54・だって魔女ですから
やることが決まったから即行動。したいところですがその前にもう一つ確認をしなくてはなりません。
それは覚えたスキルの確認です。レベルが上がって覚えられるスキルも増えたようですが、こちらも確認をする暇がありませんでした。
現状のスキルに変更はないのでとりあえず習得可能になったスキルの確認を……ってなんですかこれは。一気に二十以上も習得可能なスキルが増えていますよ。
「【片手杖】に【魔術書】。【製作:魔術書】、【製作:アクセサリー】、【気配遮断】……」
スキルを覚えるきっかけは大体プレイヤーの行動によるものです。ですがどれも私がそのきっかけを作った覚えはありません。どうしてでしょう?
『何を悩んでおる』
椅子に座ってテーブルの前で悩んでいた私に、ルシールさんが聞いてきました。
どう説明すればいいのでしょうか。まぁ普通に習得できるスキルが増えたと言っても通じるでしょう。スキルという物がどういうものか、またどういったシステムで動いているのかというのはNPCでも理解できているようです。
というより、NPC達は自分たちがゲームの中のNPCだと理解している節があります。その上でプレイヤーと交流しているような気がしますね。
さて、そんなNPC達が何かを説明する場合はそのままの直接的な言葉で説明されることはありません。前回の守護者についての説明がいい例です。
そのまま言っても良いんでしょうけど私はロールプレイヤーですからね。この世界に生きる人を演じる以上、それっぽくしたいじゃないですか。
「えっと……急に出来ることが増えたような気がして。今までそういった物を学んだ覚えはないのですが……」
『あぁなるほど。それは私のせいかもしれないの。ほれ、使い魔の契約をしただろう。その繋がりでお前さんに私の経験が少し移ったのだろうの』
なんと原因はルシールさんでしたか。つまり覚えられるようになったスキルは全部ルシールさんが覚えているスキルなんですね。
「へぇ~ルシールさんって色々できるんですね……って【魔女術】!?」
スキル一覧を眺めていたら目に止まってしまった。だって魔女ですよ。魔女術ですって! これは覚えなきゃいけないでしょう!
『あぁその魔術はのぉ――』
《スキル【魔女術】を取得しました》
「えっ何ですか? もう取っちゃいましたよ」
通常取得可能ポイントはSP3でできるのですが、特殊スキル扱いでSP5でした。
『……クロエ、説明も聞かずに覚える奴がいるかの?』
だって魔女術ですよ。魔女を名乗る者なら覚えて当然でしょう。
「それで【魔女術】ってなんですか?」
『【魔女術】は妖精魔女ルゥクトェが作り出した不思議な魔法薬を作ることができる魔法じゃの』
「魔法薬ですか。一体どういうものですか?」
『ふむ……そうじゃの』
ルシールさんはひょいとテーブルから降りたかと思うと薬品棚の近くに行きました。
『ほれ、そこの青い液体が入ったビン。それが【魔女術】で作った魔法薬だの』
「これですか?」
ルシールさんが指し示したビンを手に取って見る。青色の液体にキラキラと光る粉のようなものが入っていて見た目はとても綺麗です。
『試しに飲んでみるといい。どんな物か一発で分かるからの』
そう言われたので飲んでみました。
「ゴホッ……なんですかこの味は!?」
見た目に反して味はあまりおいしくありませんでした。鉄のような味と苦い味。
『まずい味でまず相手を驚かすのよ! とは確かルゥクトェの言葉だったかの』
「驚かすって……いやちょっとなんですかこの光!?」
突然自分の体が光に包まれました。すぐにその光は消えてしまいます。
「今のは一体……」
『おーおー、ずいぶんと可愛らしくなってのぉ』
なんだかニヤニヤ笑いをしていそうな黒猫に嫌な気配を感じます。というかさっきまでテーブルの上に座る黒猫を見下ろしていたはず……。なのにどうして目線が同じになっているのでしょうか。近くで何やら作業をしていたアールがこちらを見ています。さらに定位置になりつつある窓際に座るニルまでもが起きてこちら見ていた。
「どうしました? アール……んん?」
なんだが今、子供の声がしませんでしたか。まさかと思いつつ体を見てみるといつもの服装そのままに、なんだか体のサイズを縮小した感じになっていました。椅子に座っているのですが、先程まで地面に付いていた足が地面に付いていない。
『かっかっか。これはの【こどもの薬】じゃ。体を小さく出来る不思議なヘビの血で作られた魔法薬での。飲んだ者を子供に変えてしまう薬だの』
「なんてものを飲ませたのですかーー!!」
『怒っている声も可愛いのぉ』
怒っているというのに声に迫力がないです……。しかしこちらもとんだ失敗をしました。このルシールさんの言う通りに薬を飲んでしまったのがいけませんね。本人はイタズラが成功したと言うように楽しそうに尻尾を揺らしながら笑ってます。
「これ、いつ治るんですか」
『かっかっか。イタズラ用の薬だからの。十分もすれば効果は切れるの』
良かった。ずっとこのままというわけではないのですね。よく聞いてみるとこれはイタズラ好きの妖精魔女ルゥクトェが編み出したイタズラ特化の魔法薬だそうです。役に立つものからまったく役に立たないものまで、とにかくイタズラに使えそうな不思議効果のある薬を作ることが出来るそうです。まったくなんて薬を飲ませてくれたのでしょう。
