60・魔法を取り上げないで下さい
さて、レベ上げをする場所はどうしましょうか……。
森の中のモンスターは適正レベルですが、守護者となってからは逃げられてしまうようになってしまいました。それに倒しても経験値が微々たるものです。守護者特典で乱獲するなという規制でしょうか。
この森以外の場所……そうなるとこの森を抜けた先ですね。はっきり言ってこの先はまったく行ったことがありません。マップ情報も未開です。森を抜けた辺りの冒険者が通る場所なのでレベル帯としてはちょっと高いくらいですが、この先以外にいい場所はこのあたりだとありませんね。
噂ではダイロードの街の北側には強いモンスターがいるらしいですが、レベル帯が50くらいという話なのできっと無理です。それ以外となりますと大体弱い。ここは序盤の地域ですからね。
白い森を抜けて【黄昏の森】を南に向けて歩く。誰もが探した出口を抜けると、ゴツゴツとした茶色の山道と尖った山がいくつも連なる景色が現れました。
ここはどうやら【イルー鉱山】に続く手前の場所【ゴウロ山道】のようです。
ちなみに【土地鑑】スキルによるボーナスが【黄昏の森】までしかないので、この先の地図情報はありません。自分で歩いて地図の空白を埋めていけば【土地鑑】のスキルも動いてくれるでしょう。
スキルによる情報はありませんが、このあたりなら少し前に調べています。
このゴウロ山道、出現するモンスターは昼と夜で変わるらしいです。昼間に現れるのはゴツゴツとした岩を背中に乗せたアルマジロのようなモンスター、名前は【ストーンローラー】。
この【ストーンローラー】は夜間の間眠っています。寝ている間は丸まっているのですが、その姿はその辺に転がる岩にしか見えません。たぶんあの辺に転がっているのとかそうなんでしょう。
寝ている彼らに攻撃すると、睡眠を妨害したと見なされて激怒状態の【ストーンローラー】と戦うことになります。攻撃パターンが激しくなるそうなので、夜の間は手出ししないほうがいいでしょう。
そしてもう一体。この三日月の光が指す山道に夜の間現れる【嘆きの亡霊】。曰く、この亡霊は黄昏の森で彷徨い歩いて死んだ者達だとか言われています。……だからでしょうか。こんなにも数が多い。外見は人型ですが足のない感じです。
ゴツゴツとした道のあちこちに、うっすらと半透明の白い影が見えたり消えたりしていました。
まずは小手調べをしましょうか。複数相手はできないのではぐれ亡霊を探さなくては。辺りは夜なので暗いですが、【暗視】スキルでしっかりと見渡すことが出来ます。それでも白い影で半透明なので、夜の闇に紛れ込んでしまう彼らを見付けるのは少し難しいですね。
攻撃されないように周囲に気をつけながら、辺りを見渡すこと数分。やっと一匹ふよふよ浮いている亡霊を見つけました。
「さて、迷える亡霊を導くとしましょうか」
使う魔法は闇魔法だから導けない気がします。倒せば除霊できると信じましょう。
「アール、何かありましたらポーションをお願いします」
アールはこくりと頷いて、少し私から離れます。
では、始めましょうか。まずは二重詠唱ができるので、詠唱時間が五秒の【シャドウアロー】と三秒の【サンドスピア】を同時詠唱します。
詠唱完了した【シャドウアロー】を放つと、はぐれ亡霊に当たりました。
「ゴゴゥゥゥ……」
人の声とも獣の鳴き声ともつかない声を上げながら、攻撃した私の方に向かってきます。
すぐに【サンドスピア】で動きを止めましょう。こちらは単体に攻撃を与え、尚且つ串刺し状態にし【拘束】と【出血】の効果を与えることができます。【ダークバインド】の単体バージョンですね。
【拘束】効果が目的なら【ダークバインド】でも良いんですが、こちらは範囲技です。余計な敵に当たらないようにするために今回は使いません。
亡霊の足元から土でできた槍が出現。亡霊を貫いて……いやダメージが入っていない? ……まさか霊体だから物理攻撃が効かない? 確かに【サンドスピア】は地面のある場所でしか使えませんし、魔法だけど物理の効果もある魔法だから効かない?
