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8・マイペースなミミズクさん

 帰ってきました。ダイロードの街。あぁ時間帯が現実もこのゲームも九時前後ですね。しかも休日。人が賑わう街中、これから狩りにでも出かけるのでしょうか? 外に向かって人の波が出来ています。ですが私はもう狩りをしてきたばかりなので逆方向に歩く。あのはじまりの広場に到着。まだまだ初心者プレイヤーがいるようで、今まさにログインしたっていう感じの人があちこちを見渡していました。ついでにあの兵士さんの所も繁盛しているようですね。


 そんな広場に設置されたベンチに座りながら、さきほどの情報を整理しましょう。


 まずはついに使い魔を呼び出せるようになりました! とりあえず呼び出してみましょうか。あぁどうしましょう。こんな魔女らしいことができるなんて! 草を食べた甲斐がありましたね!


「現れよ! 我が使い魔よ!」


 調子に乗って大声で言ってしまいます。どうせ周りには言葉は通じません。魔法陣が地面に現れ、そこから光があふれる。数秒後、そこにはさきほど戦ったご飯泥棒こと【トワイライトオウル】の姿が現れます。


 小さくなりましたか? さきほどまでの大きさより縮んだように思えます。見た目だけは変わりありません。ミミズクのような羽角(うかく)があり、それは自身の体長を超えるほどに長い。飛ぶとそれがヒラヒラと揺れていました。羽色は白の混じった灰色。羽角の先は少し黄色がかっています。


 呼び出されてしばらくして閉じていた目をゆっくりと開ける。そしてベンチに立て掛けておいた杖の頭に飛んで乗ると、体を丸くして再び目を閉じて眠ってしまう。なんだかとっても眠そうですね。


「……あー夜行性だからですか」


 開いた使い魔のステータス画面。そこに【夜行性】というスキルがありました。どうやら日中の活動は苦手のようですね。


「名前……どうしましょうか」


 その画面の上の方。名前の入力欄がありました。今は種族名となっていますが、自由に付けられるようですね。こういう名前を決めるとなると考えてしまいます。自分の名前はもう決まっていたものでしたので簡単だったのですが……うーん。


「ではニルでどうでしょうか?」


 思いついた名前を言ってみた。その名前を聞いて杖の上にいた使い魔は閉じていた目を開けてこちらを見る。だけどあくびをしてまた目を閉じて寝てしまいました。……まぁ否定しないようなのでニルという名前にしましょう。入力完了っと。


「これからよろしくお願いしますね、ニル」


 私の言葉にニルは目を閉じたまま返事をするかのように頷いた。マイペースですね。


 そんなニルのスキルも確認しましょう。【闇の知恵】【森の賢者】【ダークミスト】【夜行性】の四つを覚えています。【夜行性】はさっきからニルが寝ている原因。これは昼間のステータスが低下する代わりに夜間でのステータスが上がります。【ダークミスト】は私と戦っていた時に使っていた黒い霧ですね。相手に状態異常【暗闇】効果を与えます。


 【闇の知恵】、これはどうやら召喚者の闇魔法の攻撃力と耐性を上げる効果らしいです。つまり私の闇魔法が強化されるらしい。また夜になったら狩りに行って効果を確かめましょう。


 【森の賢者】、実はさきほどから起きている現象ってこれかなって思っていました。これは相手の情報を見ることができるスキルらしい。ニルが見ている物の情報が召喚者である私にも共有されます。ニルが目を開けた時、一瞬だけ遠くの人達の上にHPバーのようなものが出現しました。今はニルが目を開けていないので何も見えません。【夜行性】のスキルによって日中は目を閉じて眠っているので、昼間は使えなさそうですね。


 さて、ニルの確認も終わりましたので今度は自分のスキルの確認をしましょう。大体レベル10になりましたね。また【闇魔法】と【風魔法】の使える魔法が増えていました。


 【召喚:ファミリア】がレベル3。なぜこんなに上がったのでしょうか。ニルと契約したから? よく分かりません。


 一番分からないのは【命令】のレベルが上っていること。おかしいですね、命令なんてした覚えがない。あぁでもニルに向かって私の使い魔(ファミリア)になれって言いました。まさかそれが原因ですか? 私は使い魔に指示を出す時に使えるかもしれないと思って取ったのですが、こんな事でも上がるんですね。


 そしてまだレベル1のままの【調合】。まぁこれはこれから使うので上がるでしょう。


 その前に。ニルとの戦闘の後、取得可能なスキルが増えていたのでした。まずはその確認をしましょう。取得可能一覧を呼び出す。以前であれば何もなかったその一覧に二つほどスキルが増えていました。


【月光】【下克上】の二つ。スキルを選択すると詳しい説明が見れる。


 【月光】

 月の光により魔力を強化する。満ち欠けにより威力が変化。魔力回復効果・魔法攻撃力強化。


 【下克上】

 格上の存在と戦う場合にステータスアップ。


 ほー。とりあえず【月光】は月の光がある場所だと魔法攻撃力が増すんですね。たぶんよく夜に活動していた事が原因でしょう。これを取得すると【闇魔法】の効果といい、ますます夜戦特化になりそうですね。


