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セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第二幕

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62/130

62・大物は聖剣

 

 今日もログインして昨日作りかけた風邪薬の製作しましょう。その前に召喚が解除されているニルを召喚。あっルシールさんもいないので召喚しておきました。


「これは……」


 ログインした時にいつもしている事を終えて、周りを見渡して気が付きました。内装が少し変わっている。以前まではログハウスの家の中は、ルシールさんの使っていた家具がそのまま置かれていました。


 だからでしょうか、ちょっと年月が経っていて傷がついたりしていたんです。それが今目の前に置かれているテーブルと椅子はまるで新品同様。


 さらには可愛らしいテーブルクロスが掛けられ、木彫りの一輪挿しにはブルーローズが生けられている。他にも枝を合わせただけだったニルの止まり木も、なんだか新調されています。


 たったそれだけのことでしたが、この部屋の雰囲気がガラッと明るくなったと思います。


「……これはアールがしたのですか?」


 アールは椅子に座って何やら裁縫をしていたようです。椅子の上には作りかけの何かがありました。

 アールはダメだった? というように恐る恐るこちらを見ています。図体は大きいのにちょっと猫背になって縮こまっていました。


「いいえ、とても素敵だと思いますよ」


 温かい雰囲気があってとてもいいです。それに、こんな家に住んでみたいと思っていたので願ったり叶ったりですよ。


 まぁ……魔女の家として見れば前の質素な感じ、もしくはさらに陰気でどこか恐ろしい雰囲気の内装でも良かったかもしれません。でも、これを見せられたらそんな事言えませんし、住むならこっちの方がいいです。


