6・雑草は意外にもおいしい
おはようございます。あぁ現実の朝日も眩しいですね。現時刻は午前五時。まさかあのままやっていたのか、というわけではありません。昨日は市場で買い物後、時間が夕飯時だったので落ちたんです。夕飯後にもう一度やろうかと思ったんですが、なんだかんだでプレイできませんでした。
なので朝食前にSSOをやろうと昨日寝る前に思ったのです。あぁ早起きはしていません。いつもこの時間に起きてしまうんですよ。朝ですから静かにVR機器を取り出し、頭に被せる。以前から使っている物なので操作なんて完璧です。いくつかあるアプリケーションの中からSSOを選択し、すぐにゲームは起動し始めました。
またやって来ました。ダイロードの街。今はどうやら夜のようですね。私の時間、闇魔法の時間ですよ! 狩りに出かけるのもいいでしょう。ですが今回は別の目的もあります。事前に攻略サイトなどを見て予習してきたのですから。これでもうぼったくりには会いません。
と、違う。調べた内容はこれからの金策についてです。全然活躍していなかった【調合】というスキル。あれはポーションなどを作れるそうです。なので生産職で金策をするという考えを思いつきました。
これを取ったのは魔女って薬とか作るよね? という単純な理由から取ったものですが……まぁ役に立ちそうなので、というかせっかくあるので役に立たせませんと。
その為には材料を探さないといけません。その前に調べた結果、調合をするには道具が必要らしいです。それを先に買います。初心者用調合キット500G。……初期金は1000Gらしいので高いですね。
買い物は大体購入画面を通して行われますが、それを呼び出すには店の人に話しかけないといけません。ええ、ここでも言葉の通じない障害がありましたがなんとかなりました。
早く言葉を覚えたいです……。今だに一覧に現れません。もっと話せと言うんですか。
さて、私は今【黄昏の森】に来ています。情報によるとこの森には調合で使う薬草がたくさんあるようです。それを取りに来ました。【黄昏の森】という地域は初心者が近づいていい場所ではないようです。なにせ常時暗い森の中で、襲い掛かってくるモンスターも平原とは比べ物にならないらしい。森に入ると方向感覚を失い迷い、最悪死に戻りでしか森を出られない。と言った問題があるようです。
しかし暗闇は好都合。闇魔法が強化されますから。暗闇で周囲が見えないのが一番の問題ではありますけど。少しだけ平原でもレベ上げしてきたので、今はレベル8。装備もまだ有効だと考えます。迷う問題も森の入口あたりで採取すれば問題なさそうです。前回も入り口付近でウサギと戦っていましたし。
なんにせよ、危なくなったら逃げましょう。それが一番です。
そんな感じで森の入口にて採取を開始します。……なのですが、また問題が出てしまいました。その辺りにはたくさんのそれっぽい草が生えています。ですが、それがなんの種類の植物か分かりません。攻略サイトから持ってきたそれぞれの薬草の写真を見ても、それらしき植物は見当たりませんでした。
「……入り口にはない?」
そう思いましたが、どうやら原因は別のようです。どうも鑑定の植物系スキルを持たないと薬草はただの雑草と見分けがつかないようでした。
だからいくら攻略サイトで薬草の姿を知っていても、見つからない訳です。鑑定スキルを取ろうにも一覧にまだ現れていません。鑑定スキルは初期スキルです。なのではじまりの街にいるスキルマスターが教えてくれれば、スキルは誰でも覚えられるようですが……私はNPCと話せません。
「ここでも……ここでも言語が!」
薬草を採取するのに言語が必要とは誰も思わないって。
ちなみに攻略サイトからの情報。言語スキルは現地民と一定以上話すことにより取得可能一覧に現れるらしいです。まだ話し足りないのですね。
街に戻って住人と話す機会を作りましょう。ですがその前に採取をしなくては。確かに見分けは付きません。鑑定スキルがないので。だけど他の方法で見分けを付けることもできるのではないかと思います。
私は一つ草を引っこ抜きます。見た目は葉が細長くよくある雑草のよう。その葉をパクリと一口。
「……甘い」
その葉はなんだか甘く感じられました。不思議と元気が湧いてくるような……いや今微妙に体力が回復した? HPゲージは満タンなので分かりませんが、回復したようなエフェクトが現れた気がします。
さきほどと同じ場所から草を引っこ抜きそれを食べる。また甘い味です。そしてやっぱり回復する際に現れる緑色のエフェクトが出る。
たぶんこれは回復ポーションの材料となる薬草でしょう。アイテムストレージに入れ込むと雑草としか表示されないので本当なのか分かりませんけど。
とりあえず一つ一つ食べながら探していきます。
何も味がしない、変化がない。これはただの草です。こちらは……甘いですね。ならこれは薬草。こちらも甘い……いや待って。なにこれ? ダメージ入った? ――毒状態。毒草ですか。とりあえず分けておきましょう。次、甘い、毒で減った体力が回復、薬草ですね。次、あ、しびれが……麻痺草か! こっちはあれ……睡眠状態って……。
一瞬だけ麻痺と毒と睡眠で死にかけました。この時敵が来なくて本当に良かったです。それにしても……どうして私はゲームの世界に来てまで雑草を食べなければならないのでしょうか。あぁ考えてはいけません。
さぁ私の努力の結果はこちら。
薬草? ×20
毒草? ×10
麻痺草? ×5
睡眠草? ×5
あと十個ほど何もエフェクトは出なかったけど味はハーブとかに近い味わいの草がありました。とりあえず残しておく。見た目は全部同じでアイテムストレージでも雑草扱いなので、混ざらないように気をつけませんと。せっかくの苦労が水の泡です。
さて薬草? らしき物を入手しましたのでやっと調合ができますね。ここまでたどり着くのに本当長い。これも全部言葉が話せない事が原因……。
ですが、もう朝食の時間が来てしまいました。雑草を食べていたから空腹状態ではありませんが、現実の自分はお腹が空いています。なので休憩を兼ねての朝食タイムですね。
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
LV8 残りSP16
基本スキル
【両手杖LV7】【闇魔法LV8】【風魔法LV7】
【魔法知識LV8】【魔力LV8】【調合LV1】
【召喚:ファミリアLV1】【命令LV1】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】
スキルレベルはレベルを超える事はありません。
クロエが全く新しいスキルを取得しないのでSPがあり余っています。






