表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/130

4・初めての戦闘

 

 目的も決まったことですし、まずはモンスターを倒してレベル上げをしましょう。


 その為にはプレイヤーの多いこの場所から離れなくては。

 あ、あっちの森が見える方に行こう。地図上だと【黄昏の森】って名称です。

 黄昏の森を抜けた辺りの詳細な地図が分かりません。どうやら経歴のボーナス特典もここまでみたい。

 その森を抜けた先は大雑把に書いてあるけど、【イルー鉱山】を通り抜けると【スワロ王国】にたどり着くらしい。まぁ今は初心者の私には関係ないですね。


 そしてたどり着いた森の入口あたりで彷徨いていた私の前に一匹のウサギが現れた。薄汚れた灰色の毛皮と鋭いキバの生えたウサギのような外見をしている。ウサギのようなというのは、ウサギと犬をかけ合わせたような外見をしているんです。そしてあまりかわいくない。先程の草原でたくさん倒されていたモンスターと同種ですね。……ですが一点だけ違うのは額に角が生えています。


 その一匹のウサギがこちらを見る。どこかシャーという鳴き声? とともに牙を向けてきました。あぁこれはこちらが敵だと認識されましたね。


 私も杖を構えます。えーと、使える魔法は【闇魔法】と【風魔法】ですね。とりあえず闇魔法のスキル【シャドウアロー】を唱えます。


 あ、いけない。詠唱完了まで五秒もある。両手杖の先で影が集まるようにしていますがまだ撃てない。


「あ、待って! うわっ!」


 その間にウサギの突進を受けてしまい、地面に尻餅をついた。


「あれ? 意外と痛くない?」


 思わず腹に手を当てたけど衝撃のわりにあまり痛くはない。そっか、痛覚を和らげる機能が働いているのでした。とりあえず体勢を立て直す。シャドウアローはその間に詠唱完了してしまい、あらぬ方向へと飛んでいった。もう一度使うには十秒の待機時間(リキャストタイム)が過ぎなければ再使用ができません。


「……それまで持ちこたえませんと」


 視界の端に映る体力ゲージを見る。意外にも削られていない。多分敵が低レベルであることと、私の生まれボーナスで貰った装備のおかげでしょう。


 杖を構え直す。魔女ですからここは魔法でドンっと敵を倒したかったのですが……


「仕方ありませんね!」


 また突撃してきたウサギの攻撃をなんとかかわし、その脳天に杖を振り下ろす。ヒット。ウサギの様子からダメージを与えたように思えます。杖ですからあまり威力はないでしょうけど。敵の体力ゲージが見えないのが心配ですね。確か敵情報を見るスキルがあった気がするのでそのうち取りたいところです。


 ウサギがまた突撃をしてきました。こちらのシャドウアローのリキャストタイムは終了しています。ですが発動までの五秒間は時間を稼がねばなりません。


「えい!」


 杖を振り下ろすと見せかけて地面の土を蹴ります。土は見事にウサギの顔にかかりました。目に土が入ったようでブルブルと頭を振っている。今ですね。

 すぐに杖を構え、スキルを発動させる。五秒間後にシャドウアローは目標に向けて打ち出された――のですが。


「あれ?」


 なんとも弱々しいぐにゃりと曲がった影の矢。これでは威力がありそうに見えません。案の定、ウサギに当たりましたがあまり効いていない。

 疑問に思う前にまたウサギの攻撃が来ます。シャドウアローは使えない。なので【風魔法】の【ウィンドカッター】を使います。こちらは発動させるとすぐに魔法が出現。鋭い突風がウサギを襲う。でも威力はそれほどでもないようです。先程のシャドウアローよりは効いていそうですが。


「困りましたね……」


 スキルを使うのに必要なマジックポイントはあと一回分の魔法を使えるくらいでしょう。それに比べてウサギはまだまだ元気そうです。

 こちらの攻撃手段は魔法と杖の打撃。闇魔法は先の攻撃を見てあまり使えそうにないですし、MPの消費も多いし詠唱が長い。対して風魔法は発動もリキャストも早くMPの消費もそこそこなのですが、威力が低い。杖の威力は論外です。決定打が何もありません。……ですがもし可能性があるとすれば闇魔法でしょうか。


 私は森の方角へと走ります。逃げているわけではありません。追ってくるウサギの姿を確認しながら、探していた場所へと誘導します。


「この辺りでいいでしょう」


 森の中は昼間にもかかわらずとても薄暗く、日の光が遠くに感じます。

 立ち止まった私に向けて、また突撃をしてくるウサギ。ですが私の後ろには木がありました。さっと避けた私の後ろにそのまま突っ込んでいき、額の立派な角を木に刺します。


「これで終わりにしましょうか」


 必死で引き抜こうとするウサギの前に立って私はシャドウアローを発動。五秒後、角を引き抜いたウサギに勢い良く影の矢が発射されウサギを射抜きました。その一撃でウサギはぱたりと倒れ、数秒後光の粒子となって消えていきます。