「うむ、その通りだ。むしろ私の元家をここまで綺麗にしてくれて嬉しいくらいだのぉ!」


 上機嫌なルシールさんの声が聞こえてくる。どうやらこの内装には彼女も気に入った模様です。


「お前さんはこういうのが得意のようじゃの」


 アールの肩にひょいと飛び乗って、褒めるようにテシテシ頭を撫でていました。


 そういえば、今の黒猫のルシールさんには青いリボンが巻かれています。あれもアールが作ったのでしょうか。瞳の青色と同じ色合いでとても可愛いですね。


 そんなルシールさんに褒められて嬉しいのか、アールが返事をするように頷きました。


「……あれ? もしかして今のルシールさんの声、アールにも聞こえているんですか?」


 ルシールさんの声がさっきから少し違っていました。今まで耳元で私だけに聞こえていた声が、まるで黒猫の口から発声しているかのように聞こえます。


 アールもそれに気がついたのか、ちょっと驚いてからコクリと頷きます。


「うむ、私の使い魔としての力が上がったのだろう。だからこうやってクロエ以外とも話せるようになったのだろうの」


 なるほど。見ればルシールさんの使い魔レベルが上がっていました。


「まぁこれは憑依している間は喋れるようになっただけだがの」


 つまり憑依していないと何もできない事には変わりないようです。あぁ……きちんと召喚できるようになりたいものですね。


 さて残りの風邪薬の製作を終わらせましょう。ぐつぐつと煮込む事を繰り返すこと、二時間ほど。やっと約束の百個を用意することができました。


 品質は均等にしたほうがいいと思って全てランク4です。ランク5の物はなかなかできず、逆にランク3に下がったりと一定の品質を作り続けるのは大変でした。


「あっそういえば畑の水やり!」


 薬を届けに行こうとして気が付きました。そういえばまだ畑に水を撒いていません。


 出ていこうとした私をアールが止めました。そして身振り手振りで何かを伝えようとしています。手の動きは何かを持つようにして水平に動かしていました。


「もしかして水やりをしてくれたんですか?」


 コクリとアールは頷きました。


「そうでしたか。ありがとうございます、アール」


 本当にこの従者は優秀ですね。次の給料を上げておきましょうか。



 *****



 ミランダさんの雑貨屋に入るなり、彼女と男性客の話し声が聞こえてきました。


 何やらカウンター越しで話し込んでいる模様。話が終わるまで商品でも見ながら待っていることにしましょうか。


 そう思って相変わらず様々な物が置かれている店内を見渡すともう一人、人がいました。


「クロエさん。いらっしゃいませ!」

「クリンくん、もう風邪は大丈夫なのですか?」

「ええ、クロエさんの薬のおかげですよ。ありがとうございました!」


 店内にはクリンくんの姿もありました。すっかり治ったようで少年らしい元気な笑顔をこちらに向けてきます。


「クロエちゃんいらっしゃい~。もう~来てたなら声を掛けてくれてもいいのに~!」

「すみません。なんだか話をしているようだったので……」


 ミランダさんがこちらに気が付いたのか、カウンター越しから声を掛けてきました。そちらを見ると先程の男性客もこちらを見るように振り返りました。


「よぉ、この前のお嬢ちゃんじゃないか」

「あなたはこの前の……お久しぶりですね」


 つばの広い帽子の下には白髪交じりの髪と髭。落ち着いた印象を受ける老年の男性は、以前橋の上で出会った釣り人でした。


「なんだ、最近見ないと思ったらお嬢ちゃんのとこにいたんだな」


 そう言って彼は私の肩にいる黒猫(inルシール)を嬉しそうに見ていました。そういえば彼は少しだけこの黒猫とは縁がありましたね。


「クロエちゃんが来たってことは、薬ができたのかな?」

「ええ、こちらに」

「おお~さすが~!」


 カウンターに置いた薬の山を見て、ミランダさんが嬉しそうに手をたたく。


「うんうん、品質も悪くない。むしろ上出来だね。これはちょっと報酬を上げておかないといけないかな?」

「いえ、そのままでいいですよ」

「本当にいいの~?」


 ジーと意思を再確認するようにミランダさんがこちらを見てくる。


「店長の事ですから一度言うともう値段を上げてくれませんよ」


 クリンくんが見かねたように言う。確かにミランダさんってボーとしているようでその辺はしっかりというか、ちゃっかりしてそうなんですよね。


「その代わりとして……報酬を上げない代わりに、売値は安値で売ってくださいね」

「あ~、やられた~」


 ぷくーと頬を膨らませるミランダさん。仕入れ値を抑えたならちょっとの値下げくらいいいでしょう。その方がこの薬を必要としている人に行き渡りやすいと思います。


「それじゃ七万Gのままね~。その代わりに売値はちょっと安くしておくから~」

「ええ、お願いします」


 《クエストクリア。ミランダより報酬を受け取りました》


 報酬の七万Gを手に入れました。これは次の武器を新調するための資金にしましょう。


「薬、届きましたね。じゃあこれから届けに行ってきますよ」

「でも、本当に大丈夫?」


 カウンターに置かれたままだった薬をクリンくんが幾つか袋に入れていきました。それを見てミランダさんが心配そうに話しかけています。


