58・畑を始めましょう
買い物を終えて私たちは黄昏の森まで戻ってきました。
『クロエ、では毒薬の浄化をしようかの』
ルシールさんに言われるままに、湖のほとりへ。ここで毒薬の浄化をするらしいです。
『前に話した通り、この湖の底には【封印の星石】がある。その力は湖の水にも宿っておる。その辺の聖水にも劣らないほどじゃの。それを用いて魔法陣を描くのだ』
【封印の星石】にはそんな力もあるんですね。水を地面へ撒いて、濡れた地面に言われた通りの魔法陣を描いていきます。アールも手伝ってくれました。
その陣の真ん中に毒薬を置く。
『あとは魔法陣に触れて願うと良い』
魔法陣に両手で触れる。すると手の甲にある守護者の印が浮かび上がると、魔法陣が光り輝いた。それに反応するように湖も光り輝く。魔法陣の真ん中に置いてあった、毒薬の禍々しい中身があっという間に色素を失い、透明になっていきました。
「凄いですね。こんな力があるなんて……」
浄化された毒薬を【調合】スキルで鑑定するとただの水になっていることが分かりました。
『勇者の持つ浄化の力に近いものだからの。これくらいならば容易く出来る』
「なるほど……。それなら混沌の力も浄化できるのでしょうか?」
『……うーむ。元は同じとはいえ、近いだけじゃからの。勇者の持つ浄化の力には流石に及ばんよ』
やっぱり勇者の力はそれだけ特別ってことですか。でも湖の水には浄化の力が備わっているのは確かですね。
さて、毒薬の浄化も終わりました。次にやることは頼まれた風邪薬の製作でしょう。
その風邪薬を製作するにあたって、まずは材料を集めなければなりません。以前のように拾い食いしながら集めるというのもいいですが、いちいちそれをするというのも面倒なものです。
というわけで薬草畑を作りましょう。これで拾い食いをしなくてすみますからね。
森の家から近い場所にルシールさんが作っていた畑がありました。長いこと手入れをしていなかったからでしょうか、畑はすっかり荒れ果てています。
ですが、一から畑を耕すよりも手間はかかりません。この畑を使いたいと思います。ちなみに畑道具一式もありましたので、ありがたく使いましょう。
アールにも手伝ってもらいました。クワを手に耕すアールの姿は農夫に見えてなんだか似合っています。それに手際が良い。
そして私はというと……
「よっ……うわっ!」
勢い良くクワを持ち上げた途端に、バランスを崩して尻もちをついてしまいました。
魔法職で力はないからでしょうか、思ったように動くことが出来ません。あぁもう少しキャラクターのステータスを考慮しておくべきでしたね……。どうやらクロエは畑仕事には向かないようです。
「大丈夫ですよ」
心配してこちらにやってきたアールに言います。手を差し伸べてくれたので、ありがたく掴んで立ち上がります。お尻に土が付いてしまいましたので払っておく。
アールは座ってていいよと言うように近くの切り株を指して、畑を耕しに戻りました。
「まさか、こんなに体力がないとは……」
切り株に座ると思わずため息が出てしまいました。
耳を澄ませば森の木々が風に揺れてさざめく音が聞こえてくる。ゲームの中なのに本物の森の中にいるような感じがします。そんな森の中ではアールがせっせと畑を耕していて、空を見上げれば木の枝に止まったニルが気持ちよさそうに寝ていました。
しかし、困りましたね。結構畑は大きいです。それをアール一人にやらせるわけにはいきません。かと言って私は手伝えないようですし……。
『別にクワで耕さなければならないというわけでもなかろう』
足元を見ると黒猫のルシールさんが居ました。……そういえばこの畑は元々はルシールさんの畑です。そしてルシールさんもまた私と同じで魔術師でした。
「あぁ、なるほど」
別にクワで耕さなくてもいいとは、まさにその通りですね。なにせここには魔法という便利なものがありました。
装備をクワから杖に変更します。杖を畑に向けて詠唱開始。使う魔法は土魔法の【クエイク】。詠唱時間は四秒。詠唱が終わると同時に発動すると、範囲内の地面が盛り上がり大地が裂けました。
「これはちょっと失敗したかもしれませんね」
『……そのようじゃの』
耕したといえばそう言えるかもしれない。ただ地面が裂けただけとも見えるかもしれない。……畑用の魔法はないのでしょうか。
とりあえず必要な畑の範囲分だけ耕しました。魔法で広範囲にやった後、アールが整えてくれた感じですね。
そうそう、ミランダさんの店で購入した肥料も使いました。これを使用すると植物の出来が良くなり成長速度が早くなるらしい魔法の肥料。これは【調合】スキルで作れそう? いや【錬金術】スキルの分野でもありそう?
さて、次は種を撒きます。ここから先は私でもできます。種を撒いて水を撒くだけです。これなら私でもできる。
撒いていく種は今までの採取活動で手に入れた種を。【鑑定:植物】で鑑定し、何の種なのか分けてから植えていきました。今回は風邪薬の材料となる薬草とホワイトハーブとレッドグラスの三種類ですね。
そして水を撒いていく。使う水はもちろん湖の水です。何かしらありがたい効果が発揮されるといいですね。
「あぁ……もうこんな時間」
畑仕事が一段落した辺りで時間を見てはっとしました。そろそろログアウトしなくては。
後片付けをしてログアウト。次にログインした時に畑がどうなっているか楽しみですね。
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
【経歴:封印の守護者を引き継いだ】
LV22 残りSP13
基本スキル 合計25個
【両手杖LV21】
【魔法知識LV21】【魔力LV21】
【闇魔法LV21】【風魔法LV20】【土魔法LV14】
【暗黒魔法LV8】【空間魔法LV1】
【月光LV16】【下克上LV15】【森の加護LV3】
【召喚:ファミリアLV21】
【命令LV19】【暗視LV21】【味覚LV21】【草食LV1】
【鑑定:植物LV21】
【採取LV18】【調合LV21】【料理LV11】【魔女術LV1】
【毒耐性LV15】【麻痺耐性LV15】【睡眠耐性LV14】
【言語:スワロ王国語LV15】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】
【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】
【管理地域:黄昏の森】
称号
【ベリー村の救世主】
【封印の守護者】




