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セカンド・ストーリー・オンライン 理想の魔女目指して頑張ります。  作者: 彩帆
第二幕

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53/130

53・つまりレベ上げしなさいということですか

 さて、それからルシールさんから守護者としての説明がありました。


 私も森の地形を動かすこと以外の事はさっぱり知りません。守護者になってから日が浅く、ごたごたとしていたのでしっかりと確認する暇がなかったのが原因ですね。


『湖の底には【封印の星石】がある。かの勇者の剣の元とも同じあの星の神々が流した涙じゃの。あれこそが封印の魔法陣の核での、その力によって大いなる混沌を封印しているのはもちろんのこと、この森とそしてお前さんに守護者としての力を与えておる。それでな……』


 ルシールさんの説明は一言で表すなら回りくどい。この世界に生きる人だからそういう風に教えないといけませんから。『メニューを開いてそこから守護者管理画面を開くのだ』とか言われたら雰囲気が壊れますからね。でもちょっと分かりづらいので、ルシールさんの解説を聞きつつヘルプの説明とにらめっこしながら覚えましょう。


 さっきのルシールさんの説明にもありましたけど、私の守護者としての力は【封印の星石】から貰い受けています。


 守護者としての力は……そうですね、たとえば【黄昏の森】にいる間はステータスアップされてます。+LV5分くらいです。凄い。


 そして【黄昏の森】で死亡した場合、デスペナルティが半減。ランダムドロップなし。また復活地点にこのログハウスを選択できます。同じ神が流した涙である復活地点に使われる【星の石碑】と力が同じ、いえルシールさんの話によればそれ以上の力があるのでこれくらいはできるのでしょう。さすが【封印の星石】。


 ですが、全て【黄昏の森】の中での話です。なんでも影響が届く範囲は森の中までらしい。なので森を一歩でも出れば加護はなくなるとか。


 あとは森の地形変更。これは一日五回くらいまでしかできないとか。というのも、【封印の星石】の力の限界もあるみたいです。


『本当はもっと力があったのだがの。誰かさんが結界の壁に穴を空けるからそれの修復に使ったのぉ……』


 チラッとこちらを見るルシールさん。……その節は申し訳ありませんでした。


「いえ。待ってください。確実に壊したのは赤いフードの方ですよね?」

『かっかっかっ、なんだバレたかの』


 実に楽しそうな声で笑うルシールさん。意地が悪い。まぁかろうじて塞がれていた所をこじ開けたのは事実ですけど。それにしてもあの赤フードの男はそんな強固な壁を壊したというわけですか。


『穴を空ける程度であればそれほどでもない。だがそれでも相当な力だの』

「あの人はそれほどの力を持っていたというわけですか?」

『そうだの。あやつならばあの壁を壊しても不思議ではない』


 実際に戦ったルシールさんです。あの赤フードの力量も分かるのかもしれません。


『今は関係ない話だったの。さて、守護者の力としてはこれくらいかの』

「あの、一つ質問があります」

『なんだの?』

「守護者の力って本当にこれだけなんですか? これだけの力でここを守れというのですか?」


 あの大いなる混沌を封じる封印の地ですよ。それを守る守護者の力としては、少し弱すぎではありませんか? もっとこう特別な力ってないのでしょうか?


『お前さんは何か勘違いをしておらんか?』

「勘違い?」

『守護者とは特別な者ではない。封印の守護を任されただけのただの人でしかないのだよ。お前さんが言いたいことも分かる。これだけの力で守れというのも無理があるというのもな。だが、それをどうにかするのが任された守護者ではないかの。守る力がないのであれば、それを身につけるのもまた守護者としての役割であろう?』


 なるほど。確かにそうなのかもしれません。他者の力に頼るようでは守護者としての資格などないのかもしれませんね。


 ……もっともな話。運営が一人のプレイヤーに対して特別な力を与えるのはダメですね。これがオンラインゲームなら尚更です。今の守護者の力だけ見ても、一般プレイヤーに比べれば相当特別な力でしょう。


