表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第二幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/130

74・休憩も大事です


 あの後、すぐに警備隊が駆けつけてきました。現場で何が起こったのか事情を説明するために、また警備隊の詰め所に戻ってきたところです。


 警備隊からの事情聴取も終えて、エントランスの一角にあるテーブルには私たちが集まっていました。私たちニルやアール、それから黒猫のルシールさん。それからカイルさんとライトくんにミランダさん。ポコちゃんもこの場にいました。家に帰っても安全じゃないからと言う訳で、私たちと一緒にここに戻ってきました。


「さて……現状、もっとも怪しいのはあの魔族の、名前は確かリリでしたね。彼女がこの一連の傷害事件に関わっているのは明白だ」

「関わっている? あいつは事件を起こした犯人そのものじゃない!」


 カイルさんの言葉にすぐに反応したのはポコちゃんでした。彼女は被害者ですから、彼女が犯人だと考えているのでしょう。


「まぁ、そんなの捕まえれば分かることだ。こんな事してないでさっさと探しに行こうぜ。連れ去られたクリンのこともある」

「……うん、クリンのことは心配だわ」


 今にも席を立ちそうなライトくん。その隣ではクリンの名前を聞いてか心配で表情は優れません。


「でも……あの悪魔はクリンのことは知らないって言っていた……」

「それはあいつが嘘を吐いているからよ。クリンくんはあいつに攫われたの……騙されちゃダメよ!」


 真向かいのミランダさんにポコちゃんが言い聞かせていた。ポコちゃんはクリンが攫われている姿を見ていましたからね。


「クリンくんの件も気になるが……赤い目の件もある。彼らとリリがどう関係しているのか分からないが……この件を放置しておくのは危険だろうね。なにせあの混沌が関わっているのだから」


 被害者たちに話を聞いてみましたが、何も覚えていないそうです。彼ら全員とも瞳の色も戻っており、今は至って普通の状態です。


「どうせ、あの悪魔のせいでしょうね。あいつがあの人達に何かしたに違いないわ!」


 本当にリリちゃんが彼らに何かしたのでしょうか? どうにも引っかかる……。


「とりあえず、まずはライトの言う通りもう一度、リリを見付け出し話を聞き出そうか。この事件を解決する糸口になるのは間違いないだろうね」


 街で幾つも巻き起こる傷害事件。加害者達に共通するのは赤く変色した目と混沌の気配。


 そして彼らを襲ったのか、もしくはそうなるようにしたのか……同じく事件巻き起こし、クリンくんを攫ったとされる悪魔のリリちゃん。


 ……考えようにも謎が多すぎる。その謎を解く鍵はきっとリリちゃんが持っているはずです。


「なら、さっそく探しに――」

「ううん、一先ず休憩しない? ……私とクロエちゃんは街に着いてからずっと動いているし」


 ライトくんを遮り、そう提案した他でもない、ミランダさんでした。


「そうですね……私も少し休憩を取りたいところでした」


 確かにミランダさんと行動を共にしてから結構時間が経っています。私としても、どこかで一度抜けたいと思っていましたし。


「でも……」

「焦る気持ちは分かるが、休憩も必要だ」

「そうね。あたしとしても早く捕まえて欲しいところだけど……万全の調子で行かなきゃダメだもの」

「……わかったよ」


 カイルさんとポコちゃんにも説得され、ライトくんも渋々といったように同意しました。




◇ ◇ ◇



 休憩を終えて戻ってきました。どうやら私が一番先に戻ってきたようで、警備隊のエントランスには私以外に誰もいませんでした。いえ、正確にはアールやルシールさんがいましたね。


『クロエ、少し良いかの?』

『どうかしましたか?』


 さっそくルシールさんが私の姿を見つけるなり、話しかけてきました。いくら個別チャット……この世界的に言うなら魔術通信ですが……それが可能とはいえ、口元の動きは誤魔化しようがありません。あまり表立って話せないので、ルシールさんとはなかなか話す機会がありませんでした。