「どこかへ行くのですか?」

「ええ。今度は近隣の村の方で風邪が流行っているそうです。だからこれからこの薬を届けに行こうと思って」


 なるほど。街で流行していた風邪が今度は街の外の方で流行っているようですね。


 私達が来る少し前に風邪薬を買いに来た近隣の村に住む人達が来たそうです。その人達はお代だけ置いて薬が来たら届けて欲しいと言って村に戻ったみたいでした。


「でもね、クリンはまだ病み上がりでしょ。だから行かせるのは不安なの。そんなクリンを一人置いて私が行くわけにもいかないし……」

「なら、俺が代わりに行こうか?」


 そう言ったのは釣り人の男性でした。


「ちょうどこの街を出ようと思っていたところだ。そのついでに届けてやろう」

「本当? 持ち逃げとかしない~?」

「しないしない」

「じゃあ任せるよ~。配達料どうしよ?」

「ならさっき買った餌をもう一つくれるか?」

「いいよ~」


 話は決まったようでした。この人が名乗り出なかったら私が出ていた所です。


 しかし、私としてはあまり森を離れたくない所だったのでいいでしょう。それにしても、釣り人の男性はこの街を出て行くといっていました。


「この街を出ていくんですか?」

「そうだ。次の獲物を探しに別の所に行くつもりだ」


 そう言って釣りをする仕草をする。きっと彼はこれから大物を探しにまた旅に出るのでしょう。


『いい獲物に出会えるといいですね』

『ありがとう。またどこかで会えるといいな』


 せっかくなのでエンテ公国語でお別れをしてみました。釣り人の男性はニッと笑顔を向けた後、薬を持って店を出てきました。


「あの人はどこへ行くんでしょうか」


 聞いておけば良かったなぁと思いつつ、そんな言葉が溢れました。クロエとしては同郷の人でしたから、この別れには少し寂しい思いもあるでしょう。


「さっき話していたんだけど王都の方へ行くみたいだよ~。最近不定期だった王都への船がちょうど港街の方に来ててね。今を逃すと次はいつ来るか分からないから、乗るつもりなら早く行ったほういいよってアドバイスしてあげたんだ~」


 港街は確かこのダイロードの街から東に行くとある街ですね。聞けば海の魔物や海賊のせいで船便は来ていなかったそうです。あっちの方角はまだ行ったことありません。いつか行ってみたいですね。


「船の上から釣りをしそうですね」

「だね~。そして大物を釣り上げるかも! いや、もしかしたらまた大剣とか釣り上げちゃうかもしれないな~」

「大剣?」

「うん、大剣だよ~。なんでも西通の大橋で釣りをしてたら釣っちゃったらしいよ。それでね、その大剣は不思議なことにどんなに力を込めても鞘から抜けなかったんだってさ~」

「へぇ……本当に抜けなかったんですか? 錆びていたとかじゃなくて?」


 ……なんだかどこかで見たことある気がしますねぇ。ミランダさんは楽しそうに続きを話してくれました。


「うん、そうらしい。最初は錆びてるからだとおじさんも思ったらしいよ~。でもね、通りすがった男の子に渡してみたらあっさりと引き抜いちゃったらしいんだ~」

「それはなんとも不思議な話ですね」


 不思議どころの話ではありません。


 ライトくんがどんな経緯であの剣を手にしたのか知りませんでしたが、きっとどこかの台座にあったのを引き抜いたとかそんなレベルだと思っていましたよ!?


 いや、待って下さい。まだそうだとは断定できません。


 もしかしたらそれは普通の剣でたまたま引き抜こうとした時に引っかかったとかで、釣り人の男性では抜けなかったとかそんなことだってあるはず……。


「ちなみにその釣り上げた剣の特徴とか聞きましたか?」

「うん。とっても綺麗な大剣だったって言ってたよ~。あれはきっと値打ち物だとおじさんは言ってたけど、抜けたらやるっていう約束しちゃったから、その男の子に渡しちゃったんだって。惜しいことしたとか言っててちょっと後悔してたよ~」


 そうでしょうね。だってあなたが釣り上げたのは勇者の剣ですからね。


『なるほどのぉ。あの後、そういう経緯であやつの手に渡っておったのか……』


 何やら驚いた感じのルシールさんの呟きが聞こえてきました。あの後?


『……あの後ってなんのことですか?』


 気になったのでルシールさんを対象に個人チャットを使用。どうやら一部NPC相手なら個人チャットを使えるようです。返してくれるかはNPC次第のようですけど。ルシールさんは私の使い魔だからでしょう。


『うむ。赤い獣の件を解決するために、私は勇者を探しておった。その為にかつての勇者の剣であった大剣レックスの所在は把握しておったのだが……一度盗まれてのぉ。それで一時行方が分からなくなっておったのじゃ。あやつが手に入れておったのは知っておったがこんな経緯とは思いもつかんかったの。かっかっか』


 釣り人に釣り上げられた大剣は勇者と認めたライトくんの元へ。その後、私に倒されて拾われて、それからライトくんの元へ返る。


 ですが今はツバキさんに盗まれてしまい、また行方知れず。……この勇者の剣は転々と人の手を渡りすぎですね。


 最初に盗んだというのはツバキさんかな? でもなんであんな川の中に沈んでいたのでしょうか?