「分かりました。それについては理解しました。ですが……それを踏まえた上で一ついいましょう」

『なんだの?』

「いくら強くてもですね……守護者が一人しかいないというのは考えものです」

『それについては同意しよう。私がそうであったからの』


 力なくルシールさんが頷きました。赤い獣になってしまった時のことを思い出したのでしょう。ルシールさん以外の守護者が居れば何かしら対応できたはずですからね。


「他の守護者ってどうしているんでしょう? それ以前に他の守護者をルシールさんは知っていますか?」


 何かしら参考になるかもしれませんし、他の守護者というのも気になります。


『私が知っている限りでは二人だの。まぁこの二人に関しては誰でも知ろうと思えば知れるから、守護者の中でも希有な者達だがの』


 一人は神都にいる封印の守護者。もう一人は黒の地にいる封印の守護者。二人とも軍隊を持つような組織に属しているので彼らと共に守っているのだとか。だからこそ封印の事を公にしても守るだけの力があるというわけですか。


『他の守護者は私同様、ひっそりと真実を隠して守っておる……らしいの。教会の連中が言うように封印の地を明らかにするべきだというのも分かるが……』

 

 明らかになっていた場合、そこを守りやすくなります。ですが、同時に守りにくくもなりましょう。人の出入りがあればそれだけ悪意を持った人が入りやすくもなりますから。


 一人で守る場合は関係者が少ない為に情報も出にくい。ですが、万が一情報が漏れた場合の対処が難しいです。どちらも一長一短ですね。


 そして私の守るこの封印の地はというと、すでに情報が漏れてしまっている。最悪な状況ですね。


「ルシールさんは今まで一人で守ってきました。ですがそれは情報が漏れていなかったから出来たことです。襲撃され、情報が漏れてしまった今、私一人でここを守るのは現状難しいと思います」


 あの赤いフードの男は何かしらの組織に属しているようでした。なら次に来る時は集団で来るかもしれないということを考えなくてはなりません。そう考えれば、こちらも守る人数を増やした方がいいでしょう。時期も分からないので早急に。さらに封印の魔法陣がある事は伏せた上で。


 情報を公にして協力者を仰ぐという手もありますが、相手に行動がバレてしまう。戦力が集まる前に襲撃されてしまえばお終いでしょう。それに他の悪意ある者まで呼び寄せてしまう可能性だってありますからね。


 ……これ、難しくありませんか。いつ来るかも分からない敵を迎え撃たなくてはならない。その為の戦力が必要。だが事情によってこちらからの情報は伏せた上で行動しなければならない。


「ルシールさん。あなたが私たちに依頼をした時の心境が分かった気がします……」

『かっかっか。そうだろう、そうだろう』

「笑い事ではありませんよ。一刻も早く対処しなければならない問題ですよ、コレ!」

『守護者としての責務を果たそうとするその姿勢は良い。だがの、そう考え込むな。焦ればそれだけミスが出るからの、クロエ』

「どうして余裕そうに言えるんですか……」


 明日襲撃されたらどうするというのでしょうか。命を賭けてここを守ろうとしたあなたはどこに。……いえ待ってください。ルシールさんが理由もなくこんな悠長に構える事ができるでしょうか。


「何か私に隠し事をしていませんか、ルシールさん?」

『かっかっか。さて、どの隠し事かの?』


 あぁ、意地悪そうにニッコリと笑う老婆の姿が簡単に想像できます。仕方ありません、ならばこちらもニッコリと笑みを返しておきましょう。


「教えてくれませんか、ルシールさぁん?」

『こらっやめんか! 顔を引っ張るな! この体は借り物なんだからの!?』


 元の黒猫が可哀想なので手加減はしましたよ。ちなみにこの黒猫、今は普通の黒猫らしいです。ルシールさんが契約を解除した為、使い魔ではなくなってしまったようでした。名前はベルと言うらしいですよ。