『……クロエはこの事件をどう見ておる?』

『そうですね……。現状怪しいのはやはり悪魔のリリでしょうが……彼女が全ての元凶かと言われるとそうだとは言えそうにありませんね』


 彼女は誰かを探しているようでした。その誰かが一体何者かは分かりませんが……気になりますね。


 あの場から逃げるために吐いた嘘? ……いえ、あの場でリリちゃんが嘘を吐く意味があるのでしょうか。


 もしもリリちゃんの言った事が本当なら。ポコちゃんの証言と矛盾が発生しますけど……。


 クリンを攫ったというポコちゃんの証言と矛盾するんですよ。嘘を吐いていたか、もしくは見間違えたか……。ポコちゃんは襲われた時に頭を打っていて記憶が曖昧だと言っていましたし……。


 待ってください。ポコちゃんも傷害事件の被害者でしたよね?


 リリちゃんに襲われたと言っていた。ならもしかして彼女がリリちゃんのターゲットだったのでは? 


 いや、居合わせた時、リリちゃんはポコちゃんに反応を示さなかった……。その辺の人ならまだしも、特徴のある獣人である彼女をそう見間違うこともない。なら違うということでしょうか?


 でも、それならどうしてポコちゃんはリリちゃんに襲われたのでしょうか? リリちゃんが人間違いしたという線も、先程言った通りないでしょう。なら、ポコちゃんは巻き込まれただけ?


 リリちゃん自身がポコちゃんに執着はなさそうですからね。逆はあるようですけど。 


『……今回の事件、難しいところだの』

『ええ、そうですね。単純な事件なら簡単で良かったのに……』


 クリンくんを探しに来ただけなのに、なんでこんな複雑な事件になっているのか。まぁ、プレイヤーとしては簡単な事件を解決するより、面白いことにはなっていますから退屈はしませんけどね。


『……のぅ、少し話は逸れるがお前さんはあの赤い目の者達のことはどう思う?』


 ルシールさんが毛を少し逆立てながら聞いてくる。以前赤い獣にされた経験を思い出してしまったのでしょう。そして今回の赤い目の彼らはポコちゃんと同じ、リリちゃんの被害者かもしれません。


『……ライトくんの話では混沌の気配がしたとか。なら、やはり混沌の影響を受けていたと考えます。ただ、あなたの時と違い姿は人のままでしたし、目が覚めたら元に戻っていました。そう考えると混沌の影響力は限りなく弱かったのではないかと思います』


 ルシールさんの時は人の形を留めること無く、赤い獣と化していました。理性が失われているという点では同じですが、影響力はルシールさんの時より低いでしょう。


『目が覚めたら元に戻っていた……これが引っかかっておる。混沌の影響力は実に強力なものだ。その力が封じられた混沌の欠片……混沌石であれば、その大きさが石粒程度でも人を簡単に狂わせる。そう、その程度であれ勇者の力なくして、人が正常に元に戻るということがおかしいのだ』


 確かに、ルシールさんを助ける時にライトくんの勇者の力は必須でした。ですが今回、ライトくんは勇者の剣を持っていないのでその力を使うことは出来ません。


 勇者の力がないというのに、赤い目をした人たちは目が覚めたら元に戻っていた。


 いえ、一人だけは違いました。私がポーションを掛けて助けようとしたあの人だけは……。


 そういえばどうして彼はあの時苦しんだのでしょうか? それに他の人は襲ってきましたが、彼は襲うこと無く彼らよりも先に元に戻っていた……。


 ポーションが原因だった?


 いえ、確かあの時カイルさん達も同じように他の人にもポーションを掛けていたはず……。


『何にせよ。混沌が関わる事件だ。つまり……』

『赤いフードの連中が裏にいるかもしれないってことですね』


 ……今の所、彼らの姿は見ていない。だけどあの赤い目の一件が彼らの仕業だとしたら。


 もしかしたらリリちゃんの邪魔をしたっていうのは彼らかもしれませんね。


 未だ行方不明のクリンくんの事といい、リリちゃんの目的といい、分からないことだらけです。それを考えるための手がかりもまだ揃っていない。


 みなさんが戻ってきたら、その手がかりをまた見つけに行かないといけませんね。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
― 新着の感想 ―
ポコが怪しくねぇ? 赤フードの一員が擦ってるようにしか見えないわなぁ
どう考えても悪魔を妨害する目的で嗾けられているよなぁあの赤い目の連中は
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