 【下克上】は今まで戦ってきたモンスターのレベルが上だったんですね。確かにレベル1からグレーラビットリーダーに挑んだり、ナイトバットと戦ったり……しかも初心者が普通は行かない【黄昏の森】でニルとも戦いました。


 それぞれSP1を消費して取得できますね。うーん。取得しようか悩みますが、まだ言語を取得していません。先に言語を取得したい。きっともう少しで取得できると思うのでそれまで保留にしましょう。


 確認作業もここまで。次は【調合】スキルを使いたいと思います。


 拾ってきた薬草? らしき物と調合キットをアイテムストレージより取り出す。とりあえずやってみますか。拾ってきた薬草をすり潰していく。ごりごりっと。それを鍋の中に投入して煮ると完成。どこからともなく現れた瓶に入った緑色の液体となりました。【初心者回復ポーション:☆☆】という名前ですね。


 できた喜びより食べて判別した草がきちんと薬草だったことが嬉しいです。ですが確認の為に、初めてできたポーションを試しに飲んで性能を確かめましょう。


「にがっ」


 ……忘れていました。ポーションって苦いんでした。舌に味が残るくらいに苦い液体。一口無理やり飲み込んだ結果、回復のエフェクトが現れました。どうやら本当に回復ポーションらしいです。


 しかし、不思議ですね。どうしてポーションの味は苦いのでしょうか。草の状態では甘みがあったのに。試しに草の状態を食べてみます。やっぱり甘い味。すり潰した状態のを食べてみます。これもまだ甘い味でした。では次に煮込んだ物を味見してみましょう。


「……苦い」


 どうやら味が変化したのは煮込みが原因のようですね。うーん。甘い味のポーションにはできないのでしょうか? かけるほうでも問題なく、むしろ飲む手間が省けます。なので味なんて関係ない気がしますが、どうせなら甘い味でもいいでしょう。


 まぁとりあえず今はポーションを作りましょう。味の問題はそのうち解決したいですね。

 残っていた薬草を使い、回復ポーションを製造します。薬草一つにつき一個。失敗もありましたが、十五個できました。



 ちょっと疲れたので背伸びをします。上を見上げると太陽の光が目に入りました。ずいぶんと日が昇っており、ゲーム内時間ではもうお昼頃ですね。……視界の端の警告欄、そこをよく見たら空腹状態が結構やばい値を示していました。そういえばニルに食べられましたから結局何も食べていません。


 というわけでアイテムストレージから肉の串焼きを出す。やっぱりおいしいですね。ですがこうも連続すると流石に飽きてきます。また市場に行って新しい食べ物でも探しましょうか。


 なんだか視線を感じますね。あぁ道行く人の頭上にHPバーが見えます。


「……ニルも食べますか?」


 隣を見ると杖の上に止まったニルが私の手元の肉を凝視していました。また盗られたくないのでストレージから新しく肉を取り出しベンチの上に置きます。ベンチの上に飛び乗ったニルは肉を鉤爪で抑えつつ、ガシガシと食べていく。今は体が小さくなってしまいましたが、ニルとの出会いといいこの子は食いしん坊なのかもしれませんね。


「○○○○○?」


 そんな様子を眺めつつ私も食べていると、広場を歩いていた初心者プレイヤーらしき二人組に声をかけられました。男女のペアですね。


「えっと、なんでしょうか?」


 私の声を聞いて二人は驚きます。ええ、ごめんなさい。私はこちらの言葉が話せないんですよ。二人がまた話しかけてきますがまったく分かりません。あぁどうしようか。


 その時でした。ニルが私の服をクチバシで掴んでひっぱります。そちらに目を向けるとニルは、肉を差すようにクチバシで叩く。そして男女のペアの方を差すように首を振る。まさか……


「……もしかしてこの人達はこの肉の事を聞いているんですか?」


 コクリとニルが首を下ろす。いやまさかそんなと思いながらも、私はその二人に地図を見せながら身振り手振りで場所を伝える。すると二人は明るい笑顔で礼をしつつ、市場の方に向かっていった。


「ニル、あなたはこの地方の言葉が分かるのですね……」


 むしろこの地方のモンスターだったので当たり前なんでしょう。私の言葉に答えずニルはまた肉を美味しそうに食べていく。


 ちょうど私達が食事を終えた頃にあの二人組は肉の串焼きを手に近くのベンチに座っていました。ニルの言う通りでしたね。




 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


【生まれ:ブラッドリー子爵家】

【経歴:家出し旅に出た】


 LV10 残りSP20


 基本スキル


 【両手杖LV9】【闇魔法LV10】【風魔法LV10】

 【魔法知識LV10】【魔力LV10】【調合LV2】

 【召喚:ファミリアLV3】【命令LV2】


 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】

 【野宿】【土地鑑】



 名前:ニル

 種族:使い魔

 性別:オス


 LV1


 基本スキル


 【闇の知恵LV1】【ダークミストLV1】


 ユニークスキル


 【森の賢者】【夜行性】



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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
― 新着の感想 ―
ニル、あのペアを鍋に入れて煮るように。
ニル賢い
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