 パッと手を離した私に、仕方ないと言うようにルシールさんが話し始めます。


『これは私の考えだ。だから無視してくれても構わん。あやつ……赤フードの男はすぐに襲撃なんてしないだろうの』

「どうしてそう言い切れるのですか?」

『一つ聞く。お前さんはあの男に何か言われなかったか?』


 質問を質問で返されました。まぁとりあえず答えましょう。さてと、あの赤いフードの男ですか。


「気に入られてしまったようで仲間にならないか勧誘されました」

『あぁ……そうか。あやつなら言いそうだの』

「それで、これがなんだと言うんですか?」

『なら確信を持って言おう。あやつがすぐにここを襲うことはない。むしろこちらが万全の準備が整うまで待つだろうの』

「……それは確かなのですか?」

『あやつはそういう男だからの。完璧な物を壊してこそ面白い……とか考えてそうだ』


 ルシールさんの言葉から嘘を言っている気配はありません。この人が嘘も、そして冗談で言っていることはなさそうです。ただ、気になることがあります。


「私に質問した意図は?」

『あやつもこちらの事情は把握しておるだろう。いや確実にしておる。私が生きていることまで把握しているかは分からんが、誰かに守護者を託したということはあやつも考えておるはずだの。その誰かが、お前さんであるということもあやつは予想しておるだろうの』

「……もしそうなら、こちらの状況が筒抜けではありませんか」

『そう、だからあやつは仕掛けてこない。お前さんが強くなるのを待つのだからの』


 こちらの状況が全て把握できていながら、仕掛けてこないとは。普通だったら弱い内に潰しに行けば楽ができるからやるでしょう。そう、私も……いや、よく考えれば私もしないかもしれません。だって面白くありませんから。戦うなら戦力も整った相手と勝負をしたほうが面白いではありませんか? 弱い者を一方的にいたぶっても面白くありませんし……なんということでしょうか、相手の心理が分かってしまいました。


「ルシールさん、随分と赤いフードの男に詳しいですね?」


 ですが、これが本当にそうだとして。ルシールさんは相手の事を知りすぎではありませんか。ついこの間出会ったばかりで、あの短い時間で彼の心理まで理解したというのでしょうか?


『……ちょいと古い知り合いに似た者がおった気がしてな』


 なんとなく、これ以上は聞くなと言われているようでした。ならこちらも下手に突くのはやめましょう。どうせその内分かることです。今分かればいいのは、赤フードの男の動向ですからね。


「……ちなみにこの前の事に関してはどう考えますか?」

『この前のは本来であれば偵察だけだったはず……少し興が乗ったからあのような事態になったと私は考える』


 それが不思議なんですよね。こちらのことが分かるくらいに頭が回るなら、前回単身で来てあの白い森の中を彷徨うほどの失態をするのか。まぁ私も人の事は言えませんね。興味本位で壁をぶち抜いて入ってみたら、その後に赤い獣の襲撃を食らってますから。……なんだろう、意外と同じことしてませんか? いやいや、あの男には深い理由があったはずです! きっと!


『さて、これからの事を考えるのは良いことだ。だがの、何よりも優先するべきことがある』

「……それはなんですか」

『クロエ、お前さんは守護者としてあまりに弱すぎるの。ここでこんな事を討論しとる暇があれば、さっさと修行せい』


 そんなこと言われなくても分かっていますよ。だって封印の守護者ですよ? いかにも強そうではありませんか。なのに実際にやっているのはレベル二十二の若い魔女ですよ。レベルが合ってなさすぎるのを気にしていたんですから。せめて三十は欲しいです。


『ぐだぐだと考えるよりも行動しておいたほうが良い。守護者なのだから守護者らしい力は身につけておくのだ』

「ですが……」

『クロエ、成るように成れだ。気楽に考えておいたほうが良いこともあるぞ、かっかっか』


 ルシールさん、考えているようで考えてませんね!?


 とりあえず……これからやるべきことを決めましょうか。これからの為に、何らかの戦力なり防衛力を強化しないといけません。そしてその為にも私自身のレベル上げも重要です。あとは定期的な収入も欲しいですね。


 ・防衛の強化

 ・レベル上げ

 ・定期的な収入


 優先すべき今後の目標としてはこの三つですね。これから忙しくなりそうです。これからどうなるか分かりませんが、まぁルシールさんの言う通りきっとなんとかなるでしょう。なんとかならなくても、その失敗を楽しむくらいで行きましょう。だってこれはゲームですからね。




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Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
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