ちなみに効果時間は短いものが多く、長くしてもすぐに切れるものが多い。「これはあくまでイタズラの薬。ずっと続く効果はイタズラではなくなり呪いになる」とは妖精魔女の言葉だとか。
そのためか麻痺や毒と言った状態異常と一緒のカテゴライズではなく、変異という形でステータス状態を表すアイコンとして表示されていましたし。だから【闇の代償】は発動しませんでした。ちょっと残念。いや、たとえ【闇の代償】の対象状態だったとしても使わなかったでしょうけど。
さてと、予想外のことがありましたが改めてスキルの確認をしておきましょう。一気に覚えるスキルが増えてしまいました。その中でこれから役に立ちそうなスキルはそうですね――
【空間魔法】習得SP4
以前風魔法の派生先として雷魔法と一緒に出てきたスキルですね。攻撃魔法は少なく補助的な魔法ばかりだそうです。攻撃魔法はもう十分なので補助魔法を取りたいと思います。
【森の加護】習得SP3
行動によって習得可能一覧に出てきたスキルです。確かに森での活動が多かったですからね。守護者としてこの森にいることも多いでしょうから使えるスキルでしょう。効果としては森にいる場合ステータスアップ。
【草食】習得SP3
……どうして一覧に現れたか分かりますよ。むしろ今まで何故出てこなかったのかレベルですね。効果は植物を食べた場合の満腹度の上昇、および効果の強化。薬草をそのまま食べたら満腹になるしポーション並に回復するというわけですね。ポーションは再使用時間があったりしますから、その間の繋ぎとして使えそうですね。
それらを取得していく。さっき【魔女術】の分も合わせるとSP15も消費してしまいましたね。残りSP13。
スキルの確認はこれくらいでしょう。とりあえず休憩。まだ子供の姿のままです。あと数分待たなくてはなりませんね。
ふと、何やら作業をしていたアールのほうも終わったようです。使っていた道具を片付けていました。
「何をしていたんですか、アール?」
近づいてみたら普段大きいアールがさらに大きく見えました。見上げるのに帽子のツバが邪魔だったので一旦脱いで見上げています。いつもより遠くに見える顔に掛かる影が増えてちょっと怖い。
それに気づいたのか、アールはしゃがんで私と目線を合わせてくれました。そして手に持った太い木のような置物を見せてくれます。
分からないので首を傾げてみたら、アールは窓際のほうを指差しました。そこには日の当たる窓際で眠るニルの姿。ただ若干不機嫌そう。落ち着きなくなんども体勢を変えていました。その姿はいつものニルとちょっと違いますね。ほら、いつものニルは誰かしらの肩の上だとかに止まっています。なので平たい場所にいるのは珍しいです。
「あぁ、もしかして……」
私の言葉にコクリと頷くと、アールはニルのいる窓際に行きました。ニルの隣にその置物を置く。すぐに目を開けてその置物に気がついたニルは、バサリと飛び上がりそれに止まりました。
「アールはニルの止まり木を作っていたのですね」
止まり木に止まって幸せそうに眠るニルと満足そうに微笑むアール。本当にアールはいいオークですね。
『アールは変わり者だの』
「えっそうでしょうか?」
『オークとしては、という意味だ。オークという種族は知性はそこそこだが乱暴で凶暴な魔物だからの。そやつの行動はそうじゃないだろう。大人しく、戦闘は苦手……それはまったくオークらしくない、オークとしては失格じゃの』
確かにアールは戦闘は苦手で怖がりです。ですが心優しく手先が器用で今もニルの為に止まり木を作ってくれました。確かにオークとしては失格かもしれません。……ん? オークとして失格なら他のオークはアールをどう見ていたのでしょうか。
従者として契約した時、他に行く宛がないようでした。
なんとなく他のオークからのアールの扱いが分かってしまいましたね。そして、アールが報酬を拒んだ理由が分かりました。彼にとって報酬はもう貰っていたのでしょう。居場所という報酬を。
さてと、これを知った私はどうしましょうか。
「アール。ニルの止まり木ありがとうございます。無理はしないであなたの出来ることで構わないので、これからもよろしくお願いしますね」
そう言うと嬉しそうに笑ってお礼を言うように私の頭を撫でました。って子供扱いしないで……あぁ子供でした!
名前:クロエ
種族:人間
性別:女性
【生まれ:ブラッドリー子爵家】
【経歴:家出し旅に出た】
【経歴:封印の守護者を引き継いだ】
LV22 残りSP13
基本スキル 合計25個
【両手杖LV21】
【魔法知識LV21】【魔力LV21】
【闇魔法LV21】【風魔法LV20】【土魔法LV12】
【暗黒魔法LV8】【空間魔法LV1】
【月光LV16】【下克上LV15】【森の加護LV1】
【召喚:ファミリアLV21】
【命令LV18】【暗視LV21】【味覚LV21】【草食LV1】
【鑑定:植物LV20】
【採取LV18】【調合LV20】【料理LV10】【魔女術LV1】
【毒耐性LV15】【麻痺耐性LV15】【睡眠耐性LV14】
【言語:スワロ王国語LV14】
ユニークスキル
【言語:ヘイス地方語】
【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】
【野宿】【土地鑑】
【管理地域:黄昏の森】
称号
【ベリー村の救世主】
【封印の守護者】