「あっそうだった~」


 何か思い出したらしいミランダさんの声が聞こえてきました。店の奥に行った後、またカウンターに戻ってきます。


「さっきの船の話で思い出したよ~。その船でやってきた旅商人から買い取ったものなんだけど~」


 そう言ってミランダさんはカウンターの上に物を置きました。それは透明なガラスのような素材でできています。外から入り込む太陽光を浴びてキラキラと輝いていた。


 だけど、その輝きは同時に恐ろしさを感じさせる。なぜなら、その置物の形はドクロのようでした。そのままというより、若干デフォルメされている。


「ここから南の地方には芸術を愛する国があると聞くわ。これはそこに住む芸術家が作った物らしいよ~。特に何の効果もないただの芸術品だけど……買う? ちなみに値段は十万Gだけど……クロエちゃんになら五万Gで譲っちゃうよ~」


 ミランダさんがそれを両手で持って囁くようにいいました。ただの置物。とくに効果なんてありはしない。それに五万G。見た目も可愛くもなく、恐ろしい。


 でもこれは……欲しいと思ってしまいました。だって透明なドクロですよ? それを水晶球に見立てて占いなんてしてみたらすごく魔女っぽいじゃありませんか! ……占いはできませんけど。


 それにですね、インテリアの一つとして家に置いてもいいと思います。……今の家に合うかは分かりませんが。


「ちなみにコレは一点もの。売れたら次はないよ?」


 悩む私に追い打ちをかけないでください。ですが悩んで買わない選択をしたとして、もし後で買えば良かったなんて後悔はしたくありませんね……。


「くっ……買いましょう」


 苦渋の決断の末、結局買ってしまいました。今ここで悩むくらいなら買った後で悩んだ方がいいと判断しました。あぁ、さっきの報酬がもう溶けてしまいましたね。


「まいどあり~」


 ミランダさんのそれはそれは嬉しそうな笑顔が見えました。この笑顔に釣られて買ってしまうような人が他にもいるでしょう。いいカモですね、まったく。


「そうそう、クロエちゃん。これからもまた薬の依頼を受けてくれると嬉しいな~。ポーションも定期的にうちに持ってきてくれるとありがたいかも。クロエちゃんの性能がいいからお客さんも喜ぶんだよ~。もちろん他よりも高めで買い取るからね!」

「それは本当ですか?」


 願ってもいない申し出ですね。こちらも定期的な収入が欲しかったところです。


「もちろんだよ~じゃあ今後ともよろしくね~」

「ええ、ぜひともよろしくお願いします」


 ミランダさんの店に定期的にポーションを卸すことになりました。今まで通りこちらが適当に作って売るのではなく、ミランダさんが指定した個数を納品する形ですね。今回は回復ポーションと魔力ポーションをそれぞれ百個ずつ、☆4以上で納品することを頼まれました。







 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


 【生まれ:ブラッドリー子爵家】

 【経歴:家出し旅に出た】

 【経歴:封印の守護者を引き継いだ】


 LV24 残りSP13 


 基本スキル 合計26個


 【両手杖LV23】


 【魔法知識LV22】【魔力LV23】


 【闇魔法LV23】【風魔法LV22】【土魔法LV16】

 【暗黒魔法LV8】【空間魔法LV1】


 【月光LV17】【下克上LV17】【森の加護LV5】


 【召喚:ファミリアLV24】【召喚:ゴーレムLV2】


 【命令LV20】【暗視LV23】【味覚LV23】【草食LV1】


 【鑑定:植物LV22】


 【採取LV22】【調合LV24】【料理LV13】【魔女術LV1】


 【毒耐性LV15】【麻痺耐性LV15】【睡眠耐性LV14】


 【言語:スワロ王国語LV16】



 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】

 【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】


 【野宿】【土地鑑】


 【管理地域:黄昏の森】



 称号


 【ベリー村の救世主】

 【封印の守護者】




 名前:ルシール

 種族:使い魔

 性別:女性


 LV10


 基本スキル


 【魔術師の知恵LV10】【魔力供給LV10】【憑依LV10】

 【幻覚LV10】【アンロックLV10】


 【気配察知LV10】【気配遮断LV10】【聞き耳LV10】


 ユニークスキル


 【言語:デュオ地方語】【言語:テッセラ地方語】



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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
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