「はぁー終わった!」


 こんなにも体を動かしたのはいつ以来でしょうか。というか私ってこんなにも体が動いたんですね。びっくりです。ずいぶんと疲労がありますが。

 それにしても、読みが当たって良かったです。先程のシャドウアローの威力がなかったのは太陽の光が原因だったみたい。闇魔法というほどです。暗がりで使えば威力が増し、昼間の太陽などの光がある場所だと威力が衰えるのでしょう。逆を言えば光魔法は夜や暗がりだと威力が半減しそうですね。


 そうしている間にシステムメッセージが流れます。


 《グレーラビットの毛皮×2を獲得》

 《グレーラビットリーダーの角を獲得》

 《レベルが2に上がりました。SPが2増えます》

 《レベルが3に上がりました。SPが2増えます》


 なんかレベル上がりすぎではありませんか? ウサギの名前はグレーラビットですか。いやその前にリーダーって……。


 色々と言いたいことがありますが戦闘で疲れました。時間を確認するともう三時間くらいゲームをプレイしているので疲れるのも当然かもしれません。とりあえず休憩しましょう。色々な確認とかは後回しです。そういうことで私はログアウトボタンを押したのでした。



////////////////////




【SSO攻略掲示板】


【第二期】これがホントのセカンドストーリー【Part2】


1://ななしの二人目さん

ようこそSSOへ。

この掲示板は第二期開始プレイヤー専用掲示板です。

先行組に追いつけ追い越せ!


~~~~~~~~~~~~~~



55://ななしの勇者さん

やった! 経歴で勇者引いたぜ! 俺が勇者だ!

【写真】


56://ななしの二人目さん

>55嘘乙


57://ななしの二人目さん

>55おーおめでとう。だがお前は二人目の勇者だ!


60://ななしの勇者さん

>56嘘じゃない!ほら写真あるだろ!

>57なん……だと……。


62://ななしの二人目さん

>60Part1を遡るといい。第二期での初勇者は彼だ。


63://ななしの勇者二人目さん

うわぁホントだ。じゃあ俺二人目かよ。


64://ななしの二人目さん

>63残念。先行組にもいるんだよ。


65://ななしの二人目さん

>63先行組で二人いるから。お前で四人目だ。


66://ななしの勇者四人目さん

レアとは一体……。


69://ななしの二人目さん

>66忘れてた。魔王になった勇者がいたからお前は実質五人目な。


72://ななしの勇者五人目さん

>69何やったんだその勇者ァ!


75://ななしの二人目さん

>72ちなみに今魔王はその墜ちた勇者含めて四人いるらしいから魔王退治頑張ってね!


76://ななしの勇者五人目さん

>75えっまじで? ……ちょっと勇者やめていい?


78://ななしの二人目さん

>たぶん確認されていないだけで勇者も魔王もさらにいると思われる。まぁ頑張れ。


85://ななしの二人目さん

そんなことよりグレーラビットリーダー強いんだけど。デュオ地方って初心者向け地方じゃないの?


87://ななしの二人目さん

>85あいつ突進しかしてこないじゃん。それより夜のコウモリの方が俺は嫌だ。


90://ななしの二人目さん

>85さっきなんか貴族ぽい女の子が杖で殴ってたよ。その後倒したのか知らないが。


92://ななしの二人目さん

>90貴族ぽい子? ……その子ってまさかはじまりの広場で分からない言葉言ってた子?


100://ななしの二人目さん

>92知らない。俺その場にいなかったし。


103://ななしの二人目さん

>92あの子ってなんかのクエのNPCぽい気がしたけど違うのか?


105://ななしの二人目さん

>103分からん。このゲームNPCとプレイヤーの区別付かんからなぁ……。


106://ななしの二人目さん

お前らここはSSOの総合板だ。これ以上デュオ地方の話するならここいってくれ。

【デュオ地方総合情報板Part23】




///////////////////



 ……勇者って意外とレアではなかったのですね。あとやっぱり魔王にも選ばれる可能性があるんですか。


 それにしてもグレーラビットリーダーって結構強いんですね。倒せたのはたぶん装備と威力の高い闇魔法のお陰でしょう。


 しかしまさか私がNPCと見間違われているとは……。まぁ無理もありませんね。このゲームは見分けが付き難いですし。装備も初心者装備ではありませんから。


 さてと……お昼も食べましたし、掲示板を見るのもこの辺にしてまたゲームを再開しましょう。

 私はVR機器を頭に被り、SSOへの世界へとダイブした。


 目を開くとさきほどログアウトした場所と変わりありません。あの【黄昏の森】の入り口ですね。一つ違うと言えばすっかり日が暮れてしまい、夜になっているところです。現実時間だと午後二時。ゲーム内時間は現在午後八時のようですね。ゲーム内時間の進みがこちらの現実より早いようです。