「面倒な敵ですね」
試しに【ウィンドカッター】をぶつけてみる。当たった。どうやら純粋な魔法は当たるみたいです。【シャドウアロー】は再使用時間の十秒が経っていないので、代わりに【エアショック】の詠唱を開始。詠唱時間は三秒です。
その間に敵からの攻撃。青い鬼火のような攻撃をこちらに飛ばしてきます。それを【ウィンドシールド】で防御。お返しとばかりに【エアショック】を発動。当たりました。
【シャドウアロー】が再び詠唱可能に。ですが、敵がもう間近まで迫っていました。ニルの【ダークミスト】をしてもらいましたが、どうにも効果はなさそうです。目で見ているわけではないのでしょう。
ダランと垂れた腕を振り回すような攻撃を亡霊は繰り出す。霊体なら当たっても問題無さそうですが、怖いので【シャドウムーブ】を使って回避します。
また距離を少し離すことができました。相手が近づいてくる前に【シャドウアロー】を詠唱させて、当てます。
「グゥゥゥ……」
断末魔のような音を出して亡霊は消えていきました。どうやら倒したようです。【亡霊の粉】なんてドロップ品も出ましたし。
「……ふぅ」
しかしまさか土魔法が効かないとは。もう少し敵の情報を調べた方が良いかもしれませんね。攻略サイトでもう一度確認を……っとあぶない。別の亡霊に気づかれてしまったようなので、まずはその対処ですね。
「まったく、迷える霊が多いですね」
そんな調子でしばらく襲ってくる亡霊を倒し続けました。一体ぐらいなら危うげなく倒せます。ニルとアールがサポートしてくれた事もありましょう。
敵の攻撃を【アースシールド】で防いで【シャドウアロー】を放てばまた一体、亡霊を倒せました。
《レベルが24に上がりました。SPが2増えます》
《一定の行動により取得可能スキルが増えました》
また一つレベルが上がりました。今度はスキルも新しく習得可能になったようです。
追加されたスキルは……【召喚:ゴーレム】? ふむ、どうやら【土魔法】と同じ召喚系スキルである【召喚:ファミリア】を持っているので、その関係で出てきたようです。確か初期のスキル選択でも選べたような気が……ってニル、どうかしましたか?
「えっ……」
突然、背中を押されたような感覚がありました。勢いでよろめきつつも、後ろを振り返ると半透明の上半身がいる。あぁやられました。亡霊だから足音もないから気づけませんでした。
「レディを後ろから襲うなんて、許せませんね」
即座に撃てる【ウィンドカッター】を発動……えっ発動しない? もう再使用時間は過ぎているのに、どうして……。
「なんで……」
原因が分かりました。体力ゲージなどを示すウィンドウの下に状態異常アイコンが一つ。【嘆きの呪い】、効果はスキル使用不可。効果時間は十秒。……あぁさっき調べておけばよかった。
「……まぁ落ち着きましょう。話をしませんか?」
「ゴゥゥゥ……」
どうやら相手も理解してくれたみたいですね。和解の握手が飛んできましたよ。
なんて嘘です。じゃなきゃ視界灰色にはなりませんって。これでも回避したんですけどね……当たりました。そしてポーションなんて使う余裕もなく死にました。
あぁもう【嘆きの呪い】なんて効果は止めて下さい。魔女から魔法を取り上げないでくださいよ。出来ることが杖で叩く事しかできないようになるんですからね……このクソ亡霊め。おっと口が滑りました。なんでもありません。
「アール、私は先に家に戻ります」
遠くで見ていたアールにそう呼びかけて、私は死に戻りしました。
それにしてもこんなにもあっさり死んでしまうとは。あぁ死んだという表現は正確ではありませんでした。正しくは瀕死の重傷でしたね。
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
【経歴:封印の守護者を引き継いだ】
LV24 残りSP17
基本スキル 合計25個
【両手杖LV23】
【魔法知識LV22】【魔力LV23】
【闇魔法LV23】【風魔法LV22】【土魔法LV16】
【暗黒魔法LV8】【空間魔法LV1】
【月光LV17】【下克上LV17】【森の加護LV3】
【召喚:ファミリアLV22】
【命令LV20】【暗視LV23】【味覚LV21】【草食LV1】
【鑑定:植物LV21】
【採取LV18】【調合LV21】【料理LV11】【魔女術LV1】
【毒耐性LV15】【麻痺耐性LV15】【睡眠耐性LV14】
【言語:スワロ王国語LV15】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】
【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】
【管理地域:黄昏の森】
称号
【ベリー村の救世主】
【封印の守護者】




