしただけで実際はほんと厄介な生物で触れたらアウト。多分、日向並みの強さ。やっぱり日向は木の葉にて最強。」
「日向ヒマワリ。」
「やめてくれ、その言葉は俺に効く。」
「まあ、それとして。ってか大体のファンタジーものが結果こうなってしまったのって全部ゲーム会社の所為じゃないか…」
「そうだよ。実際、バハムートもファイナルファン〇ジーの所為だからな。」
「おのれ、スク〇ニ。」
「今や、過去の栄光すらないから更に糞。」
「岡山の県北に送ろう。」
「某土方の所為で風評被害真っ盛りの岡山県を更に糞で汚すのはかわいそうだからNG。」
「桃太郎に殺されそう。」
「〇鉄やりたい…やりたくない?」
「お前の話の隙間をぶった切る姿勢。嫌いじゃないけど好きじゃない。」
「白黒はっきりしない回答ほんとひで。」
「三途の川の案内人叱ってそう。」
「そこまで白黒はっきりさせる能力は持ち合わせてないから。」
「ってことは置いといて。これ以上はいけない。」
「お、そうだな。」
多分このまま。話して居たら確実に脱線どころか松本零士作品になりかねないと悟り、今一度話の機動修正を行うと深呼吸を行い、切りなおす。
「まあ、なんだ。日本人って改造好きなんやなって。」
「しゃあない、島国だもの。」
「気分転換にな〇うで上がってるなんかやたら長い詠唱晒し上げようず。」
「唐突だな。おい。」
「まあ、桃〇よりは簡単でお手軽だし多少はね?」
「実際問題、何版やるかってことで問題起きそうだし。やるか。で、目星は?」
「ああ、これ。この『リアガル創世記』って言う奴。」
「漂う厨二臭。」
「実際、そうだから擁護のしようがない。」
「で、味は?」
「スネーク。落ち着け。冒頭からアクセル全開フルスロットルでベルトさんが来そうなレベルの始まり方でそれがポエムの様に続いているんだ。」
「ええっと、変態度数値換算。」
「ここに建てた病院が土台ごと逃げた。」
「旧誓約書越え?」
「多分、イカロス。」
「おう…」
「面倒だから飛ばし飛ばし見てたら最後のページにこんなものがあった。」
そういうと持っているスマートフォンの画面をスクロールして見せる。
「草。」
ただこの一言に尽きるかと言えるその草は正に勇ましさに近い何かを感じ取らせた。
「見るにこれを迫真の演技で言えってこった。」
「ほう…中々面白そうだよな…なあ?」
「あっ…」
日本人とは流動的な人種である。流れに非常に敏感な生物でもある。察した人間は言葉を介さない。自分の使命を全うするまでは。
「「ジャンケン!!!!!ポンッ!!!!!」」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「やったぜ。投稿者、変態糞高校生。」
悲鳴と歓喜が教室に木霊する。日中は此処に人間が押し込まれ狭く感じるが二人であらば十分広く感じれるまさに個室とも言えるべきその教室は二人の色のみが混じり合っていた。
「やっぱり、その為の右手?異世界転生に憧れる者とは違うってはっきりわかんだね。」
「やんなきゃ、ダメ?」
「ほら、やるんだよ。あくしろよ。」
「ふええん」
「かわいくない。-114514点。」
「あーもうやりますぅーやればいいんダルルォ?!」
「そうだよ。ホラホラホラ。」
「全部?」
「異世界憧れてるんでしょ?これ曰くこの魔方陣を出しながら迫真の演技でやれば行けるらしいから。ほら。」
その顔に映っていたのは愉悦そのものであった。その顔に些かの苛立ちを感じつつも学ランの前ボタンを全開にし下の制服を露わにさせる。
「お、やりますねぇ!」
「できることであれば今すぐ貴様の眼鏡を我が満身の拳にて灰燼へと化させたい。」
「北かよ。」
「あそこの語彙力の高さは以上。ってもうやるぞ。」
髪を上に持ち上げると一昔流行った一発芸人の様に手を突き出し開くとちらちらと文体を見ながら発音する。
「『汝が望むのであらば暗示の元彼の地へと往かん。極王、皇帝、世界を抑えし者の祝杯の元汝は召喚されるであろう。』」
直後であった。
「な、なんなだよ!!!!」
白き閃光が一面を覆いつくす。その光は三次元的物全てを覆い隠した。直後、意識が白く薄れこと切れた。
セクハラして死にたい。