 困りました。夜のフィールドはモンスターが強化されているらしいです。ログアウトするなら一旦街に戻ってからにするべきでしたね。ですが闇魔法を持つ私としては今からが本番なのかもしれません。それに私は魔女を目指しています。魔女が夜に活動するのは基本ですね。

 とりあえず平原の方に行きますか。さきほどまであの平原で狩っていた人達も別の場所に移動していることでしょう。


 黄昏の森から少し歩くと夜の平原にたどり着きました。これだけ広い地域、何もない平原だけとはいえ辺りは真っ暗闇ですから迷子になりそうですね。ですが私は不思議と迷子になりそうにありません。なんとなくあちらの方角に何があるのか掴めています。多分【土地鑑】のスキルのお陰でしょう。


「……うわっ!」

 

 歩いていると何かにぶつかりました。いえ、それがぶつかって来たと言えばいいでしょうか。いきなり現れたそれは暗がりに混じっていてよく見えません。バサバサと何か羽音のような音だけは聞こえます。


「何かいますね」


 暗視スキルなんて持っていないので全く見えません。そんな中で相手からの攻撃をまた受けてしまいます。HPバーが三割減りました。


「……コウモリ?」


 一瞬だけ見えたその姿はコウモリに似ていました。さてどうしますか。相手は飛んでいる。辺りは月明かりくらいであまり見えません。


「まずは地に落としますか」


 私は風魔法のウィンドカッターを発動。風の刃が辺りを駆け巡ります。これは攻撃の為のものではありません。ウィンドカッターの作り出す風を受けてバランスを崩したコウモリが暗闇から現れました。また私に攻撃を仕掛けるつもりだったのでしょう。ヘナヘナと飛びながらこちらに向かってきました。


「えい!」


 それをハエたたきのように杖ではたき落とす。地に落ちたコウモリ。その翼を足で踏みつける。


「これで逃げられませんね」


 ジタバタと逃げようとするコウモリに向けて杖を向ける。その先には【シャドウアロー】詠唱により闇が集まっています。飛んでいる相手に攻撃なんて当たりません。詠唱もありますから無理な話です。なら動かないように相手を拘束するのが手っ取り早い。


「痛ッ!?」


 拘束していたコウモリがなんと靴に噛み付きました。牙が深々と刺さり、【吸血】の表示が現れ私のHPが減っていきます。


「悪あがきですか……」


 思いの外HPの減りが激しい。数秒でもう半分近く減らされてしまいました。ですがそれもすぐに終わります。シャドウアローの詠唱が完了し、至近距離でコウモリへ直撃。今は夜です。最大出力で繰り出されたシャドウアローの威力に思わず私の体も吹き飛ばされました。


《ナイトバットの牙を獲得》

《ナイトバットの翼を獲得》

《レベルが4に上がりました。SPが2増えます》


 倒したようですね。しかし一撃で倒すとは……闇魔法凄い。杖の補正もありそうですが。

 あとスキルレベルも上がっているようですね。後で確認しておきましょう。


 とりあえずHPの回復をしませんと。このままでは死に戻りで街に戻ることになりそうです。所持品に初心者ポーションがありますが使いません。休息をすることによってHPが回復しますから。その場に座り込むとしばらくたってから【休息】状態の表示と共に、HPが回復していきます。

 二分ほどで体力満タン。野外での休息はきちんと準備をしないと、マイナス効果により時間がかかるようです。ですが私は【野宿】スキル持ちなのでその効果はありません。


「生まれと経歴の効果は良いところも悪いところもありますね」


 経歴で取得したスキルは【土地鑑】と【野宿】。言葉の通じない場所に転移させた元凶ですが、その元凶に今は助けられています。


 体力も満タンになりましたので街に向かうために立ち上がります。その時、なにやら視界の端に警告を表す表示が出ていました。


「……空腹状態」


 しまった。そう、忘れていたのですがこのゲームには空腹システムがあります。一定時間食べ物を口にしていないと全体的な能力が落ちてしまう。今私は何も食べ物を持っていません。


 さっさと戻りましょう。土地鑑スキルをフル活用し、最短距離で行ける道を選びながら街に移動します。途中コウモリやウサギと戦闘することに。避けられる戦闘は避けつつ、なんとか街に着いた時には朝日が登っていました。




 名前:クロエ

 種族:人間

 性別:女性


【生まれ:ブラッドリー子爵家】

【経歴:家出し旅に出た】


 LV5 残りSP10


 基本スキル


 【両手杖LV3】【闇魔法LV5】【風魔法LV4】

 【魔法知識LV5】【魔力LV5】【調合LV1】

 【召喚:ファミリアLV1】【命令LV1】


 ユニークスキル


 【言語:ヘイス地方語】【身分:エンテ公国・ブラッドリー子爵家】

 【野宿】【土地鑑】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Gzブレイン様より出版しました!
大筋は変えず色々加筆修正やエピソードを追加してあります。
kaworuさんの超綺麗で可愛いイラストも必見ですので、どうぞよろしくお願いします!
i328604
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